ありふれない紅き閃光   作:銀翼

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再戦

最初に攻撃を仕掛けたのは、天之河光輝だった。

 

「万翔羽搏き、天へと至れ。『天翔閃』!」

 

光輝の手に握られた聖剣が振るわれ、巨大な三日月形の斬撃がベヒモスに向かう。ベヒモスはその斬撃をモロに受けて、その身体に傷が刻まれて赤黒い血を流す。

 

「■■■ッ!!」

 

「イケる!俺達はもう、あの時の俺達じゃないぞ!」

 

傷つき後退(あとずさ)るベヒモスを見て光輝が確信めいた事を言う。しかしーー

 

「永山――」

 

指揮系統の指示を下そうとした時にはもう永山重吾は左側に、後衛組が魔法、しかも上級を放つために詠唱を始めていた。残された騎士団は右側、小悪党組は背後に回る。

 

誰が言い始めたのかは定かではないが、これまでの言動や行動によって小悪党組以外の者達には共通して、ある心境が出ていた。

 

「誰がお前の指示に従うか!」「ヘタクソな指揮棒でも振ってろ!」と。

 

このトータスに来るよりも前にも勘違いの言動や行動が多かった為、最近の言動と行動でもう我慢の限界が来ていたのだ。

 

当然、そこから吐き出されたのは、この勇者よりも前に自分達の得意分野を生かして行動するという事だ。これまでもそれで進んでいったが、こうまでうまく行くのかと逆に驚いた程だ。因みに騎士団はメルドや個人達の経験で最善の行動を瞬時に選択し、檜山達小悪党組はとりあえず空いていた背後に、という感じだ。

 

しかし、光輝はそういうことに気付く由もなくまた盛大に勘違いした。

 

「俺の言いたい事を瞬時に理解してくれて助かる!」

 

逆に勘違いをしたままでいさせた方が気が楽なので、光輝の笑みをスルー。

 

(光輝(コイツ)はここまで来ればもう幸せかも知れんな……)

 

メルドは光輝に対して全体指揮の訓練を施していたが、ここの皆々がもう光輝の指揮棒で踊るのを嫌い、その指揮が出るよりも早くに判断を下してその指揮の手腕を発揮させないでいる。

 

ここまでくればある意味で幸せ者とメルドは思ったが、今はベヒモスを越えなければならない。ここで足踏みをしていたら、今はもう形も見えない、鋭い輝きを放つ翡翠に光る剣を携えて、恐れもせずにいつの間にか皆の先頭を駆け抜けていくあの紅き背中に一生追い付けないだろう。

 

龍太郎が先刻(さっき)言ったようにこのトータスに召喚した者の分際で、皆を導く騎士団長として、一人の人間としてアイツに情けない背中は見せられない。

 

しかし、その間にもベヒモスは突進攻撃の準備である前足で地面を引っ掻く行動を取る。

 

「そうはさせねぇ!」

 

「この先には行かせん!」

 

ベヒモスの行動を察知した龍太郎と重吾が前に躍り出てスクラムを組むようにベヒモスの前脚に組み付き、身体強化、その中でも特に膂力を強化する魔法を詠唱する。

 

「「猛き地を割る力をここに!『剛力』!!」」

 

ベヒモスの突進を、地面を滑り削りながら受け止めていく。

 

「■■■ーー!?」

 

「だぁぁぁーーッ!!」

 

「ぐぅおぉぉーーッ!!」

 

三者三様に雄たけびを上げて力と力をぶつからせるが、ベヒモスの突進は弱まっていく。当然、その隙を逃すほど甘くはない。

 

「全てを斬り裂く至上の一閃『絶断』!」

 

長剣型アーティファクトを携え、切れ味を増強させる魔法を掛けた雫の抜刀術がベヒモスの角を切断せんと鋭い切れ味を以て迫る。だが

 

ー―グググッ

 

魔法で切れ味を増強させた長剣型アーティファクトの鋭い太刀筋も、ベヒモスの角を半ばまで斬るだけに留まった。

 

「くッ……!」

 

「雫任せろ!」

 

「メルドさん!」

 

ふと、恵理の声が響き渡ったと思えばメルドの身体の奥底から何か自分のモノではない、別人の力が沸き上がってきた。

 

恵理が降霊術を使用。重量があり仲間を守る盾役(タンク)の霊をメルドに憑依させたのだ。

 

身体的能力が底上げされた事で得意魔法を発動させて、腕力を上昇させて剣速を上昇させる必要が無くなった。そのメルドが放つ剣の一閃は雫の長剣を後押しして、二人掛かりではあるが何とかベヒモスの角を片方奪い取る事が出来た。

 

「■■■■ーーッ!!」

 

角を一本奪われた事にベヒモスが信じられないと言わんばかりに叫び声をあげて後退する。

 

「ありがとうございます!」

 

「あぁ!だがまだ気を抜くなよ!」

 

「でも、こうしてみると零君が如何に凄いのかが解るね」

 

