シャドウ   作:ゆばころッケ

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私の名前は更識楯無。

今二人目の男子操縦者の背後に居るの。

……

彼は危険人物。

篠ノ之博士とつるんで何をしでかすか分かったものじゃないから

このような監視を……




櫻「なにやっているんですか、会長さん。」

楯無「げっ、櫻ちゃん。」

櫻「そんなに露骨に嫌そうな顔しなくてもいいじゃないですか。」

楯無「私はね、からかうのは好きでも、
   からかわれるのは嫌いなの」

櫻「今日はまだなにもしてませんよ。」

楯無「あなたねぇ、その態度が既にからかっているじゃない。」

櫻「そうですか?
  それよりいいんですか?」

楯無「何が?」

櫻「尾行。」

楯無「あっ。
   ああああああああああああ。」

櫻「……廊下では静かにしましょうよ。
  会長さん。」

楯無「あぁ、もう頭にきたわ。
   今日こそ決着をつけるわよ。」

櫻「えぇー。会長さんには敵いませんよー。」

楯無「そんなこと言って私との模擬戦に一回でも本気出したことないじゃない。」

櫻「まあ会長さんのISは私のISに対して相性いいですし、
  実力を出してないように見えるだけですよ。」

櫻「あっ、そろそろ簪の所行かなきゃ。
  失礼します、会長さん。」

楯無「あぁ、先約があるなら仕方ないわね。
   行ってらっしゃいって……
   今簪ちゃんの名前出した?」

櫻「どうでしょう?
  とにかく失礼します。」

楯無「ま、待って」

櫻「待ちませんよー」

楯無「待ちやがれぇえええええええええええええ」


四 さゆか ISと私

最近、紅侍がIS操縦を楽しんでいない気がする。

 

初めて紅侍と模擬戦をした日、

 

感じた不思議な悔しさは少しずつなくなっていった。

 

それは慣れかもしれないけど……。

 

でも今見ているクラス対抗戦だってそうだ。

 

焦りは感じるけど、楽しさといったものはあまり感じられない。

 

彼が何に焦っているのかは分からない。

 

でも……そんなんじゃあ、いつか壊れちゃうよ。

 

私と違って彼はISが好きなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス対抗戦が意外な形で終結した後、

 

紅侍が事件の捜査のため呼ばれるまで、私は紅侍の手当てをしていた。

 

あーあ……今回の件について

 

何も感知できなかったことも八つ当たり込みで文句言われるんだろうなぁ。

 

部屋に帰るといきなり日本政府から連絡が来る。

 

「今、大丈夫?」

 

定時連絡の時間は必ず部屋に一人でいなければならない。

 

今はその時間からは外れている。

 

「問題ありません。」

 

「っそ。

じゃあ用件を話すわ。

今日からあなたと生意気な小僧が一緒に住むワケだけど」

 

!?

 

「な、なにを言っているんですか?

紅侍が私と同じ部屋にってどういうことですか?」

 

「あら、言ってなかったかしら。

まあとにかくそういうことだから。

今の内に準備しといて。

後これからの定時連絡は……」

 

 

 

 

 

 

 

だからやりすぎなんだよっ。

 

あーあ……同じ部屋とか……

 

いや常識的に考えてありえないよ。

 

絶対迷惑かけるし、紅侍も嫌だろうな。

 

転校生が来るかららしいけど、一つ部屋が空いているというのに……。

 

話によると織斑先生が転校生の一人を知っていて、

 

その性格から一人部屋にした方がいいという無理を通したらしい。

 

紅侍か……

 

まっ今更よく知らない子と同室にされるよりはましかな。

 

……紅侍も喜んでくれるのかな。

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺と一緒に暮らしてくれるか?」

 

紅侍は照れながら言った。

 

ようやく言ってくれた。

 

一緒に暮らすのが嫌というより

 

私の事を心配してくれている感じではあったけれど……

 

それでも自分から言ってもらえないと不安になるし悲しい。

 

