ラブコメの登場人物になって、女子にちやほやされる。
男子なら誰でも憧れるものだ。多分。
だが、俺は違った。
俺はどちらかというと、「くそっ…じれってーな! 俺ちょっといやらしい雰囲気にしてきます!」というタイプだった。
つまりは、主人公の恋路を影ながら(?)応援するタイプだ。
そして、いつまでも主人公への好意を言い出せないヒロイン。
そんな場面に、俺は今直面していた。
「あ、あの、
「ん?
「あの、あのね……その、放課後、に……」
「んん? 何だって?」
やれやれ。
これだから鈍感な奴は困るぜ。
亜美は放課後に貴司を何処かに誘いたいんだろう。
俺たち三人は幼馴染だからな。それくらい分かるぜ。
席が三つは離れているが、それでも俺には良く聞こえてくるぜ。その心の声がな!
ここは助け船を出してやるか。
瞬間移動するかの如く、俺は貴司の席に飛んでいく。
「おい貴司、亜美が放課後お前と一緒にどっか行きたいんだってよ」
「うおっ、どうした急に」
「え、あ、ち、ちが……」
「なっ、亜美!」
「そうなの? 亜美」
「……
バカ! 亜美のバカ! もう知らない!
っていうのは嘘で、俺まで誘ってどうするんだよ。
別に行っても構わないが、途中で俺はドロンするぞ。
二人っきりになったらお前はちゃんと貴司と話せるのか?
いや、それを茂みからでも眺めるのも一興。
よし、構わん。行こうか。
――――――
放課後。
俺は一緒に行く、と見せかけた数十秒後に、既にドロンしていた。
探す貴司。困る亜美。
仕方ない、スマホからグループにメッセージでも送っておくか。
『すまん、用事出来たからあとは二人で楽しんでくれ』
これで良し。
あとは二人からギリギリ見つからない距離を
――と思ったのだが。近くの大きい公園に入っていった。
なるほど。これはこれで都合がいい。
そして偶然来ていたのか、クレープの屋台で二つクレープを買い、ベンチに座って食べながら何やら話している。
何とも微笑ましい空間だ。
だが、話している内容も気になる。くそっ、もうちょっと近くに潜めれば良かったんだけどな。
だが、仲は進展しているようだ。二人とも笑顔だし。
尊い。これはいいものだ。
「何してんの」
「はぅあっ!?」
唐突に後ろから声を掛けられた。
振り返ると、そこにはクラスメイトの女子の姿……えーと、名前は確か……。
「佐藤さん?」
「誰それ」
「鈴木さん?」
「違うって」
「高橋さん?」
「もしかして、日本で多い苗字を順番に言ってってる?」
「冗談だよ、田中さん」
「違う! 伊藤! 伊藤
「そっか、惜しかったなぁ」
「どこが!」
プンプンと怒る伊藤さん。
恐らく、幼馴染の亜美以外だと一番仲の良い異性のクラスメイトだ。
「ごめんごめん、伊藤さん」
「で、何してんの、こんなとこで」
「ほら、あれ」
貴司と亜美を指差す。
「尊くね?」
「尊……? いや、ちょっとよく分からんけど」
「つまり、あの二人の仲の良さ、微笑ましいじゃん?」
「微笑ましいけど……え、あの二人ってそういう?」
「そうそう、亜美がさ、貴司の事好きみたいなんだよ」
「へー!」
「貴司もさ、満更でもない~みたいな?」
「いいじゃんいいじゃん! え、尊い」
「尊いだろ?」
俺の趣味を理解してもらえたようで何より。
「だけどなかなか次のステップに進まないみたいでなぁ、じれったいんだよなぁ」
「分かる! あるよねー、漫画とかで『両想いなのにどちらからもなかなか言い出せない』とか!」
「そうそう! 現状まさにそれじゃん?」
「でも、流石に次のステップアップは自分たち自身で進んでって欲しいけどね~」
「それなー。何か関係が進展するような……。あ、そうか!」
「どしたの」
「伊藤さん、俺ら今度デートしない?」
「デー……は、はぁっ!?」
――――――
数日後。
「というわけで、本日はこれからダブルデートをします」
「というわけでって……」
困惑する貴司を尻目に、今日の予定を淡々と説明していく。
「せっかくの日曜日だし、まずは街に出かけてカフェにでも行こうか」
「ダブルデートって……昨日のグループメッセージじゃ三人で遊びに行くとしか言ってなかったじゃん」
「まあまあ、そこはおいといて」
「で、あと一人は誰なの?」
「それは見てからのお楽しみってことで」
貴司は終始納得のいかない顔をしていた。
「もう一人とは駅前で待ち合わせしてるから、まずは亜美を迎えに行こうか」
「はぁ……分かったよ……」
なんだ? 貴司の奴。
デートだって言うんだから、もっと喜んでもいいんじゃないのか?