谷本「まあまあ、きっとあれだよ。
帰りたくなって帰ったとか。」
さゆか「普通、連絡いれるよね……」
谷本「携帯の電源切れたとか」
さゆか「携帯は部屋に置きっぱなしだったって。」
谷本「えーと……どこかで寝てるとか?」
さゆか「探してるとき、私、張り裂けそうなくらい叫んだんだよ?」
谷本(なんかその疑問形怖い。
うーむ……この子ヤンデレの素質ありそう。)
さゆか「やっぱりもう一回探してこようかな……」
谷本「ストップ、ストップ。
危ないし、こんなに暗くちゃ何も見えないよ。
明日、探そう。
ほら、幸逆君だってさゆかが危険な目に合うのは避けてほしいと思うはずだよ。」
さゆか「……」
谷本「えっと、さゆか?」
さゆか「やっぱり私じゃ紅侍の力になれないのかな。
任せていいって心配もしちゃいけないのかな。」
谷本(ううん?話が分からなくなってきたぞ。)
さゆか「そうだよね。ダメな私じゃあ力にはなれないよね。」
谷本(こ、これは久々のネガティブスイッチON状態!!)
谷本「さゆか、
さゆかは幸逆君の力になってないなんてことはないよ。
幸逆君ってさ、結構、織斑君と自分の扱いの差を気にしているとこあると思うんだ。」
さゆか「……そうだね。
本人そういう素振り隠そうとしてるけど、ばればれだよね。」
谷本「皆(私含めて)、織斑君>>>>幸逆君って感じでしょ。
でもその中でさゆかだけは違った。
それは幸逆君の中で大きな励みになってきたと思うんだ。
だから自信もって!」
さゆか「うん、アリガトウ。
そう言ってもらえてとてもウレシイヨ」
谷本(あっ、だめだ、これ。
目が死んでる。)
千冬「少し失礼するぞ。
夜竹、ちょっと来い。」
さゆか「……はい」
三十分後
谷本「あっ、さゆかお帰りなさい。」
さゆか「私、もう寝る。」
谷本(目が益々死んで、顔が更に青いんだけど……
恐るべし千冬様。)
さゆか(織斑先生の話では篠ノ之博士が紅侍をさらったらしいけど、
……篠ノ之博士は本当に紅侍を大切にしているのかな?
昔聞いた話ではそう言っていたけど……
もし私が……日本政府関係者でなければそういうことも
躊躇なく紅侍に訊けたのかな?)
「う、ううん。」
「紅侍君、お目覚めかい?」
「シンさん、えーと
おはようございますで合ってますか?」
「うーん、微妙だね。
朝モックがギリギリ食べられる時間ではある。」
「はぁ。
ところで今どういう状況ですか?」
辺りをキョロキョロ見回す。
なんか暗くて狭い場所だ。
俺は椅子に座っていて……
椅子といっても、車の座席のようなものに近いかもしれない。
シンさんが座っているのはいわゆる前部座席で、
その前には色々な計器やらスイッチやらがあった。
「そんなことはともかく、君は半日以上寝ていたんだ。
お腹が空いただろう?」
シンさんは俺にカロリーミートを投げ渡す。
袋の封は切られていた。
「ありがとうございます。」
半日以上か、成程確かにお腹は空いている。
お腹が空いている時はどんなものでも美味しいもんだ……
ってあれ?カロリーミートってこんな味だったか?
「シンさん……えーとここどこですか?」
「まあまあ、そう結論を焦るものでもないよ。」
「そういうものですか……。」
にしてもなんか熱いな、ここ……。
「そういうものさ。
それより紅侍君、最近デミスⅢ、つまり君のメガネを誰かに預けたかい?」
「櫻に一回。」
「ああ、彼女か。
通りで手がこんだ細工だった訳か。
いいかい、彼女のことはそこまで信用しちゃいけないよ。
彼女が純粋に君のために動くことはないのだから。」
『純粋に』か、それは分かる気がする。
櫻が俺のためにしてくれることは巡り巡ってきっと彼女のためになることだ。
「細工ってなんですか?」
「ISが一時的に機能しなくなるように細工されてたんだよ。
君が寝ている間に俺が直しておいたから心配は要らないがね。」
「そんなことを櫻が?」
いやなにもおかしくはない。
むしろ櫻だからといって預けた俺が間違っていた。
「今度は誰にも渡しちゃいけないよ。」
……誰にもか。
俺が食事をし終ってからしばらく経った。
シンの方から一向に説明がないのに苛立った俺は催促する。
「シンさん、っで結局今どういう状況なんですか?」
「今から君に一仕事してもらおうってところかな。」
一仕事?
