ありふれない紅き閃光   作:銀翼

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個人的な見解かもですが、実際ミュトスフォームってあの形態ですからバスター、ロッド、シールドって使えなくなると思います。


約束

光輝がゼロによって叩きのめされた日の夜 零の部屋

 

その零の部屋にメルドがやって来て、零と話をしていた。内容は昼に見せたミュトスフォームについてとその昼に行った零と光輝の模擬戦についてだ。

 

零からミュトスフォームについての説明を受けて、メルドは羽ペンを用いて羊皮紙に一つずつメモを取っていくが、最後の一つが終わりそれを確認する。

 

「……成る程。これで全部か?」

 

「あぁ。それで全部だ」

 

「そうか。しかし、このミュトスフォームってのは何と言えば良いのか解らんな」

 

書いたメモを見て、メルドは苦笑する。

 

ミュトスフォームの前に先ずフォームチェンジについての説明だ。フォームチェンジというのはゼロが特定の行動を多く行っていく事で覚醒し、装備する事でゼロの能力を変えるシステムの事だ。

 

竜の如き攻撃力、要塞の如き防御能力、韋駄天の如き敏捷性、弾をセイバーやシールドで消滅させる、射撃能力向上、回復ドロップ上昇、チャージ攻撃をタイムラグ無しで放つ……とげにも様々だ。

 

だが向上すると同時に低下するのもある。防御力に重きを置いて攻撃力が低下するのもあれば反対に攻撃力を向上させれば紙にも劣る程に防御能力が下がる程にもなる。

 

ミュトスフォームはその数あるフォームの全てを凝縮したオールマイティなフォームであり、お互いがお互いの弱点を補いあっている。バスターショットはオミットされていたが、威力がバスターショット並に弱いがEXスキル無しでもゼットセイバーでの遠距離攻撃が出来るらしく特にプラマイゼロとも言えるが、ゼットセイバーが長剣型となった事で居合での攻撃が出来るようになった。しかし同時にロッド系統とシールドブーメランは装備出来なくなった。

 

「……だが、これは正直教会が黙っていないだろうな。勇者である光輝がお前によって倒された事でこれ以上の戦力低下は教会側としても見逃しておくわけにはいかないだろう」

 

「教会の状況など知らん」

 

「お前ならそう言うと思ったよ」

 

零がバッサリと教会の事情を斬り捨てると、メルドは苦笑いを浮かべる。だがすぐに表情を切り替える。

 

「それと、準備の方はどうだ?」

 

「あぁ、物資はラングルがくれた物に全て入っている」

 

零が持ち上げて見せてくれたのは小さな革袋。しかしこれはただの革袋では無くれっきとしたアーティファクトだ。

 

そのアーティファクトを目にしたメルドはその目を伏せる。

 

「あぁ。ラングル局長が下野される前にお前に託したアーティファクトだな……」

 

ラングルは、あの謁見の間での出来事から王室と教会の対応に失望し、国家錬成師局を閉鎖。自身と運命を共にすると決めた部下達と共に下野していった。

 

ここハイリヒ王国では元々から錬成師に対しての扱いが酷かったが、錬成師達が揃って下野していった事で教会や重臣や諸侯達が大いに困る事になった。物品が壊れたら錬成師に注文して素材を渡して修理する。という事をこれまでしていたがその修理が効かなくなった。修理をするという事が出来なくなると購入するという選択肢を選ぶことになるが、諸侯や貴族の中には全くのオリジナルがあり、とても購入する事が出来ない物も多数存在する。

 

しかも購入するにしても王都でも粗悪品を高額な値段で買わされることも多々あるので、結構な問題になっていった。

 

王はこの問題を受けてラングルに部下達を連れて戻るよう王命を出したが、ラングルはその命令に従うつもりは無く戻る事を拒否した。

 

そのラングルが零がハジメを助けに行くという事を耳にして、託したのがこの袋型のアーティファクトだ。

 

この袋型のアーティファクトはその見た目の通り収納型で、数に限りこそあるが中にかなりの量の物資を収納する事が可能となっている。量や大きさにもよるが何人かの食料程度ならば何ヶ月も中に納められる上に中は時間が止められているらしく、入れた状態の物がいつでも取り出せる優れものだ。

 

この中には、ハジメが生きている事を考慮して食料が満杯に近くなるほどに入れてある。

 

「準備はこれで大丈夫か……。お前の事だから大抵の事は大丈夫だろうがこの間の事だ。迷宮の中は俺もまだ把握しきれてない所が多いから、気を付けて行け」

 

「あぁ……」

 

「だが、雫や恵理にはこの事は伝えるか?雫は兎も角、恵理はお前の事は好いてるぞ」

 

「……」

 

メルドから言われて、零は口を噤む。恵理があの時、小学生の頃からずっと過ごしていたが故に自分に好意を寄せている事は既に知っている。だが、零には後一歩踏み出すことが出来ないでいた。

