ありふれない紅き閃光   作:銀翼

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逆鱗

ホルアドの町。王家所有の宿。深夜。

 

生徒達は、ハジメが奈落の奥底に落下していった事で仲間の死をまざまざと見せつけられ、美味しい筈の食事も殆ど喉を通らず、通る事が出来たとしても味が解らない程に憔悴していて各々部屋の戻るとそのまま話し込むか眠り込んでしまった。

 

その中で、零は一人部屋で話していた。相手はハジメを補佐する為に一緒に奈落に向かっていったクロワールだ。

 

レプリロイドの通信機能が進化して、登録してあるサイバーエルフとの交信が可能になったのだ。

 

「そうか。ハジメは生きているか」

 

『うん。アニマルのLV6の能力と丁度いいタイミングで流れて来た滝でね』

 

サイバーエルフのアニマルLV6の能力は奈落に落ちてもすぐに浮かび上がって復帰出来る能力だ。だがクロワールが言うには復帰するにはもう高度が足りなかったので、そのまま能力の応用をしながら流れて来た滝で落下速度を劇的に緩めて今に至るという。

 

『でも』

 

「?」

 

明るかったクロワールの声が、少し影を帯びる。

 

『でも、下層に生きてる魔物の攻撃を受けて左腕を斬り飛ばされて、食べられた……』

 

「……そうか」

 

言うまでもなくハジメはレプリロイドではなく人間。レプリロイドは腕や脚を切断する事や切り離す事、そして接続することもそう難しくないが、ハジメの場合はもう生やす事もできない。

 

クロワールの後悔は通信越しでも伝わってきた。

 

『ごめんなさい。私がいながら……』

 

「……責任は感じる必要は無い。お前は精一杯やってきた。俺も後を追うからそれまでにハジメの事を頼む」

 

『ありがとう。ゼロ』

 

「……その後ハジメはどうなった?」

 

『何とか錬成でシェルターを造ってそこに避難してるよ。錬成で穴を掘っていくと神結晶を見つけてそれを飲んで、それでもうこれ以上の出血は抑えたけど……』

 

神結晶というのは、大地に流れる魔力が千年という膨大な時の中で偶然出来た魔力溜まりによって、その魔力そのものが結晶化した物体だ。内包する魔力が飽和状態になると液体によって溢れてくる。これを神水と言い、飲めばどんな病や傷もたちどころに治るという物だ。

 

偶然それを見つけたのだから、まだツキは残っていると言えるだろう。

 

「それからはどうなった」

 

『うん。魔物にやられたことで精神的に追い詰められて、今は死にたい死にたくないを繰り返してる。でももうそろそろ――』

 

――コンコンコン

 

「零。俺だ。メルドだ」

 

「また後だ。空いてるぞ」

 

扉をノックする音が響き、それと同様に来客を示す。零は扉を開けて中にメルドを入れる。

 

「何の用だ」

 

「あぁ。これだ」

 

メルドが差し出してきたのは零の、正確に言うとゼロのステータスプレート。中身を既に見たのだろうか目は既に真剣で隠し事は許さないというのが解る。何故戦士の天職が破壊神になっているのか、何故こうまで劇的にレベルが上がっているのか、技能が有り得ないモノが多すぎるが聞かなければならない事が山積みだ。

 

「俺は、上に報告しなければならない。迷宮で起こった事もそうだしお前の事も全てをだ。だから頼む。話してくれ」

 

異世界からやってきて右も左も解らぬ自分達に厳しくもイロハを叩き込んでくれたメルドが、頭を下げて頼んでくる。当然零はそのメルドの頼みを――

 

「解った。どのように報告するかはメルドに任せる」

 

「済まない」

 

報告によっては零は聖教教会から異端扱いされるだろう。だがかつて世界に対して戦いを挑んだ男だ。神に挑む位別にどうという事は無い。

 

「まず、どれから……。このレプリロイド化というのは一体何だ?」

 

「……」

 

早速来たレプリロイドについての質問。だがこのトータスは科学よりも魔法の方が発展している世界で、ロボットというのは勿論存在しない。

 

「ロボットというのは聞いた事はあるか?」

 

