シャドウ   作:ゆばころッケ

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紅侍「今回からさゆかの話だな。」

一夏「当然のように俺らの出番はないな。」

紅侍「暇つぶしにまたしりとりでもやるか?」  

一夏「やらねぇよ。」

紅侍「じゃあIS/VSやるか?」

一夏「前、コテンパンにされたからいい。」

紅侍「文句ばっかだな。
   じゃあ何ならいいんだよ。」

一夏(俺が紅侍に勝てるもの……)

一夏「……剣道?」

紅侍「……おーい、箒、一夏が剣道やりたいって!」

一夏「えっ?あっ……」

箒「ほう、では早速行くぞ」

一夏「……ああ」

紅侍「キューピッド任務完了!」



二章 さゆか 私が見たもの
一 さゆか ISと幸せ


私のお父さんは小さな工場の工場長だった。

 

お母さんは優しい人だけど、私が三歳くらいの頃に難病にかかってずっと入院していた。

 

治療費は結構高かった。

 

それでもお父さんの持っている技術が世界に誇れるものだったから

 

なんとか生活にそこまで苦しむことはなかったみたい。

 

お父さんの工場は小さかったけれど、世界中から依頼は来ていた。

 

なんでも軍事品のパーツらしかった。

 

軍事品っていうと戦争に使われるもので、

 

それは人の命を奪う訳で、私はあまり良い気持ちはしなかった。

 

お父さんのことが嫌いだった訳ではないんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉妹は一人、姉が居た。

 

姉は私より5歳年上で家のことは母に代わってなんでもやっていた。

 

姉は私の自慢の姉だった。

 

私にできることならなんでもできると思っていた。

 

 

 

 

 

 

6歳の白騎士事件の時からだった。

 

普通の家庭とは違ったかもしれないが、

 

幸せだった私達の家庭に狂いが生じたのは。

 

そう、ISが登場してからだ、私達の生活が狂い始めたのは。

 

 

 

 

 

ISは既存の軍事兵器を性能の面で遥かに上回っていた。

 

だから私のお父さんが作っていた軍事品のパーツは要らなくなったのだ。

 

IS武装の兵器の開発は既存のものとはかなり違うらしく、

 

適応できた会社とそうでないところとははっきりと分かれた。

 

そして私の家は適応できなかった。

 

 

 

 

 

商品の受注がなくなり、少しずつ家の貯蓄は なくなっていった。

 

白騎士事件から一年経ち、ISはスポーツとして人気を得ていた。

 

「今日織斑選手の決勝だよね。」

 

「楽しみだね。どっちが勝つかな?

さゆかはどう思う?」

 

「きっと織斑選手が勝つよ。」

 

皆がそう言えば喜ぶのは知っていた。

 

私としてはISの話なんてして欲しくはなかった。

 

別にISが悪い訳ではないのかもしれない。

 

ただそう分かっていてもISを好きになれなかった。

 

でも皆にとっては私の家のことなんて関係のないことだし、

 

会話に水を差すのはよくないことぐらい小学一年生の私でもなんとなく分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

私が小学四年生の頃、家は借金をして母の入院費を払っていた。

 

「お母さん、また来たよ。」

 

私の役割は専ら母さんの介護だった。

 

「さゆか、いつもごめんね。

本当は友達と遊びたいでしょうに。」

 

「また、その話?

それは禁句だって言ったでしょ。」

 

それに普段ならともかく今は本当に遊びたくない。

 

近々またモンド・グロッソが開催されるらしい。

 

そのせいで話題はISに関する事ばっかりだ。

 

つまらない、話したくもない。

 

「ねぇ、さゆか。」

 

急に雰囲気が変わった。

 

私はなぜかお母さんが言うことを聞きたくなかった。

 

それでも聞かなければならないような気がした。

 

そうしないとお母さんの思いを無駄にしてしまうと思ったから。

 

「なぁに、お母さん?」

 

私は繊細なものを扱うように優しく聞いた。

 

「私はもう長くないんでしょう。」

 

窓から外の景色が見えて枯葉がゆっくりと落ちていくのが見えた。

 

