ありふれない紅き閃光   作:銀翼

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遅くなってしまい申し訳ございません。今は緩和してますけどぎっくり腰になったり、リアルがかなり忙しかったりとなかなかに時間が取れませんでした。


未来視

時は再び錯綜する。

 

真昼間のライセン大峡谷を2台のバイクが土煙を上げながら疾走する。

 

零とハジメ、ユエは各々余り喋るタイプでは無い為に、無言のままでバイクのタイヤが大地にぶつかる音と駆動音を響かせていく。とは言ってもアディオンはそのタイヤやホイールが無いエアバイクなので、ハジメのシュタイフと比べて駆動音は静かな方だ。

 

その時に何かが聞こえてきた。各々の駆動音とは違う。狂猛な生物、魔物の声だ。

 

「聞こえたか?」

 

「あぁ。こっちでも確認取れた」

 

「んっ」

 

零の指摘にハジメも片眼鏡(モノクル)型通信機越しで頷くと、ユエの方もイヤリング型通信機越しで頷く。

 

「方角にして12時、距離にして500メートルだよ!」

 

「急ぐぞ」

 

零はそれだけ言うと、レプリロイド化を発動。ゼロになるとアディオンの制限(リミッター)を解除してギアを変更する事で速度を一気に速める。ハジメもシュタイフのアクセルとギアを変えてアディオンの後を追うが、元々の性能の差から引き離されていく。

 

「は、速えぇッ!?」

 

「は、ハジメ。どんどん離されていく」

 

「解ってる!でもこれが最高速だ!」

 

ギアを切り替えて最高速度にしていくもどんどん先頭を疾駆していくアディオンにユエが焦った声を出すが、ハジメの方もそれに対しては100も承知だ。しかしそれでも離されていく。

 

「あれは……」

 

見えてきたモノに対してゼロは目を剥いた。疾走しているのは双頭のティラノサウルスらしき魔物。しかし何かを追っている。その相手を見てみると頭からウサギの耳を生やした長い青髪と抜群なプロポーションの上に何とも露出の多い服装をした少女だった。

 

「や˝っど見˝付˝(み˝づ)げまじだー―ッ!助˝(だず)げでぐだざーーい˝ッ!死˝()ん˝じゃい˝ま˝ずーーッ!ヒィーッ!」

 

双頭のティラノサウルスの叫び声に交じって聞こえてきた声に、ゼロとクロワールは一瞬だけ呆けたような顔になった。

 

「やっと見つけた?どういう事?私たちの事を知ってる?」

 

「解らん。だが、情報を聞き出す事が出来る」

 

少女の声が聞こえてきたのだろうクロワールの困惑した声が響く。しかしゼロはこれを情報を聞き出す好機と見て、見て右側の壁に沿うようにアディオンを向かわせると、そのまま壁走りを行う。反重力ユニット(ドライブブレード)で車体を浮遊(ホバリング)させて走るタイプな為に水の上を走る事も可能なライドチェイサーだからこそ出来る技だ。

 

『くっ……』

 

しかしその間にもハジメのシュタイフとゼロのアディオンとの間には更に差が広がっていく事に、ハジメは唇を噛み締める声がゼロの通信機越しに伝わるが、ゼロはそれについて知らんぷりをしておいた。

 

双頭の内の片方の頭が接近してくるゼロに気付き、ゼロを捕食しようとデカい口を大きく開けて迫る。だが、ゼロがウィリーするようにアディオンの前輪部分を上に上げると、その前輪部分に反重力ユニット(ドライブブレード)を刃のように展開しながら推進器(ブースター)のパワーを一瞬だけ限界まで引き上げる。

 

すると展開された鋭い刃によって、その捕食しようとした頭の上顎と下顎を分断された。そしてそれと同時にハジメが追い付けないならせめてと発砲したドンナーの弾丸がもう一方の頭を貫通させていった。事切れて大地に倒れ伏す双頭のティラノサウルスをしり目に、ゼロはギアを調節しながら推進器のパワーを緩めていく。

 

ゼロはギアを調整する事で反重力ユニット(ドライブブレード)の突進の勢いを弱め、着地するとハジメと挟む形で少女と合流する。失禁はしていないのが不幸中の幸いだが、力が抜けて大地に座り込んでいるのを、ゼロとハジメは各々バイクから降りて視線を合わせるようにしゃがみ込む。

 

「大丈夫か?」

 

「うえぇぇん!ありがとうございますーーッ!」

 

生命の危機を脱したのか、泣きじゃくりながら近くにいたハジメに思いっきり抱き着いてきた。

 

「ちょっ!?」

 

触るわけにはいかないと、ハジメは両腕を上に上げて触るのを防ぐ。そうでなければ今現在も絶対零度の殺意に満ちた目をウサ耳少女に向けてるユエが危ない。

 

「あっ、ちょっ、零。見えないから離して」

 

そのユエの目をゼロは黙って両手で塞ぐと、ユエがジタバタし出してきたがゼロはどこ吹く風でそれを抑える。

 

「でも、何故ここに兎人族がここに?何かやらかして処刑されたとか?」

 

「ちちち違いますよ!?あ、でもちょっと合ってるような……アババババッ!!」

 

ハジメがハイなテンションを維持している少女の頭に手を置くと、纏雷を発動。その身に強力な電撃を受けた少女は黒焦げになり目をぐるぐる巻きに回した。

 