にじみ出る汗をぬぐいながら恵理が言う。確かに、恵理の言う通りだ。思い返してみるとあの時は後ろにいたために直接的に戦闘に関わった訳ではないが、あの紅い姿になる前の零は、数多のトラウムソルジャーを斬り伏せた事で刃毀れを起こして折れる寸前になった数打ち物の長剣の一閃で、ベヒモスの角を奪い取ってみせたのだ。

 

技量と力量が見事に合致している上に、ここにいる者達と比べて余りにも懸け離れすぎてる。

 

「だが、もういないアイツに頼るのはカッコ悪過ぎるからなぁッ!!」

 

「アイツにおんぶに抱っこは、もうコリゴリなんでなッ!!」

 

後退するベヒモスに対して、龍太郎と重吾が恵理の言った事に合いの手を入れながらベヒモスに対して強力な拳打を叩き込み、更に後退させて距離を取る。

 

そして、その後退したことで重大な隙を晒したベヒモスに光輝が飛び出す。突進中に詠唱を終わらせて、先程の『天翔閃』で傷つけた胸元に深く聖剣の刀身を食い込ませる。

 

「『光爆』ッ!!」

 

――ズガァンッ!!

 

「■■■■ーーッッ!!!!」

 

聖剣の内部に内包されていた魔力が爆発を起こして、ベヒモスの体内に少なくないダメージを負わせる。しかし、ベヒモスは技を発動したことで一瞬動けない光輝の隙をついて鋭い爪を振りぬいた。

 

「しまっ――グゥゥッ!!」

 

躱す事も防ぐ事も出来ず、光輝はその一撃をもろに受けて、吹き飛ばされる。高い防御能力を誇る勇者の鎧によって外傷は無いが、衝撃波を受けた中身はそうはいかない。

 

吹き飛ばされた光輝を狙い、ベヒモスがまた鋭い爪を振り――

 

――ザシャッ!

 

「■■ッ!?」

 

その前足に向かって鋭い一閃が放たれ、ベヒモスは赤黒い血を滴らせながら蹈鞴(たたら)を踏んで後退する。

 

手にした長剣型アーティファクトを振りぬいた雫がそこにいた。

 

「違う……。彼はもっと速かった……もっと鋭かった……ッ!」

 

頭に思い浮かべるのは零、嫌、ゼロの戦闘の型。雫はバスターショットやリコイルロッドのような多彩な武器を持ち合わせていないので自ずとゼットセイバーの型になる。

 

「ッ!!」

 

「雫、待て!!」

 

弾かれたようにベヒモスに向かう雫に光輝が声を出すが、もう雫には光輝の声は届いていない。

 

「雫ちゃん!」

 

「っ!!」

 

恵理の声が聞こえてきたと思えば、雫の外から、雫のモノではない何かの力が入り込む。流し目で見てみると恵理が再び降霊術を使用。今度は剣士のそれを雫に憑依させたのだ。

 

その時雫の目に何かが浮かんできた。ベヒモスの身体に、幾つモノ白い線や点が見えてきたのだ。己の持っている剣の刀身部分に白い点が見える。

 

(あれは……!)

 

このトータスに来る前、八重樫道場で零から聞いたことがある。

 

ある日、零が直立させた太い木の棒を木刀で真っ二つに斬るという離れ業をしたのを見て、どうやって斬ったのかと聞いてみたところ、この答えが返ってきた。

 

「棒に浮かんできた白い線に、木刀の刀身に浮かんできた点を沿わせて振りぬいた」

 

当時はそれが何なのか訳が解らなかったが、今になって解る。恵理が剣士の霊を憑依させてくれたおかげで。

 

「ならば!」

 

零の説明通りならという事で片方のみになっている角。そこに向かって鋭い一閃を放った。今度は剣の白い点に、角にある白い線を沿わせるように。結果。

 

音も無く、静かに角を一刀の元に両断する事に成功した。

 

「■■ーーッ!!」

 

「今だ!トドメを刺せ!」

 

角を両方失った事で、ベヒモスは叫び声を上げながら後退。当然できた隙を逃すほど神の使徒達は甘くない。メルドの指揮で前衛組と騎士団がトドメを刺そうと一気に距離を詰めていく。

 

しかしベヒモスも当然甘くない。根本しか残らなかった角を赤熱させて、前衛組が前に出てきた事で後衛組との距離が出てきたのを利用して一気に跳躍。後衛組に向かって一気に突進してきたのだ。

 

「しまったッ!」

 

今から行くにしては間に合わない。しかも後衛組も魔法を詠唱していたので、今から魔法の詠唱を止めて防御したとしてももう半分くらいしか持たない。

 

しかし、鈴は決意をして行動した。

 

「ここは聖域なりて神敵を通さず!『聖絶』!」

 

唱えていた魔法の詠唱を途中で強制的に中断。強固な結界の防御魔法である聖絶を発動させて身を守るとベヒモスの突進が同時にぶつかった。

 

「■■ッ!!」

 

「うぅッ!負ける、もんかッ……!」

 