お医者さんは言わないようにしていたはずなのに。

 

分かってしまうものなのだろうか。

 

「そんなことないよ、お母さん。

信じていればいつか元気になれるって。

昨日言ってたじゃない、私が中学生になったとこ見てみたいって。」

 

「さゆか、いいんだよ。

もう私は十分に生きた。

皆に負担をかけてしまったね。

でももうそれも終わりなんだから。」

 

「やめてよ、お母さん。

縁起でもない……」

 

そう言いながら私は泣いていた。

 

涙は止まらなかった。

 

「さゆか、あなたは優しい子だね。

あなたはきっと幸せになれる。」

 

「どうして私が幸せになれるの……?」

 

幸せ……

 

幸せか……

 

「あなたには何も罪がないから。」

 

罪がない……

 

「お母さんだって悪い事してないじゃない。」

 

お母さんは俯いた。

 

目は虚ろだった。

 

これは母の眠る兆候だ。

 

「私とお父さんは兵器作りに携わったから……

間接的とはいえたくさんの人をきっと殺したから……」

 

そう言うとお母さんは寝てしまった。

 

会話している時にいきなり寝込むなんてことは、以前はなかった。

 

本当に体調が悪いんだなと改めて思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その晩お父さんは警備員の仕事をして、家に居なかった。

 

狭い寝室で二人同じ布団で私達は寝ていた。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。」

 

「なぁに、さゆか?」

 

私が話しかけるとお姉ちゃんは私の方に寝返った。

 

「今日お母さんと話したんだけど、

お母さん、もう長くはないって知ってたみたい。」

 

「そう。」

 

お姉ちゃんは短く答えた。

 

表情は暗くて伺えなかったけど、口調からは何も感じてないように思えた。

 

「お母さん何か言ってた?」

 

「お母さんとお父さんには兵器を作った罪があるって言ってた……。」

 

私は震えていた。

 

怖いのだ。何がと言われたら答えるのは難しいのだけれど。

 

「そうかもしれないね。」

 

姉は私を抱きしめた。

 

「でも大丈夫。

その罪は私とお父さんで背負っていくわ。

あなたはなにも心配しなくていい。」

 

私にはなにもできないのだから、そうしてもらうより他ないだろう。

 

私は姉を抱きしめ返した。

 

私はその晩、ぐっすりと眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

母が死んでから一年が経った。

 

お姉ちゃんは中学を出ると働き始めた。

 

細々とした生活ながら治療費がかからなくなったこと、

 

姉が働き始めたことで借金を少しずつ返すことができた。

 

姉の代わりに私が家事をやるようになった。

 

私の料理は下手だった。

 

それでもお父さんとお姉ちゃんは美味しいと言って食べてくれた。

 

家族三人になってしまい、貧乏な生活だったけれどたぶん幸せだった。

 

でもその幸せはまたISによって壊されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日、家にサラリーマンの格好をした男がやってきた。

 

「こんにちは。

今お嬢ちゃん、一人かな?」

 

「はい、今家に誰もいません。」

 

お姉ちゃんもお父さんも仕事だった。

 

「おじさんはこういう仕事をしている人なんだ。」

 

そう言った怪しげな男は名刺を渡してきた。

 

「IS適正調査推進委員会?」

 

「うん、国から委託されて調査の推進を行ってるんだ。」

 

私は愛想笑いを浮かべながら断ることにした。

 

「私、ISに興味ありませんので。

調査をする気はありません。」

 

「でも万が一代表候補生に選ばれた時の恩恵には

興味があるんじゃないかな?」

 

「恩恵ですか……」

 

私が真っ先に想像したのは栄誉とかそういうことだった。

 

あれだけ人気なのだ。代表候補生でも周りにちやほやされるだろう。

 

もちろん、ISのことで褒められても嬉しくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……代表候補生には多額の手当てが出るんだよ。」

 

その男がこの発言をした時、私はどんな顔をしていたのだろう。

 

男は私の返事を待たずに続けた。

 

「この家、借金してるよね?」

 

