銀の雪は溶け残り   作:Tkmraeua2341

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いつもより1時間遅く起きて、掃除をし、布団を干して、1杯のコーヒーを飲む…とても優雅な朝。
え、朝飯?…実は朝飯って「有害無用」らしいですよ、だから食べれない私が惨めなんじゃないんだよ。
惨めじゃないよ、うん。



第13話

 

─古市家にて、

 

「ただいまー」

「はー疲れた、やっぱこっちは蒸し暑いわねー」

「ユキー、ユキー!!いるんだろう!?返事しなさい」

 

古市一家が旅行から帰ってきた時、それは起きた。

 

「何だいるんじゃない、電気もつけないで」

「確かに節電は大事だと言ったがそこまで辛抱しなくても良かったんだぞ?」

「お姉ちゃんただいまー!お姉ちゃんの好きなドライフルーツ買ってきた!」

 

古市の家族たちは愛娘を、敬愛する姉を見ようとしたが、目に映ったのは彼女(ユキ)だけでなく、

 

「…お…」

「お帰りなさいませ」

 

筋骨隆々でダンディな口ひげをした、異国風の男性もだった。

 

(((誰!?)))

 

 

 

「─改めまして、今日からこちらでお世話になります、バティム・ド・エムナ・アランドロンと申します。不束者ですがよろしくお願いいたします」

 

まずは自己紹介を、と言ったアランドロンが流れるように座っていた椅子から離れ、家族に正座し両手をついて頭を垂れつつこう言った。

 

「いや、まてまて、まてまてまてまてまてまてまてまてまて」

「この国ではこうするものだと聞きました」

「まって!!色々間違ってるし私は最初から反対だから!!」

「それは困りましたなぁ、相談に乗るとおっしゃってくださったのに…」

「言ってない!今はどこで寝泊まりしてるんだ?っとしか言ってない!!」

 

あかん、プールのフラグ折ったからアランドロン何処に宿泊するんだろうと気になって見かけた時に話しかけたのが仇になった、くっそやろうが!

 

「いえね、我々がこちらに来てはや数ヶ月、私もそろそろどこかに腰をおちつけねば…と。しかし…主君と同じ家に暮らすなど畏れ多い、かと言ってこの国には我々のつてなどありはしない。そう思い悩んでいた矢先…あなたに声をかけられたのです。主君やその親候補の男鹿殿への献身さも鑑みて、ああ、この方にならこの身を預けてもいいのでは…と」

「なんでそこでそうなるんだてめー!!」

 

それからは交渉を両親とバトンタッチしたのだが、ホームステイのような形でうちで預かる事になった。

…どんな話術を使ったんだよこの次元転送悪魔ァ!!

 

それから数日後、アランドロンは結構うちに馴染んでいる。

家事の手伝いを積極的に手伝い、買い出しの荷物持ちもよくかって出てくれる。

家事が終わり暇になったらリビングで韓ドラを見るようになってて、こいつうちに馴染みすぎるだろと思った。

しかもリビングで見るせいで家族にも韓ドラブームが起こってしまった。

今は「馬医」で次は「トンイ」らしい。

そんなこんなでアランドロンがかなり日常になってきた頃、男鹿から連絡が来た。

 

 

 

 

 

「いなくなった?ヒルダさんとベル坊がか?」

「おう、朝起きたらきれいさっぱりよ」

「さっぱりって…」

 

男鹿の家に着いて部屋にあがると、ヒルダさんとベル坊が消えた件について話された。

とうとう東条編の始まりか…よくよく考えたらあれだけのことがあったのにまだ夏なんだよな、ここまで結構濃密に進んでる気がする。

 

「たつみーっ!!」

 

そう思ってたら男鹿のお姉さん、美咲さんが男鹿に飛び蹴りでダイナミックエントリーしてきた。

椅子から落ちた男鹿を掴みあげさらにしばいていく美咲さん、この人も大概やべー人だ。

 

「あんな出来たヨメさんどこ探したっていないわよっ!!」

「姉き」

 

ゴキ

 

「わかってんの!?」

「ちがっ」

 

バコ

 

「どーせつまんない事して愛想つかされちゃったんでしょ!!」

「ちょ」

 

ドゴ

 

「こんなざまでユキちんと一緒になるなんて許さないわ!!」

「は」

 

ゴシャ

 

「あやまってきなさい!!」

 

そしてペイっと家から投げ出される男鹿と私…なぜ私も?

 

「いいっ!?ちゃんと捜して連れてくるまで家には入れないからね!!」

 

 

 

 

 

「あいかわらずおっかねーお姉さんだ」

「まったく、せっかく手に入れた自由だぜ、誰がわざわざ捜すかってんだ」

 

そう言いつつ歩く男鹿と私、あの後しばらくして美咲さんからメールで、

 

『たつみの見張り兼手伝いよろしく』

 

と送られ、元々そのつもりだったが男鹿と同行している。

セミの声が響く、朝というには遅く、昼というには早い時間帯。

 

「で、どっか心当たりとかねーの?」

「知らん!…だーっ、あっちーな、川原にでも行くか」

 

…素直じゃねーな、川原っつったら、

 

「おーい早くこいよ」

 

ベル坊と初めて会った所だろ?

 

 

 

 

 

 

「よ」

 

…石矢魔に入学してしょっちゅう思うことなんだけど、在校生のうち何割かはもう成人してたりしない?

目の前の丸サングラスの東条の手下その1さんとか、まじでどこの組の方ってなる。

 

「お前…」

「東条さーん、来ましたよー東条さーん!!」

「おーいまいく」

 

気の抜けた声で返事をしながら、奥の茂みから男が出てきた。

 

「ほーう、なるほど。お前が男鹿か…」

 

男は、男鹿よりも大柄だった。

引き締まった無駄のない体格、しかし全身を覆う筋肉は鎧のように隆起しており、髪色も相まって野生の虎のようだった。

けれど、男鹿と私がもっとも注目したのは、

 

「ケンカ、しようぜ」

 

男の背にいる、ベル坊だった。

 





結構キリがいいのでここまで。
てかアランドロンってあんなに長い名前だったんだなって…
バティム・ド・エムナ・アランドロン

…バチクソドエムナアランドロン

だったりしないよね…。
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