シャドウ   作:ゆばころッケ

46 / 64
今週と来週はあまり投稿できないかもしれません。

できればします。




第四十話 ラウラ 試される

「今日の午後一発目ってなんだっけ?」

 

「確か物理……」

 

「物理か……ていうか昨日、今日に備えて復習したな。」

 

「まあ今学んでいる内容難しいからな。

一回コツを掴めばそうでもないんだけど。」

 

昼休みにトイレに向かいながら、

 

なんとなく雑談していると、何か言い合っている声が聞こえた。

 

「教官、我がドイツでもう一度ご指導を。」

 

ラウラだった。

 

相手は千冬さんか。

 

「今はIS学園の教師なんだが。」

 

「私としてはそれが納得いきません。

この学園の生徒は皆浮かれていて、

とてもあなたのご指導を生かせるようには思えません。」

 

浮かれているか……

 

隣の一夏を見る。

 

別に一夏が浮かれているとは思わないが、

 

女子が浮かれる原因となっている。

 

「お前は私の指導を生かし切れているのか?」

 

「少なくともここの生徒よりは生かしています。」

 

「本当にそうか?

私にはお前が私の教えを生かせているようには思えないが。」

 

「でも、私はあなたのおかげで、」

 

「なら、示してみろ。」

 

ラウラは黙って突っ立っていたが、しばらくすると走り去った。

 

うーん、なんか不安になるやり取りだな。

 

「男子共、盗み聞きか?

異常性癖ならば教師として正さなければならないな。」

 

?どっかで聞いたことある気がするなぁ。

 

原作じゃなくて……なんだっけ?

 

「千冬ね」

 

あっ、馬鹿。

 

「織斑先生だ。」

 

バシーン

 

良い音だ。

 

「織斑先生、さっきの言い方は少し良くなかったのでは?」

 

自分で言って、しまったと思った。

 

なぜこんなことを言ってしまったのだろうか?

 

怒るんじゃないか?

 

「相変わらず生意気だな、幸逆。」

 

しかしその口調はからかうようなもので、怒ってはいないようだった。

 

あっ、もしかして……

 

「わざとたきつけたんですか?」

 

千冬さんは少し驚いたような顔をしてから言った。

 

「さあな。

ところで二人とも時間は大丈夫か?」

 

盗み聞きに時間が取られたようだ。

 

走るほどではないが、あまり時間はなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレの帰り道、一夏に聞いてみる。

 

「一夏、ラウラのことどう思う?」

 

一夏は少し不思議そうな顔をしてから答える。

 

「どう思うって言われてもな。

いっつも睨まれるし、でもIS操縦は上手いよな。」

 

一夏は頭を掻いた。

 

「あとは……あいつも寂しいのかなって思う。」

 

「寂しい?」

 

「あいつにとって千冬姉がどんな存在かは知らない。

でも千冬姉のことを大切に思っているとは思う。

だから……」

 

「ああ、じゃあもしかして

織斑先生が一夏に奪われたと思ってんのかね?」

 

「……奪ったのはドイツだろ。

あいつ個人はともかく、先に千冬姉を奪ったのはドイツだ。」

 

そう言うと一夏は走り出した。

 

あっ、馬鹿。

 

ここ、職員室の前だぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏。今日は剣道の日ではないよね。」

 

「ああ。今日はISの訓練だな。

私も訓練機を借りたので参加させてもらおう。」

 

一夏の代わりに箒が返事をした。

 

「実際、刀を振るう上でISと生身だとどれくらい感覚違うの?」

 

「色々と違うが、力の受けいれが一番違うな。

篠ノ之流では相手の力をも利用する。

その上で力の受けいれが重要になってくる。」

 

「じゃあ一夏は箒と刀の打ち合いでもしたら?」

 

IS操縦の訓練として正しい方針のはずだ。

 

例え束さんにキューピットを頼まれていなくても……そうしたはずだ。

 

一夏と櫻が両想いなのでは?と思い始めてから、キューピット業はやりにくくなった。

 

「そうだな、そうしようか。」

 

一夏は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナに着くと、何やら騒がしかった。

 

「模擬戦?それにしては騒がしい気もするけど。」

 

シャルが首を傾げる。

 

大きな爆発音の後、煙が収まってくると誰が戦っているのかが見えてきた。

 

「あれは鈴とセシリア!?

