泉新一のいる実力至上主義の教室   作:salong

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目撃者

「人間の食事を摂ってすでに数ヶ月経つがどうだ?続けていけそうか?」

 

その日の夜。とあるビルの小部屋で二人の男が話し合っていた。一見すると二人ともただの一般人なのだが、それは見た目のみであり、実際は大きく違った。一人は左右の目があらぬ方向をむいており、頭部の形が少し変形しているのに対し、もう一人の男は顔に複数の目玉が浮き出ていた。普通の人間からするととてもこの世のものとは思えないだろう。

 

「一応続けてはいるが……流石に一生は無理かもしれん」

 

「そうか。やはり個体によっては少々違い(・・・・・・・・・・・)があるようだな。ところでこの街では行方不明者が出ているそうじゃないか。一応聞いておくがお前の仕業か?」

 

「そうだ。もう我慢出来なかったんでね。丁度近くに健康な雌がいたから、人気のないところに誘い出してな。後処理もちゃんとやっているから問題はない」

 

淡々と自分がやったことを話す男。その声には感情が一切こもっていない。

 

「人間共に気付かれると面倒だからな。それと気になることがあるのだか…この街には、お前以外に仲間がいるのか?」

 

「いや、ここに来て数ヶ月経つが仲間とは一度も遭遇していない。まさか他にも仲間がいたのか?」

 

「ああ、ここに来るまでに波長を感じた。しかし、疑問に思うことがあってな」

 

「疑問に思うことだと?」

 

「仲間の波長にしては反応があまりにも弱すぎる。まるで眠っているような感じだった」

 

「なるほど。確かにそれは疑問に思ってしまうな。一体そいつが何なのか後々確かめる必要がありそうだ」

 

「確かめるのはいいが、あまり派手に動くようなことは控えるんだな」

 

「わかっている」

 

 

 

 

___________________

 

 

 

 

「泉、昨日Dクラスの連中と一緒に他クラスを回っていたらしいじゃないか」

 

翌朝。教室に入り、席に座ると橋本がそう言ってきた。どうやら昨日のことはすでに知られているみたいだ。きっと、放課後に残っていたAクラスの生徒が知らせたのだろう。

 

「ああ、少し協力しようと思ってさ」

 

「お前もお人好しだよな。わざわざDクラスのためにそんなことするなんてよ」

 

「Dクラスには友達がいるから少し協力しようと思っただけさ」

 

「そうなのか、友達思いだな泉は。そんなところもあるから女子からも人気なんだろうよ」

 

「女子からも人気?何のことだよ?」

 

「知らねーのか?1年のイケメンランキングの中で泉は上位に入ってるんだぞ」

 

イケメンランキングって…そんなものがあったのか。全然知らなかった。

 

「お前も少しは自覚もてよ。真澄ちゃんだって俺と泉に対する接し方が全然違うじゃねえか」

 

「そうかな。あれがいつもの神室って感じがするんだけど」

 

「いーや、どう見ても明らかに違うだろ。それに真澄ちゃんってうちのクラスの男子とは全然喋らないし、姫さんや俺らを除くと一人でいる––––」

 

「私が何?」

 

不意に聞き覚えのある声が耳に入り、横を見ると神室が立っていた。先程、坂柳と共に教室に着いたらしい。

 

「ああ、橋本が神室って––––」

 

「いやいや、何でもないからね真澄ちゃん!気にしない、気にしない!」

 

俺の口を塞ぎ、慌てて言葉を被せる橋本。

 

「何なのよ、もう」

 

「じゃあそろそろ席に戻るわ!また後でな!」

 

橋本はそう言って自分の席に戻っていった。しかし、結局この後神室から何を話していたのか問い詰められることになった。

 

 

 

やがて午後の授業が終わり、放課後を迎えた頃、俺は坂柳、神室、橋本、鬼頭と一緒にケヤキモールに向かっていた。本来なら昨日と同じようにDクラスの手伝いをするつもりだったのだが、流石に自派閥のリーダーからの誘いを断るわけにはいかない。Dクラスには悪いが用事が出来たと言って断らせてもらった。

 

ちなみに今日集まる理由としては、今後のことについて話し合っておきたいからだそうだ。坂柳はとても頭が切れるし、先のことにも手を打っておくつもりなのだろう。そしてケヤキモールに到着し、カフェがある方に向かう。そして5人全員席に座り、適当に注文してコーヒーがきたところで話し合いが始まった。内容としては派閥のことや他クラスのリーダー、学校に関してのことなど様々だった。

 

これらについては、坂柳自身が調べたこともあるかもしれないが大半のことは神室を使って調べたのだろう。これだけこき使われれば、あんな風に愚痴を吐きまくるのも納得だ。万引きを見られたのが本当に痛かったな。そういえば今思い出したが、俺も似たようなことをやっていたな。正確にはミギーがやったんだけど。まぁ…あれは状況が状況だったから…仕方のないことだ…ミギーも言っていたように生きるためだったんだ。神様……もう一度謝っておきます。どうかお許しください、とあの時の悪行について思っているうちに話し合いは終盤に向かっていた。

 

「それにしても退屈ですね……CクラスとDクラスは醜い争いの真っ最中。一方Bクラスはリーダーである一之瀬帆波さんは優秀ですが、その他の方たちは何か突出しているようなものを持っていません。それに一之瀬さん自身も性格的にリーダーに向いてない気がします」

 

