泉新一のいる実力至上主義の教室   作:salong

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4話です。


小テストとSシステム

昨日の水泳の授業以降、みんな俺に対する印象が随分変わったみたいだ。あの胸の傷を見て、気味悪がられると思っていたがそんなことはなく、むしろ以前より俺に話しかけてくれる人が増えた。

 

どうしたらあんなに早く泳げるのとか上手く泳げないから教えてほしいとか。でも俺は経験者でもないからよく分からない。そもそもこんなに運動が出来るようになったのもミギーの細胞が全身に散らばったためだ。だから普通の人間じゃ到底不可能なことも出来てしまう。

 

普通の人間か……思えばあの時、ミギーに寄生された瞬間から既に普通じゃなくなってたんだろうな。ミギーの細胞が全身に散らばって以降、以前と比べて物事を合理的に捉えるようになったし、友人が死んだって言うのに涙一滴すら出なかった。

 

そういえばみつおって奴に言われたな。人間じゃないって。確かにあいつの言う通りだ。仲のいい友人が死んで平然な顔をしていられるなんておかしいもんな。ひょっとして俺一人気づかないうちに脳まで乗っ取られてるんじゃないかって思ったりもした。だけど結局俺は人間なんだ。普通じゃないけど、ただのちっぽけな1匹の人間なんだ。せいぜい小さな家族を守る程度の……

 

 

 

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やっと学校での一日が終了し、今は放課後を迎えていた。生徒の中には部活に行く者や遊びに行く者、真っ直ぐ寮に帰る者で分かれていた。俺は部活には入ってないし、今日は遊びの約束もしていないので後者の真っ直ぐ寮に帰る者の一人と言うわけである。そんな当たり前の事を思いながら帰ろうとしていると不意に声を掛けられた。

 

「泉君。少しよろしいでしょうか?」

 

声を掛けてきたのは昨日の水泳の授業でじっと俺を見ていた坂柳だった。

 

「どうしたんだ?」

 

「ふふ…実は泉君とお話ししてみたいと思っていまして。もしよろしければ今からカフェにでも行きませんか?」

 

ニコニコしながら語りかける坂柳。この子何だかあざとそうだな…まぁ、いいか。話すだけなら。

 

「わかった。じゃあ行こうか」

 

「ありがとうございます。では早速行きましょうか」

 

 

 

 

しばらく歩いてカフェに着いた俺たちはお互いのことや学校のことについて談笑していた。前から思っていたのだが、この学校の理事長はやはり坂柳の父親であるらしい。

 

「へぇー、やっぱりお父さんが理事長をやっているんだ」

 

「はい。坂柳家は教育者一族として著名ですから。ところで泉君、一つお聞きしたいことがあるのですが」

 

「聞きたいこと?」

 

「昨日の水泳の授業についてですが、あれは本気で泳いだのですか?」

 

昨日の水泳のことについて聞いてくる坂柳。昨日ずっと俺を見ていたのは本気を出していないと思っていたからだったのか。

 

「や、やだなぁ。本気に決まってるだろ」

 

「本当にそうでしょうか。私からすると本気を出しているようには思えませんでしたが」

 

「…本当だよ。ただの君の勘違いだよ」

 

「……まぁ、いいでしょう。そのうち分かる時が来るでしょうから。ではそろそろ行きましょうか」

 

「そうだね。行こうか」

 

話を終えた俺たちはカフェを後にして寮まで一緒に帰り、その途中で連絡先を交換することになった。

 

 

 

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早いもので入学から1ヶ月が経とうとしていた。そんな中、急に小テストを行うことになった。今回のテストは成績表には反映されることはないらしい。そして問題に目を通すと殆どの問題は簡単ではあるが、ラスト3問は桁違いの難しさであった。

 

(何でこの3問はこんなに難しいんだ?とても高校生が解ける問題じゃないぞ…)

 

そんなことを思っているうちに時間になり、小テストは終了した。

 

「ねぇ、泉。最後の3問だけやたら難しくなかった?私全く分からなかったんだけど?」

 

