ありふれない紅き閃光   作:銀翼

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短めかもしれませんがハジメ強化話です


結果

国家錬成師局にて修行を始めて早2週間。

 

局長であるラングルを始め、他の局員からの厳しい指導や実践形式の練習を経て、ハジメは成長していった。

 

厳しい指導だったが、全員が全員専門家であったし何分スタートラインがこの世界の人間よりも遅かったのだ。その人間達に追い付くには並大抵の努力では足りなかったし、専門家から教わった事で間違えた知識では無く正しい知識や知見を身に着けていった。

 

そして今日――。

 

「これより南雲ハジメの錬成を開始する。これから錬成するのはこの世界の素材で、ハジメの世界の武器を一つだ」

 

試験のような感じで、錬成を行う事になった。お題は先程にラングルが言った、この世界(トータス)の素材を使って、ハジメ達がいた世界の武器を錬成する事だ。

 

これを錬成するという事になった発端と言うのは訓練の最中、ハジメの世界に興味を示したラングルが問いかけて来た事にある。

 

「トータスとはまた違った世界から来たのじゃ。当然文化や技術は違うじゃろ。少し見せてくれんか」

 

トータスとは違った、異世界からやって来たのだから当然この世界の常識にある物、魔法とかそういう物が無いし代わりに科学が発展している、という事で聞き耳を立てていた局員も興味を示したのだ。

 

そこでスマホ(ソーラーモバイルバッテリーを持っていたので満タンだった)を起動して見せてみたのが、銃という武器だった。

 

勿論、錬成師が異世界の武器について興味を抱かない訳は無い。という事で訓練である程度技能が高まったら錬成するという事になったのだ。

 

そこで用意した素材というのは以下の物だ。

 

・タウル鉱石

・燃焼石

 

タウル鉱石は現在知っている鉱物の中でも最も硬い上に高い靭性を持ち合わせている。

 

燃焼石はその名の通り可燃性の鉱石で、一度点火すると周囲の構成物質を燃焼させていく。当然燃焼していくと段々炎は小さくなりやがて消火する。密閉された空間に大量の燃焼石を一気に燃焼させると、上位の炎魔法に匹敵する鉱石だ。

 

因みにこの二つの鉱石についてはハジメ自身で見つけた。

 

錬成師の特訓を始め、王立図書館でこの世界や鉱物について調べていってる最中で、派生技能というコツを掴み才能の壁を乗り越える事で昇華する後天性の技能の一つ、鉱石鑑定を見事に派生させることが出来たのだ。

 

それを昇華させる事が出来た事を報告したら、ラングルはハジメの頭を撫でて破顔一笑で褒めてくれた。

 

「ス~ッ、ふぅっ。では、行きます」

 

「うむ。始めてくれ」

 

緊張を少しでも解そうとハジメは深呼吸をして、目の前にある二つの鉱石に手を翳し頭の中で錬成する武器を思い浮かべる。

 

二つの鉱石が光り出し、その形を変えていく。ハジメの額に汗が垂れるが、そんなことを気にする余裕は無いので目に入っても集中力は切らさない。

 

そして、二つの鉱石は完全に形を変えて、武器にその身を変えていった。

 

出来たのは、光を反射して黒光りする一丁のリボルバー拳銃。

 

大きさにしては命中率と取り回しの良さ、整備の簡略さを考慮してミドルサイズの大きさで、五発の弾丸が回転式弾倉(シリンダー)に納められている。リロード方式は回転式弾倉を左側に出して行うスイングアウト方式のリボルバー拳銃だ。

 

「で、出来た……!」

 

「まだじゃ。後はこれが実戦で扱えるかどうか解るまで錬成は終わらん」

 

思った以上の錬成が出来た事で、気が緩みそうになるハジメにラングルが叱咤する。

 

「後は鞘の様な物、ホルスターと言う物じゃの。それと予備の弾丸を作るから一つ貸してくれ。儂等は後で行くから先に訓練場に行っておれ」

 

「は、はい」

 

回転式弾倉から一発弾丸を抜いて、それをラングルに手渡すとハジメは拳銃を胸にあった内ポケットに仕舞うと先に訓練場に向かっていった。

 

ラングルの言う通り実戦で使えるのが解るまでが錬成の道のりであるが、それを抜いたらスキップしそうな位にハジメの心は浮ついていた。

 

これまで厳しい訓練を受け、知識や技術を学び盗み真似をして何百何千と試行錯誤を繰り返していき、そして今までの苦労が実を結んだのだ。

 

気が大なり小なり緩ませない方が難しい。

 

そしてそれで気付かなかった。訓練場に到着した時にあった脚に。

 

「うわっ」

 

その脚に引っ掛かってハジメはすっころんだ。せっかく人の気分が良くなってたのに文句を言おうとした時、それが口の中に飲み込まれてしまった。

 

