シャドウ   作:ゆばころッケ

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もしもISのヒロインが舞姫を読んだら

シャル「最低だよ、許せないよ、この男。
    エリスを愛しているなら残るべきだよ。」

セシリア(彼は地位を守るために苦渋の決断をした訳ですし……
     いえ、でも彼には守るべき地位はなく、
     彼の出世を望むお母様はお亡くなりになられたのですから。)

シャル「セシリアもそう思うよね?」

セシリア「ええ、そうですわね、そうですとも。」

ラウラ「そうか、私はエリスにも非があると思うが。」

シャル「どうして?」

ラウラ「見捨てるような男を選んだエリスが悪いのだ。
    それに愛しているなら追っかけていくぐらいの気概を見せなければだな。」

紅侍(……確か本当に追いかけたんだよなぁ。)


第五十話 海 どこまでも青く

 

『海に行くの?羨ましい。』

 

『なんで?』

 

『私、海が好きだから。』

 

俺はクロエさんと久々に通信していた。

 

シャルとラウラが転校してくる前、

 

束さんのところに行った時、彼女は元気がなかった。

 

俺と会話した後は彼女自身の力で少し元気になったが、

 

その後連絡を何回かとった時はいつも、返事は曖昧で会話は長く続かなかった。

 

ところが今日は久しぶりにクロエさんの方から連絡が来た。

 

『それまたどうして?』

 

『束さんが初めて連れてってくれたところが海だったから。』

 

『そうなんだ。

俺も海は好きだよ。』

 

束さんでもそういうことするんだな。

 

……俺も記憶にある中では初めての旅行は海だった気がする。

 

前世での話だが。

 

俺が今の世界で記憶にある初めての旅行は山だった。

 

両親が俺に満天の星空を見せたいという理由で

 

連れて行ってくれたのを覚えている。

 

二人とも元気だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺達は海へ行くためにバスに乗り込んだ。

 

一夏と一緒にバスの中に入り、

 

一夏と流れで同じ席に座ろうとしたら、何か寒気のようなものを感じた。

 

うっ……専用機持ちの闇は深い。

 

いや俺が隣に座ったら一番平和的解決だと思うんだけど。

 

だめだ、このまま隣に座ったら自由時間の時、

 

なにをされるか分かったものじゃない。

 

「あっ。

俺、忘れ物してたみたいだ。

ちょっと取りに行く。」

 

俺はバスから逃げ出した。

 

少し時間が経ってからバスに戻る。

 

後から来た俺は最後の方だった。

 

空いている席は見つからない。

 

一夏はシャルと座ったようだ。

 

本当は箒を一夏に隣に座らせた方が良かったのかもしれないが、

 

当の箒は櫻の隣でなんとなく楽しそうにしているのでよしとしよう。

 

「幸逆、さっさと座れ。」

 

「空いている席が見当たらないんですが。」

 

「岸原の横があいているだろ。」

 

ちなみに千冬さんの隣は山田先生だ。

 

千冬さんの隣を選択肢に入れる程、俺は追い詰められていた。

 

「俺にはその席が空いているようには」

 

バシーン

 

久しぶりに喰らったが、かなり痛い。

 

俺は諦めた。

 

「岸原さん、隣良いかな。」

 

「えー、幸逆君?

ごめんなさい、ちょっと無理です。」

 

それはこっちが言いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現地に到着した俺はふらふらとバスから出る。

 

いつも岸原対策にしていた耳栓を外された俺は

 

長時間近距離であのハイテンションに付き合わなければならなかった。

 

「うぐ、俺は……」

 

「紅侍、大丈夫か?」

 

一夏が心配して話しかけてくれる。

 

こんな馬鹿馬鹿しいことで心配をかける訳にはいかない。

 

「全然大丈夫。

体に違和感も感じないし。」

 

「……だめそうだな。」

 

一夏は呆れたように言った。

 

何がだめだったんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館の女将さんに挨拶した後、俺達は千冬さんに連行される。

 

「ここがお前らの部屋だ。

色々な問題を防ぐために私の部屋の隣だが、文句はないな。」

 

「「勿論ありません。」」

 

俺達は思わず敬礼して答える。

 

確か原作だと一夏と千冬さんが同室だったな。

 

まあ俺もいるしこれが妥当か。

 

部屋は随分と広かった。

 

うへー、こんなところ泊まったことないぞ、俺。

 

「紅侍、この後どうする?」

 

荷物をせっせと準備しながら一夏が言った。

 

「とりあえず海行ってから考えようぜ。」

 

たぶん一夏とは遊べないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ。」

 

「「……」」

 

黙っているのは箒と一夏。

 

溜息をついたのは俺だ。

 

海に向かう途中に箒が立ち止っていた。

 

一夏が話しかけると、箒が顎で示したのが

 

今俺達を困らせているウサミミだ。

 

間違いなく束さんのものである。

 

「対応はお前らに任せた。」

 

そう言うと箒はさっさと行ってしまう。

 

「紅侍、これどうする?」

 

「引き抜いたらどうだ?

