Fへの挑戦   作:黒太陽

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「時間ねぇのにわりぃ!」

 

急いで戻って来た男

 

「頼むぞ、必ず間に合わせ彼等にこの手紙を届けてくれ……」

 

大長老は9匹のホルクと呼ばれる鷹のような小型の鳥を一斉に飛ばしていた

 

「忙しいのにわりぃ」

 

ギルド間の連絡か何かだと思った男は気にせず大長老へ改めて謝る

 

「いいさ……戻って来なくとも責めはしなかった」

 

大長老は苦笑し男を迎える

 

「逃げるかよ……けどまぁ、そう思うのも仕方ねぇ相手か」

 

男も苦笑する

 

「いつでも行けるぜジジイ?」

 

「いや、まだ準備は終わっとらん……オイ!」

 

大長老が呼ぶと職員達が防具を持って入って来た

 

「これを装備して行ってもらう、このギルドに有る最高のF規格防具だ……いずれオヌシへ詫びとして贈ろうと造らせていた物だ、遠慮は要らん」

 

「……いや、わりぃけどよ」

 

男が断りを言い切る前に大長老は首を振った

 

「ならん、これは絶対条件じゃ……これを着て行かぬのなら送り出す事は絶対に許可出来ん」

 

男のこだわりは理解していたが今だけはそうはいかせない、男を完全装備で不安無く送り出す事はギルドが男に出来る数少ない支援として最低であり絶対条件だったから

 

例えそれが防具が意味をなさぬ相手だろうと……

 

「……わーったよ、確かに防具無しはバカにし過ぎてるわな、悪かった」

 

男も巨大な相手へ裸で挑む無謀、アホらしさを見せられるギルドの気持ちを理解し承諾した

 

「着け方なんてもう忘れちまったぞ……」

 

どこの部位のかもわからない防具を手に取り呟いた瞬間、防具は職員達に素早く奪われ慣れた手つきで次々に男に装着されていく

 

「騙していてすまなかった……」

 

籠手を取り付けるギルドの上役が呟く

 

「今まで無視してごめんなさい……」

 

男と話さなかった受付嬢が足甲を取り付ける

 

「私達が言えた事ではないが……頼む」

 

最後に大幹部が兜を被せた後に深い御辞儀をし、残りの職員も列なり頭を下げる

 

「いいさ……気にすんなって……ありがとよ」

 

防具を着けた男はそう言って大長老へ振り返る

 

「これで良いか?」

 

「うむ、似合っておる……ではいつものネコタクシーに行ってくれ、オヌシの専属アイルーがラヴィエンテまで送ってくれる」

 

「了解だ、じゃ行ってくる」

 

「すまぬ……頼む……すまぬ」

 

申し訳なく頭を下げ、男を送り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ小僧!!」

 

乗り場へ向かう途中、男は呼び止められた

 

「親方!!」

 

呼び止めたのは鍛冶屋の親方、背に大きな箱を背負っている

 

「聞いたぞ、クソヤベェのとやるんだってなお前?おぉ?あんだけ嫌がった防具着てんじゃねぇか、馬子にも衣装だなこいつぁ」

 

親方は初めて見た完全装備姿の男に笑っている

 

「そうなんだよ、マジクソヤベェ山みてぇなモンスターとやるんだ、スゲェだろ?」

 

「スゴかねぇ、頭イカれたバカってんだそういうのはよ」

 

言った親方は気付く、男の防具が僅かに揺れている事を

 

(だろうよ……軽口でも言わなきゃホントに頭イカれちまうわな)

 

それを察した親方は背負う箱を下ろし、中から巨大な大剣を持ち上げ男に投げた

 

「っと!親方こいつは……?」

 

「オレが造ったF規格武器ってヤツだ、それなら戦える筈だ……お前に合わせて造った今のオレが造れた最高傑作だ」

 

柄は男の握る癖に合わせた形をしており吸い付くように手に馴染み新品特有の違和感が無い

 

刃も一般的な厚みより太く重い、刃長も長い

 

見た目からは想像出来ない怪力を持った男に合わせた男だけが満足に扱える専用大剣

 

ギルドがF規格武器を用意しなかったのは親方がこの大剣を造っていたからだった

 

「マジか……」

 

男は持つ大剣を見つめている

 

「お前の鍛えていきたいってこだわりは知ってんだがな、そうも言ってらんねぇ事態だ……素直に持っていけ」

 

親方は男に悪い事をしていると詫びるが男はちゃんと聞いていない

 

「スゲェな親方……マジでスゲェ!」

 

見惚れていたのだ

 

親方の造った大剣に

 

「最高だ!やっぱり親方の武器は最高だよ!これさえありゃ百人力だ!」

 

嬉しいのだ

 

腕も人柄も気に入った親方が自分の為に武器を造ってくれていた事が

 

「ありがとよ親方!親方に出会えてホントよかったぜ!」

 

こだわりなど気にならないくらいに嬉しいのは当然の事なのだ

 

「あ……金は、ねぇんだが……」

 

「金と素材は気にすんな、お前をイジメてたギルドに払わせるからよ、素材もお前が今まで持って来たのと合わせてギルドからも提供させた、FクラスのG級武器並みの出来にはなってる」

 

気に入ってくれた事は造った親方からしても嬉しい事、だから言う

 

「いつでもメンテでも強化でも持って来い、お前のは貴族だろうが王族の予約だろうが関係ねぇ、一番にしてやる」

 

これが最後ではなくまたを……

 