うん?
ああ。そういえば束と会っていた記憶がある。
「俺、もしかして束さんに気絶させられましたか?」
「そうなるね。」
ちっ、相変わらずむかつくやつだ。
「はあ、俺、その仕事やらなくていいですか?
むしろ束さんを殴りに行きたいです。」
シンは微笑を浮かべた。
こっちは本気でムカついているんだ、
なのになんで笑っていやがる。
「まあまあ、君が怒るのも分かる。
ただその怒りはIS戦闘でぶちまかしてくれたまえ。」
「ああ、仕事ってそういう系ですか。
じゃあやります。」
……暴れたい気分だった。
「よし、それなら状況を説明しよう。
ここは海の底、潜水艦の中さ。
これから15分後に真上にやってくるやつを待ち構えていてね。」
「そいつをぶちのめすんですか?」
「ううん。
そいつは銀の福音という名で呼ばれる軍用ISでね、
束さんはそいつを一夏君と箒ちゃんに倒してもらおうと考えているのさ。」
ああ、例のヒーローを支えるってやつですか、そうですか。
「じゃあ一夏のサポートですか?」
「違う、違う。
今の君はそんな地味なことやりたくないだろ、
もっと派手でスカッとすることさ。」
「へぇ、それはよかったです。」
一夏のサポートなんて真っ平御免だ。
「日本政府から派遣された人が考えた作戦では、
銀の福音を倒すのは櫻ちゃんってことになっててね。
君に櫻ちゃんを倒して欲しいんだよ。
そうすれば一夏君と箒ちゃんが銀の福音を倒せるだろ?」
……ちっ。
「勝てると思えませんが。」
「なにを言っているんだい、君にはデミスⅢがいる。
それにだね、銀の福音と共闘するんだよ。
負けるはずないじゃないか。」
へぇ、あの軍用ISとか。面白いかもな。
原作じゃあ専用機持ち6人がかりでなんとか勝てた訳だし。
それに櫻にとって銀の福音との相性は最悪だ。
敵の動きを封じる地獄の手は光弾によって焼き尽くされる。
というのも地獄の手はガム状の物質だからだ。
「そうですね、勝てる気がしてきましたよ。
ククク……あいつには前々からむかついてたんですよ。
いつも上から目線だし、
以前あいつの振るった死神の鎌にびびらされたこともありましたし、
憂さ晴らしには最高の機会ですね。」
シンの口角が上がった。
「そう言ってくれると思ったよ。
そうそう、戦闘区域には他のISがすぐには来られないよう煙を放つ予定だ。
その煙はISセンサーを大きく狂わせて視認以外で物を見られなくする。
最もその視認だって煙でかなり見づらいがな。」
ヘビースモーカーの強化版といったところか。
センサーで感知できなくなるなら、二対一という状況が最高に生きる。
背中をとればやり放題だ。
「ますます勝てそうですね。ハハハ」
「だろう?
煙をまくのはこのISだ。
それにこいつにも戦闘を手伝うよう言ってある。」
そう言ってシンさんは写真を空中投影した。
群青色と紫が混じった色をしたISだった。
「見たことないIS……。」
また束お手製だろうか。
「まあそうだろうね、そいつは特別だから。
それはともかく、デミスⅢを部分展開してくれ、
今から煙のデータを送る。
それがあれば紅侍君は煙の影響を受けないって訳だ。」
いよいよ負ける要素がねぇな。
俺はデミスⅢを部分展開する。
シンは俺のデミスⅢにコードを刺した。
「後、本任務の詳しい内容も送ったから確認よろしく。」
……円状に専用機を配置。
確かに一夏と箒が櫻の次に近い位置に居るな。
箒は知らないが、一夏なら命令がなくとも、
怪しい煙が巻かれた時点で駆けつけようとしてくるだろう。
……一夏が来る前に決着をつける
俺は深海でデミスⅢを展開してサクラとフクインが来るのを待つ。
上空では緩やかに煙が巻かれ始めていた。
『サクラ ガ シテイポイント ニ トウチャク シタ』
プライベートチャンネルを通じて機械のような音声が聞こえてきた。
『誰だお前?』
『ワタシ ガ ケムリ ヲ マイテイル』
『ああ、成程。』
『サクセン ドオリ フクイン ト サクラ ガ
タタカイ ハジメタラ セナカ ヲ オソエ』
『へい、へい。』
そうこう言っている内にフクインがやって来た。
行くぜ、デミスⅢ。
「分かってたけど、相性最悪。」
サクラはフクイン一体に苦戦していた。
今回も覇気がないぜ、サクラ。
あの時俺をびびらせた迫力はどうした?
