シャドウ   作:ゆばころッケ

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一夏「ちょっと待ってくれ。
   前回の前書きに異議がある。」

紅侍「?」

一夏「前書きって俺と紅侍メインじゃなかったのか。」

紅侍「黙れ、ひとなつ!」

一夏「!?」

紅侍「お前、名前をうつ時いちいち
   ひとなつって書かなきゃいけないんだよ!」

一夏「紅侍、何言って?」

紅侍「これで分かったか?
   登場人物が俺らオンリーの場合、
   メタ、ホモ、シスコンの三択しかないんだ。」

一夏「なんて貧弱な発想なんだ……」



三 さゆか ISと紅侍

IS学園の入学式では幸逆君の隣だった。

 

はぁ、ここまでやる必要あるのかなぁ。

 

席も隣、部屋も隣で、趣味嗜好も合わせた訳だ。

 

私は彼の横顔をなんとなく覗いて見た。

 

なんだか疲れた顔をしては居るけれど……

 

うーん……写真よりは格好いいかな。

 

まあそんなことどうでもいいか。

 

私の意志なんて関係ないのだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新学期の最初の定番は自己紹介である。

 

クラスメイトが次々と自己紹介していく。

 

政府を通してクラス全員を把握している

 

私にとっては情報との齟齬を確認する時間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

「ISが昔から好きで、今は乗ることが楽しくて仕方ありません。」

 

幸逆君は自己紹介でこう言った。

 

資料を通して知っていたけれど、本当にIS好きなんだ。

 

IS好きな人ならたくさん見たけれど彼ほどはなかなか居ないんだろう。

 

あぁー……本当に仲良くできるのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしくお願いします。」

 

私は定番の締めを言って自己紹介を終えた。

 

私が自己紹介で述べた趣味、好物は幸逆君に合わせたものだった。

 

幸いなのは学園に居るならISが好きなんてことは

 

わざわざ述べなくていいとの判断で

 

ISが好きだなんて言わなくて済んだことだろうか。

 

わざわざ言った幸逆君は……

 

 

 

あっ、目が合った。

 

とりあえず笑っとけ。

 

 

 

あっ、照れた。

 

まあ私がこの役に選ばれてしまった理由の一つに

 

幸逆君の好みに私が合っているじゃないかということもあったらしい。

 

とりあえず首尾は上々といったところなのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、華蛇さんから連絡があり、

 

幸逆君が一人で訓練しようとしているはずだから、

 

捕まえて一緒に訓練したらどうかとの提案(命令)があった。

 

訓練機の用意とかは華蛇さんの方から話を通しておいてくれたらしい。

 

 

 

 

 

幸逆君が見つからなかったらどうしようかとも思ったが案外楽に見つかった。

 

なんか挙動不審だなぁ。

 

私が訓練に誘うと彼は私を熱心だと言った。

 

私はやれることはやっておかないと答えた。

 

私がISに熱心ねぇ……

 

確かに私は熱心だ。

 

それは生きるためであってISに熱心な訳ではない。

 

私は気を紛らわすためにノビをしたのだった。

 

 

 

 

 

アリーナに着く。

 

操作経験について聞かれて、日本代表候補生であった過去はなかったことにした。

 

日本政府から黙っておくように言われたからだ。

 

私と日本政府の関連をなるべく匂わせたくないとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

幸逆君は私に隠す様子もなく、専用機を見せてくれた。

 

専用機を見るのも一応仕事なのでありがたい。

 

にしてもなんか上手だなぁ。

 

私は候補生時代に候補生見習いの子のIS体験を手伝ったことがある。

 

一日簡単に訓練した後、試合をするのだが、

 

その時に将来のライバルにならないように

 

徹底的にうちのめすのがお約束なのだ。

 

そういう体験をさせられる子はISランクだけで即候補生にできない子達、

 

つまりはランクC、よくてランクBなのだ。

 

だからこの新人いびりは政府からも黙認している。

 

基本的に候補生同士は競い合うものだったしね……。

 

……そう考えるとIS学園は少し平和ボケしているよなぁ。

 

とにかくそういう訳で初心者の動きと弱点は

 

ある程度分かるつもりだったんだけどなんか苦戦させられてる。

 

 

 

 

 

私は光の強いレーザーを目に向かって放った。

 

初心者はISの五感の強化に喜びはするけれど、

 

この手の脆さにはにぶいものだった。

 

ちなみに国際大会ではこういう手段をとることはあっても

 

ISのイメージをあまり下げたくないからか、

 

説明はされないことも多い。

 

となるとISファンの彼にも通じる手段のはず。

 

「おっ、そう来るか!」

 

今の手は嫌われるようなやり口なんだけどな。

 

なんで喜んでのかなぁ。

 

あまりこういう手段は控えるつもりだったけど、

 

新人に負けたら只でさえ低い私の評価がどうなるか分かったものじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……勝てなかった。

 

いや勝ちを譲るつもりではあったけれど、本気でやって負けるのは悔しかった。

 

ただ訓練の上手く行かない悔しさとは少し違う。

 

私の落ち込む様子を見て幸逆君は励ましてくれた。

 

「そんなことないって。射撃とかすごくうまかったし。」

 

「本当にそう思う?」

 

「本当だって。俺の星の欠片がなければすぐに勝負は決まってたよ。」

 

「励ましてくれてありがとう。幸逆君。」

 

私はどうして私が感じた悔しさがいつもと違うのかが分かった気がした。

 

私はISが嫌いだ。それは間違いない。

 

だからISに乗っていても楽しくないのは当たり前だと思っていた。

 

それゆえ楽しくない理由なんて考えたことなかった。

 

でも今日の試合をして分かった。

 

楽しくない理由は私だけにあった訳ではなかった。

 

私と訓練をしたIS候補生も楽しんでいなかったのだ。

 

では相手が心の底から楽しんでいたらどうなるのか?

