シャドウ   作:ゆばころッケ

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よく分からないけど、時間がかかった回でした。
特に前半部分に。
普段は校正ありで2時間ちょっとってぐらいなんですが、
今回は校正なしで3時間+αぐらいです。
ちょっと脳内で構想ができてなかったかもしれませんね。



第九話 俺、IS教室その2

「今日は回避の練習。」

 

訓練三日目、俺は追う側から逃げる側にまわることになった。

 

当然追うのはクロエさんとなる。

 

という訳で彼女は俺の前では初めてISを纏った。

 

彼女が纏ったそのISは原作知識によれば『黒鍵』だったはずだ。

 

黒と白の混ざったそのISは何かを思い出させる……。

 

白と黒のストライプ……しまうま?

 

いやそういった動物的な印象は少ない。

 

どちらかといえば繊細な感じがする。

 

でも動物的という印象も全く間違いではない気がする。

 

動物というよりは、創造する生命……?

 

「どうかした?何か変だった……?」

 

「いや……。そのIS見たことなかったから。」

 

「これは私……の専用機。」

 

「ああ、なるほど……。」

 

あのISを見てからなにか不思議な感覚がずっと……

 

「そのISは名前なんて言うの?」

 

知っていることなのに俺は聞いていた。

 

「黒鍵。」

 

彼女は短く答えた。

 

俺の顔がポカーンとしていたのだろうか?

 

彼女は続けて説明した。

 

「黒鍵はピアノの黒い鍵盤のこと。」

 

ピアノの鍵盤か。そう言われればしっくりこないこともない。

 

あっ、

 

「でも白のラインもISには入っているのはどうして?」

 

「このISには黒のラインしかない……。

このISはこのISだけでは成り立たないもの。」

 

でも今は白のラインも入っているし、ISとして起動している。

 

「訓練始めようか。」

 

そう言うと彼女は銃をコールした。

 

彼女の持っている銃は『プレサイス』。

 

後付け装備だ。

 

真っ黒なそのレーザー銃は黒鍵のイメージに合っている。

 

長さ3メートル、その細い銃口が特徴だ。

 

当然出るレーザーも細い。

 

そのため当てにくいし、当たっても大したダメージにならない。

 

「お手並み拝見。」

 

レーザーが飛んでくる。かなりの速さだ。

 

俺はギリギリで避けた。

 

「スラスターを使って避ける必要はなかったよ。」

 

ご指導が入る。

 

「基本は体をひねって避けるのがベスト。」

 

今度は二発放たれる。

 

プレサイスにはリロードの時間はあってないようなものだ。

 

勿論連続使用しすぎると速くガタがくるのでやりすぎは禁物だが。

 

体をひねって避けようとするが一発当たってしまう。

 

「うっ……。」

 

衝撃がくる。

 

このプレサイスはISに大したダメージを与えない代わりに

 

操縦者に衝撃を与えることで有名だ。

 

衝撃を殺す場合、ISは普通PICを使う。

 

しかしこのプレサイスによる衝撃は局所的すぎるのだ。

 

そのためPICでカバーするのに向かない。

 

「PICで殺しきれない衝撃ならその程度では済まないよ。」

 

怯んだ俺に喝が入ると同時に三発撃ってきた。

 

避けきれない。

 

俺はスラスターを使って右に逃れた。

 

「今回はそれでも正解かな。

腹とか衝撃を受けやすい部分で受けるという手もなくはないけど。」

 

そういえばプレサイスによるダメージはないんだったな。

 

なら、

 

「シールドとかは使っていいの?」

 

「どうぞ。」

 

俺は腕を見つめた。かつて見たことのある武装だ。

 

イメージできるはず。

 

そうこうしている間にもレーザーは来る。

 

俺は腕を曲げて前に突き出す。

 

出てくれ……!

 

……レーザーの衝撃はほとんどなかった。

 

間に合った。

 

救急救命(ラピッドセーバー)か。普通の盾にしなかった理由は?」

 

救急救命は腕に巻く盾で操縦者に危機がせまると自動で大きくなり操縦者を保護する盾だ。

 

そのため初心者向きで今の俺にはうってつけの盾である。

 

なお上級者になると視界の遮りを嫌って、自動モードを切る。

 

更にレベルが上がるとハイパーセンサーがあるから、

 

視界など気にしないと考えるようになるらしく、自動モードに戻すらしい。

 

そんなことはおいておくとして。

 

「普通の盾だと持っている手をプレサイスで狙われるだけだから。」

 

武器を持つ手を撃って、相手の武器をはたき落とす。

 

プレサイスの使い方その1である。

 

「腕に巻くタイプなら大丈夫ってこと?」

 

「まあそうなるね。」

 

「少しプレサイスのことを甘く見すぎ。」

 

彼女はそう言うと、レーザーを5、6発乱発した。

 

俺は腕を構える。

 

予想通り救急救命が俺を守ってくれる。

 

ただ広く狙われたせいだろうか、盾の端の方に当たった。

 

もう一度レーザーが乱発される。

 

今度も救急救命で……

 

うん?