「俺も同じだよ。明らかに難易度が他の問題とは違った」

 

「やっぱりそうよね。一体どう言うことかしら」

 

真嶋先生は成績表には反映されないと言っていた。だとするとそれ以外の何かに影響されるのだろうか。

 

 

 

そして5月1日。今日はポイント支給日である。携帯を確認すると振り込まれていたのは94000ポイント。正直、毎月10万円も貰える筈がないのであまり何とも思わなかった。やがて教室に着き、中に入るとみんなポイントのことばかり話していた。

 

「ポイントのことはもう知ってるよね?」

 

席に座ると神室がそう言ってきた。

 

「ああ、今朝確認したら94000ポイントしか入ってなかったよ」

 

「あまり驚かないのかね」

 

「何となくそんな気はしてたんだ。高校生が毎月10万円も貰える筈なんかないだろ。それに神室だってそんなに驚いてないじゃないか」

 

「坂柳から既に聞いていたからよ。多分橋本たちも知ってる筈よ。てか、あんたまだ派閥に入ってないの?」

 

「まだ考えてる途中なんだ」

 

実はAクラスではある変化が起きていた。それは葛城と坂柳の派閥の対立である。保守派な葛城に対して革新派の坂柳。両者互いに睨みを利かせていた。尚、橋本、神室、鬼頭は坂柳派に入ったようだ。俺はまだ派閥には入っていないのだがいつも橋本たちと一緒にいるため、既に坂柳派に入っていると周りからは思われているらしい。

 

「全員揃っているな」

 

真嶋先生が手に筒を持って教室に入ってきた。

先生は筒の中から厚手の紙を取り出し、黒板に磁石で貼り付ける。紙には各クラスの名前とその横に最大4桁の数字が表示されていた。

 

・Aクラス940cp

・Bクラス650cp

・Cクラス490cp

・Dクラス0cp

 

「この数値はクラスポイントと言って、1クラスポイントで100ptの価値がある。これは成績をそのまま反映させたものと思えばいい。また、クラスポイントはpptに影響するだけでなく、クラスの評価にも繋がる。クラスポイントが1ポイントでも高ければ昇格、下がれば降格する」

 

真嶋先生は淡々と話を進めていく。

 

「この学園の就職や進学のサポート、国からの恩恵を受けられるのはAクラスのみである。君たちはとても優秀だ。地位を落とさず、3年間頑張ってほしい」

 

その説明を聞いた瞬間、教室内が少しざわついた。きっとみんな同様しているのだろう。かと言う俺だってちょっと驚いている。また、真嶋先生はその後、赤点を取った者は即退学と言い、3週間後に中間テストがあるので気を抜かないようにと言って教室から出て行った。

 

 

とんでもない学校に来てしまったなぁ…ミギー、俺無事に卒業出来るかな…

 

 

 

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「Dクラスはかなり大変そうじゃないか」

 

「全くだ。授業中に私語やら携帯やら色々やらかしているからな。それに対してAクラスは凄いな」

 

昼休み、俺は綾小路と話をしていた。どうやらこの1ヶ月間でDクラスはかなりの所業を成し遂げたと言う。

 

「みんな、居眠りせずに真面目に授業を受けているしな。それにSシステムのことを既に理解している人もいたみたいだし」

 

「そうなのか。まさに良品と不良品の違いってわけか」

 

「綾小路。それよりポイントは大丈夫なのか?今月は0ポイントだからやばいんじゃないのか?」

 

「幸い、そんなにポイントは使ってないから大丈夫だ。他の連中はかなり焦ってたみたいだが」

 

「そうか、ならよかった」

 

綾小路はそこまで物欲がないらしい。

 

「だが、今度の中間テストが心配だ」

 

「そうなのか?」

 

「何せ、小テストの時点で酷い有様だったからな。これが本番だったら7人は退学になっていたんだ」

 

「そ、そりゃ確かに酷いな…」

 

「とにかく、退学だけは回避するように努めていく」

 

「そうだな。俺も退学だけにはなりたくないからな。お互い無事に卒業出来るように頑張ろう」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 




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