泉新一のいる実力至上主義の教室 作:salong
全員の自己紹介が終わったが、それでもまだ少し時間があるのでその間にみんな端末を操作して連絡先などを交換していた。早く先生が来ないかと思っていると隣の席に座っている女子生徒から話しかけられる。
「ねぇ、泉だったわよね?ちょっと聞きたいんだけど」
話しかけてきたのはホームルーム前にこちらを見ていた
「そうだけど。どうしたんだ?」
「前にどこかであったことある?」
「いや、そんなことはないはずだけど」
「そう、私の勘違いみたいね。ところでその右眉の傷はどうしたの?」
「ああ、ちょっと前に怪我しちゃってさ、まだ消えそうにないんだ」
俺の右眉にはあの時、後藤に付けられた傷がまだ残っている。
「そうなの。早く治るといいわね」
「ありがとう、そうだな」
「そこのお二人さん、ちょっといいかな」
目の前に金髪でチャラそうな男子生徒がいた。
「さっき自己紹介したから分かると思うが俺は
「わかった。よろしくな」
こうして橋本と連絡先を交換し、神室とも交換するのだった。
入学式はそこらの学校と変わらず、先生方や偉い人の話を聞いて終了した。教室に戻る頃には昼前になっており、先生から一通り敷地内の説明を受けて解散になった。俺は少し校内を見て回ろうと思い、教室から出て行く。校内は名門校と言うだけあってとても広い。しかし、気になるのが監視カメラの多さである。なぜこんな至るところにあるのだろうか。防犯のためにと言っても不自然すぎる。なんてことを考えながら歩みを進めるのだった。
ある程度校内を歩き回った後、俺はコンビニに来ていた。中は普通のコンビニとなんら変わらない。とりあえず生活に必要な日用品を籠に入れていく。そんな中、目に留まったのは、無料と表示されている商品だった。もしかしてポイントを使い過ぎた生徒への救済措置ではないのだろうか。
「あんたも気になったのか」
振り向くと茶髪の男子生徒と黒髪の女子生徒がいた。
「うん、無料って書いてあるってことはポイントを使い過ぎた生徒のためなんじゃないかと思ってさ」
「俺たちもそう思ってたところだ」
「そうなんだ。ってことは君たちも一年生?」
「ああ、俺は––––––」
「舐めてんじゃねぇぞ!!ああ!?」
突然、外から怒鳴り声が聞こえた。
「お前、一年のDクラスだろ?」
「ああ!?だから何だよ!!」
「おぉー、ひでー口の聞きようだな。上級生に対してよ」
ドア越しから見ると赤髪の男子生徒と3人の男子生徒が何やら言い合っていた。
「まさか、喧嘩か?」
「あれ、確かうちのクラスの…」
「関わったら私の品位まで落ちそうね」
黒髪の女子生徒は気にも留めていないようだ。俺は商品をレジに通し、外に出ると既に他の3人はその場から立ち去っていた。
「何だよっ!クソがっ!!」
赤髪の男子生徒は近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばして行ってしまった。蹴り飛ばしたせいで散乱したゴミを茶髪の男子生徒が片付けようとする。
「俺も手伝うよ。一人じゃ大変だろ」
「すまない。ところでまだ名前を言ってなかったな。俺は
「俺は泉新一、Aクラスだ。よろしく」
これが俺と綾小路の初めての出会いであった。
その後は寮まで綾小路と話をしながら帰っていった。先程一緒にいた黒髪の女子生徒は先に帰っていたようで名前は
やっと俺は自分の部屋を見つけ、鍵を刺してドアを開ける。中は8畳ほどの1ルームで一人暮らしには丁度いい広さだ。なお、光熱費には制限がないとのこと。ここまで至れり尽くせりだと何だか申し訳なく思ってしまう。そして疲れた俺はベッドに倒れ込む。
(ここも色々驚かされたけど、今までのことと比べるとなぁ…)
新一は今までのことを思い出していた。大切な母の死や同じ学校の友達、自分を想ってくれていた女の子の死を…そしていつも一緒にいた友のことを…
(もう一度でいいからお前に会いたいよ…ミギー…)
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翌日、今日の授業は大半が説明であり、ひたすら耳を傾けるだけであった。聞いてるだけじゃ眠くなりそうなものだが、誰一人居眠りすることはなく最後までちゃんと先生の説明を聞いていた。どうやらAクラスは真面目な生徒ばかりのようだ。流石全国屈指の名門校なことだけはある。そう思いながら時間が過ぎるのを待つ。そして4時間目の授業が終わり、昼休みに入った。昼食は橋本たちと食べることになり、食堂に向かった。食堂は生徒で混んでいて席を見つけるのに苦労した。
「なぁ、泉は部活に入るのか?」
「俺は入るつもりはないよ。中学でも帰宅部だったし」
そもそも呑気に部活なんてやってられなかったからなぁ。学校に乗り込んでくる
「そうか、俺と一緒だな。鬼頭はどうなんだ?」
「俺は中学までバスケをやっていたが高校では入るつもりはない」