「ロボット……。確かハジメがカラクリでありながら人間を始め生き物に似た外見で複雑な行動が出来る、って宴の時に言ってたな。だがレプリロイドとそのロボットというのはどんな関係にあるんだ?」

 

「レプリロイドは限りなく人間に近いロボットの事を指す。人格を与えられ人間と殆ど変わらない故に自分で考えて答えを出して、喜び、怒り、哀しみ、楽しむ事が出来る」

 

「人格があって人間と殆ど変わらないカラクリ、だと……!?」

 

零からの簡単な説明で目を剥くメルド。正直まだピンとは来ていないが、ハジメから説明を受けていたのを覚えている。

 

『与えられた仕事を熟す位の事は出来はするけど、まだそれ以上の事は出来ないし個人の人格なんてまだまだ夢のまた夢』

 

細かい所は違うがこのような事を言っていた。だがゼロが言うレプリロイドという存在は、そのハジメの技術を軽々と踏み越えて、個人の人格まで持ち合わせているという。

 

「だが、何故お前がそのレプリロイドに?恵理から聞いたがお前は人間だろう」

 

「……それについては言えん」

 

「……そうか」

 

一度レプリロイドとして死に、今は人間として転生したと言ったとしても、メルドであっても恐らくは信じて貰えまい。それ故に今は零は黙っている事にしたしメルドもそれ以上聞いては来なかった。

 

「だが、これだけは聞かせてくれ。今のお前はどっちなんだ?」

 

「……」

 

言われて零は今度こそ黙る。かつてに近い力を手にはしたが、正直今の自分は確実に人間と呼べるのか、それとも限りなく人間に近い人格を持ったロボットなのか、それがどう答えれば良いのか解らない。

 

答えに窮する零に、メルドは苦笑いを浮かべる。

 

「済まん。意地悪な質問をした」

 

「あぁ。助かる」

 

「所で、このラーニングシステムというのは何だ?」

 

レプリロイドの事からラーニングシステムについてに話題が移った。ラーニングシステムについては零も答え易い。

 

「相手の行動パターンを分析して、自分の物にする技能だ」

 

「つまり、長期化すればするほど相手は癖や技能、戦力を読み取られて不利になるがお前の方は逆に相手の癖を完全に自分の物にして有利になるという事か」

 

「その認識で間違っていない」

 

信用していない訳では無いが、ラーニングシステムはもう一つ秘密がある。特殊な条件下で強敵を撃破すれば、その強敵の得意技をキャプチャーして彼に合った技に昇華させる事が出来るという事だ。

 

その特殊な条件下というのは、SかAの高レベルの状態で強敵を撃破する、相手の有利とする天候や環境で勝利を収めるという物だ。

 

今日戦ったベヒモスも強敵に分類されるが、最後は彼自身の手で仕留めたのではなく自滅したのでそのキャプチャーが機能しなかったのだ。

 

もう聞きたい事が無いのか、それとも時間の影響でか今はもう出来ないのかは定かでは無いが、質問は終わったらしい。だが、メルドはまだ言葉を出した。

 

「ところで、零。お前はハジメが生きていると思うか?」

 

「……?」

 

質問の真意を測りかねて零は首を傾げるが、メルドは言葉を紡ぐ。

 

「……俺は、現実的に考えてみると光輝が言っていたのが正しいとは思う。だが、あれより下層は俺も行った事が無いから何とも言えん。下層に特殊な条件で生えている木があるか、川が流れているか、横穴から水が流れてそれに乗って落下速度が緩んでいったか、希望的観測も良い所だが光輝(アイツ)の言った事が外れて欲しいと心の奥底から思う」

 

あの場から撤退する事を選んだメルドだが、本音を言うと騎士団団長の地位や何もかも捨てて今すぐにでも迷宮の中に戻ってハジメを連れ戻したかった。だが今はクラスメイト達を預かる立場でそれが出来ない。その今の自分の現状を呪い憎んでいる。その証拠に強く握りこんだ事で爪が掌の皮を突き破り血を流しているのが見える。

 