 

零、嫌、ゼロの記憶の中にある最も忌まわしき記憶、イレギュラー戦争第四の戦役、警察(イレギュラーハンター)軍隊(レプリフォース)が争ったレプリフォース大戦。

 

自分と友情を分かち合った軍人レプリロイド、その軍人レプリロイドを兄に持ち、自分に好意を抱いている女性型レプリロイド。兄と思いを寄せている男性との争いを止めようと苦心していた。だが男性が兄を討ち取った事により女性レプリロイドの心は千々に砕けていった。

 

かつて存在したとされる強さと優しさを併せ持った伝説のロボット。その伝説のロボットを再現しようとしたが真逆のプログラム故に暴走を起こし、それ以来兄妹のレプリロイドとして別たれていた。

 

相手を捻じ伏せ勝利を収める強さは兄。相手を慈しみ癒す優しさは妹。

 

その兄のCPUチップを用いて己に宿して戦った。男性レプリロイドを、この手で殺す為に。結果、男性レプリロイドの声は終始届かず、男性レプリロイドは女性レプリロイドをその手で破壊するしか無かった。

 

その時の慟哭が、ゼロのメモリーに残っている。

 

『一体、何の為に戦っているのか』

 

それが今、トラウマとしてゼロの鎖として縛り付けている。

 

「……零。おい、零!」

 

「……ッ!」

 

物思いに耽っていたのか、メルドが声を荒げながら身体を揺さぶって来た。それにより意識を取り戻した。

 

「全く、急に黙り込むから少し驚いたぞ。俺から言わせて貰うが、出来る限り早めに言っておいた方が良いぞ。酷な事を言うがハジメが生きているのか死んでいるのか解らんし、ハジメの遺留物も恐らく魔物の腹の中に納まってしまうかもしれん」

 

確かに酷な話ではあるが、零はクロワールから定期的にハジメの現状を見聞きしているので特に変わらない。

 

「話については解った。出来る限り早めに行おう」

 

「あぁ。是非そうしてくれ。それじゃ、俺はこれで」

 

夜であるので、メルドはそのまま零の部屋から出ていった。残された零はベッドの上に横たわり、天井を見上げる。

 

「……」

 

恵理の事を言われ、シエルを筆頭に元の世界での仲間達の事を頭に思い浮かべる。零とて望郷の念は無い訳では無い。しかし、バイルを撃破した後は零はマザーエルフに導かれて別の地球に転生してきた為にあの世界の後は知らない。

 

「シエル……。エックス……。マザーエルフ……」

 

元の世界に戻る事が出来るのか、そもそも帰る必要があるのか、レプリロイドの力を持った人間として生まれ変わった自分を見てどう思うのか。疑問に思う事は山ほどあるがこれはもう今はどうしようもない。

 

その時だった。

 

『ゼロ、聞こえる?私、クロワールだよ』

 

「っ、クロワールか」

 

急な呼び出しを受けて、ゼロは少し身を起こしてクロワールからの通信に応える。

 

『ハジメだけど、喝を入れてなんとか気を取り直したよ。死にたい死にたくないを繰り返す暇あったらこの状況を打破しろ!って』

 

「そうか」

 

『うん。で、肝心の拳銃が落下の衝撃と着水で壊れたから、それを先ず分解してから武器を作ることにした』

 

ハジメは錬成師の職業だ。作ることが出来れば完成したものを素材として分解する事も訓練をすれば可能になる。

 

『魔物を罠に掛けて、それから別の素材で作った武器で殺してから食べた』

 

「魔物の肉を食べた、だと」

 

座学を学んでいる時に教わったことだ。魔物の肉を食べれば、魔物の持つ魔力と人間の持つ魔力は別物で、拒絶反応が起こる。ヘタをすれば身体が崩壊して死に至る事もあるのだ。しかしハジメはそこに至るまでかなりの極限状態だったのだ。生きて、地上に出るためと決めたからには、ということだろう。

 

『吐き出しそうだったけど、何とか神水を飲んで死ぬには至らなかったよ。けど、纏雷(テンライ)っていう魔物の力を得た』

 

「魔物の力を……」

 

聞けばまるでエックスと己のようだ。自分達もイレギュラー戦争の際は倒したボスから特殊武器や得意技(チカラ)を手に入れてボスを倒していったのだ。

 

『それで新しい武器を造っていった。燃焼石はもう濡れて使い物にならなかったから、新しく手に入れた燃焼石とタウル鉱石で拳銃型のレールガン、ドンナーを完成させた』

 

「成る程な。俺も準備が後少しで終わりそうだ。ハジメを追って合流する」

 

『解った』

 

ともあれこれで前に進む為の準備が整ったというところだ。

 

ゼロ自身も準備が九分九厘程終わっているが、僅かな綻びさえも無い、万全を期して事に当たる。

 