つまらなそうな表情を浮かべ、そう語る坂柳。

 

「まぁまぁ、そう言うなよ姫さん。もしかしたらそのうち面白いことが起きるかもしれないだろ。今は長い目で見ようぜ」

 

「そうですね。そうなってくれるといいんですが」

 

そう言って坂柳を宥める橋本。すると次に話題作りのためかこんなことを言ってくる。

 

「そういや、行方不明者の件はどうなったんだろうな?俺らが初めて知った時より前からすでに警察は動いているはずだし、この敷地内に犯人がいるならすぐに捕まりそうなんだけどな。てか、行方不明の人は生きてんのか?」

 

「知らないわよ。学校側が何も言ってこないんだから」

 

「行方不明者の件ですか。もし、生きておられるのならこの敷地内のどこかに監禁されている可能性がありますね。あるいは、すでに犯人と一緒に敷地内の外に行ってしまった可能性も考えられます」

 

行方不明者が生きているかは別として…犯人はもうここにはいない可能性が高いだろうな。ここにいてもすぐに捜査の包囲網に引っかかってしまうだろうから。

 

「確かにもうここにはいないかもしれないな。そうなると時間が掛かりそうだ。それと話は変わるんだけどよ、姫さんや真澄ちゃんは知ってるか?ネットとかで噂になってた化け物のことを」

 

「ええ、知っていますとも。よくメディアでも報道されていましたから」

 

「私もそのことは散々聞いてるわよ。ミンチ殺人もその化け物の仕業なんじゃないかって騒がれてたし。まさかあんた、犯人がその化け物って言いたいわけ?」

 

「いやいや、ただ聞いてみただけさ。流石に化け物の仕業なんてことはないだろうよ」

 

「所詮は噂ですよ。現実にそのような怪物がいるはずがありません。泉君もそう思いますよね?」

 

目線をこちらに向けて、話を振ってくる坂柳。普通はそう思うかもしれないが、本当にいるんだよなこれが……ここは少し、気を付けておくように言っておくか。

 

「ああ……だけど少しは用心しておいた方がいいかもしれないよ。最近落ち着いてきたとは言っても、また何が起きるかわからないし、それだけ今の世の中が物騒過ぎるんだ。みんな他人事のようにしてるけど、突然平凡な日常が簡単に崩れることだってあるんだからもっと気を付けるべきだと思うんだ……」

 

「おいおい、いきなりどうしたんだ?そんなまじになってよ」

 

「確かに一理ありますね…少し前までは悲惨な事件が起きていましたから。いくら落ち着いてきたとは言え、第二第三の事件が起きてしまう可能性も視野に入れて常に行動しなければならないというわけですね」

 

「……泉が言うと何か妙に説得力がある気がするな」

 

今まで黙っていた鬼頭がそう発する。実際、そういう目にあったからな…そしてその後も少し雑談をして今日は解散となった。

 

 

 

___________________

 

 

 

 

次の日。朝登校していると綾小路たちと遭遇し、目撃者が見つかったと聞かされた。しかもその目撃者はDクラスの生徒だそうだ。佐倉と言ってクラスでも非常に大人しく、目立たない子であるらしい。名乗り出なかったのもその性格のためなのだろう。そのため櫛田が放課後に事件のことについて聞いてみると言っていた。こればっかりは上手くいってくれると願うしかないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になると櫛田が予定通り、佐倉に声を掛ける。しかし、佐倉は明らかに困ったような顔をしており、この後予定があるからと言ってすぐに目線を逸らしてしまった。やはり彼女の性格上、こうなってしまうのは仕方のないことだ。結局、その後もまともに話し合うことは出来ず、佐倉はその場から立ち去ろうとする。しかし、その際に本堂とぶつかり私物のカメラを落としてしまう。佐倉は慌ててデジカメを拾い上げたが、残念なことに落とした衝撃で壊れてしまったようだ。

 

「ご、ごめんね。私が急に話しかけたから……」

 

「違います……不注意だったのは、私ですから……さようなら」

 

そう言って佐倉は教室から出て行ってしまった。佐倉が出て行った後、須藤が椅子にもたれながら文句を吐き捨てる。それを見兼ねた櫛田が宥めるが、今度は堀北が須藤に対して長々とセリフを言い放つ。今まで随分と溜め込んでいたのだろう。そしてそこからは最悪の空気になっていく。特に高円寺の退学しておいた方が良かったんじゃないかと言う発言に切れた須藤が机を蹴り飛ばし、最悪の事態に陥ろうとしていたが、平田や櫛田によってなんとか収まることが出来た。

 

やがて喧嘩寸前になった須藤は教室から出て行き、高円寺もまた、デートの時間と言って教室を後にした。二人が出て行った後も堀北たちを中心に話が進み、その中で俺の発言により監視カメラが話題に出る。堀北は知っていたが櫛田や池はカメラの存在に気付いていなかったようだ。俺はある程度カメラについて説明した後に帰ろうとしたが堀北に「綾小路くん、一緒に帰らない?」と誘われる。一体どういうつもりだ堀北……そして二人で廊下に出ると俺は堀北にこう言った。

 

「そうだ。帰る前に一ヶ所寄りたいんだが、いいか?」

 

「長くならないなら構わないわ」

 

「そうだな。10分くらいかな」

 

そう言って二人で横に並びながら進むのだった。




パラサイトは人間を食べなくても生きていけますが、個体によっては欲に負けて島田のように食べているものもいると思います。
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