ありふれない紅き閃光   作:銀翼

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今回無理やり過ぎたかな……。悪かったら書き換える予定です。


決意

時は、ゼロがサソリモドキを倒した時間まで遡る。

 

オルクス大迷宮上層部 第60階層

 

その場所に神の使徒達がいた。正確に言うと天之河光輝がリーダーを務める勇者パーティ、ゼロに徹底的に叩きのめされたが最近復帰を果たした檜山大介が率いる小悪党組、永井重吾率いるパーティ、そしてメルドと彼が選別した数人の騎士達だ。

 

あれから王都を離脱していった者達や未だに戦う気力が起きない者達を除いて、このオルクス大迷宮に入っていった。目的というのは、ハジメやゼローこの場では零―達の捜索、ではなく少しでも強くなろうという思いからだ。

 

当初、メルドによって零がハジメを探しに迷宮の奥底に向かっていったというのを聞かされた時は驚いたというより、アイツなら大丈夫だろうと割と楽観的な様子の方が多かった。

 

何百年も前に君臨していた最強の冒険者でも全く手も足も出なかったという魔物ベヒモスに対して殆ど単騎(ソロ)で戦いを挑み、退く事も無く圧倒的優位に立っていた光景がまざまざと頭の中に残っているのだ。

 

ベヒモスよりも強い魔物が多く犇めいている下層に向かったとしても、アイツならと考えているのだ。

 

しかし、その中で特に異彩を放った者達がいた。特に零に徹底的に叩きのめされた者達、檜山大介と天之河光輝だ。

 

他のクラスメイトはひょっとしたらと仮定を考えているが、その二人は全くの正反対。

 

檜山は零に叩きのめされてからずっと自室で療養しながら零に意味のない呪詛を吐いていたし、他の小悪党組も光輝と同じようにハジメは既に死んでいると信じて疑わず、零の行動を無駄と断定していた。

 

しかし、小悪党組は元々信頼も信用も殆ど皆無だった上に零によってハジメを奈落の奥底に落とした事を暴露された事で、次に落とされるのは自分だろうと、クラスメートは小悪党組を省くことにした。

 

光輝はあの時ハジメの誹謗中傷に加担したのみならず、ミュトスフォーム状態のゼロと戦う前にクラスメートであった筈のハジメの事をそんな事と切り捨てた事で雫、恵理、鈴を始めとしたクラスメートは勇者パーティから脱退したり、距離を取る事が増えていき今では勇者パーティは彼を支えると決めた龍太郎のみになった。

 

しかし、龍太郎も自分なりに伝えてみたりしたが、光輝は十八番(オハコ)であるご都合主義全開の正義感でそれを全く聞き入れることはなかった。

 

光輝や小悪党組がダメならばと他のパーティが奮起。勇者と比べて力は及ばないまでも連携(チームワーク)を用いていく事で迷宮の探索を進めていった。

 

そしてその状態で60階層に到着した一行だったが、そこで立ち往生してしまった。

 

特に狂猛な魔物達が出ているとかそういうのではない。その階層の光景があの時と殆ど似ているのだ。

 

形は違えども断崖絶壁。しかも向こう側に渡るには一つだけ掛かっているつり橋を渡らないといけない。あの時、ハジメが魔法の誤射を受けて一人奈落の奥底に落下していった時の事を思い出したのだ。

 

そのつり橋付近で、香織が身を乗り出して奈落の奥底を覗き込むと、雫と恵理が近寄っていく。

 

「香織。大丈夫?」

 

「……うん。大丈夫だよ」

 

「そう」

 

洞察力に優れている雫は、その一言だけで香織の精神が如何程かというのを察知した。あの出来事を乗り越えるのではなく、受け入れて少しでも強くなってハジメを探そうと決めている。静かにだが確実に決めた決意だ。

 

「強いよね。香織ちゃん」

 

「そうね」

 