 

思ったより盾が大きくならなかった。

 

そこまで気にする程でもないが。

 

「驚いた?どうしてだか分かる?」

 

俺は分からなかった。

 

「次で分かるよ。」

 

三度レーザーが5,6発乱発される。

 

広い範囲に出されたので避ける訳にもいかず、またまた救急救命に任せた。

 

だが、救急救命はほとんど大きくならなかった。

 

その結果、俺はレーザーをほぼ全て喰らった。

 

全部微妙にタイミングがずれている分、来る衝撃が気持ち悪い。

 

「上から救急救命を覗いて見て。」

 

俺は指示に従った。

 

「あっ……。」

 

「金属が焼けているよね。」

 

救急救命の防御力はけっして高くはない。

 

だがプレサイスの威力で破られるはずはない。

 

「救急救命の端にレーザーが当たってたの覚えてる?」

 

俺は頷いた。

 

「あれは端というより盾が大きくなっている途中の部分だったんだよ。」

 

「大きくなっている途中の部分は

分子の構造が安定しないから防御力が極端に落ちたってことか。」

 

「その通り。」

 

彼女は笑った。

 

……その顔に少しドキッとしたのは内緒の話だ。

 

「次はどうするの?」

 

……思いついた。

 

俺は彼女に向かって一直線に突撃した。

 

プレサイスは威力のない武装。

 

ならば多少喰らったって問題ない。

 

「正解。武装がプレサイスだけだったならね。」

 

彼女はプレサイスを捨てると白い筒状の武装を出した。

 

あれはガトリングシュトローム改だ。

 

かつてメイル・シュトロームの初期武装だったそれは技術者達の努力により、後付武装になった。

 

一度にレーザーを乱発することのできる武装だ。

 

距離が遠ければ避けることもできるがこうも近づいてしまうと……

 

「これも訓練の内だから恨まないでね。」

 

俺の時間がまたスローモーションになる。

 

それは死を前にすると俺が味わう感覚だ。

 

だが今はISを着けている。

 

死ぬはずはない。

 

頭では分かっているのだが……。

 

俺は俺にレーザーが近づいてくるのが見えた。

 

死にたくない。

 

俺はとっさにブークリエをコールした。

 

世界は時間を取り戻した。

 

コールしたブークリエ(要は普通の円盾)はレーザーから俺を守った後地面に落ちた。

 

スピードを優先した俺が持たなかったからだ。

 

持ったら衝撃を喰らわなければならない。その分遅れるだろう。

 

ガトリングシュトロームはリロードが遅いのが弱点の武装だ。

 

改になっていくらかリロードが速くなったからといって、間に合うはずはない。

 

俺は彼女に全速力で近づき、

 

近づき……どうすんの?

 

刀でシュバっと……

 

やりたかったけど、今から武装を出すのは間に合わない。

 

じゃあ殴るか?

 

……すごく絵面的によろしくない。

 

じゃあ近づくだけ近づいて何もしない?

 

そうするしかないのか……。

 

そうこうしている内に距離はグングンと縮まる。

 

あれ?ちょっと近すぎない?

 

急停止が間に合う距離じゃないね。

 

こうなったら彼女の対応に期待するしか……。

 

しかし彼女は何か考え込んでるようだった。

 

あっ……。これつんだ。

 

俺は勢いのまま彼女にぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 「ごめんね、大丈夫?」

 

俺と彼女は壁に叩きつけられていた。

 

俺が覆いかぶさるような体勢になってしまったので

 

ダメージは彼女にかかってしまったのだと思うと申し訳ない。

 

彼女の顔を見ると赤かった。

 

怒っているとかそういうわけではなさそうだ。

 

俺は気づいた。

 

彼女との距離が近すぎることに。

 

「二重の意味でごめん。」

 

俺はすぐ離れた。

 

彼女は一言、

 

