「……戻っていた、のか……」
「……」
大長老は男の帰還に顔を歪め、受付嬢は顔を背けて伏せる
「なぁ……?聞こえたんだけどよ……騙してるって何だ?たぶん俺の事だよな?違うのか?」
男は問う
「……」
「……」
だが2人は沈黙する
「……久しぶりに会ったってのにえらい態度してくれんなぁジジイよぉ?」
「……」
大長老は答えない
「なぁ……」
男は近くにあった木製の大きなテーブルを片手で持ち上げる
「聞いてんのかッ!!」
そして投げつけた
投げられたテーブルが大長老の真横で弾けバラバラに散らばる
「……わかった話そう」
大長老はそう言った
暴力に屈した訳ではない、真実を告げる覚悟が出来たのだ
「……」
受付嬢は拳を握り、唇を噛み、耐えている
「今までオヌシが行っていたクエストは全てFクラスと呼ばれる特別なクエストだったのじゃ」
「あ?Fクラスゥ……?何だそりゃ?」
大長老によりギルドが男にしていた暗躍は全て話された
「てこたぁ俺はずっとG級よりも上の過酷なクエストを何年もやって……やらされてたって事か?」
「さよう、一概に全てが上とは言えんがオヌシの戦い方では間違いなく上だった、下位がG級に挑むようなものじゃ」
「何の為にんな事したんだよ?」
「オヌシを鍛えて魔境たるFクラスの中心ハンターになってもらいたかったんじゃ」
「まどろっこしい事しやがる……普通に言やいいじゃねぇか」
「知らずにFクラスクエストを達成した無知故のガムシャラな爆発力に賭けたのだ、その後にオヌシのめげぬひたむきな姿勢、折れぬ心を見て続けるべきだと確信した」
「……辞めようと思った時もあったけどな」
男は肩を竦ませ笑う
「……」
そんな態度を受付嬢は悲しく苦しそうに見ている
「これで……全て話した」
大長老は男を覚悟の目で見つめる
「……」
男は何かを考えている
「……1つ聞かせろジジイ」
「……何じゃ?」
男は聞いた
「俺は落ちこぼれじゃなくてギルドに迷惑もかけてなかったって事か?」
「……落ちこぼれなどとんでもない、オヌシの成長は未来のギルドを照らす光になると思っておったくらいじゃ、期待はすれど迷惑と思った事も一度たりとも無い」
「……そうかよ」
男は天井を見上げ息を吸い、大きく吐きながら顔を下げた
「わかった、なら許してやるよジジイ」
微笑みながら男は言った
同時に受付嬢の顔が歪む
「怒らぬのか……?」
最悪八つ裂きにされる事すら覚悟していた大長老は男の態度に疑問をぶつける
「ああ、まぁさっきはキレかけたけど今は怒っちゃいねぇよ、理由聞いたらなんか不思議と納得出来たっつーか……もともとよ……変だとは思ってたんだよずっと」
男は言う
「俺専用の受付嬢に目隠しと耳栓させられるネコタクシー、失敗しまくりなのに笑って許して金までくれるギルド、アイツ等以外のハンター達には無視されるし思ったよりも全然強くねぇG級も居た……普通なんて思えねぇよ」
男はずっと違和感を感じていた
「けど言えなかったんだ、言ったらこの生活が終わるんじゃねぇかって思ってよ……ガキの頃からハンターになりたかったから怖かったんだよ、夢が消えるのが……気付いた時には俺はもうギルドに頭が上がらないくれぇ世話になってた」
言えなかっただけで妙だとは思っていたのだ
「だからせめて返そうと思ったんだ、恩を感じてたからな……それは今でも変わってねぇ」
どんな形であれギルドに恩があるから男は役に立とうと必死だったのだ
「まぁなんだ……つまりよ……これからは普通にしねぇかって言いてぇんだ」
騙した理由が悪意ではなかったから
だから男は怒らなかった
いや、怒れなかったのだ
落ちこぼれだと思っていた自分に期待して特別な措置を取ってくれていた事が知れて嬉しかったから