その姿勢に恵理もまた同じことを思う。好意を抱いている男子生徒、巌人零の帰還(かえり)を信じて疑わずに待つ恵理も強い。

 

雫もその恵理を見て、一つ思う。

 

(零……)

 

いつからだったかは解らない。気が付けばいつも零の事を目で追っていた。元から恋心を抱いていた恵理でも零と話しているとなんだかやきもきする事が多くなっていった。

 

天之河光輝とは正反対に無愛想で無表情の時が多いが、その分声を発すれば筋が通っていて傾聴に値する言葉が多いし成績も優秀。その為か良く他の女子達にモテていた。

 

このトータスという世界にいきなり飛ばされて、不安で溜まらないという時も彼は全く変わらなかった。

 

ベヒモスを圧倒したあの紅い姿になったら、依り一層生き生きとして見えた。まるで()()()()()()()()()()()ように。

 

言葉が少ないが、自分自身で危険な相手や道を切り開いて道を作り出す。幼い頃に見た絵本、英雄の物語に出てくる主人公の姿と重なって見えた。

 

これが一体何なのか。零がハジメを探しに行ってから恵理に聞いてみたところ、このような答えが返ってきた。

 

「零君に恋をしてるね。雫ちゃんが相手でも、私は負けないよ。寧ろ相手にとって不足は無いね」

 

普段が図書委員で文学少女のような見た目でその見た目通り大人しい性格をしているが、こう見えて雫の家である八重樫道場で武術を嗜んでいる恵理からの言葉に自覚した。

 

零の事だから心配する方が野暮なのかもしれないが、この迷宮では何が起こるのか解らない。

 

しかし、そんな彼女に対して極めて無遠慮に近づいてくる影があった。

 

天之河光輝(えせゆーしゃ)だ。

 

「香織。君のそういう所は俺も好きだし君の美点でもある。けどいつまでも南雲の死に囚われちゃいけないしそんな余裕は今の俺達には無いんだ!前に進もう!南雲もきっとそれを望んでる」

 

「コイツ、零君の事をナチュラルに忘れてるわ……」

 

「確かにね……」

 

「あぁ……」

 

恋心を抱いている零の事を何とも自然的に省いている事で恵理が忌々し気に、そして聞こえないように言う。そしてそれに雫も同調して頷くと、すぐ近くにいた重吾もそれに賛同する。しかし、香織はそういうことは全く思ってない上に何を言えば光輝は簡単に引き下がるのかを察知した。

 

その証拠に笑みこそ浮かべているが、全く目が笑ってない。寧ろ彼女自身は気付いていないだろうが絶対零度、または屠殺場の家畜を見るような目だった。しかし光輝はそれに気づくことは無かった。

 

「あ、うん。光輝君の言いたい事は解るよ。私は大丈夫だから、先に行こう」

 

「そうか!解ってくれたか!」

 

何とも勘違いも甚だしい。満足そうに先頭に戻っていく光輝の背中を見て、香織はまた表情を暗くする。

 

光輝の中ではハジメと零は既に死んだことになっていて、無自覚に見下していたハジメはともかくそれを追って探しに行っている零も同様に死んだことになっている。それゆえに生存している痕跡を探そうともしてくれず、だからと言ってハジメと零の痕跡を探していると言ったら現実逃避で心が病んでいると自然的に言われた。

 

「香織ちゃん。無理しなくても良いんだよ」

 

恵理が近づき、香織の肩をポンポンと叩くと鈴もそれに同調する。

 

「そうだよカオリン!泣きたかったら声を出して泣いてもいいんだよ!鈴はいつだってカオリンの味方だからね!」

 

「あ、ありがとう二人とも。けど今は我慢しなきゃ。南雲君と巌人君に笑われちゃうよ」

 

「くぅ~。カオリンは本当に健気だね!カオリンを悲しませたバツとして生きてなかったら南雲君をとっちめてやるんだから!」

 

「生きてなかったらとっちめるもクソッタレも無いと思うけど?」

 

