ありふれない紅き閃光   作:銀翼

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トータス

腕で目を守り瞼を閉じても尚も感じる程の強い光が段々と収まってくるのを感じ、零はゆっくり翳していた腕を降ろす。

 

「これは、一体……?」

 

光が収まり視界に映った光景は、これまで自分達が見てきた教室とは大きくかけ離れたものだった。

 

巨大な壁画が飾られた豪華絢爛の一言だけでは片付かない程の豪勢な装飾のされた広大な洋風の広間。その広間に何人もの人影が見える。

 

壁画を見てみると、中性的な顔立ちをした人物が描かれている。

 

「っ」

 

その壁画からは背筋に何か冷たい物が走ったような気がした。恐怖とかそういう物ではない。純粋に魂の中から不快感を感じる。

 

「な、何だってんだこれは!?」

 

「何処ここ!?映画の撮影か何かなの!?」

 

――ここは一体……?あの壁画私達の世界じゃ見た事ないけど

 

皆気付いたのか一斉に声を出す。確かにいつも通りの日常からいきなり非日常的な体験をしたらこうなる。

 

皆が気付いた時に、目の前にいた人影が動き出した事で容姿が露わになる。この奇妙な広間に似合うような豪奢な衣装を身に着けた、立派な口髭や顎髭を蓄えた老翁。

 

――何あのジジィ。目がチカチカしそう……

 

同化しているクロワールが何とも気持ち悪そうな声を出すが、それには零も同様な事を考えていたし、あの壁画と同じ、不快感に似たようなものを感じ取れる。

 

「ようこそトータスへ。勇者の皆様と同胞の方々。歓迎いたしますぞ。私はこの聖教教会の教皇のイシュタル・ランゴバルドと申します。以後お見知りおきを」

 

口調こそ丁寧だが、何だがねっとりとした物を感じられる。

 

「トータス?聖教教会?教皇?キリスト教じゃないの……?」

 

すぐ近くにいた雫が小声で聞いてくる。地球にある多数の宗教の中でもキリスト教だけが教皇を名乗る事が出来る。しかしついさっき、あのイシュタルと言った老翁が言ったのは聖教教会という聞きなじみの無い宗教だ。

 

「解らん」

 

「ズバッと斬る様に言わないでよ……」

 

雫の問いかけに零はかつてのレジスタンス司令官エルピスに言ったようにすげなく答える。

 

信心という物が希薄な零にとって宗教については疎い。この緊急事態に対してはこのイシュタルについていくのが最良と考えた。

 

「ご案内致します。ついて来て下され」

 

結局今の所はこのイシュタルについていくしか選択肢が存在しない。背を向けて歩き出したイシュタルについていくように、愛子を含むクラスメイト達が動き出していった。

 

案内されたのは貴族の食堂にありそうな長大なテーブルとイスが並べられた豪奢な部屋。

 

全員が適当に席に座ると、事前に打ち合わせをしたのでは無かろうかと思わせるようなタイミングで美女美少女揃いのメイド達がカートを運んできた。

 

男子達の殆どがそのメイド達に見惚れて鼻の下を伸ばしており、その男子達に女子は冷たさを含んだ目線を向ける。だが零はそんなメイド達には見向きもせずイシュタルの方を凝視していた。

 

「では、まず皆様に置かれましてはまずこの世界についての説明をさせて頂きましょうか」

 

そうしてイシュタルは説明を始めた。

 

イシュタルが説明した事を箇条書きにしてみると。

 

・今自分達がいる世界の名は「トータス」。

・召喚したのは自分達聖教教会が崇め奉っている唯一神「エヒト」。

・元居た世界はこの世界より上位の世界。それ故にこの世界の人間よりも優れている。

・この世界の北一帯には「人間族」、南一帯には「魔人族」。そしてこの世界の東にある巨大な樹海に「亜人族」が存在している。

・遥か昔から「人間族」と「魔人族」との戦争が続いていたが、ここ数十年は大きな攻勢こそ無かった物の、「魔人族」が「魔物」を使役するようになってから戦況は変わった。

・人間族の滅亡を悟った神、「エヒト」が地球人を召喚した。

 