「……うん、始めからそういう風に言ってくれたら嬉しかったかも。」

 

私の顔は少しにやけていたのかもしれない。

 

口ではちょっと素直になれなかったけれど

 

一緒に暮らそうというその言葉が聞けて本当に嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日曜日、紅侍は出かけようとしていた。

 

政府にはこういう時になるべくならついていけと言われているので

 

とりあえず話してみたけれどいろいろと言い訳をして断りまくりだ。

 

いつもの私なら諦めるところだけど、

 

同じ部屋になってテンションの高かった私は諦めなかった。

 

「実は……今日両親に会いに行くんだ。

 重要人保護プログラムとかなんとかでなかなか会えなくてね。

 だから一緒に行くのはまた今度でいいかな?」

 

……家族のことまで話させてしまった。

 

なんだか申し訳なくなってきた。

 

あの柔らかい表情なんて欠片もないから一発で嘘と分かる。

 

それにそういう事情なら日本政府から私に話が入っていると思う。

 

……

 

ごめんね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ弁当交換しようよ。

前紅侍とそんな感じの約束したし。」

 

私のこの発言が発端となって面倒を起こしてしまった。

 

これは混んでいる食堂を避けて

 

屋上で弁当を持ちあうということになったから言ったことなのだが……

 

この話を聞いた華蛇さんから

 

せっかくだから紅侍に私の弁当を食べてもらったらという話があったのだ。

 

……

 

くじで誰の弁当を食べるか決めるのだが、

 

その引く順の最後を私、紅侍、華蛇さんにする。

 

私は私の番が回ったら、

 

残っているくじ二つともとる。

 

くじが二つしかないのは元から私の名が書かれたくじがないからだ。

 

そして私は制服の内側に仕込んだくじ二つを箱の中に落とす。

 

このくじは二枚とも私の名前が書かれている。

 

私はくじ箱から腕を引き抜き、胸の前に手を持ってくる。

 

そしてくじを片方袖の中に落とす。

 

……後は華蛇さんが皆の弁当が誰のものになったかを確認して

 

余り物を自分の弁当にすればいいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「味大丈夫?」

 

「いや俺の好みに合いすぎて驚いてる……。」

 

紅侍は微妙な顔をしている。

 

……やりすぎなんだって。

 

紅侍の好みを知らされ、

 

料理本も出している華蛇さんに徹底的に教え込まれた。

 

逆に変に思われているんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

政府と連絡を取るのに人気のない場所に今は居る。

 

「あなた、なにやっているの?」

 

最近私がおかしい。

 

「あの小僧に全く魅力がないのは分かるけれど、

せっかく同室なんだからもっとアピールしていきなさい。」

 

その通りだ

 

同室になってから紅侍にアピールしていかなければならないのに上手く行かない。

 

なんとなくよそよそしくなってしまうのが怖くて、

 

男女というよりは友達として接してしまう。

 

おかしい。

 

私は家族のために紅侍に好かれなければならないのに……

 

「はい、頑張ります。」

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私って単純なんだな。

 

私は紅侍のことを本当に好きになっていたんだ。

 

きっと眩しい太陽達に混じって、

 

光を持たない彼が頑張るのが好きだ。

 

家族のことになると表情の変わる彼が好きだ。

 

だからこそ今の状況が苦しい。

 

私は本心から彼を愛していても

 

それはきっと偽りの愛としか思われないのではないか。

 

もちろん日本政府のことがばれなければ問題ない。

 

でも私に隠し通せるのかな?

