紅侍「理子」
一夏「人名ありなのか?」
紅侍「まあいいだろ。」
一夏「……硬貨」
紅侍「簪」
一夏「塩」
紅侍「オルコット」
一夏「徒歩」
紅侍「箒」
一夏「木」
紅侍「基地」
一夏「人名じゃないんだな。」
紅侍「お前の番だぞ」
一夏「……千冬。」
千冬「いい度胸だな。」
一夏「げっ、千冬姉。」
千冬「馬鹿者、織斑先生と呼べ。」
バシーン
シンさんが去った後千冬さんと大して話すこともなく、
俺は解放された。
といっても目隠しされて、どこを移動しているかも分からないまま
寮まで搬送されたので解放という感じではなかったが。
部屋に帰ろうという途中に束さんから通信が入る。
『はろー、じーくん。
ちょっと話良いかな?』
『俺が断ったら話さないんですか?』
そう返答しながら俺は今来た道を戻り始めた。
『よく分かってるね。
んじゃっデミスⅢについて色々と話すね。』
『はあ、是非それは聞かせてください。』
寮を出る。
どこか人が居ないところ……
『スペックとかは実際に使った方が早いよね。
IS学園のシステムにジャックして
今からアリーナ使おっか。』
『そうですね、そうしましょう。』
最早何も言うまい。
『じゃあ纏ってみて。』
『はい。』
思いっきり息を深く吸う。
よく分からない不安と期待が交錯する。
来てくれ、デミスⅢ
漆黒のISを纏った瞬間、俺の中から何かが這いずり出てくる。
『標的を出すから破壊してみてよ。』
……
「絶対搾取」
俺はレッドバレッドを誰かから奪った。
アメリカで作られたアサルトライフルだ。
武装が一切ないので搾取したものを使うしかない。
俺は撃ち放つ。
次々と出る標的を打ち抜く。
『標的の速度をあげてください。
これじゃあ遅い。』
『いつもじーくんが使っているやつよりは既に少し速いよ?』
『冗談でしょ。
もっともっと速く、
もっともっとたくさん……』
ああ……
今は自分でも分かる。
こいつはシャドウよりよっぽどスペックが高い。
そして俺との相性もいいのかもしれない。
俺自身の運動能力も間違いなく上がっている。
『束さん、もっと増やしてください。』
これでもういくつめの武装だろうか。
搾取して使えなくなったら捨てる、それを繰り返していた。
『ここの施設じゃ、
これ以上の速度も出せないし、これ以上の数も出せないよ。』
『そうですか……』
つまらない
物足りない
ああ……もっと壊したいのに。
仕方ないので俺は地面に捨てた武装を適当に破壊する。
アリーナの天井近くまできて地を一望する。
ああなんていい眺めだ。
標的や武器の破片が辺りに散らばり、そこはまるで戦場のようだ。
そしてこの戦場は俺一人によって創られたものなのだ。
『じーくん、もういいよ。』
『そうですね、俺も少し満足しました。』
俺は地面にゆっくり降りる。
愉しかったか?デミスⅢ
俺はデミスⅢを収納した。
その途端ひどい頭痛に襲われる。
全身も痛み出した。
うぐっ……
『大丈夫?』
『はい……
ひどいものではありません。』
周りの惨状を見渡す。
これ全部俺がやったのか……
記憶はあるが、現実味がない。
なぜこんな無意味な破壊をしたのだろう。
標的はともかく使った武装を何故壊したのか?
『後片付けはシンさんにやってもらうから
とりあえずアリーナから出てよ。』
『これからデミスⅢの扱いに説明していくから。』
『扱い……?』
『使いどころっていうのかな。』
『使いどころですか。』
『そう、使いどころ。
デミスⅢは普通の試合には使えないからね。』
それはまあ分かる気がする。
『でもね、デミスⅢは求めているんだよ。
破壊をね。
だからたまには息抜きさせなくちゃいけない。』
『……息抜き。』
『そう、息抜きだよ。
もちろん破壊することでね。
そこで破壊すべきものを破壊するのがいいよね。』
『破壊すべきもの?』
『そうだねぇ、一つ例があった方が分かりやすいかな。
じーくんはヴァルキリー・トレース・システムって知ってる?』
『モンド・グロッソの部門受賞者の動きをトレースしたものですよね。
禁忌として扱われている……。』
『そんなのをさ、作ってるあるいは使ってるやつが居たら
ドカーンとしなくちゃいけないでしょ。』
『居たんですか?』
知らない振りしなくちゃいけない。
ラウラのことを言っていると思うが、
俺はその試合を見ていないからな。
転生してるなんて束さんにも言うつもりはない。
『本当は知ってるくせに』
『?』
『あれ?ちーちゃんから聞いたと思ったんだけど。』
『いや眼鏡を通して会話聞いてたんじゃないですか?』
『それもそうだねぇ。
とにかく話を戻すとね、まあ作ったやつがいたんだよ。
で、今回は束さんがぶっ壊してやったんだけど、
これからそういうのはじーくんに任せようかなって。』
『それって表舞台に居ない連中の相手を俺がしろってことですか?』
原作で言えば軍事用ISである銀の福音や
亡国機業がそれに当たるだろう。
『そう、まさにその通りだよ、じーくん。』
『……俺にできますか?』
『もちのろんだよ。
最も束さんがサポートするし、
必要に応じてくーちゃんかもう一人の協力者を呼ぶから。』
『それに正体もばれないよ。
さっきの試合で使った時は
デミスⅢはヘビー・スモーカーのおかげで見えてないし、
ちーちゃんはあれで口止めされたようなもんだから。
これから外で使うにも全身装甲だからね。
ばれたらさすがに色々まずいしねー。』
『でももしばれたとしても
束さんと愛の逃避行になるだけだから役得だよっ。』
ばれたら国際指名手配になるよな。
『分かりました。
やらせてください。』
俺は帰りながら考える。
なぜ俺はあの話を承諾したのか。
我ながら正気とは思えなかった。
束さんはいつもハッキングを駆使して
自分が現地に行かずに気に喰わないものを壊してきたんだろう。
でも俺は直接殴り込みに行くわけだから命の危機が伴う。
もし正体がばれたらIS学園に居られなくなるし。
なぜそんなことをしなければならないのか。
いや分かっているんだ。
俺はデミスⅢという圧倒的力を恐れるとともに求めているんだ。
そして得た力を行使して破壊という快楽を得る事を望んでいる。
……少し違うか?