メルドもこうなのだ。ハジメに錬成師としてのイロハを叩き込んだラングルは、ハジメが奈落の奥底に落ちていった事を知ったらさぞや嘆き悲しむだろう。

 

「……メルド。俺はハジメを探しに行く」

 

「何っ」

 

ゼロから聞いた言葉にメルドが目を剥く。

 

「ダメだ。いくらお前が強い力を持っていてもそれは許可を出せない」

 

「……」

 

メルドの思いは解る。だが天之河光輝以上にゴーイングマイウェイな一面がある零だ。正直メルドに止められたとしても行くつもりだし、メルドもそれを解っていたので苦笑いをする

 

「……俺はこれから独り言を言うから、これは聞き流せ。100年前の最強の冒険者達はかなり大量の物資を持っていたと言うが、どれくらい持ち合わせてたんだろうな?図書館の記録かギルドの記録に残ってるか?嫌、俺は神の使徒(アイツ等)の訓練やケア、騎士団の仕事があるから中々に手が離せないし、調べる事は出来ないなぁ。困った困った」

 

腹芸が苦手なので物凄い位の棒読みで独り言を言うメルド。しかも時折ゼロの方をチラチラと見ているがその真意は嫌でも伝わった。

 

「……あぁ」

 

少しの呆れを見せて頷いた零に、メルドは肩を竦める。

 

「あのな。俺だってこんなの凄い苦手だっていうのは自覚してるんだからそんな呆れてますって感じ出すなよ」

 

どうやら顔に出ていたようだし、メルドもこういう事は苦手と言う認識はあったようだ。だが伝えたい事は伝わったので、迷宮についてはこれで良しとした。

 

「……メルド。最後に一つある」

 

「何だ?言ってみろ」

 

「ベヒモスに放たれた魔法の中で一つだけ、俺達の所に向かってきた魔法の事だ」

 

「あぁ。誰かが放った魔法がお前とハジメに向かってきた物だな」

 

「あれは、偶然放たれたモノじゃない。故意に放たれたモノだ。俺はそれを放った奴の顔を見た」

 

「何ッ!?」

 

正直誰があの魔法を放ったのか、メルドは見ていないが零ははっきりとその者の顔を見た。殺意や嫉妬、そして呪詛をその顔に滲ませた人間。ゼロはその人物の名前を告げる。

 

「檜山大介」

 

「檜山……。確か、元の世界でもハジメを虐めていたが、お前によって制裁を加えられたと言っていたな。しかも迷宮に潜る前にハジメに返り討ちされたと聞いたが、成る程。動機としては十分に考えられる」

 

「風魔法に適性があったがその適正では無い炎の魔法を使ったのは自分にその責任を行かせない為だろうな」

 

「だが、アイツは一体何故あそこまでハジメを敵対視している?元の世界では何があった?」

 

「詳しい事は解らん。だがアイツは生粋の負け犬だ。自分より劣るハジメを虐めての優越感だろうな」

 

「負け犬……」

 

正直詳しい事についてはゼロも解っていない。だがゼロはそういう負け犬は忌み嫌う。

 

「成る程な……。遅い時間に聴取して悪かった。今日はもうゆっくりと休め。これは確かに返したぞ」

 

「あぁ」

 

ベッドのサイドテーブルにステータスプレートを置き、意味深な笑みを浮かべてメルドは部屋から去っていった。

 

それを見届けると、零はベッドに身を横たえさせ、休む事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「――以上が、オルクス大迷宮にて起こった出来事の全てです」

 

「左様か」

 

ホルアドの町から王都に帰還した一行は、片膝をついて跪くメルドを筆頭に光輝、龍太郎、恵理、鈴、そして零が王都にある謁見の間にて、教皇のイシュタル、国王であるエリヒド、王妃のルルアリア、王女のリリアーナ、王子のランデル、国家錬成師局局長のラングルに神の使徒の中で唯一の大人であり作農師の畑山愛子を始め数多くの文武官に報告をしていた。

 

神の使徒の一人であるハジメが奈落の奥底に落ちていった事で「死」をまざまざと見せつけられた神の使徒達はとても迷宮に潜り続けられるような精神状態では無い上、これから全員に対してケアを行う必要がある。

