泉新一のいる実力至上主義の教室 作:salong
お気に入りが100突破しました!ありがとうございます!
あっという間に時間が経ち、ついに中間テストを迎えた。テストの内容は過去問とほぼ同じ問題が出題され、難なく解くことが出来た。過去問に目を通していた俺たちはほぼ満点近い点数を取れているだろう。そして中間テストから1週間が経過した頃、テストの結果が発表された。
結果としては赤点を取った者はおらず、退学者はなし。しかし、坂柳派と葛城派で大きな差が出来ていた。過去問を使用した坂柳派は満点者が数人。それ以外は90点以上に対し、葛城派は80点代ばかりであり、低い者だと70点代を出してしまっていた。
「どういうことだ……なぜここまで差が……」
「ううっ…すみません、葛城さん……!」
葛城はどうしてこのような結果になったのか分かっておらず、近くにいる戸塚は自分が足を引っ張ってしまったことを謝っていた。
「姫さんの言う通り過去問には気付いてなかったみたいだな」
「ええ。これで葛城君の信用が落ち始め、時間が経てばそのうち全員が彼から離れていくことになるでしょう」
始めからこれが目的だったのか。
「なぁ、坂柳。少しくらい教えてやっても良かったんじゃないのか。同じクラスなんだし」
「何を言ってるのですか泉君。これは私と葛城君、どちらがリーダーに相応しいか決めるためでもあるんですよ。いくら同じクラスであるとはいえ、敵に塩を送るようなことは出来ません」
「そうか……」
坂柳と葛城が協力すればこのクラスはもっと強くなれると思うんだけどな。けどこれじゃあ普通に説得するのは難しいだろう。
何はともあれ、これで中間テストは無事に終了した。
___________________
中間テストから数日が経っていた。今日は休日であるが特に何もすることがないため、俺は外を歩いていた。とっくに分かってはいたがこの敷地内は本当に広い。まぁ、3年間も出られないならこれぐらいあってもおかしくはないが。それにしてもこの辺りは本当に静かでいい。何も起きないし、ゆっくり心を落ち着かせることが出来る。
だけど不安がないと言ったら嘘になる。いくら最近寄生生物たちの動きがないとはいえ、必ず何も起こらないわけではない。田宮良子みたいに話せば分かる奴もいれば、躊躇なく襲ってくる奴もいる。俺はミギーがいないと寄生生物を見分けることなんて出来ない。いつどこで襲われるか分からないし、最悪Aみたいに学校に乗り込んでくる奴だって……それだけは絶対に避けないと。
「泉、こんなところで何してんの?」
振り向くとそこには神室がいた。
「何もすることがないからちょっと散歩してたんだ。神室はどうしてここにいるんだ?」
「偶然、ここを通りかかったのよ。そしたらあんたがいたから」
「そうか。今日は坂柳とは一緒じゃないのか?」
神室は坂柳といつも一緒に行動していることが多い。だが、あまり仲が良さそうには見えない。
「そんなわけないでしょ。私だって好きで一緒にいるわけじゃないんだし」
「やっぱりそうなのか。あまり仲が良いようには見えないからさ」
「あいつとはわけあって嫌々付き合ってるのよ」
わけありで嫌々付き合ってるってことは何かあったってことなのか。
「もしかして何かまずいことでも知られたのか?」
「……そうよ。学校にばれちゃまずいことをあいつに知られちゃったからね」
「なるほど。それは災難だったな」
「本当最悪よ。おかげでストレス溜まりまくってるんだから」
そこからは坂柳に対する愚痴を散々聞かされた。どうやら相当溜まっているようで話を聞けば聞く程、坂柳への恨みが伝わってくる。自らあまり動けない坂柳の代わりに色々やらされてるのかと思うと少し同情してしまう。そしてしばらく話を聞いていると遠くで微かに小さな声が聞こえた。人間の声ではないが明らかに助けを求めている。
「ちょっとどこ行くの?」
「ごめん、先に行ってくれないか」
神室にそう言ってその場を離れる。先程声が聞こえた方角へ足を進めること数分。そこには小さな子猫がいた。見たところ酷い怪我をしているようだ。
(車にでも轢かれたのか…)
俺はそう思いながら子猫を抱き抱え、近くの公園に向かい、ベンチに座った。子猫は出血が酷く、このままでは時間の問題だった。
(ごめんな…お前のこと助けてやれないよ…)
そう思っているといつの間にか神室が目の前に来ていた。
「泉……」
「こいつ…もうすぐ死ぬんだ……」