「……わかった、オヌシの恩情に感謝する」
大長老は男の慈悲に深く頭を下げた
「んで話が終わったところでよ……何があったんだ?」
「うむ……先程の大地震の後に大陸各地でモンスターが一斉に活性化して暴れ始めたのじゃ」
「一斉って……全部か?」
「そう、全てのモンスターじゃ、古龍種も含め超大型モンスターも活性化し暴れておる……おそらくは世界規模で」
「そんでギルドはてんやわんやで他のハンターも居ねぇのか……納得のヤバさだ、いやマジヤベェな」
「さよう、そしてその危機の中でも絶対に無視出来ぬ事態が発生したのじゃ、大陸が地図から消えるかもしれぬ程の……」
大長老は言い淀む、口にするのも苦しいのだ
「何だよ?勿体ぶらねぇで言えよ」
「……大巌竜ラヴィエンテと蛇帝龍ダラ・アマデュラ亜種が同時に活動を始め……住処を離れ互いに向かい始めたのだ、まるで示し合わせ、導かれるかのように」
これが大長老を絶望させた理由
「オイオイ……ラヴィエンテって確か……ラオシャンロンの数倍の……ダラ・アマデュラも同じくらいじゃなかったか……?」
超大型すら越える超巨大モンスターの進撃であった
「その通り……全長400mを越える2体が住処を離れ移動するだけで大惨事が起こるというのにもし2体が出会い、戦いでもすれば……」
どんな被害が出るか想像もつかない、大陸を消滅させる事も可能なのではと思わせる危険を孕む2体の活性化だったのだ
「時間の猶予は?」
「現在2体は遠く離れていながらも緩やかに前進しておる、この速度のままなら猶予は7日と見ておる、ラヴィエンテは住処である絶島を離れ今海中を進んでいるから陸地に上がった後は速度が上がり縮まるかもしれん」
「7日か……そうか」
「……それまでに我等が持てばの話だがな」
2体の接触は確かに危険極まりないが現在進行形で暴れている古龍含めた全てのモンスターも同じ程に危険なのだ
人類の滅亡を予感させるくらいに
「……んでさっきのはそれに俺を行かそうって話だったって訳だな?聞いてた感じラヴィエンテの方か?」
「……そうじゃ」
「……!?」
受付嬢が反応する
(ダメ……)
思うが言葉に出ない
「あー……そうか……」
(ダメ……!)
思うのに言葉が出ない
「わかった……やってやるよ」
「ッ……!!?」
男の言葉に涙が浮かぶ
「よいのか……?生きて帰る事はおろか死ぬ確率の方が高いのだぞ……?」
「まぁ……何とかなんだろ、知らんけど」
そんな会話を聞きながら受付嬢は思う
(わかってた……あの人が引き受けるって事は……)
誰よりも一番近くで男を見てきた受付嬢はわかっていたのだ、こうなる事は……
(だってあの人は……優しいから……)
ずっと見てきたから
粗暴だけど誰かに優しく出来る男の姿を一番近くでいつも見てきたから……
だからこそ……行かせたくなかったのだ……
「……ラヴィエンテの方はいいとして」
そんな受付嬢を横目で見て視線を大長老に戻す男
「ダラ・アマデュラの方はどうすんだ?」
「そちらは既に決まっておる、オヌシを除いたこのギルド最強の者達に行ってもらう」
「最強って……アイツ等か?」
男が言っているのは大男等3人の事
「そうじゃ、ダラ・アマデュラの住処である千剣山から移動を開始した現在このギルドが迎撃準備時間を考えると一番近くとなった、故に彼等を緊急で呼び戻し迎撃に当たってもらう事にした」
「……そうなのか」
男の表情が変わった、心配を絵に書いたような顔をしている
「……今彼等は準備を終え間も無く出発するだろう、このギルドから」
「!!」
それを察した大長老の言葉に男は強い反応を示した
「行ってくるといい、その間にオヌシの準備を進めておく」