「私が避ければよかったんだよ。」

 

とボソッと言った。

 

俺はさらに謝った。

 

「いや俺が悪かったよ。ごめん。」

 

「そんなに謝られても……」

 

彼女は少し困った表情に見えた。

 

その後は微妙な雰囲気で回避訓練を続けた。

 

ちなみにガトリングシュトロームは回避訓練には向いている。

 

一度に30本以上のレーザーを出し、出たレーザーは遠くに行くほど広がっていく。

 

全てを回避するのは難しく、けっこういい練習になった。

 

 

 

 

 

 

 

 時間は過ぎていき、今はお昼。

 

昼食作りも微妙な雰囲気の中始まったが、

 

なんとか雰囲気を回復することができてきた。

 

そしてお昼ご飯が完成。

 

束さんと約束した昼食の時間となり、リビングに運ぶ。

 

3人で食べ始める。

 

会話はしばらくなかったが、

 

ふとクロエさんが、

 

「どうやってブークリエを出したの?」

 

と聞いてきた。

 

「どうやってって?」

 

「あれは紅侍さんに可能なレベルの速さのコールじゃなかった。」

 

言われてみればそうだ。

 

そもそも間に合うなら死が迫っている様にも思わないだろう。

 

「束さんには見当がついてるよ。」

 

「どうしてなのですか?」

 

「二人はライフレビューって知ってる?」

 

俺はクロエさんの方を見た。

 

クロエさんも俺を見た。

 

顔が真正面から向かい合い、さっきのことを思い出す。

 

俺たちは同時に顔を背けた。

 

「知らないかな。走馬灯とか言った方が伝わるのかな?」

 

俺たちは頷く。

 

「走馬灯では自分の人生を振り返るらしいけど、

死の間際の短い期間にそんなことするなんて普通じゃできないよね?」

 

俺たちはまた頷く。

 

「通常は時間がスローになって感じられるらしいんだけど。」

 

束さんが俺の方を見る。

 

「そうですね。そういう感覚がありました。」

 

束さんはやっぱりかーと言って頷く。

 

「ISで武装をだすのはさ、自分のイメージによる訳だよ。

で、走馬灯中ならじーくんの時間だけは無期限みたいなもんだから、

その間にじーくんはどんな武装でもだせちゃうのだ★」

 

ぶいぶいと束さんが元気よく言う。

 

「とは言ってもIS戦闘中に走馬灯を見たなんて話、聞いたことないですよ。」

 

クロエさんが言う。

 

「ふふふ……、じーくんのISをちょーっといじらせてもらったのさ。」

 

えっ?

 

「この仕組みは専用機にも組み込むつもりだから。よろしく!」

 

俺たちはポカーンとした。

 

ISいじっただけで走馬灯って簡単につくれるもんなのか……?

 

「束さんが走馬灯の時の脳波やその際の神経伝達物質を調べたからね。

束さんにかかればこんなの昼飯前なのさ。」

 

この人はやっぱり天才だった。

 

そういえば1日目、銃を向けられたな。

 

あれはそういうことだったのか。

 

隣を見るとクロエさんも何か納得したような様子だ。

 

「にしてもくーちゃんとじーくんって仲良いよね。

さっきから反応もほぼ同じタイミングだし、お互いタメ口だし。」

 

いつでも気まずい雰囲気が復活しかねない今には言って欲しくないセリフだったなぁ。

 

ちらっとクロエさんの方を見る。

 

クロエさんも俺の方を見ていたようで、また正面から向き合う形になる。

 

で、また顔を背ける。俺の顔が赤くなっているのが分かった。

 

「くーちゃんはさ、束さんにもっと甘えてもいいんだよ?」

 

「いえ、失礼なことはできませんから。」

 

堅いよーっと言って、束さんは頬を膨らませる。

 

そんな感じで昼食は過ぎていった。

 

午後もガトリングシュトロームによる回避訓練を行い、その日1日は終わった。

 

体を捻る回避は上手くできなかった。

 

……一夏ってやっぱり規格外だな。

 

IS操縦丸々3日してもセシリアさんのレーザー避けられる自信ないんだけど。

 

しかも第一次移行前だろ……。

 

まあ今の俺も似たようなものなのか?

 

専用機ではないしな。

 

とは言ってももう3日使ったISではあるんだよな……。

 

はぁ……。

 




お疲れ様でした。
次の話は最短で今日。
早くて木曜日、
木曜日なければ土曜日になると思います。
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