その人物と言うのが檜山大介を筆頭とする近藤礼一、中野信治、斎藤良樹の小悪党組(ゲスども)だったのだ

 

「おいおい南雲~。何嬉しそうな顔してんだよ」

 

「そうだぜ。最近訓練サボって何処か行っちまうしよ」

 

サボってない、と言おうとしたが既にその時には檜山が魔法の詠唱をして手に炎を作っていた。しかし、ハジメはそれに対して何だか違和感を覚えた。

 

(あれ?何だか詠唱してから発動までが遅いような……)

 

「そんな弱っちい南雲の為に俺達が訓練付き合ってやるからありがたく受――!」

 

「ふっ!」

 

勝ち誇った顔で魔法を放とうとした檜山だったが、その隙を逃がさずにハジメは足元、正確に言うと脛に思いっきり踵をぶち込んだ。

 

「いってぇ……!?」

 

思いがけない不意打ちに檜山は脛を抑えて蹲る。

 

「このやろっ!」

 

「てぃっ!」

 

「あだぁっ!」

 

魔法を発動する寸前にしたという事でハジメに掴み掛ろうとした近藤だったが、今度は反対に金的を思いっきり蹴られ、檜山と同じように蹲る。

 

(何だか、見える……。知らないうちにステータスが増えたのかな?)

 

「我、風撃を――」

 

魔法を詠唱しようとする中野に対して接近してまた隙だらけの側頭部を思いっきり殴りつける。

 

「ぐぁっ!」

 

側頭部を殴りつけられた事で中野は脳が揺さぶられて、バランスを崩して倒れこむ。

 

「っ」

 

最後に残った斎藤は尻餅をついて後退りする。しかしハジメはそんな斎藤は無視して、リーダー格の檜山に対して胸の内ポケットに納めていたリボルバー拳銃を取り出し、その銃口を向ける。

 

「ヒッ……」

 

逃げようとした檜山だが、蹴られた脛がまだ痛むのか立ち上がる事が叶わずその場に蹲るしか出来ないし、ハジメの方はちゃんと発砲出来るかどうか解らない拳銃を発砲する気は無い。あくまでも脅し、威嚇の為だ。

 

そして、親指でハンマーを下に降ろそうと――

 

「何をしている!」

 

突如として聞こえて来た別の声に、ハジメは気を取り直してその方向に視線を向ける。

 

駆け寄って来たのは光輝、別方向からは零と香織が各々やって来た。それを見たハジメはハンマーから指を離して拳銃をズボンのポケットに納める。

 

「た、助けてくれ!南雲にいきなりリンチされて、そして拳銃を突き付けられた!」

 

「何!?それは本当か南雲!?」

 

「い、言いがかりだよ。いきなり檜山達が僕にリンチしようとしてきたんだ!」

 

「言い訳は男らしくないぞ南雲!潔く罪を認めろ!その拳銃は危険だから俺が――」

 

ポケットに入れた拳銃を取り上げようとした光輝は、その手は零によって握られた事でそれは叶わなかった。

 

「何をするんだ巌人!」

 

「……」

 

何も言わず、ギリギリと握る握力を強めた事で顔を歪めて引っ込ませる。それを見た零は自身のスマホを取り出して起動する。

 

「おい、何故スマホが動く!?」

 

「……ソーラーモバイルバッテリーだ」

 

確かに、この世界にやって来てから二週間という結構な時間が経過していたので、通常ならスマホのバッテリーは切れていても可笑しくない。しかし、太陽光で充電するタイプなら話は別だ。

 

アルバムアプリを起動して、それを出してみる。

 

映し出されたのは明らかに最初に手を出してきた檜山達とそれを返り討ちにするハジメの映像だ。

 

「お前、何故これを……!?」

 

「口で説明してもお前は確実に信用しない。その上で自分にとって都合の良いように解釈する。そしてこいつ等はお前に都合の良い言い訳をしてくる」

 

「うぐっ」

 

ズバッと言い切る零に光輝と小悪党組は苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

そんな彼等に香織が近付いていく。

 

「か、香織」

 

近付いてくる事に気付いて光輝が一縷の希望に縋るように香織を見る。しかし、その希望を――

 

「光輝君、檜山君、最低だね」

 

冷たい表情で突き放した。

 

何を言われたのか解らないと言わんばかりに惚けた表情を浮かべる光輝達だったが、香織はそんな奴等に眼を向けることは無く、ハジメの方を向くと一緒に離れていく。

 

「凄いねハジメ君!檜山達はずっと訓練サボってたからいつの間にか追い越しちゃったね!」

 

「え、あ、サボってたんだ……」

 

檜山達が真面目に何かに取り組んでいた所は地球にいた時にも見た事が無かったので、サボってたという事については大して驚く事は無かった。

 

「ハジメ。ステータスは今どれぐらいだ」

 

「あ、うん。これくらいだよ」

 

ハジメがステータスプレートを起動してそれを見せると、零も香織もそれを覗き込む。

 