ひどいダメージじゃないか。

それにあの黒いのはラウラか?

あいつが二人にあんなことを?」

 

一夏が大声を出す。

 

確かにあれはひどいな。

 

あれ以上傷つけられたら、しばらくは操縦できないだろう。

 

「三人は今すぐ、ステージ内に入って止めてくれ。」

 

真剣な表情で三人は頷く。

 

「俺はここから止める。」

 

俺は腕にシャドウを部分展開した。

 

それからラウラを見る。

 

今は鈴と打ち合いをしているようだ。

 

プラズマ手刀をメインに、ワイヤーブレードをサポートにして戦っている。

 

俺は星の欠片をイメージし、その密度を高めた。

 

そしてそれをワイヤーブレードにつける。

 

先端の剣部分と言いたいところだが、位置を細かく指定すると、

 

展開するのに時間がかかるので、ワイヤ―の一部に付着させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラは体勢を大きく崩した。

 

星の欠片によって、

 

急に重みを増したワイヤーはラウラの思う通りに動かなかった。

 

それに目を付けた鈴がそのワイヤ―ブレードを切りつけた。

 

結果、ワイヤーは大きく沈み、ラウラは体ごと引っ張られたのだ。

 

俺は星の欠片を同じように展開し、6本あるワイヤーブレード全てをだめにした。

 

この事態に上手く対応できなかったラウラには隙ができる。

 

鈴はそれを逃さなかった。

 

ラウラのプラズマ手刀を上手くいなし、

 

プラズマ手刀を作り出している袖のようなパーツを破壊しようとした。

 

プラズマ手刀のような兵器は金属に対して強いが、

 

その発生源の強度には限界がある。

 

そのため青竜刀のような武装の方が優先されることが実は多い。

 

発生源が壊されれば使えなくなるので、万が一の際のリカバリーがしにくいのだ。

 

もちろん両方用意するという手もあるが……。

 

 

 

 

 

 

しかし、これはAICによって防がれる。

 

だが鈴にとってもそれは想定の範囲内だったようだ。

 

龍砲の肩部ユニットがスライドして開く。

 

近距離で波動砲を放たれたら溜まったもんじゃないだろう。

 

ラウラは大型カノンを使って肩ごとぶっ飛ばそうとする。

 

 

 

 

その時セシリアがBTによって、

 

カノンとプラズマ手刀を出すパーツを狙ってレーザーを放つ。

 

ラウラは右手に新しい武装を出す。

 

棒の先に金属の鎖がついていて、その鎖の先端に鉄球がついている。

 

いわゆるフレイルというやつだろう。

 

ラウラはそれを振り回してセシリアが放ったレーザーを防ぐ。

 

そしてその後、そのフレイルを鈴に向かってぶち当てようとする。

 

その時、鈴の脚から黒い蛇のようなものが出てきた。

 

そしてそのフレイルを呑み込んでしまった。

 

あんな武装、以前は使ってなかったよな。

 

フレイルを呑み込んだ蛇はその後すぐに消えた。

 

カノンと衝撃咆が同時に発動し、また大きな爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

その後、一夏、箒、シャルが到着し、

 

騒ぎが大きくなったため教師が止めに入り、ラウラは戦いをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後鈴とセシリアは保健室に運ばれた。

 

軽い打撲だそうで、大事はないらしい。

 

「全く、あのままいけば逆転していましたのに。」

 

負けていたという自覚はあるらしい。

 

「怪我が大したことなかったんだからよかったじゃないか。」

 