 

教え子の一人であり愛弟子であるハジメが奈落の奥底に落下していき、生存は絶望的との報告を受けた時、錬成の師である愛子とラングルの表情はそれこそ己の身が切り裂かれたようなそれだった。

 

しかし王族や教会はそうでは無かった。今は戦えない。だからこそケアをする必要があると懇々とメルドは説いていったが、教会側はやんわりと言葉を柔らかくして戦線復帰させようとしたが、メルドはそれに断固拒否。これについては後日という事になった。

 

このまま何事も無く、報告が終わるかも知れない。そう思った時だった。

 

「あの無能な錬成師の餓鬼が一人迷宮の奥底に、か。全くベヒモスという魔物に無謀にも挑んだ結果がこれか」

 

「役立たずは役立たずらしくすぐに逃げて引き籠っておればよかったようなモノを。まぁあの役立たずの犠牲で他が生き残っただけ良しとするか」

 

一人の重臣がハジメに対して嘲りの言葉を吐き、それがそのまま他の重臣に移っていったのだ。しかもそれを師であり、国家錬成師局局長であるラングルの目の前で言っているのだ。

 

その言葉でルルアリアやリリアーナ、メルドにラングル、愛子を始めとした良識のある者達はギョッと目を剥いた。だがハジメに対しての嘲りは止まらない。寧ろ国王や教皇、更には光輝までもハジメへの誹謗中傷に加担しているのだ。

 

このままでは止まらない。そう思った時だった。

 

何かが収束するような音が響き――。

 

――ガァンッ!!

 

何かを思いっきり叩き付けた音でその嘲りは止んだ。皆見てみるとそこには人間のままゼットセイバーを展開し、思いっきり振り抜いた姿勢の零がいた。出力は抑えたとは言ってもその状態で最大限までチャージしたゼットセイバーを叩き付けた箇所の床には大きな亀裂が走りクレーターが出来ている。

 

「「!?」」

 

「……」

 

その音で、嘲り笑っていた者達は一気に静まり返り、床の惨状を見て理解した。次に零を怒らせてしまえば自分があの床と同じ末路を辿る事になると。

 

嘲笑が止み静かになる謁見の間だが、別の声が響き渡る。天之河光輝だ。

 

「おい巌人!一体何を!?」

 

「……」

 

しかし詰め寄る光輝を、零は表情一つ変える事無く片手で顔を掴むとそれを上に持ち上げていく。それに比例するように光輝の脚が床から離れ宙づりになっていく。

 

「あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ……ッ!!」

 

光輝の頭を締め上げる零の握力が次第に増していくのか、光輝の頭からミシミシと聞こえてきてはならない音が響き渡る。しかし零は全く表情を変えないのでそれが逆に恐怖を与えていった。

 

「今の言葉は本心か」

 

「……」

 

零の静かだが殺意の籠った声を聞いただけで、イシュタルやエリヒドの顔が青褪める。

 

是非の答えは恐らくどちらでも同じ末路を辿る事になるだろう。是で答えればいざ知らず、非で答えれば自分達は立場で嘘吐きのレッテルを貼られて信用を失いかねない。

 

その間にも光輝の呻き声は謁見の間に響き渡り、空気が重苦しくなっていくなっていく。

 

「巌人。そこまでにしてくれ」

 

その空気の中でラングルが止めに入る。

 

「本来なら儂がせねばならん事じゃが、お主があの坊主の為に怒ってくれた。それで良い。だからどうか、抑えてくれ」

 

「そうだ。今ここで光輝をやったとしてもお前の立場は悪くなるだけだ。だから頼む」

 

「そうです!後は私達で何とかします。だから、お願いします!」

 

「そうだよ零君!今は抑えて!」

 

「……」

 

ラングル、メルド、愛子に恵理から諭されて、零は光輝の頭から手を離すと光輝はその場で尻餅をついた。

 

「い、いたた……」

 

零の手から解放された事で光輝は締め上げられた頭を抑えながら零に怨嗟の籠った目で見てくるが、零は特に大して取り合わない。というより道端の小石に一々意識を向けないというような表情だ。