俺は遠慮しとこうかな。」

 

俺が離れようとした時だった。

 

地面が大きく揺れたと思うと、地面から束さんが出てきた。

 

「じーくん、なんで冷たいのさ、

後いっくん、久しぶり―。」

 

「お久しぶりです。」

 

一夏が若干引き気味に答える。

 

まあ地面から人が出てきたらそうなるよな。

 

「どのくらい地面に潜ってたんですか?」

 

「えーとねぇ、束さん的には箒ちゃんを待っている時間は

待ち遠しすぎて永遠に思えるからわかんないなぁ。」

 

何だ、その返事……。

 

「ところで愛しの箒ちゃんはどこ?

ここには居ないのかなぁ。

今は二人に用はないからバイビー。」

 

「あっ、じーくんには後で用があるからー。」

 

そう言うと束さんはウサギなんて目じゃないぐらいの速さで去って行った。

 

「……紅侍って本当に束さんと付き合いがあるんだな。」

 

「そういえば三人で会うのは初めてだな。」

 

「束さんが箒と千冬姉と俺以外で人とまともに話すの初めて見た。」

 

「まぁ、実験対象として興味持たれてるだけだと思うけどな。」

 

……でも俺は束さんの言うことは信じることにしたんだったな。

 

「そんなことはともかく、早く海行こうぜ。」

 

俺は心の中に浮かんだ黒い染みを忘れるために一夏をせかした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暑いなぁ……。」

 

案の定人気者の一夏はとっととさらわれてしまった。

 

俺はなんとなく泳いで、泳ぎ疲れたので今は浜辺で寝ころんでいた。

 

「あっ、紅侍居た居た。

てっきり織斑君と一緒かと思ってたから探すのに手間取っちゃった。」

 

さゆかの声がした方を向く。

 

あっ……

 

「どうしたの?紅侍。」

 

あの時の白いビキニをさゆかは着ていた。

 

その姿は俺が想像していたより遥かに眩しかった。

 

「いやなんでもない。なんでもないよ。」

 

俺は思わず目を逸らす。

 

「なんか顔も赤いし大丈夫?」

 

「あはは……暑いからだろ。もう一回泳いでくる。」

 

さゆかが眩しくて直視できなかった俺は逃げ出した。

 

「あっ、待ってよ。

私も一緒に泳ぐから。」

 

あんな綺麗な子が俺の彼女なんだよな。

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがにくたくただ。」

 

「私も。

紅侍ってそれなりに鍛えてるんだね。」

 

「それなりってなんだよ。

さゆかも知っているように俺は元野球部だからな。」

 

一回戦負け、最後の年だけレギュラーだったとかは言わない。

 

「お二人ともお疲れ様。」

 

そう言って話しかけてきたのは鷹月さんだった。

 

手にはラムネを持っていて俺達に渡してくれた。

 

「ありがとう。」

 

「静寐、ありがとう。

ラムネなんて小学校の修学旅行以来だよ。」

 

俺達のお礼の言葉に少し笑みを返してから鷹月さんは言った。

 

「そういえば、幸逆君はこんな時も眼鏡つけてるんだね。

泳いでるとき外れたりしない?私が預かっておこうか?」

 

俺は時々鷹月さんが怖くなる時がある。

 

彼女は俺が気を抜いていそうな時を見計らってから

 

こういうなにか意図を感じる質問をぶつけてくることがある。

 

さゆかに対する俺の疑念が確信に変わらないのは

 

さゆかがこういう質問をすることは滅多にないからだろう。

 

「ああ、大丈夫。

それにもう泳ぐのは飽きたからやめるよ。」

 

「そうなんだ。じゃあ向うでスイカ割りでもどう?」

 

「いいね、それ面白そう。」

 

さゆかは乗り気のようだ。

 

スイカ割りか、見物なら問題ないがやる方となると

 

眼鏡を着けている訳にもいかなくなるだろう。

 

俺はスイカ割りに興じている面々を見る。

 

「……じゃあやろうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に挑戦したのは一夏だった。

 

「一夏、左だ、左。」

 

ちなみに嘘だ。

 

「おりむー、匂いだ。匂いで判断するんだ。」

 

どうでもいいけど、のほほんさんはその着ぐるみみたいな水着暑くないの?