そうこう考えている内に部屋につく。
意外にも部屋には明りがついていた。
さゆかが起きているのか。
ドアをノックする。
返事はない。
明りをつけっぱなしで寝てしまったという可能性もあるな。
俺はドアを開ける。
すると聞こえてきたすすり泣き。
布団の中でさゆかが泣いているようだった。
「おかえり。」
返事はない。
泣いている理由でも聞いた方が良いのかもしれないが、
無粋に思えてそれをしようとは思わなかった。
どうしようかと困っていると、
「ごめんなさい。」
小さな声で謝られた。
「俺こそ悪かったよ。
少し意識失ちゃってね。あはは、参ったもんだ。」
時刻は午前3時を過ぎている。
「紅侍が謝ることなんてなに一つない。
悪いのは全部私だから。」
泣きながら言っているのでやや聞き取りにくい。
それにしても何を謝っているのだろう?
あっ、そういえば試合中倒されたことを謝ってたな。
「もしかして試合のことを謝っているの?
あれは俺も悪かったよ。
俺が気づいてしっかりサポートできていればあんなことにならなかった。」
とはいえさゆかが危機を伝えてくれればよかったのだが。
「そのことだけど、そのことなんだけど……」
そこでさゆかが布団から顔を出し起き上る。
俺はベッドに座っていたので、二人の距離はとても近かった。
さゆかはひどい状況だった。
顔は泣き腫らしていて、特に目は真っ赤、
いつものすらっとした黒髪は乱れて
まるで手入れせずに伸ばしっぱなしにしているみたいだ。
おまけにシーツや制服はしわだらけになっている。
「もしかしてずっと泣いてた?」
小さく頷いた。
「そんなに気にすることじゃないよ。」
俺は作り笑いをした。
「でも……でも」
さゆかの声は震えていた。
目線は俺に合わせようとしていても、合わせられない感じだ。
その様子は少しおかしかった。
もしかしてさゆかはデミスⅢを見たのか……。
だとしたらまずいことになる。
束さんが口封じに入るだろう。
「だったら」
さゆかが何かを言おうとする。
言わせてはいけない。
さゆかの口を抑えたとしたら束さんに勘付かれるだろう。
なるべく不自然でないように……
俺はさゆかを抱きしめた。
さゆかの顔を俺の胸に当てる。
「えっと、紅侍……?」
「大丈夫。大丈夫だから。」
俺は更に強く抱きしめる。
「何も心配いらないから。」
「何も……?」
彼女は俺を軽く引き離すと目を合わせてきた。
さゆかは何かに迷っているようだった。
「そう何も。
全部俺に任せてくれていいから。」
さゆかがデミスⅢを見たとしたらどう思うか……
デミスⅢのコアが正式に登録されていないことを考えれば、
なんらかの異常性がデミスⅢに含まれているのは分かるだろう。
『紅侍君、君は分かっていることを
分からない振りするのが好きだね。』
……シンさんの言葉を思い出した。
いや……やめろ、考えるな。そんなはずはない。
きっとさゆかが感じるのは不安だ。
なら不安を取り除いてあげるのが一番だ。
「『全部任せていい』か……。
やっぱり紅侍はそうなんだね。」
今度はさゆかが俺に抱き付いてきた。
「ねぇ、紅侍。
私、もう無理しなくてもいいのかな。」
「ああしなくていい。」
「じゃあ一つだけお願いきいてくれないかな。」
さゆかの手が俺の服を握りしめる。
「俺のできることなら。」
「私と付き合ってくれないかな……」
さゆかは俺の胸に顔をうずめていて、
その表情はうかがうことはできなかった。
お疲れ様でした。
今回短めでした。
多分次回も短め。