「もうどうにもならないの…?その子猫…」
「出血が多すぎるし、多分内臓とかも潰されちゃってるから…」
「そう……」
そのまま時間が過ぎていき、やがて子猫の心臓が止まってしまった。
「死んだ……心臓が止まった…」
「え……」
子猫は俺の腕の中で静かに息絶えていた。
「そろそろ行こう。でもその前に……」
俺は辺りを見渡し、近くにある木に近づいた。そして小さな穴を掘り、子猫を埋めた。
(そういえば前にも似たようなことがあったな……)
俺は以前、道路で車に轢かれた子犬を木の下に埋めたことがあった。最初は死んだと分かったらすぐにゴミ箱に捨ててしまって、一緒にいた女友達に嫌われてしまった。最初からこうしていればあの子にも嫌われずに済んだのに。
「泉って結構優しいのね」
「あんなところにずっといるよりはいいだろ。せめてここならと思ってさ」
「……ねぇ、私が坂柳に知られたことってなんだと思う?」
「いきなりどうしたんだ。他人には知られたくないんだろ?」
「泉になら話してもいいと思ったからよ」
そう言って神室はなぜ坂柳と一緒に行動しているのかを話してくれた。話を聞くとなんでも神室は万引きの常習犯らしく、スリルを味わうためにやっていたそうだ。ここへ入学してからも何度かやったと言っていて、思った以上にかなり手つきが慣れているようだ。そんな中、入学して1週間後に万引きをしたところを坂柳に見られてしまい、それがきっかけで坂柳と逐一行動することになったと言う。
「まぁ、こんな感じなわけよ。笑えるでしょ」
「そんなことがあったのか。まさか神室が万引きしてたなんてな。なぁ、今も万引きはやっているのか?やってるんだったらもうやめなよ」
「今はもう坂柳にこき使われてそんなことする暇なんてないわ。それともう一つ、泉に話しておきたいことが…………ううん、何でもない」
神室はまだ何か言おうとしたが、途中でやめてしまった。
「あのさ、暇なら今からケヤキモールに行かない?ちょっと付き合ってほしいんだけど」
「分かったよ。ずっと歩いててもしょうがないからな」
その後二人でケヤキモールに行き、遊んだり買い物したりするのであった。
___________________
神室との休日から更に数日が経ち、今は6月の中旬に入っていた。そんな中、休み時間中にトイレから戻っていると一人の女子生徒から声を掛けられた。
「君が泉君だよね?」
「そうだけど。君は?」
「こうして話すのは初めてだったよね。初めまして、私はDクラスの
Dクラスってことは綾小路と一緒か。
「それで俺に何の用?」
「泉君、綾小路君と仲良いよね。私も泉君と仲良くなりたいなって思って。もし迷惑じゃないなら私と友達になってくれるかな?」
「全然迷惑なんかじゃないよ。むしろ俺なんかでよければ」
「ありがとう!じゃあ早速連絡先交換しよ!」
こうして櫛田と連絡先を交換した。
「そういえば泉君って運動神経良いんだね。体育の先生に聞いたんだけど水泳のタイムじゃ、うちのクラスの高円寺君よりも早かったって」
「ちょっと調子が良かっただけだよ」
「それでもとても凄いよ!あの高円寺君に勝っちゃうだなんて!」
「はは…ありがとう」
「それじゃあ時間だからそろそろ戻るね。またね、泉君」
「ああ、またな」
そして全ての授業が終わり、今は帰りのホームルーム中であった。いつもなら明日のことを説明して終了なのだが、最後の方で真嶋先生があることについて注意喚起を促した。
「これから話すことについては生徒全員にも関係してくるかもしれないことだ。しっかり聞いておくように」
深刻な顔をした真嶋先生の発言によって教室内に緊張が走る。
「この敷地内で少し前から一人の女性が行方不明になっているそうだ。警察の調べでは何らかの事件に巻き込まれた可能性があるとのことだ」
真嶋先生の話を聞いて生徒たちが騒つく。
「あくまで仮定の話だか、もしかしたらまだ敷地内のどこかに犯人がいる可能性がある。君たちもなるべく不要な外出はしないようにしてほしい」
以上のことを説明して、ホームルームは終了した。やがて先生が出て行くと、みんなそのことについて話し合っていた。
「物騒な世の中ね。少し前にもミンチ殺人って言うのがあったのに」
「そうだな…」
行方不明者か…だとすると誘拐か何か別のことなのか。それとも……いや、まさかな…
来週は申し訳ないですが投稿出来ないかもしれません。
あと、ヒロインについては神室と椎名の二人です。