 

彼への思いが本当になってしまったならば演技なんてできるのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと誰かの泣き声が聞こえた。

 

紅侍だ。

 

紅侍が泣いている。

 

人気のない場所に居るということは

 

彼も篠ノ之博士と連絡を取っていたのかもしれない。

 

彼がどうして泣いているのかは分からない。

 

でも私もますます悲しくなって声を出さずに泣いた。

 

泣いた理由は色々あるけれど、

 

私も紅侍を苦しませている

 

要因の一つであるというのが一番大きかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学年別トーナメント……

 

紅侍と組みたいけど……組めるのかな。

 

専用機持ちの紅侍は専用機と組みたいだろうし、

 

もし専用機持ちの誰かと組めなくても……腕のいい他の人と組むかも。

 

ああ、やっぱりだめかな。

 

さっき断った谷本さんからの誘い受ければよかった。

 

私が参加申込書を見つめながら悩んでいると、紅侍が部屋に入って来た。

 

「さゆか、俺と組んでくれないか?」

 

私はほっとした。

 

きっと組んでくれるとは思ったいたけど……。

 

でも選んでくれた以上は役に立たなきゃ……。

 

紅侍は感情だけで動かない人だ。

 

私を選んだのだって色々考慮した上でのことだろう。

 

……本当は理屈とか抜きにして信頼してもらえると嬉しいけど。

 

とにかく頑張らなきゃ。

 

ISが嫌いなことには変わりないけれど、

 

ISの訓練を積極的にやろうと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラと箒ペアとの試合が始まった。

 

箒さんがこっちに向かってくる。

 

私の役割は箒さんと戦うことだから好都合だけど、

 

接近戦になったら負けてしまう。

 

紅侍がラウラと向かい合える状態になったのを確認してから

 

私は箒さんが近づけないように威嚇射撃を開始する。

 

その時、箒さんが急に加速する。

 

瞬時加速?

 

いやそんなスピードじゃない。

 

とにかく逃げなきゃ。

 

駄目だ。

 

いつもに増して動きが良い。

 

私と同じでISが嫌いな箒さんは基本やる気がない。

 

しかし今日は何かいつもと違ってやる気に満ちている。

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ、負けてしまう

 

負けたくない

 

どうして負けちゃうの?

 

剣道で全国とったからって

 

ISはほぼ初心者、その上訓練もあまりやっていない箒さんに

 

なんで私が負けなければならないの。

 

私がどんな思いで長い間訓練してきたと思っているの?

 

紅侍は呼べない。

 

紅侍に信頼されたい。

 

そのためには結果を出さなきゃいけないから。

 

意地でも勝って見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんなさい』

 

結局私は負けた。

 

箒さんは私のシールドエネルギーが

 

0になったのを確認するととっとと行ってしまう。

 

ああ待って、行かないで。

 

私はまだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、あと少し、あと少しなのに。

 

紅侍は負ける。

 

箒さんが邪魔した分を除けば勝てたかもしれない。

 

つまり私の分の足の引っ張りのせいで負けるのだ。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

辺りを濃い煙が包む。

 

これはヘビー・スモーカー?

 

私はあの残虐なラウラが煙に隠れて

 

紅侍を傷つけようとしているのではないかと思った。

 

だから私は迷わず煙に突っ込む。

 

だがそこで私が見たものは私の想像とは逆だった。

 

全身装甲の黒いISを纏った紅侍が

 

ラウラをキャプチャーチェーンで縛り付けていた。

 

そして首元にプレサイスを押し当てる。

 

顔は見えない。

 

でもなんとなく分かる。

 

紅侍は道を踏み外した。

 

その圧倒的な力が代償もなく手に入る訳がない。

 

私なんかが関われない遠くに行ってしまった。

 

私がやるべきだったのは紅侍の役に立つことじゃなくて、

 

紅侍にISの楽しみを思い出させてあげる事だったんだ。

 

私にそれができるかは怪しいけど、

 

でもそうすればきっとこんなことにはならなかった。

 

ごめんなさい、ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅侍が凶行に走ることはなかった。

 

なにか戸惑った後、シャドウを纏い直して自分の首に裂空を突き立てた。

 

紅侍が倒れる。

 

首からは血が流れる。

 

「紅侍、紅侍」

 

その時の私の頭には紅侍のことしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合後、私は自室に帰りただただ泣きじゃくった。

 

何が悲しいのかは分からない。

 

でも自分を責める気持ちでいっぱいだった。

 

どれくらい時間が経ったかは分からない。

 

いつのまにか紅侍が帰って来ていた。

 

試合について一言、二言話した後

 

「もしかしてずっと泣いてた?」

 

紅侍は私を心配してくれた。

 

私は小さく頷く。

 

「そんなに気にすることじゃないよ。」

 

それは嘘だ。

 

試合の勝ち負けに拘らないならあんな力には手を出さなかったはず。

 

「でも……でも」

 

だめだ、紅侍と目が合わせられない。

 

どうして……

 

まさか恐れているの?