橋本の質問に応えたのは
「じゃあ、この3人は部活とは無縁ってわけだ」
「そうみたいだな」
そんな風に他愛も話をしているうちに学食を完食した。そして食堂を後にした俺は図書館に向かう。中に入ると中学とは比べ物にならないほど広く、その分読みきれないほどの本が並んでいた。
(こんなに沢山本があるのか…ミギーにも読ませてやりたいなぁ…)
ミギーは好奇心旺盛で大の読書家であった。初めて会った時は、ほとんどまともに言葉を喋ることが出来なかったが翌日には日本語をマスターしていた。寄生生物は身体能力だけでなく、知能も人間とは桁違いすぎるのだ。そんなことを思いながら面白そうな本を探していく。すると銀髪の女子生徒が本棚に背伸びをして本を取ろうとしていた。
「よっと、この本でいいよね」
俺は彼女が取ろうとしていた本を取ってあげた。
「ありがとうございます。あなたも本をよく読まれるのですか?」
「ああ、友達が大の読書家でさ。その影響で読むようになったんだ」
「そうなんですか。その方はあなたに影響を与えるほど本がお好きなんですね」
「うん、朝まで読むほどにね。君も本を読むのが好きなの?」
「はい。でも私のクラスには読書が好きな方がいなくて…そういえば自己紹介がまだでしたね。私は
「俺は1年Aクラスの泉新一。よろしく」
椎名は同じ趣味を持つ仲間が出来てとても喜んでいた。実際どれくらい読んでいるのか聞いてみると俺の予想を遥かに上回るほどであった。
もし、ミギーと椎名が会ってみたらどんな会話をするんだろう。
「泉君。もしよかったら一緒に本のことについてお話しませんか?大の読書家のお友達のことも聞いてみたいので」
「そうだね。俺も色々話してみたいと思ってたんだ」
こうして時計の針がギリギリになるまでの間、椎名と本のことや
「あの…泉君。よければ、連絡先を交換して頂いてもよろしいでしょうか?」
「勿論さ。また時間がある時に話そう」
「ありがとうございます。是非お願いしますね」
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ようやく全ての授業を終え、放課後を迎えていた。生徒によってはすぐに寮に帰ったり、遊びに行ったりしていた。一方俺は今、体育館の中にいる。今日の説明で部活動の説明会があると聞いており、部活に入るつもりはないのだが寮に帰ってやることもないので参加することにしたというわけだ。
「あんた、部活に入るつもりなの?」
振り向くといつの間にか神室が立っていた。
「いや、入るつもりはないんだけど寮に帰ってやることもないし。聞いてみるだけでもって…」
「そう言うわけね」
「神室は部活に入るのか?」
「美術部に入ろうと思ってるわ」
「へぇ、絵描くの得意なんだ」
「別にただ入ってみようと思っただけよ」
そっけない口調で応える神室と話をしているとステージの近くにいる女子生徒が口を開く。どうやら説明会が始まったようだ。そこから各部活の説明が行われていき、遂に最後の一人になる。だが、その先輩は一向に喋ろうとしない。
「がんばってくださ〜い
「カンペ、持ってないんですか〜?」
「あははははは!」
などと、一年生たちから言われているが状況は変わらない。緊張して言うことをド忘れしてしまったのかと思っているとその先輩がようやく口を開いた。
「私は、生徒会会長を務めている、
そこからは生徒たちをたった一人で黙らせてしまった。その後も少し演説をした後、生徒会長は体育館から出て行った。そして以上を持って説明会が終わり、解散となった。
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「凄かったわね、生徒会長」
「ああ、伊達にやってるわけじゃないみたいだな」
説明会が終了し、俺は神室と帰っていた。神室は言っていた通り、美術部に入部したようだ。
「あのさ、泉ってどうしてこの学校に来たの?」
「どうしたんだ、急に?」
「ちょっと知りたいと思ったからよ」
「うーん、そうだな。俺がこの学校に来たのは希望する進路に進むことが出来るからかな。そういう神室はどうなんだよ?」
「私も似たような感じよ。学校に推薦されたこともあるんだけどね」
「やっぱりそうか。希望する進路に進めるってだけでも大きいよな」
恐らく大半の生徒がそう言った理由で入学しているのだろう。俺も最初学校から勧められた時は驚いたからな。それにその時は色々あったからあまり勉強に集中出来なかったのもあってここに入学することを決めたんだっけか。父さんには寂しい思いをさせちゃうけど、俺としては安定した将来を迎えて早く安心させたい。今まで色々迷惑かけた分恩返しがしたいから。勿論母さんにも…
そう思いながら、寮まで歩き続けるのだった。
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