「おぉ。本当に10倍位でイケるな」

 

「嫌、いくら鬱陶しいからって死に物狂いで助けを求めに来た人に対して無下に扱わないでよ……」

 

どや顔をするハジメにクロワールが突っ込む。ハジメに対して僅かに呆れを滲ませたような表情をしたゼロが、ユエの目から手を離し姿勢を下げて少女を見る。

 

「何があった。話してみろ」

 

「うぅ……。ありがとうございます……。まず私はシア・ハウリアと言います……」

 

自己紹介から入ったので、各々も自己紹介から始める事にした。

 

シアが言い始めた事は、この三人と比べると足元にも及ばないだろうが、事情を知らない人間からすると壮絶と言える内容だった。

 

シアの説明を簡単にするとこんな感じだ。

 

まず、シアのいた場所というのは獣人等の亜人族が住んでいる国、フェアベルゲンでその中にあるハルツィナ樹海にて、集落を作り生活していた。

 

これまで兎人族は濃紺の髪をしていたがシアだけが例外的に青みがかった白髪をしていた上に、亜人族の者達がこれまで持たなかった魔力をとある固有魔法を使う事が出来た。

 

しかし、そうした例外的存在はフェアベルゲンでは認められず、忌み子として追放するという掟が存在するが、兎人族は100人を超える大所帯な為にシアの存在を隠してこっそりと育てていく事にした。

 

だが先日にシアの存在が他の者達に明かされてしまい、このまま座して処刑を待つのではなく一族丸ごとフェアベルゲンから抜ける事にした。

 

だが、伝手も宛も何もなくとりあえず食料の確保をしようという事で山の幸が豊富な北国に行こうとしたが、ヘルシャー帝国によってその計画は頓挫した。

 

何でも、兎人族は戦う事を好まない上に皆優れた容姿をしている為に捕縛されると抵抗する事も出来ず愛玩奴隷となる者が多い。魔法が使えず狂猛な魔物達が多く犇めいているライセン大峡谷に到着するまで、すでに何人も捕縛されてしまった。

 

そこまで聞いてある程度納得出来た。しかし、疑問は一つ残っている。

 

「だが、やっと見つけたというのは何だ?」

 

「あ、はい。それは私の固有魔法が未来視です。仮定した未来が見えるというモノで、皆さんが私達の一族を助けてくれる、という未来が見えたんです。だからお願いします!是非私の一族を助けてください!!」

 

「断る」

 

「「は?」」

 

素気無く断ったハジメに対してクロワールとシアの気の抜けたような声が重なる。ゼロの方はハジメの反応を聞くと、黙ってアディオンに近づき、指輪の宝物庫から出したアザンチウム鉱石を用いて何かを生成(クリエイト)で作成していく。

 

「何故そんな訳の解からねぇ能力で勝手に決め付けてんだよ。帝国兵と獣人族から追われて、俺に何のメリットがあんだ?それにその未来視の能力があるなら何故それを活用しなかったんだよ」

 

ハジメの指摘にシアは口を噤む。しかしそれに答えたのはシアではなく生成でアディオンに何かを作成していたゼロだった。

 

「……これまでの努力が足りず、見えていた未来を変える事が出来なかった後悔、だろうな。しかし今度こそ一族の滅亡という未来は変えたい。だからこそライセン大峡谷に入るという危険を冒してまで俺達に助けを求めてきた」

 

「?ゼロ?」

 

アディオンに向けていた身体をハジメ達に向けると、そこにはこれまでのアディオンには無かったモノがあった。人間1人は確実に乗ることが出来るサイズのキャノピー付きのサイドカーだ。

 

それを見た瞬間、シアは希望の光が目に宿り、涙となって流れ落ちていき、ハジメは驚きのあまりに目を見開いている。

 

「お前……!」

 

「行くのも見捨てるのも好きにすれば良い。だが、ここで見捨てたらお前を奈落の奥底に落とした奴等や聖教教会、王族の連中と何も変わらないだろうな」

 

「な、何ッ!?」

 

「ついて来るか否かはお前の好きにすれば良い。止めはしない。だがお前は見捨てた連中と違うという証拠を証明してみせろ」

 

怒りに目を剥かせるハジメだが、ゼロはその怒りをまるで柳に微風とばかりに受け流し、アディオンに跨りスイッチを入れるとサイドカーのキャノピーが開く。

 

「行くぞ。早く乗れ」

 

「あ、はい!」

 

「ま、待って!」

 

キャノピーが開かれた事でシアがそのサイドカーに乗り込み、クロワールはゼロの傍らに浮遊すると、キャノピーが閉じあっという間にハジメとユエを残して疾駆していった。

 

「ハジメ……」

 

ゼロはシアを乗せて疾駆していった事で、その場にハジメとユエだけが残される。ユエはハジメの事情というのを知っているし、ハジメの意思に従うつもりであるので名前を言うだけでその他は何も言わずに見ているだけだ。

 

暫く考えたハジメだったが、答えが決まったらしく頭をガリガリと生身の手で掻き毟った。

 

「……あー、クソッ!行ったら良いんだろ!!」

 

吐き捨てるように言うとシュタイフに向かい、車体に跨るとユエもその後ろに跨る。そしてそのままゼロ達が向かった方向にシュタイフを走らせていった。




ぶっちゃけこれで大丈夫かどうか、という感じですが宜しくお願い致します。
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