 

 

 

どうだったのかなぁ?

 

 

 

 

 

落ち込んだ私を励ますようではあったが、

 

ISに関しての褒め言葉で少しも不快にならなかったのはこれが初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も一日を終えて部屋に帰る。

 

一人部屋というのは何日経っても慣れない。

 

いつも家族と一緒だったからかな。

 

日本政府と連絡を隠れて取りやすくするための

 

一人部屋だから仕方ないのかもしれないけど。

 

あぁ、今日も連絡とらなくちゃ……

 

 

 

 

 

 

 

「報告は以上です。」

 

「毎日ごくろうね。

あなたもあんな小僧の相手なんて嫌でしょう。」

 

「はぁ。」

 

この人は男性を見下している人の典型だ。

 

私の苦労をねぎらっているというより、

 

男性のためになにか策を弄する上の方針が気に喰わないんだろう。

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四月の半ば、私は紅侍、織斑君、セシリアさんと一緒に訓練している。

 

「だから私が一夏さんに対して、

40度の角度でレーザーを放ったわけですから……」

 

セシリアさんが織斑君に対してグダグダ説明中している。

 

「いつもあんな感じなの?」

 

「感覚派の一夏にあれは合わないよなぁ。

まあ協力してくれている訳だし、あまり文句は言えないけどさ。」

 

二週間ぐらいつきあって思ったことだけれど、

 

紅侍は織斑君に対して少し世話焼きなところがある。

 

そのせいで一部の女子からホモ扱いされている具合だ。

 

まあ私に対して最初の頃はよく照れていたからそんなことはないと思う。

 

……思う。

 

 

 

 

 

「おーい。一夏、オルコットさん。

今日は模擬戦でもしないか。

せっかくさゆかもいることだし、

いつもと違うメンバーとも戦っておいた方がいって。」

 

織斑君とセシリアさんの訓練が

 

上手くいってなかったので紅侍が提案する。

 

「おお、そうしようぜ。」

 

「ちょっと、まだ私との訓練が済んでいませんわ。」

 

「まあまあ、一夏は実際に動いた方が理解できるって。

一夏、オルコットさんに言われたことを忘れずにやれよ。」

 

「仕方ないですわね。

私に言われたことをしっかりやるというなら構いませんわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで幾度か模擬戦をした後、

 

今は織斑君と紅侍の模擬戦をやっている。

 

男性操縦者同士の試合ということで

 

周りの生徒の注目が一気に集まる。

 

「織斑君、頑張って!」

 

「白式ってやっぱりかっこいいわ。」

 

「さすが千冬様の弟ね。」

 

……

 

まあ知っていたことだけれど、紅侍は織斑君と比べると人気がない。

 

二人は男性操縦者という光を持っている。

 

でも二人は違う。

 

例えるならば織斑君は太陽で、紅侍は月だ。

 

男性操縦者という光をなくしても、織斑君は輝くことができる。

 

しかし紅侍は輝けない。

 

反射する光がなければ月は輝けないから……

 

 

 

なんちゃって。

 

なんだか恥ずかしくなってきた。

 

ドカーン!

 

あっ、織斑君が壁に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、紅侍は昼休みが始まると教室をさっさと出て行ってしまった。

 

こういうことは偶にある。

 

一応日本政府に報告したら、

 

きっと篠ノ之博士と連絡しているだろうから

 

そういう時はなんとしてでも探し出せと言われた。

 

ただすぐついて行くと、必ず気づかれてしまってごまかされてしまう。

 

そのため今日は時間をおいてから探してみることにした。

 

普段行かないところまで歩き回る。

 

おっ、居た居た。

 

窓から校舎裏に居る紅侍を見つけた。

 

ここは二階で、紅侍の居るところまで向かうには時間がかかる。

 

そこで現地に向かうのは諦めて、私はなんとなく紅侍を見ていた。

 

何もせず立ち尽くしていた紅侍だが、その表情はころころ変わる。

 

こういう時は篠ノ之博士と通信しているのではないかというのが、

 

織斑先生の考えだと政府が言っていた。

 

顔を見ているとなんとなく

 

篠ノ之博士の尻にひかれているというのが伝わってくる。

 

うーん、苦労しているんだろうな。

 

しばらくすると表情が少し柔らかいものになった。

 

見たことのない表情だったので少し驚いた。

 

へぇ……あんな顔もするんだ。

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紅侍ってさ、両親はどんな人なの?」

 

日本政府から重要人保護プログラムで

 

会えなくなっているという話は聞いていた。

 

そのため家族の話はむしろしない方がいいとまで言われていた。

 

でも私が聞きたかったから聞いてみた。

 

……紅侍との関わりは政府や華蛇さんの言いなりが多かった私が

 

こんなことをするなんて自分でも意外だった。

 

「あっ、えっと……

ああ。良い人達だよ。」

 

少し戸惑った後、その後は笑いながら紅侍は答えた。

 

「少し過保護というかあれなとこあるけど、

俺のことを大切に思ってくれているし、

俺がISに詳しいのも両親の二人が

たくさん本買ってくれたからっていうのもあったし。」

 

懐かしむ様子もあり……

 

あっ

 

「さゆか、どうかした?」

 

「なんでもない、なんでもないよ。」

 

またあの顔だ。

 

あの柔らかい表情……。

 

……

 

私は何を考えていたのだろう。




お疲れ様でした。

後一話で番外編終了します。

できれば土曜か日曜にはあげたいです。



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