 

私だって人を殺す兵器の開発に携わっている道を外した女だ。

 

なのに何故彼を恐れるの?

 

最低だ、私って本当に最低だ。

 

 

 

 

 

 

 

でも聞かなきゃ……

 

「だったら」

 

その次にISのことを言おうとしたら、彼は私を抱きしめた。

 

こんな時なのに胸の鼓動は速くなる。

 

だが

 

「大丈夫、大丈夫だから。

なにも心配いらないから。」

 

その言葉を聞いて私の心は一気に現実へ引き戻される。

 

そう、やっぱり私って何もできない能無しなんだ。

 

紅侍のために私ができることなんてなくて、

 

紅侍に頼るしかないんだ。

 

「全部俺に任せてくれていいから。」

 

全部?

 

「『全部まかせていい』か……。

やっぱり紅侍はそうなんだね。」

 

全部……ね。

 

私のことをなにも知らない紅侍に全部任せていいというならば……

 

最も私も紅侍のこと、本当はなにも知らないのかもしれないけど。

 

「じゃあ一つだけお願いきいてくれないかな。」

 

やっぱり私は最低だ。

 

自己嫌悪は強くなり、紅侍の服を握る力も強くなる。

 

「俺のできることなら。」

 

できるよ、簡単にできる。

 

「私と付き合ってくれないかな。」

 

もしこの汚い告白が成功すれば、私は政府からの圧力に苦しまずに済む。

 

それに私は紅侍の篠ノ之博士関連の調査より、

 

紅侍を日本に縛り付ける役割だからあの黒いISについて報告もしなくてよくなる。

 

変な探りを入れて、仲を壊したくないって言いとおせばいい。

 

私の悩みの大体は解決だ。

 

……紅侍のことを本当に好きでなければ。

 

紅侍が私を見つめているのが分かる。

 

表情を見ようとしている。

 

でも紅侍の胸に顔を預けている今の状況では見えないだろう。

 

「俺で良ければ付き合おう。」

 

汚い告白は成功した。

 

「だから泣き止んでくれ。

もう苦しませないから。」

 

あはは……

 

ひどいよ、紅侍。

 

そんなこと言われたらもっと泣きたくなる。

 

好きな人と付き合えるのに私は全く嬉しくないんだよ。

 

あなたの優しさを受ける度に、

 

日本政府から命令された恋だと思うと後ろめたくなるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、紅侍。

 

私はもう幸せになれないと思うけど、

 

少しの間だけでも私に夢を見させてくれないかな。

 

後ろめたさを一時でも忘れるぐらい夢を見たいんだよ。




お疲れ様でした。

まず投稿遅れてすみませんでした。

近々IS10巻も発売しますし、

まだ2巻終了までしか書いていないので

もう少し頑張れればと思っているのですが、

どうにも……。









前書きは随分前から頭の中にはあった話です。

どっかで短編集みたいなおまけ回いれようと思っていた時期がありまして、

その中の一部にする予定でしたが、まあ……ペースがこんなんですので。

ちなみに櫻と楯無さんどっちが強いのかというと

死神の鎌なし櫻く楯無さんく死神の鎌あり櫻

ぐらいのイメージです。

櫻の使う武装の地獄の手がガムみたいなものなので

水蒸気爆発を使いこなせばいくらでもはがせます。

という訳で地獄の手で動きを制限できず、

ほぼ武装なしで戦うはめになるので相性は悪いです。










番外編終わって次回から三章です。

夏休みに入る前までが三章という予定です。

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