泉新一のいる実力至上主義の教室 作:salong
驚愕の事実が明らかにされてからもうすぐ1週間が経とうとしていた。各々が中間テストに向けて勉強を始める中、放課後を迎えていたAクラスでは葛城派と坂柳派の生徒たちが自分たちのリーダーを中心に固まって何かを話していた。ここで話すのはまずいのか坂柳派の生徒たちはこれからどこかに移動するみたいだ。俺はまだどちらにも入っていないし、関係ないので帰ろうとしたがそれに気付いた坂柳に呼び止められてしまった。
「泉君。どこへ行かれるのですか?」
坂柳派の生徒たちの視線が俺に突き刺さる。
「どこへって…帰ろうとしてるんだけど」
「あなたは私の派閥の一員でしょう。話し合いに参加してください」
「一員って…俺はまだ入るかどうかは考えてる途中だし…」
「何言ってんだよ。もうみんなお前がこっちに入ってるって思ってるんだよ。それに考える猶予は充分与えただろ?」
坂柳のすぐ側にいる橋本がそう言ってくる。
「そう言うことですから。さぁ、早くこちらに来てください」
「結局、こうなるのか…」
この日、俺は坂柳派の一員になってしまった。まぁ、形だけでもということにしておこう。その後は学校から出て少し歩き、中が広めの喫茶店に入る。そして全員が席に座ったところで話し合いが始まった。
「さて、みなさん。中間テストまで残り2週間程度になりました。一体どう対策すべきだと思いますか?」
「どうって…勉強会でも開いてひたすら勉強するしかないんじゃないのか?」
坂柳派の一人である、森重が応える。
「普通ならそうするべきでしょうね。ですが、もっと点数を上げることが出来る方法があります。それは過去問を使うことです」
なるほど。確かに過去問を使えば、有利に勉強出来るしな。
「でも過去問なんてあるのかしら?」
疑問に思った神室がそう話す。
「安心してください。真澄さん。ちゃんと過去問が存在していることは把握済みですから」
「だけどどうやって手に入れるのよ?」
「大丈夫ですよ。心優しい先輩から頂くことが出来ましたから」
そう言って過去問を取り出す坂柳。
「流石だな。姫さん。打つ手が早いぜ」
「とにかくこれで中間テストは大丈夫でしょう。
ですが過去問があるからと言って決して自己学習を怠らないようにお願いします。それに分かっていると思いますがこのことは他言無用です。いいですね」
葛城たちには教えないつもりってことか。同じクラスなんだから共有すればいいのに。まぁ、葛城たちなら大丈夫だろう。とりあえず中間テストは何とかなりそうだ。だけど綾小路のとこは大丈夫だろうか。流石に危機感は持ってるよな…
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翌日の昼休み。俺は椎名との約束で図書館に来ていた。中は中間テストに向けて勉強している生徒でいっぱいだ。退学が掛かっているから必死になるのは当然だろう。そして少し離れたところに椎名を見つけた。
「お待たせ。ごめん、ちょっと学食が混んでてさ」
「いえ、気にしないでください。それより試験勉強は大丈夫なんですか?」
「まぁ、なんとか。椎名はどうなんだ?」
「私は寮に帰ってからそれなりにやってはいますので大丈夫とは思いますが…」
「そっか。椎名は頭も良いし、大丈夫だよ」
「ありがとうございます。そう言って頂けるなんて嬉しいです」
ニコニコしている椎名。思春期の男子ならすぐに堕ちてしまうだろう。そしてそこからしばらく本を読んでいると長髪の男子生徒とガタイのいい男子生徒二人がこちらに近づいてきた
「おう、ひより。他クラスの奴なんかと一緒に本読んでんのか」
「はい。泉君は同じ趣味を持つお友達ですから」
「お友達ねぇ…おい、お前。名前とクラスを言え」
「泉新一。Aクラスだ」
「Aクラスの奴だったのか。ふん、余裕振りやがって。俺は
「なんだと?」
「他クラスの奴は関係ないから当然だろ。それにお前がAクラスのスパイって可能性もあるんだからな」
疑いの目線を俺に向ける龍園。そこまで疑ってるのか。
「断る。俺はスパイなんかじゃないし、椎名とはただの友達なんだ。それくらいいいだろ」
「俺に歯向かうつもりか。おもしれぇ。どうしてもひよりとの付き合いを続けてぇなら放課後、特別棟に来るんだな」
そう吐き捨て、図書館から出て行った。
「泉君。絶対行ってはいけません。私は泉君が傷つくのは嫌ですから」
「大丈夫だよ。ちょっと話してくるだけさ」
「ですが……」
「俺は本当に大丈夫だから。信じてくれ、椎名」
「泉君……」
心配する椎名を宥める。帰って勉強もしなくちゃいけないし、早く終わらせるしかないか。でも暴力沙汰はまずいしな…
学校での一日が終わり、放課後を迎えた。俺は龍園のいる特別棟に向かうため、教室から出て歩いていると綾小路とあの時一緒にいた堀北と言う女子生徒と出会った。
「泉。今日はもう帰るのか?」
「いや、少し用事が出来たんだ。その用事済ませたら、早く帰って自室で勉強しようと思ってるんだけど。綾小路たちはこれからどこかに行くのか?」
「今から図書館で勉強会だ。赤点組をどうにかしないとまずいからな。それにお隣さんがどうしてもAクラスに上がりたいそうだからな」
「あまり余計なことは喋らないでくれるかしら。それにあなた、他のクラスに友達がいたなんて以外ね」