「はぁ?ケガなんてしてないし。」

 

こいつは自分が包帯しているのが分からないんだろうか。

 

「まあまあ二人とも、これでも飲んで落ち着いて。」

 

そう言ってシャルが烏龍茶を鈴に、紅茶をセシリアに渡す。

 

二人ともなんかぶーたれていたが、

 

飲み物を渡されると、大人しく飲み始めた。

 

これで静かになったな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳ありませんでした。

 

廊下からドドドドというものすごい音がしたと思ったら、

 

保健室のドアが荒々しく開けられる。

 

「織斑君」

 

「デュノア君」

 

「「「「「「「「私と組んでください。」」」」」」」」

 

ああ……遂に来たのか。

 

「えっと、皆落ち着いて何の話?」

 

「今度の学年別トーナメント、

ペアで出場することになったの。」

 

そう言った女の子が一夏とシャルに緊急告知が書かれた申込書を渡した。

 

そこには実戦的な模擬戦のために

 

トーナメントをペア戦になるという趣旨が書かれていた。

 

「あー。ごめんな。俺、シャルルと組むから。」

 

ああ、うん。そうなるよね。

 

束さんから一夏のサポートするよう言われている身としては、

 

ペアになりたかったが仕方ないか。

 

シャルが女性であることを隠している以上、

 

他の人と組んだらばれるリスクが高まるしな。

 

 

 

 

 

 

女子たちは一夏とシャルと組むことで納得したようで去って行った。

 

だが、ここにいる三人はそうはいかない。

 

「一夏さん、私は納得いきませんわ。」

 

「一夏、あたしと組みなさいよ。」

 

「……」

 

箒は黙っていた。

 

まあ優勝すれば付き合うなんて言ったら、

 

その対象の一夏と組むのはどうかと思うよな。

 

……あっ、そういう告白の仕方したかどうかは俺の憶測にすぎないか。

 

でも黙っているっていうのはそういうことじゃないんだろうか?

 

「というか二人とも、ISの状態は大丈夫?

さっき相当傷つけられていたように見えたけど。」

 

「その件なら大丈夫です。」

 

そう言ってきたのは山田先生だった。

 

「確認しましたが、二、三日修復すれば問題ないダメージレベルです。」

 

つまりEか。

 

ちなみにケガしている時に無理をさせると変なクセが着くので使えませんよ、

 

っていうのを示す水準がダメージレベルである。

 

「でも二人は一夏のペアには向かないんじゃないか?」

 

仕方ないのでシャルと一夏が組むのをサポートすることにした。

 

「なんですって」

 

「なんであんたにそんなこと言われなくちゃいけないのよ。」

 

「じゃあ、まずオルコットさん。

一夏は近距離しかできない。

相手が一夏から距離を取るために、

逃げるのを防ぐのが専らの役割だと思うけど、

君のBTはそこまでの威力はない。

ある程度受けることができる。

だから退路を防ぐという役割には向かない。」

 

「次に鈴。

近距離もできるし、中距離も対応できるので

ペア戦を一対一にしてしまえば、

専用機持ちのペアということもあって、強力ではあると思う。」

 

セシリアさんがこっちを睨む一方、鈴が嬉しそうな顔をする。

 

「でも、それってシャルルにも言える利点なんだよな。

しかもシャルルの方が器用だ。

一夏は不器用だから、なるべくならカバーできる器用さが欲しい。」

 

鈴がムカっとした顔をし、一夏もひどいなぁって顔をしている。

 

不器用なのは事実だろう。

 

いや微妙な表現か、不器用というかやれることが少ないの方が適切か。

 

「そんな決めつけにすぎませんわ。」

 

「そうよ、そうよ。」

 

ちっ、爆弾投げるか。

 

「なんで二人は一夏と組みたいの?」

 

「それはえっと、勝つためですわ。

専用機同士組めば強いですし。」

 

