一方で。
「……その、亜美。ごめん」
「貴司くんが謝ることじゃないよ……」
いつもの公園。
さっきからずっと謝ってる貴司くんと、ベンチでうずくまる私。
「僕がもうちょっと早く行動していれば」
「……違うよ」
「何度も亜美から相談受けてたのに、のんびりしてたから、こんなことに……」
「違う。私が……臆病だったせいだよ……」
完全に油断していたんだ。
貴司くんに手伝ってもらったら、私たちの距離感なら、すぐにでも付き合えると思ってた。
でも、学くんは伊藤さんと付き合ってしまった。
私がいつまでも行動しなかったばっかりに。
「……私、これからどうしたらいいのかな」
ぽつりと呟く。
学くんは、まだ付き合ったばかり、みたいな事を言っていた。
だったら、今からでも私からぶつかれば、学くんは別れてくれる?
無理だ。
私の貧相な体と、伊藤さんのいかにも男性受けする体。
私の卑屈で内気な性格と、伊藤さんのおおらかな性格。
どこを取っても、勝てる要素なんてない。
「うっ……うぅっ……」
色々考えたらまた泣けてきてしまった。
さっきカラオケのトイレで泣いてきたばかりなのに。
「僕、ちょっと自販機で飲み物買ってくるよ」
私が泣き出したのが気まずかったのか、貴司くんがどこかへ行ってしまった。
大体、どうして学くんは急にダブルデートなんて考え付いたんだろう。
彼女を見せびらかせたかったから?
違う気がする。学くんがそんなことするはずない。
きっと伊藤さんが考え付いたんだ。
学くんがそんなことするはずないもん。
どこかで私が学くんのことを好きだって知って、見せびらかせたかったんだ。
自分の所有物なんだって、私に知らしめたかったんだ。
許せない。
伊藤さんも。そんな女に負けた、私自身も。
だったら。
私がどんな手を使ってでも。
学くんをあの女から取り戻さないと。
学くんの事を本当に好きなのは私の方なんだって、知らしめてやるんだ。
「お待たせ。はい、水買ってきたよ」
「ありがとう、貴司くん」
「泣いて、少しはすっきりした?」
「え?」
「いや、もう泣き止んでるから。心の整理とかついたのかなって」
「うん、ついたよ」
「そっか、それは良か――」
「貴司くん、学くんのことでお話があるの」
「えっ?」
「今度はね。学くんと、伊藤さんを別れさせるように手伝ってほしいの」
「……えっ?」
――――――
「あれ? 二人してこんな時間にウチに来るなんて、一体どうしたんだ?」
ゲーセンで伊藤さんの告白を受け入れ、色々と店を見て回って別れた後。
自宅で今日あったことを色々思い出しながらゴロゴロしていると、貴司と亜美が訪問してきた。
「あ、いや……今日のダブルデートとは別に、遊べないかなって思って」
「おお、良いぞ! 上がって上がって」
この二人はまだ恋愛感情が芽生えてない(伊藤さん談)らしいからな。
恋を芽生えさせるにはチャンスかもしれない。
「おじさんとおばさん、今日もいないんだね」
亜美がきょろきょろしながら訪ねてくる。
「ああ、今日も仕事行ってるっぽい」
「日曜日なのに大変だね。夕ご飯とか大丈夫? 私、作るよ?」
「それなら、冷食あるから大丈夫」
「それじゃ体に悪いよ。今日は私が作ってあげる」
言いながら俺の腕に引っ付いてくる亜美。
腕に微妙に柔らかい感触が――って、やかましいわ!
ちょっと亜美さん? 俺に引っ付いてどうするんですか?
あなたのターゲットはすぐそこに居ますよ?
そう思って、貴司の方を見ると。
「……」
どこか気まずそうに目を伏せていた。
どうしたんだ?
「と、とりあえず離れようか、亜美。ジュースとか持ってくから、二人とも俺の部屋で待っててくれ」
「うん、分かった」
「……うん」
……んん?
どう見ても二人の様子がおかしい。
さっきまでお通夜ムードだったとは考えられないほど亜美は明るい。正直普段よりも明るい。
反面貴司は暗い表情を見せる。どこか申し訳なさそうに。
何があったんだ、この二人。
「お待たせ、オレンジジュースで良かったよな? 麦茶とかの方が良いなら持ってくるけど」
「何でも大丈夫だよ」
「あー、えっと……」
貴司が何やら言いたげにしている。
「どうした? 貴司」
「ごめん、ちょっとトイレ借りていい?」
「ああ、場所分かるよな? 一階に降りて――」
「大丈夫だから。……本当にごめん」
そう言って部屋を出て行く貴司。
何をそんなに謝ることがあるんだ。
もしかして今日の失態を今謝っているのか?
そんなの気にしてないって!
これから上手くやっていけばいいんだから!
「ねえ、学くん」
「ん?」
「私たち、今、二人きりだね」
「え? ああ、そうだなぁ」
俺と二人きりになって、どうするんだ。
どうせなら貴司と二人きりになれよ。