という事だ。

 

――うわぁ、すんごい胡散臭い……

 

(あぁ)

 

説明していく内に段々と悦に入って来たイシュタルだったが、そこに怒鳴り声を上げる人間がいた。

 

「ふざけないで下さい!」

 

愛子だった。普段は愛ちゃん先生と皆に慕われている教師だが、この世界の教皇に何の物怖じもしていない。生徒を守るという一心でイシュタルを見る。

 

――凄い度胸だねあの先生

 

「……」

 

「黙って聞いてればこの子達をその戦争に参加させようとしているのですね!そんな危険な事は先生は許しません!それに貴方たちのしている事は世界を巻き込んだ誘拐です!早く私達を元の世界に帰してください!」

 

「そうだそうだ!」

 

「戦争なんか嫌だ!」

 

「夕方に約束があるのよ!早く帰してよ!」

 

愛子の言葉に生徒達は一斉に声を出す。

 

いつもと変わらぬ日常を過ごしてきたのに、いきなりこのトータスという見知らぬ世界に転移させられた上に強制的に戦争に参加せよなのだ。戦争から隔絶された平々凡々な生活をしてきた自分達には酷過ぎる。

 

しかし、その生徒達の非難はイシュタルの言葉で止まった。

 

「残念ですがそれは出来ませぬ。貴方方を召喚したのはエヒト様です。我々は、世界に干渉する魔法は持ち合わせておりませぬ。全てはエヒト様の思し召しです」

 

「……随分と身勝手な神だな」

 

ボソ、と言った零だがこの広間にいた全員に聞こえたらしく、零の方を見る。

 

「ほう?」

 

イシュタルも同様に零の方を見るが、零もイシュタルに対して眉間にシワを寄せて刃物を思わせる程の鋭い眼光を向ける。

 

暫く睨み合いを続けていたが、それは第三者の言葉で終わった。

 

「俺はこの世界で戦うべきだと思う!」

 

「ッ!?」

 

天之河光輝だ。目を見開き驚く零だが、それに対して光輝は気付かず相変わらず自分に酔った美辞麗句を述べる。

 

愛子も生徒からまさかの戦争参加の言葉に絶句しているが、光輝はそれに気づいていない。イシュタルが光輝に対して邪気を孕んだ笑みを浮かべている事にも。

 

「イシュタルさんに文句を言ってもどうしようもないんだから仕方ない。それに、この世界の人達が滅亡に瀕しているんだ。それを見て見ぬふりするのは俺には出来ない。それに、世界の人達を救済さえすればきっと元の世界に帰れるかも知れない。そうですよね。イシュタルさん」

 

「えぇ。エヒト様も救世主様のお願いを無下には致しますまい」

 

「それに、今気づいたのですが何だか身体の奥底から何か力が湧き上がってくるような気がするんです。これが先程に仰られた力ですよね」

 

「左様です。ざっとですがこの世界の者達の数倍から数十倍はあります」

 

「なら大丈夫。きっと生き残って帰る事が出来る。だから俺は戦う!」

 

――あぁ、勝手に決めて……。戦いってそんな簡単なモノじゃないのに。それを解ってて物を言ってるのかな?

 

「……」

 

クロワールがげんなりとした声を出すも、零は寧ろ呆れ返るを通り越して何だか感心した。

 

しかしその間にも龍太郎が

 

「お前ならそう言うだろうと思ってたぜ。いっちょ暴れてやるか!」

 

雫が

 

「元の世界に帰れないんでしょう?気に喰わないけどやるしかないわ」

 

香織が

 

「し、雫ちゃんが言うからには私もやる!」

 

今すぐに帰る事が出来ない状況に相まって、戦うという事をもう受け入れてしまっていた。こうなってしまえばもう零にも何も出来ない。

 

「ちょっと皆さーんッ!?」

 

「……チッ」

 