俺はサクラの背中にケルベロスソードを使って斬りかかる。
「来ると思ってたよ。」
フクインの光弾を地獄の手で相殺しながら、
背中に鎌を回し、ケルベロスソードの三連撃を防ぐ。
「なにか仕掛けたね、この煙かな。
センサーが働いていない。」
サクラは俺の方に向き直った。
「さて、紅侍君。
君は2対1で私に今から負ける。
ケルベロスソードなんて随分と思い切ったものを使ったね。
そいつは使用者の限界を超えて、高速の3連撃を可能にするけど、
腕への負担が大きいから使用禁止になったはずだよね?」
サクラは死神の鎌で俺と撃ちあいながら、
背中についている砲台から地獄の手を放ち、光弾も上手くさばいている。
全身にある砲台、それがサクラの専用機ブラッディッドリッチの最大の特徴だろう。
「ククク、アハハハ。
その上から目線がいつまで続くのか、楽しみだよ、サクラ。
余裕ぶっているが、地獄の手の残量は大丈夫かい?」
言葉では強気だったし、勿論負けるとは思っていなかった。
ただ一つだけ気がかりなことがあった。
こいつはなんで見えていないはずの光弾も防げているんだ。
「生憎、地獄の手の量はたくさんあるんでね。
そうそう戦闘中余計なことは考えない方が良いよ。
私が光弾をどう防いでいるのか気になったんだろうけどね。」
サクラが急上昇する。
俺の目の前に多数の光弾が飛んできた。
俺は無理矢理背中を反らす。
「まあ答えを言うなら気配だよ。
ところでそのIS、やっぱりデミスか。
今のを避けるのは紅侍君には無理だよね。」
俺はその言葉にムカついた。
操縦者の俺ではなく、デミスが避けたというようなその言葉に。
それに気配を察知するという芸当が俺には到底できない。
俺の無力さを間接的に馬鹿にされている気がした。
「避けたのは俺だぜ。
俺の力なんだよぉおおおおおおおおお」
「制御しきれない力は自分の力じゃない。
あなたはデミスを纏っているんじゃない、
デミスに使われているんだ。
ISを理解することは必要だけど、呑み込まれちゃうんじゃあ意味はないよ。」
「うるさい、ウルサイ。」
俺はケルベロスソードを無茶苦茶に振り回しながら、
絶対搾取で光結晶も展開。
光結晶から大量のレーザーが放たれていく。
「スキだらけだよ。」
サクラは光結晶のレーザーを死神の鎌で全てはじき返した。
その直後サクラが左に体を反らす、
フクインの光弾が俺に向かう。
俺はケルベロスソードを盾にする。
その動きでできた隙を逃すサクラではなかった。
死神の鎌の横一閃が俺に直撃する。
モンド・グロッソで禁止されただけはある。
一気にISのシールドが削られる。
「嘘だ、嘘だ。
俺が勝てない?
デミスⅢを纏った俺が?
デミスⅢは俺の願いを叶えるんじゃなかったのか。」
「本当に勝てる自信があったの?
ケルベロスソードなんて使ってさ。
それ、使い捨ての操縦者が使ってたやつだよ?
余裕あるならそんなもの使わないと思うけど。」
サクラが笑う。
子供をあやすように。
いつもは不思議と不快にならないその笑顔が、今は一番不快だ。
『ミダサレルナ オレ モ ジュンビ ガ トトノッタ』
センサーが左からもう一機のISが近づいてくるのが分かった。
遅いんだよ、だがこれで戦況は変わる。
「左にもう一機かな?」
サクラは俺を見てまた笑いやがった。
「なぜ分かる?」
「あなたの目の動きだよ。
もう一機出るなら仕方ないか。
一夏の性格ならこっちに向かっているだろうし、
早く決着つけないとね。」
「決着をつける?
つけられるのはお前だろ?」
「後輩にレクチャーしてあげるよ。
デミスの使い方を。」
サクラは死神の鎌を自らの心臓に突き刺した、
いや突き刺したように見えた。
死神の鎌は少しずつ溶けていったのだ。
黒い液体となったそれは心臓の辺りで淀みながら、サクラの体を包んでいく。
そして……最後に頭も全て覆った。
「それが……お前の……」
「そう、これが私のデミス、
デミスⅡだ。」
俺のデミスよりもさらに禍々しい黒を纏って、そのISは顕現した。
お疲れ様でした。
申し訳ないですが、しばらく投稿できないと思います。
せめてもう少し区切りの良いところまで
話を進めたかったのですが……。