ガラスに何か固いものが当たったような音が響き渡り、結界越しにベヒモスの殺意と殺気に漲った視線が鈴と交錯するが、鈴も負けじと決意と勇気を振り絞って相対する。

 

しかしやはり本来は4節ある詠唱を2節で終わらせた事で力は約半分程度。もう何秒も持たせられない。時間が経つと聖絶の結界に亀裂が生じていく。

 

「鈴!」

 

しかし三度(みたび)恵理が降霊術を発動。結界士の霊を鈴に憑依させた事で、2節の結界術に加えて4節、つまり通常の1.5倍の強度になる。

 

しかし強度が増したと言っても、当然その分使用される魔力の量は増える。

 

そこで香織が鈴に魔法を掛けた。

 

「天恵よ。神秘をここに。『譲天』」

 

他者の魔力を回復させる魔法の一種だが、魔法陣に合わせて魔法を唱える事で流入量を回復させる。

 

亀裂が完全に無くなるどころかさらに強度が増した結界に、ベヒモスは矮小な人間に対して怒りにこもった目を向ける。

 

「ありがとエリリンカオリン!これなら……!」

 

強度が根元から増した事で拮抗していたが、角を折られたためにベヒモスの角が急速に冷却されていき、次第に突進力を失ったと同時に結界も消滅する。

 

そしてそれと同時に前衛組が肉薄する。

 

「全員下がって!」

 

最後に己に魔法使いの霊を憑依させる事で魔法の威力を底上げした恵理が、指示を飛ばすと全員がその指示に従う。

 

そして待ち侘びていた上級魔法を放った。

 

「「『炎天』!」」

 

魔法使いの霊を己に憑依させた事で威力が増した恵理も加えて6人分の魔力が込められた炎系上級魔法が放たれた。

 

6人分の魔力が込められた魔法はさながら太陽の如く周囲の酸素もろともにベヒモスを燃やし尽くさんと迫り、神の使徒達と騎士団は各々結界を張ったり物陰に隠れたりして身を守る。

 

そしてその時が来た。

 

「■■■■ーーーッ!!!!」

 

ベヒモスの強固な皮膚と体に触れた炎の魔法は少しずつベヒモスの身体を融解させていく。ベヒモスはその熱から逃れようとするがその大きさとベヒモスの肉体にたまった疲労と傷で身体をロクに動かせない。

 

ベヒモスがその炎に飲み込まれていき最期の断末魔を上げる。そしてその断末魔も炎と同時に次第に小さくなっていき、同時に無くなるとベヒモスの遺体は炎によって跡形も無くなっていた。

 

「勝った、んだよね……?」

 

「えぇ、私達は勝ったのよ……」

 

香織の言った言葉に雫が合いの手を返す。そして勝利の余波はその場にいた全員に波及した。

 

「「いぃやったーーーッ!!」」

 

「勝ったんだ!アイツに勝ったんだ!!」

 

「正直、ダメだと思ったぞ……」

 

「ひー」

 

各々が各々、ハイタッチをしたり疲労と緊張感からの弛緩で座り込んだりと勝利の余韻に浸る中で恵理と雫はベヒモスがさっきまでいた場所を見ていた。

 

「零君……」

 

「少しでも、彼に近づけたかしら」

 

こうしてみると少しだけ寂しいものを感じる。もう形も影も見えなくなってしまったあの背中にもう少しでも近づけるようにと努力していたが、今はその目標となるのが無くなった事で寂寥感を感じる。

 

その二人に香織が近づいた。

 

「南雲君……ここまで来たよ」

 

ベヒモスを倒した事で、着実に強くなっていると確信出来た。

 

ようやく具体的に探し出せる所まで来たのだが、もう一つの真実を知ってしまうのではと逆に怖くなってきた。

 

その香織の肩に恵理と雫が手をポンと置く。

 

「香織ちゃん……。大丈夫だよ。零君も一緒だもん」

 

「えぇ。零が一緒なら負けるところも想像つかないわね」

 

「ん、そうだよね。巌人君も一緒だもんね」

 

ハジメが生きているというのを知っているのはこの二人のみだが、余計に希望を持たせるつもりは無い。生きてはいるがゼロと合流するまでどれほどの時間が掛かっているのかは解らないが痕跡を辿りながら探すと言っていた以上、おそらくもうすぐそこまで来ているのかも解らない。

 

希望を見出す3人に光輝が近づき――

 

「香織!さっきの」

 

「さ、行こうか」

 

「あ、ちょ、待っ」

 

何とも良いタイミングで3人は歩き出した。光輝は慌てて呼び止めるが、三人の耳には届かず、そのまま更に下の階層に向かう皆と合流するように歩いて行った。




アンケートありがとうございます。というか多分ですけど、皆さんはレプリフォース大戦とかエックスVSゼロとかオメガの戦いとかゼロの封印とかエックスの慟哭とかそういうの見たいんですよね?そうなんですよね!?

……うまく書けるかな……?

あ、EXスキルの募集まだ大丈夫ですよ
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=315129&uid=19756
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