 

「一夏さん、一夏さんから見て半時計方向に30度、

距離にして6mぐらいですわ。」

 

こんな時までそんな説明なのか。

 

「一夏―、あんた一人目なんだから

当てても却って空気読めてないことになるわよ。」

 

ある意味一番辛辣な言葉だ。

 

「一夏、頑張って。僕は一夏の味方だからね。」

 

なんかあざとい。

 

「嫁よ、こういう時私が教えた生存術を生かすんだ。

五感の内二つまで失っても体を自由に動かす術を教えたはずだ。」

 

あんたは何を教えているんだ。

 

「一夏、スイカを粗末にしないように綺麗に真っ二つにしてね。」

 

ハードルを上げたのは櫻だった。

 

 

 

 

「おりゃー。」

 

一夏の気合も虚しく、棒は空振りに終わった。

 

一同が笑う。

 

「くそー、というか紅侍嘘ついてたな。」

 

俺を信頼したのが仇となったな。

 

「織斑君残念。

じゃあ次、幸逆君で。」

 

さてこれ以上男子の名誉を傷つける訳にはいかない。

 

(俺のせいで一夏が失敗したことは三歩歩いて忘れた)

 

俺は櫻に眼鏡を渡すと目隠しをした。

 

そう俺がこのスイカ割りに参加したのは櫻がいたからだ。

 

櫻なら渡してもたぶん問題ないと判断したのだ。

 

さあこれで憂いはなくなった。

 

いざ、勝負。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで一夏が本当の事言って、さゆかが嘘つくんだよ。」

 

俺も失敗に終わった。

 

「自分がやられて嫌なことは人にするなって言うだろ?」

 

「いやぁ、私が言えば紅侍が騙されるからって皆が言うから。

信じてくれてありがとうね。」

 

かわいく笑ってもごまかされないぞ。

 

可愛さあまって憎さ……

 

 

 

 

ないな。うんごまかされとこう。

 

「次、次、スイカバスターこと東洋騎士りこりんがやります!」

 

「いやここは七月のサマーデビルと呼ばれた私こそが……」

 

 

 

 

 

 

そんな感じでスイカ割りは進んだ。

 

ちなみに最終的には櫻が割った。

 

専用機持ちは一夏の嘘に騙されて失敗、

 

他の子達もそれぞれの友人やシャル、のほほんさんに騙されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかったな。」

 

「だな。」

 

海からの帰り道、俺は一夏と共に歩いていた。

 

夕日が後ろから差していて、

 

名残惜しい気持ちが駆り立てられる。

 

なんだかんだいって結構楽しめた。

 

そんな時突然束さんから通信が入る。

 

『じーくん、夕飯の時間にちょっと話があるから浜辺にバックしてくれる?

今の時間なら誰もいないと思うから。』

 

『分かりました。』

 

……このまま平和に今日が終わるということはなかったようだ。

 

「一夏、俺海に忘れ物したから取ってくる。」

 

「今日は忘れ物ばっかりだな。俺もついてくよ。」

 

「いや、夕飯に行っててくれ。

すぐ戻れると思うから。」

 

「いやでも……」

 

うーん、結構ねばるな。

 

おっ。

 

「おーい箒さん。

一夏が旅館の位置忘れたから一緒について行って欲しいってさ。」

 

「あっ、おい紅侍。」

 

「じゃあ、またな」

 

俺は走ってその場を後にした。

 

遠くで

 

『旅館ならここから見えているだろ、この軟弱者。』

 

『いや違う、紅侍が勝手に』

 

なんてやりとりが聞こえてきたが気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浜辺に一人立っている束さんは

 

その服装のせいもあって随分と非現実的なものに見えた。

 

「何の用ですか?束さん。」

 

「いいや、ちょっと明日やってもらいたいことがあってね。

その打合せみたいなものかな?」

 

束さんはそう言うと、笑みを浮かべた。

 

俺はその顔を見た時少し不安になった。

 

やっぱり平和では終わらないらしい。

 

俺は顔を上げて、束さんの後ろの夕日をじっと眺めた。

 




お疲れ様でした。

前書きはテスト回書いている時に思いついた題材です。

高校生の時に舞姫をやったのを思い出したので。

でも外国人が学ぶ国語として扱うには、

古文に近い文章なので不適切かもしれませんね。

ちなみに自分は豊太郎のことを真っ向から否定できるほどの度胸はありません。

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