「ああ、お前と違ってな」
「だから余計なのよ。そういえばあなた、あの時コンビニにいたわよね?」
堀北は俺のことを覚えていたようだ。
「あ、うん。俺も君がいたことは覚えているよ」
「クラスはどこなの?」
「Aクラスだけど」
「Aクラスだったのねあなた。今から言うことをよく聞いておくことね。私たちDクラスは必ずAクラスに上がってみせるわ。覚悟しておきなさい」
「そ、そうか…俺たちも負けるわけにはいかないなぁ…はは…」
そんなこと俺に言われても…
「とにかくそう言うことだ。この堀北は何がなんでもAクラスに上がるつもりなんだ。でもその前に友達作りからしないといつか詰むことになるが」
「何度言わせるつもり」
どこからか取り出したコンパスを綾小路に向ける堀北。恐ろしい子だ…
「泉。これ以上喋ると体に穴が増えそうだ。それじゃあな」
「ああ、勉強会頑張れよ」
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龍園に言われた通り、新一は特別棟に来ていた。するとそこには龍園とあの時一緒にいたガタイの良い二人の男子生徒もいる。
「まさか本当に来るとはな、泉」
「あんたが椎名との付き合いを続けたいなら来いって言ったんだろ」
「ククク…そんなにひよりとの付き合いが無くなるのが嫌なのか。だったら俺を力ずくでねじ伏せてみな。もっともここまでこれたらな」
龍園がそう言うと二人の男子生徒が構える。
「てめぇに恨みはねぇが、悪く思うなよ。龍園さんに逆らうからこうなるんだぜ」
「そんなつもりで来たわけじゃないんだけどな」
そう言った瞬間、二人のうちの一人、石崎が動き出し拳を突き出してくる。
「おらぁっ!」
だが、新一には当たることはなかった。その後も拳を振るがどれもかすりすらせず、石崎は攻撃を全て避けられ、疲れ果ててしまっていた。
「はぁっ、はあっ。てっ、てめぇ、避けることしか出来ねえのか!」
「避けるも何も俺はそんなつもりで来たわけじゃないんだって」
「アルベルト」
「
次にもう一人のアルベルトと呼ばれた生徒が龍園の指示により動く。学年一大きいと思われるだろうその巨体で新一に向かって拳を振り下ろす。しかし、新一は避けることなくその巨体から繰り出される拳を左手で掴んだ。
「
アルベルトが離せと言うが、新一は離すどころか拳を握る力を強める。
「Ahhhhhhh!」
アルベルトの叫び声が響く。ちょっとやり過ぎたのかと思ったのか新一は左手を拳から離した。するとたちまち拳を解放されたアルベルトはその場に座りこんだ。
「この野郎!」
先程と同じように石崎が再び殴りかかってくる。
「しつこいな。疲れてるんだから少しは休みなよ」
新一はそう言うと石崎の足を踏み、そして軽く突き飛ばした。
「おわっ!」
足を踏まれていたせいでよろけてしまい、尻もちをつく石崎。
「ククク…最高だぜ!泉!!」
龍園は新一に向かって正面から突っ込んでいった。新一は石崎の時と同じように龍園の攻撃をひたすら避けていた。
「避けてばかりじゃつまらねぇぞ!少しは反撃してきたらどうだ!」
「やれやれ…」
龍園の言葉に耳を貸さずに攻撃を避け続ける新一。そして埒が明かないと思った龍園は近くにあったイスを投げ飛ばした。それを新一は右手で軽々と掴んだ。その隙を狙い、顔に向かって蹴りを入れるが左手で簡単に止められてしまう。そして受け止めた左手で龍園ごと足を持ち上げ、軽く投げ飛ばした。
「ぐっ…!」
「おい大丈夫か?」
「…っ!化けもんかよ、てめぇ…」
「靴ここに置いとくよ」
「待て!まだ終わってねぇぞ!」
「もういいだろ。そろそろ中間テストなんだし、あんたらも試験勉強しなよ。それじゃ」
そう言い残し、新一はその場を後にした。
泉新一。何者だあいつは。今日はたまたま図書館にいた時にひよりを見かけたら他クラスの奴と一緒にいたもんだから声を掛けた。話を聞けば同じ趣味を持つ友達とか言ってたな。見た目だけみりゃ大したことない奴だと思ってたが、やり合ってみたらどうだ…俺たちの暴力が擦りもしねぇ。それに何だあの力は…アルベルトの拳をものともせず受け止めて、悲鳴を上げさせる程の握力。ましてやこの俺を片手で持ち上げてぶん投げやがった。普通の高校生がそんなこと出来るのか?まぁ、いい。それでこそ潰しがいってもんがあるぜ。泉。てめぇのことはよーく覚えたぜ。覚悟しろよ。ククク…
龍園たちとのいざこざの後、寮に帰宅した俺は予定通り勉強を始めていた。坂柳が言っていたようにいくら過去問があるからと言って自己学習を怠るのは確かによくない。誰かのミス一つでAクラスじゃなくなってしまう可能性もあるしな。その一人になるのはごめんだ。そんなことを考えながら勉強を続けているうちにきりがいい時間になったので終わることにした。
「疲れたな…」
勉強は本当に疲れる。だけど今までのとんでもない出来事の数々に比べればまるで公園の日向ぼっこだ。そういえばここ最近、
本当、この学校は色々おかしいところばかりだ。とにかく、Aクラスのままで卒業出来るようにしないとな。などと思っていると後に椎名から特別棟でのことについて電話がかかってきて色々聞かれるのであった。
龍園を持ち上げたシーンは原作でみつおにやったことと同じことをやってます。