セシリアは顔を赤くして、あたふたとした様子で答えた。

 

「あたしは一夏と組みたいからよ、悪い?」

 

げぇ、鈴強い。

 

二人とも勝つためとか言うなら、

 

セシリアさんと鈴で組ませようと思ってたのに。

 

実際相性良いと思うし。

 

「とにかく俺はシャルルと組むから。

二人ともお大事に。」

 

そう言って一夏は出ていった。

 

シャルルは頭をぺこりと下げて、後に続いた。

 

その後、二人は少し荒れていたようだが、

 

ケガの痛みもあって、しばらくすると大人しくなった。

 

 

 

 

やっぱり専用機なのか……

 

箒は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、俺はどうしようか。

 

誰と組むべきだろう。

 

櫻と組めば100%勝てるが、彼女は出ないらしい。

 

ちなみに簪さんも今回は欠席らしい。

 

鈴かオルコットさんと俺が組めばよかったか?

 

でも一夏以外の男なんて嫌だろうな。

 

専用機持ちじゃないなら、実力的にはシリアさんかハミルトンさんが理想だろうか。

 

ただシリアさんは専用機持ち嫌いだし、

 

ハミルトンさんは二組で俺より仲が良い人いるだろうしな。

 

 

 

……仲が良い?

 

ペアで戦うとなると互いの息が合っている必要がある。

 

そうなると……

 

俺は自室のドアを開ける。

 

ベッドに座っていたさゆかと目が合う。

 

手には例の申込書が握られている。

 

「紅侍は誰と組むの?」

 

じぃーと見つめられるとさすがに気恥ずかしくなってくる。

 

「えっと、色々と考えたんだけど……」

 

なんか恥ずかしさのせいか言いにくい。

 

「さゆか、俺と組んでくれないか?」

 

まあ「一緒に暮らしてくれないか?」を言った俺にもう言えないことはない。

 

「……よかったぁ。」

 

さゆかが笑顔になる。なんだか安心したって感じの顔だ。

 

「友達からの誘い断ったのに、

もし紅侍が他の人と組んでたらどうしようかと思った。」

 

「まさか……。」

 

「だって紅侍って結構理屈っぽい所あるから、

実力的に専用機持ちの人か代表候補生の人と組みそうだし。」

 

「あはは、まさか……」

 

俺は苦笑いした。

 

「あー、やっぱりさっき私が言ったようなこと考えてたんだ。」

 

さゆかが少しむくれた顔をする。

 

「ちょっとね。

でもペア戦なら一番息が合う人がいいかって考え直したんだよ。」

 

「紅侍……」

 

また見つめ合う。

 

俺は視線を逸らした。

 

「じゃあ、その申告書出しに行こうぜ。」

 

俺はドアの方を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日発表されたことによると、参加したのは58組。

 

形としては64組でのトーナメントになるから、

 

6回勝てば優勝だ。

 

ちなみに鈴とセシリアさんは組んだらしい。

 

なんだかんだ言ってあの二人仲良い気がするしな。

 

喧嘩する程、仲が良いってやつだろうか。

 

厄介なペアになりそうだ。

 

……後厄介と言えば、

 

一夏とシャル、シリアさんとハミルトンさん、

 

そして箒とラウラの組み合わせだろうか。

 

なお箒とラウラはお互いに組む人がいなかったので、

 

自動的に組まれていたらしい。

 

さてこの四組だけに注目すると……

 

一夏とシャル、シリアさんとハミルトンさんは別のブロックだから

 

決勝まで当たることはない。

 

そしてラウラ箒組と鈴セシリア組は準々決勝で当たって、

 

その勝者と準決勝で当たることになりそうだ。

 

ふむ、うまーく強敵を避ける位置だな。

 

運がいいかも。

 




お疲れ様でした。

次からトーナメントに入ります。

最近開き直ってのんびり進めてますが、

やっぱりまだ2巻の途中ですしね……

そろそろ話進めないと……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。