愛子の呼び声と零の舌打ちは生徒達の声にかき消されていった。

 

その後、皆はこの聖教教会総本山である「神山」の麓にある国「ハイリヒ王国」に向かい、国王であるエリヒド・S・B・ハイリヒ。王妃であるルルアリア・S・B・ハイリヒ。王女であるリリアーナ・S・B・ハイリヒ。王子であるランデル・S・B・ハイリヒの王族を始め、宰相やら騎士団、その他重臣達の挨拶を受けた後、王城の大広間にて勇者を歓迎する宴が催された。

 

クラスメイト達改め勇者達は、異世界での初めての食事に舌鼓を打つ者、その料理をスマホのカメラで写真を撮る者、またスマホに興味を示した異世界の者達と交流を深める等して楽しんでいた。

 

その頃、零はと言うと。王城にあるバルコニーにて、手すりに飲み物が入ったグラスを置いて空を眺めていた。宴等、元から楽しむつもりは無い。

 

転移された時の時間は真っ昼間だったが、今はもう夜の帳が落ちており、王都の方は灯火が町を優しく照らしている。

 

人間族、魔人族、亜人族の種族。幾歳も続く人間と魔人との戦争。自分達を召喚した創世神エヒト。帰らせるのはエヒトの思し召し次第。召喚した自分達はこの世界の人間よりも力が大きい。

 

――ちょっと聞いただけでも解るけど、エヒトって奴はこの世界を遊び場にしてるね。一体この世界とこの世界の人間達、私達を何だと思ってるんだろ

 

「……」

 

怒り気味のクロワールの言った事に零は無言で肯定する。

 

しかし、教皇であるイシュタルを見て解る通り、これ程に身勝手過ぎる神が何故あれ程までに狂信、または盲信されるのか――。

 

「……アンダー・アルカディアでバイルがオメガとダークエルフの力を世界中に送り込んでレプリロイドを操った物と似たような物か」

 

――ゼロの記憶(メモリー)を見たけど、あの出来事?

 

「あぁ」

 

以前のバイルの部下であるバイル八審官(ナンバーズ)との戦いの最中、水没した図書館で見つけたデータを復旧、またそれを解読した時だ。

 

壊れた宇宙船の格納庫にあったデータを回収、閉鎖されたはずだが動いている工場で見たベビーエルフ達、地下から大量のエネルゲン水晶を運ぶ巨大エレベーター、そして水没した図書館で見つけたバイル、オメガ、ダークエルフ、そして妖精戦争のデータ。

 

バイルがマザーエルフを改造したダークエルフとそのコピー、ベビーエルフ達を用いてレプリロイドの力を増幅した事でかつてない程の最悪な戦争となった。戦争は四年で終結したが人間の60%、レプリロイドの90%が死滅した。

 

それを解読して、推理していた最中。レジスタンスのレプリロイド達がオメガとバイル、ダークエルフによって操られた。ゼロとシエルに銃を突きつけ今正に砲火が放たれようとした瞬間に現れたサイバーエルフエックスによって無力化された。

 

それと同じ事をしているなら。

 

――エヒトは人間に神託を送り、操っているって事?

 

「……」

 

そう考えるのが妥当ではあるが、あくまで憶測の域を出ない。しかし、強引過ぎる憶測なのにも関わらず違和感がない。

 

「……やるべき事は従うフリをして元の世界に帰る算段を見つけるのが最優先、だな……」

 

――いずれにしても、そうだね

 

やるべき事は解った。しかし明日はどうなるのかは保証はされていないが、僅かにも可能性があるならばそれに賭けるしか出来ない。

 

零はその後、身を翻して宴の喧騒の中で密かに自分に宛がわれた部屋に戻っていった。




そういえば恵理ちゃんと幸利の職業どうしよ……

トータスにてシエル達レジスタンス、または四天王達と再会させるべきか否か

  • レジスタンス(トレーラー組)のみ
  • ネオ・アルカディア四天王のみ
  • 両方再会させる
  • どちらも来させない
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