私は顔を下に向けた。

 

「まっ、あくまで希望で強制ではないのけど

一度、調査だけでもいいから考えてみない?」

 

その言葉を聞き終わったとき、

 

私の中に渦巻いていただろう様々な感情は消えてしまい、

 

なにも覚えていない。

 

ただ惨めさだけが私の心にべったりとついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉さんにもお願いねと言って、

 

その男はIS適正調実施要項を置いていった。

 

姉と相談した結果、行ってみることになった。

 

私達にとってそれは苦渋の決断ではあった。

 

私も姉も直接的にISの文句は言ったことはない。

 

逆に言えば、あれだけ流行っている

 

ISに関して会話が一切なかったということでもある。

 

私達はこの決断をした時に

 

表情からお互いのISに対する憎しみを確認しあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな公民館のホールで行われたその適正調査には

 

夢を見ている子たちが集まっていた。

 

「さゆか、私からやるね。」

 

「ああうん。」

 

私は曖昧に返事をした。

 

私はこの気持ち悪い空間に居るのが辛くて何も考えらていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉が検査を終わり帰ってきた。

 

姉はどうやらIS適正がCだったらしい。

 

低くはないが特別に高くもないそうだ。

 

姉がCなら私はもっと低いだろうな。

 

私はそんなことを考えながらスキャンフィールドに乗った。

 

……

 

……

 

……短い検査のはずなのに終わってからしばらく何も言われなかった。

 

私は不安を感じた。

 

少し興奮した調査員が私を別室に呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椅子に座らされた私の前の調査員はすごく笑顔だった。

 

「おめでとうございます。

あなたは適正A-ですよ!」

 

「はぁ。」

 

私にはなにが起こっているのか分からなかった。

 

いやAが相当高いというのはなんとなく知っていたけれど、

 

なにもできない私にそんな能力があるように思えなかった。

 

夢か何かを見ているのではないだろうか。

 

私は膝に置いていた手で足をつねった。

 

……痛い。

 

現実だった。

 

「どうですか、代表候補生になってみませんか?」

 

私は答えに窮した。

 

「すみません、私も妹もISには興味ありませんので。」

 

私の代わりに返事をしたのは姉だった。

 

姉の目は必死だった。

 

「……えーと、代表候補生になられた場合ですね、

以下のような手当てが国から与えられます。」

 

その女は姉の返事を無視するように紙を差し出した。

 

姉の必死な訴えは軽く扱われた。

 

数ある項目の中から私の目についたのは四十万という数字だった。

 

手当てが月四十万出るらしい。

 

お父さんとお姉ちゃん二人の給料の合計を越えた額だった。

 

「ですから妹はやるつもりはありません。」

 

姉は語気を荒くして答えた。

 

私の頭の中には400,000という数字が駆け巡った。

 

どんなに生活が楽になるだろう。

 

お姉ちゃんは高校に行けるようになる。

 

お父さんも無理しなくてすむかもしれない。

 

それに借金のことだって相談すればなんとかしてもらえるかもしれない。

 

私は顔を上げた。

 

「私、代表候補生になります。」

 

「さゆか、何言っているの?」

 

お姉ちゃんが私の方を見る。

 

その目には涙を浮かべていた。

 

私は姉の涙を受けて、自分の決意が揺らぐのが分かった。

 

でも……ここで断る訳にはいかなかった。

 

「お姉ちゃん、私に任せて。

今までずっと迷惑かけていたけど、私頑張るから。」

 

調査員は笑顔で言った。

 

「ええ、さゆかさんならきっと良い操縦者になれますよ。

一緒に頑張っていきましょう。」

 

私はこの時知らなかった。

 

いや知っていたのかもしれないが興味がなくて忘れていた。

 

日本には華蛇櫻という同い年の代表が既に居たことを。

 




お疲れ様でした。

偶に前書きみたいに軽いノリで

紅侍がキューピッドやったら

それはそれで面白いと面白いんじゃないかなぁと思います。

とはいってもそんなことしなくても原作的には箒が勝ちそうですけどね。




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