 

「……これが王家や教会の総意というのが良く解った。儂は局に帰らせて貰う」

 

怒りに満ちた声でラングルは脚を踏み鳴らして謁見の間から去っていく。

 

「この決定については後日、という事でしたが今決めました。これまで謝罪も無く悪びれる事もせず、今の状態で戦えない生徒達にまで強行させるというのが教会の方針なら私達は一切協力しません!貴方達だけで魔人族との戦争に勝って下さい!」

 

愛子から言われてエリヒドとイシュタルを始めとした上層部は更に顔を青褪めさせる。作農師はこの世界の食糧事情を大きく変えると言われており、ある意味では勇者の光輝よりも重要視される天職だ。

 

その愛子から言われて、漸くまだ謝罪していないという事に気付かされた。

 

「……錬成師南雲ハジメに対して嘲り笑った事、このエリヒド・S・B・ハイリヒの名に置いて正式に謝罪する」

 

「同じく、このイシュタル・ランゴバルドの名に置いて謝罪します」

 

誠意が余り感じられない謝罪だが、トップの二人が謝罪した事で嘲笑していた文武官は頭を下げての謝罪が伝播していった。

 

「……」

 

誠意があるかどうかは別として謝罪をしていった事で、零は展開したままだったゼットセイバーを直すと、そのまま長い金髪をなびかせながら身を翻す。

 

「待て、巌人……!」

 

アイアンクロ―から解き放たれたが、余程強く握りこまれたのか光輝は零に手を伸ばすが上手くバランスが取れないので上手く立ち上がれずに藻掻く。だが零はそんな光輝をまるでいないかのように無視をして、謁見の間から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからと言う物、生徒達の殆どは訓練に参加する事は無かった。ハジメが奈落の奥底に落下していった事で死と言う物が限りなく近い所にあり、元の世界に帰れずに死ぬのかと部屋に引き籠ったり、食堂兼サロンに入り浸ったりしていた。

 

教会側と王族側は愛子と交わした約束を必死に守り、戦える状態では無い生徒達には口出しはしていない。

 

しかしあくまで殆ど。それに入っていない生徒も勿論存在している。天之河光輝率いる勇者パーティを筆頭に、檜山大介がリーダーをしている小悪党組、永山重吾率いるパーティ、そして巌人零がそれに入っている。

 

また、戦えないが何か役に立ちたいという事で畑山愛子を守る隊、園部優花を筆頭に玉井淳史、宮崎奈々、菅原妙子、そして清水幸利が愛ちゃん護衛隊を結成して王都から離れていった。

 

そして、ハジメが奈落の奥底に落下してから数日後。ハイリヒ王国王都訓練場。

 

その訓練場にある闘技場で二人の男が向かい合っていた。

 

片方は黒いボディスーツに紅いアーマー、同色のヘルメットを被った男。巌人零改めゼロ。そのゼロは右手に翡翠に輝く剣、ゼットセイバーを持ち鋭い眼光にかつて撃破した親友の紛い物に抱いたのと同等の殺意を込めた眼差しで見ている。

 

もう一方は黒色の衣服と同色のアイアンアーマーを着用し、両手に長剣を握り、腰に長剣の鞘を佩いている茶髪の男子生徒。しかし殺意に満ちた眼差しで見つめるゼロとは正反対に、その男子生徒は恐れ慄いている表情を浮かべている。

 

身体はもうゼロから出される殺気と殺意によって震えており、歯がカチカチと鳴り響き汗が止まらないし視界も可笑しくなってきた。両手握りにしている手の中では汗をびっしょりと掻いていて、今にも手から剣を手放しそうになっている。

 

だが、時間は待ってくれないし、ここにいるのはメルド率いる騎士団員や檜山が率いる小悪党組だけで誰も止めてくれない。

 

審判役を務めているメルドが声を出す。

 

「これより、巌人零対檜山大介の模擬戦を開始する。それでは、始め!」

 

それから、檜山はゼロに降参すら許されず、肉体的にも精神的にも叩きのめされた為に暫くベッドとお友達になる日々を過ごす事になった。

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