「……わかった」
男は走っていく
「……」
悲しい視線を背に受けながら
「準備出来たなお前等?」
大男の確認に2人は頷く
「遅刻してる奴が居るけどね」
「もう……相変わらずなんだから」
苦笑する小男と女
「ちっ……早く来いってんだノロマヤロウが」
悪態つく大男
「オイッ!」
そんな時だった
「間に合ったか……」
男が来たのは……
「雑魚野郎じゃねぇか、何だ?見送りに来たってのか?」
「ああ、ダラ・アマデュラと戦うって聞いてよ……」
男は顔に心配を滲ませていた
「……俺様達なら問題ねぇ」
「戦った事あんのか?」
「普通の方は前にな、ギリギリ勝てた……亜種は今回が初めてだ」
「大丈夫なのかよ……?」
「……なんだぁテメェ」
そんな男の態度に大男の怒気が膨れた
「何様だお前!落ちこぼれの雑魚野郎が生意気に俺様の心配なんざ万年早ぇーぞ!!」
「もう知ってんだ俺は!全部……ジジイから聞いた!」
「……ほーん、聞いてやがったか」
男が真実を知った事を知るも大男は怯みはしない
「じゃ何か?テメェは実は俺様達より強かったらしいから心配だってのか?舐めてんじゃねぇぞコラァ!!」
「ッ……」
大男の怒りが男を怯ませる
「テメェに負けたつもりはねぇんだよ俺様は!!」
「!?」
その言葉が男をハッとさせた
「必ずテメェに追い付いてやる、デケェヘビなんざ踏み台にしてな!!」
対等で在ろうとしてくれているのだとわかったのだ
「……ケッ、テメーはいつもそうだったな」
自分が落ちこぼれだと思っていた頃から大男はいつも飾らぬ言葉をくれていた、付き合ってくれた
自分を最初からそう見てくれていたのだと実感した男の顔は嬉しさで笑っていた
「終わったら飲みに行くんだったな?」
「おう!たらふく飲むぞ!!」
「奢ってくれよ、失敗ばっかだったから金ねぇんだ」
「しょうがねぇな、優しい俺様が奢ってやるよ!ガハハハ!!」
「ハハハッ!楽しみだぜ……なぁ」
2人は笑う
「テメェはテメェのやれる事やりやがれ」
「ああ……そっちは任せた、こっちは任せろ」
拳を重ねて交わされる
「死ぬんじゃねぇぞ……心の友よ」
「テメーもくたばんなよ……親友」
友との誓い
「あーあ、手伝ってやろうと思ったのによ~」
「抜かしやがる……オイ言ってやれ!」
大男に促され小男は嫌らしい笑みを浮かべて言い放った
「悪いね雑魚君!このクエスト……」
同時に男の背後からメガネをかけた男と青いアイルーが走り抜けた
「4人用なんだ!!」
3人に合流するライトボウガンを携えたハンター
「遅ぇぞ!!」
「ごごご、ごめ~ん!」
謝るメガネに拳骨を食らわせながら4人は行く
「あ、あの人!懐かしいなぁ~オーイ!」
「後にしやがれ!それよりお前鈍ってないだろうな?ヘタこいたらギッタンギタンにしてやるからな!」
「大丈夫!ボクだってやる時はやるよ!昔君と喧嘩した時みたいに……ね!」
「けっ……まぁいい、んじゃあ……やるぞお前等!!」
「「「オー!!」」」
蛇帝龍ダラ・アマデュラとの戦いへ……
「何が4人用だバーカ……」
見送りが済んだ男は身を翻し、駆ける
「勝てよ……ダチ公」
己の戦いへと赴く為に……
不朽不滅を謳う帝
対するは
千古不易を謳う友
ジャイアンがモチーフならあのセリフは外せない……スネ夫の有名セリフも言わせたかった……
のび太としずかちゃんは無理、だって「ドラえもーん!」と「キャー!のび太さんのエッチ!」しかないんだもん。
そして昔に言われていたラヴィエンテとダラ・アマデュラどっちがデカイんだ?からこの展開は来ています。
私的にはラヴィエンテがデカイし強いと思ってます、理由はラヴィの方が好きだから。