レベル:20

 

筋力:30

 

体力:30

 

耐性:30

 

敏捷:30

 

魔力:35

 

魔耐:35

 

技能:錬成+鉱物鑑定+精密錬成、言語理解

 

光輝と比べるべくも無いが、余程鍛え上げられたのか初期の頃と比べてみるとかなり成長していっている。

 

「成長したな」

 

「ありがとう零。それと、国家錬成師局に紹介してくれて」

 

「俺は何もしていない。賛成してくれたメルドにそれを言え」

 

国家錬成師局にハジメを紹介するようにメルドに提案したのは零であるが、あくまで自分は第三者という姿勢を取った。

 

「うん。そうする」

 

「待たせたの。坊主」

 

「ラングルさん」

 

ラングルがやって来たので、そっちの方を向く。

 

「南雲君。この人は?」

 

「国家錬成師局局長のラングル・マイスターさん。僕に錬成を教えてくれた人だよ」

 

「ラングル・マイスターじゃ。よろしく」

 

「白崎香織です」

 

「巌人零だ」

 

柔らかな笑みをたたえるラングルに二人は挨拶をする。二人の挨拶を聞くと、ハジメの方を向いて、一つの小箱を差し出した。

 

「予備の弾丸とホルスターを錬成してきたぞ」

 

「ありがとうございます」

 

小箱を開けてみると、そこに拳銃を収納できる大きさのホルスターと無数の弾丸があった。

 

早速回転式弾倉の空いていた箇所に弾丸を入れて、ホルスターをベルトに通して収納してみると、大きさの確認が出来た時間が短かったにも関わらずサイズは正確で、キチンと収納する事が出来た。

 

「正確に造ってくれて、ありがとうございます」

 

「これは経験が物を言うからの。ほれ、メルドが魔法の的を出してくれたぞ」

 

ラングルが言うので見てみたら、既にラングルが伝達してくれていたのだろう本来は魔法の訓練に使用する的がメルドによって展開されていた。

 

「やってみます」

 

先ずは試験運用。メルドが的から離れ、クラスメイトの何だ何だと言うように見ている中でハジメは的に向き直り、ホルスターから拳銃を抜いて銃口を向けてみる。

 

――ガッキッ

 

親指でハンマーを下ろし、撃鉄(コッキング)を鳴らす。

 

的に狙いを定め、そして。

 

――ダァンッ!

 

拳銃の銃口が火と弾丸を吹いた。だが。

 

「は、外れた……。それに、手が痺れる……」

 

弾丸は的に当たる事は無く、そのまま空の彼方に消え失せていった。ミドルサイズで取り回し易いと言うが、これまで拳銃をぶっ放した事は無い上に鍛えていない手では反動が強かったらしく手が痺れてしまった。

 

しかし、壊れる事無く弾を発射する事は出来たので、錬成の特訓の成果は上々とも言えるだろう。

 

「我等錬成師の役目は支援。それ故に落ち込むことは無かろう」

 

「それでもやっぱり自分で初めて作れたモノですから、当てたいんですよ」

 

外れた事を悔し気に言うハジメ。その手に零は己の手を乗せる。

 

「お前は自分に出来る事を精一杯やり遂げた。戦うのは俺達に任せろ」

 

「零……」

 

零の言葉によって、ハジメの心に出来たさざ波が急に引いていく。

 

「借りるぞ」

 

「え、あ、うん」

 

許可を取ってからハジメの手から拳銃を取ると、回転式弾倉に一発弾丸を補充して、嘗てのバスターショットを構えるように片手で拳銃を構える。

 

――ハジメは気付いてないかもだけど、シングルとダブルのアクション、どちらにも対応出来る作りになっているね。

 

(了解)

 

クロワールからの情報を整理する。

 

シングルアクションというのはハンマーをコックすると撃てる状態になり撃つとハンマーがリリースする仕組みで、ダブルアクションというのは引き金を引く事でハンマーがコックする事と発射する事が同時に行える仕組みだ。

 

――ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!

 

発射された弾丸は一拍遅れで展開されていた全ての的のど真ん中を過たず打ち抜いていった。

 

「す、凄い……」

 

僅かなブレも力みも、躊躇も感じさせない銃の技術に呆然と言った感じで零の射撃を見ていたハジメやクラスメイトだが、零は特に自慢する事も誇る事もせず、ハジメに向き直る。

 

「中々良い拳銃だ」

 

「う、うん。ありがとう」

 

銃身に熱を持っているので銃身の方は握らず、グリップの方を向ける様にして差し出すとそのまま離れていった。

 

「零、武術も達者だけど銃の技も上手いのね……。どんだけ隙が無いのよ」

 

偶然近くにいた雫の呆然とした声は訓練場の空気に消えていった。




嫌ぁ、いじめられっ子がいじめっ子に復讐するのって結構難しいですね……。

アンケートありがとうございます!これにて〆とさせていただきます。
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