その後、二人は連絡を取り合っていった。

 

翌日。ハイリヒ王国は荒れ模様の天気になった。その為に訓練を行うとしたら図書室での座学か屋内訓練場での模擬戦が主流となる。しかし零は雫が使用している寝室で雫、恵理と向き合っていた。

 

朝食を終えてこれからいつでも行けるよう準備をしようとした時に、雫が零を呼び止めたのだ。その時に恵理も近くにいたし、今ここにいる。香織は昨日の通り支えがあって漸く歩ける位には回復出来たが今日は無理はさせないという事でリハビリは休みにしている。

 

「零……。メルドさんから聞いたわ。オルクス大迷宮に、南雲君を探しに行くんでしょう?」

 

「あぁ」

 

隠す事でも無いので、零はあっさりと頷く。

 

「零君……。でも、あの南雲君が落ちていった場所はベヒモスよりももっと強い魔物がいるんだよ?零君がいくら強くたって……それに南雲君は」

 

「ハジメは、生きている」

 

「「ッ!?」」

 

恵理の言葉をズバッと一刀両断する様に断言する零に、二人は息をのむ。零がこうまで断言しているのだ。何かしら根拠と言うのが必ず存在する。

 

「何故、そう言い切れるの?」

 

「ハジメにクロワールをつけさせた。クロワールからの連絡が定期的に来る」

 

「クロワールって確かあの時、ベヒモスとの戦いで南雲君を避難誘導させた……」

 

「そうだ」

 

あの極限の状態でも覚えていた恵理に零は頷く。

 

「クロワールが残した痕跡を頼りに探す」

 

目的はあくまでハジメの捜索。その為には余計な戦闘は行わず、クロワールが残した痕跡を頼りに探していく。だがあれから日が経過しているので残っているのかどうかは解らない。

 

「でも、生きてるって言ってたわよね。食料はどうしているの?」

 

「……魔物の肉を喰らいながら、神水を飲んでいる」

 

「ま、魔物の!?」

 

雫が驚いた声を上げる。恵理も零の言った言葉で口を半開きにしている。座学で魔物の肉を食べたらどうなるのか、というのを聞かされたのだ。

 

簡単に言うと人間が魔物の肉を喰らえば、人間の魔力と魔物の魔力が各々拒絶反応を起こして身体が崩壊を起こし死に至らしめる。だが、神結晶から漏れる神水はあらゆる病気や怪我をたちまち治癒させる力を持つので何とか生きながらえている。

 

だが、いくら神水を飲んだとしても想像を絶する苦痛があったと考えるのは難くない。

 

「その後、錬成で簡単なシェルターを造りそこを拠点にして武器を作成。下層に降りて行っている、と」

 

「……そう」

 

こうまで具体的に聞かされたのだ。それはもう信じるしか選択肢は存在しない、と雫は納得した様子で頷く。そこで恵理が何か決めたような顔で零を見た。

 

「……零君。一つだけ約束して」

 

「?」

 

「小学生からの付き合いだから、私達がいくら言ったとしても零君はもう止められないのは知ってる。でもついていくって言ったら逆に零君を困らせちゃう。それも嫌だから、一つだけ約束。南雲君を連れて、三人で生きて帰って来て」

 

「……考えておこう」

 

零とハジメのみならずクロワールも含めての約束に零は首肯する。

 

「……零、準備の方は、もう大丈夫なの?」

 

「大丈夫だ」

 

「そう……。なら恵理の言う通り、私達がいくら言ってももう無駄ね。その約束、私にも結ばせて欲しいわ」

 

「あぁ」

 

恵理が結んだ約束の中に、雫が共にと約束を入れてくる。迷宮の奥底はどうなっているのか誰も見た事が無いので知らない。それ故にいつも以上に神経を研ぎ澄ませて捜索に励まなくてはならない。

 

零はふと、窓の外を見た。窓の外の空は未だにどんよりと黒雲が広がり、時々雷を鳴らしながら吹き荒れる風と共に豪雨を降らしている。

 

雨は止まる事を知らず、大粒の雨粒が窓に叩き付けられる音と時折落雷が発生し稲光と共に閃光が轟音と共に迸る。

 

「零。いつ行くのか、もう決めてるの?」

 

「この雨が止み次第だ」

 

レプリロイドの状態では雨に濡れても風邪をひく事なんて無いが今の零は人間の状態だ。怪我をすれば血を流すし不摂生をすれば病気にも罹る。今の豪雨の中で行ったらまず間違いなく風邪を引いて寝込む事になるだろう。

 

「なら、いつでも行けるように準備しておかないとね」

 

「あぁ」

 

もう行く準備は完全に整っているので、後は出発する事が出来るまで待機。

 

零は身を翻して、雫の部屋から出ていった。




EXスキルまだ募集してますのでドシドシお願いします

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