「細かい事はいーの!そうだ!南雲君が死んでたらえりりんの降霊術でカオリンに侍らせちゃえば良いんだ!」

 

「細かくないし良くないよ」

 

鈴が暴走して恵理が諫める。

 

それに、鈴が言ったように恵理は降霊術師の天職を持っている。降霊術の魔法は精神や意識に作用する系統が多い闇魔法の中でも超難易度だ。死体の残留思念を魔法で包み込み、それを使役したり自分や他者にその残留思念の能力を憑依させて技や能力をトレースさせる。

 

しかし、やはり元は幽霊。生気のない青白い顔をしているし受け答えはできても機械的なもの。それに死者を使役するのはという事で苦手意識があったが、今はそうではない。

 

寧ろ零がハジメを連れて帰ってくるその時まで、隣に立つ事や背中を守る事は出来なくても困らせる事は無いようにしたいという決意から降霊術の特訓を繰り返している。

 

その後は特に何の問題もなく、迷宮の奥深くまで歩みを進めていく。

 

そして、あの時の階層。全てが終わり、そして始まった65階層に到達した。しかし、同じ階層でもあの時の石橋とは違い、だだっ広い大広間のような階層だ。

 

「ここから先はまだマッピングは完了していない。何が起こるか解らんから慎重に進むぞ」

 

最高踏破の階層はまだこの65階層だ。メルドの指示によって皆が注意をしながら進んでいくと部屋の中央付近に赤黒く禍々しい魔法陣が浮かび上がり、脈動するように点滅する。しかも最悪な事にその魔法陣はこの場にいる全員が見覚えがあった。

 

「おいおい、あの魔法陣はアイツかよ……!?」

 

「アイツは死んだんじゃ無かったのか……!?」

 

悪夢の再来を拒絶する神の使徒達だが、それを嘲笑うかのように魔法陣はどんどん大きくなっていき、光が大きくなっていく。

 

「迷宮での魔物の出現の原因は明らかにされてない。前に倒した奴と再戦するなんてザラに有る事だ!気を引き締めろ!退路の確保、急げ!!」

 

メルドの指示が飛び、護衛していた騎士達が背後にある退路を守るべく隙の無い陣形を敷く。しかし、そばにいた光輝は別だった。

 

「メルドさん。俺達はあれから何倍も強くなりました。もう、負けはしません!必ず勝ちます!!」

 

「へっ。確かに負けっぱなしってのは性に合わねぇ。それにアイツにいつまでもおんぶにだっこじゃカッコ悪すぎるしな!リベンジマッチだ!!」

 

光輝のセリフに龍太郎も籠手をガチンと打ち合わせて、その両目に闘志を滾らせる。龍太郎の言うアイツというのは言わずもがなゼロの事である。

 

他のメンツも見てみると、皆が一様に同じように闘志を滾らせたような顔をしている。

 

「全く、この大馬鹿者共が……」

 

こうなったらとことん付き合ってやろうじゃないか。メルドは苦笑いしながらもやれやれと肩を竦めると、闘気を漲らせて腰に佩いていた長剣を抜いて構える。

 

そして、その魔法陣が爆ぜてあの時の悪夢、ベヒモスが出現した。

 

「■■■■ーーッ!!」

 

魔法陣から現れたベヒモスは、耳がつんざくような咆哮を上げると殺意と殺気をその赤黒い瞳に漲らせて、闖入者を睥睨する。

 

その様子に香織、雫、恵理が決意に満ちた言葉を発する。

 

「もう、誰も奪わせない。貴方を越えて、私は彼の元に行く」

 

「貴方が帰ってくるその時まで、貴方と肩を並べられる所まで強くなる」

 

「彼に紡ぐべき言葉を紡ぐため、貴方を踏み越えさせてもらう」

 

再戦の火ぶたが、切って落とされた。




ぶっちゃけ雫も入れても問題ないと思いますけど、どうなんでしょ?(-_-;)
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