「わかったぜ!サンキュー親方!行ってくる!!」

 

大剣を嬉しそうに掲げ、男は行った

 

「オレの鍛冶魂懸けてあんだ、負けたら承知しねぇぞアホンダラ」

 

親方に見送られ男は更に行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

 

乗り場までもう少しの場所で男の足は止められた

 

「お前……」

 

通路の真ん中に立ち塞がっていたのだ

 

「……」

 

受付嬢が……

 

「行っちゃダメです」

 

彼女は言う

 

「……」

 

男は進み出した

 

「ダメです!行っちゃ!」

 

手を広げ男の道を塞ぐ

 

「どけよ」

 

その手を払えず男は言う

 

「死んじゃいますよッ!!」

 

彼女は叫ぶ

 

「勝てるわけないじゃないですか!?絶対死んじゃいます!」

 

行かせたくないのだ

 

死ぬとわかっているから

 

「勝てる勝てないじゃねぇんだ」

 

男は言う

 

「やるしかねぇんだ、じゃねぇと俺の大事なモンがなくなっちまうからよ……どっちにしろ死ぬんなら、俺はやれる事して悔い無く死にてぇ……リタイアすんのは嫌いなの、お前も知ってんだろ?」

 

「でも……でも……!」

 

彼女は言い返せない、だが行かせたくない

 

もはや感情の世界、理由関係なく行ってほしくないのだ

 

「どいてくれ」

 

「やだっ……!」

 

首を振ってその全身で拒否する

 

「また……言って欲しいんです、くたびれた顔で申し訳なさそうに失敗した、って……!成功した!って嬉しそうに報告して欲しいんです……!くだらない事言って……笑って……これからも……ずっと……」

 

「……どけって」

 

「やだぁ……」

 

彼女は泣いている、だが男は見ずに前だけ見つめている

 

「じゃあよ……待っててくれよ」

 

「え……?」

 

彼女と男の目が合わせられた

 

「いつもの場所でよ」

 

「それって……あっ!?」

 

隙を突いた男が強引に手を振り払い、先へ進む

 

「プーギーの世話頼むわ、俺昔から友達居なくてよ……お前しか頼めねぇんだ」

 

「やだ……ダメ……」

 

止められない

 

「ダメだって……やだぁ……」

 

止める事は叶わない

 

「バカァ……」

 

覚悟を決めた男は振り返らず彼女の前から消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わりぃ待たせた」

 

「旦那……」

 

アイルーが男を迎える

 

「今まで騙してて悪かったニャ……」

 

「あーもういいもういい!謝罪はもううんざりだ!気にしてねぇから普通にしろ!わかったか!」

 

「ニャ……旦那……」

 

男はまだ申し訳なさそうにしているアイルーの頬をつまみ、引っ張った

 

「わかったか!!」

 

「わ、わはったヒャ……」

 

わからされたアイルーは頬を擦りながら男と共に荷車へ乗り込む

 

「目隠しと耳栓いいのか?」

 

「ンニャャ……イジワルしないでくれニャ旦那……」

 

「ハハハ!わりぃわりぃ!」

 

男は大きく笑う、まるで不安を吹き飛ばしたいかのように

 

「なぁ?お前ずっと見てくれてたんだろ俺の事?」

 

「そうだニャ」

 

「だったらお前が一番長くクエスト一緒に行ったって事になんのか」

 

「見てただけニャ」

 

「でも俺がモンスターにやられた時はいつも助けてくれてたんだろ?」

 

「そうだニャ」

 

「じゃ仲間みたいなもんだな、次からは一緒に狩りに行こうぜ?俺のオトモになってくれよ」

 

「ニャ!?」

 

思わぬ申し出にアイルーは驚き跳び跳ねる

 

「行くニャ!なるニャ!ホントはずっと旦那と一緒に戦いたかったニャ!」

 

見ている事しか出来なかったアイルーはいつもそう思っていた、幾度となく一緒に向かう内に男の事が好きになっていたのだ

 

「よーし決まりだ!でも次からだからな?今回は無理だ」

 

「ニャ……」

 

アイルーの表情が沈む、次が無い可能性を強く思い出したからだ

 

「次……絶対一緒に行くニャ!」

 

だから言う

 

生きて帰って来いと

 

「約束だ……相棒」

 

「ニャ……!」

 

男の拳とアイルーの小さな手が重なる

 

「旦那は寝とくといいニャ、クエスト帰ってすぐだから疲れてるからニャ、遠いから休む時間はたくさんあるニャ」

 

「わかった、じゃ頼むわ」

 

男は本当に久し振りに外の景色と音を聴きながら横になる

 

(勝てるかどうかで言やぁ……勝てねぇな、やらなくたってわかる……死ぬ)

 

男が戦う相手、ラヴィエンテ

 

雲にも届こうかというF領域最大の超巨大モンスター

 

その巨体とFクラスモンスターとしての比類無き強大さからラヴィエンテの状態に応じてFクラスハンター8人から32人で行う大討伐という特殊なクエストに指定されている

 

そんな相手に1人で挑むというのだ男は

 

誰が見ても勝ち目は無い、大男達がダラ・アマデュラを討伐する時間を僅かにすら稼げるかも危うい相手

 

(誰かがやんなきゃなんねぇ……それがたまたま俺だったってだけだ、運が悪いとかじゃねぇよ……むしろ任せてくれた事を誇りに思え)

 

最低でもFクラスのハンターが必要な相手にFクラスモンスターと戦っていただけの自分が選ばれた事は誉れであれと自分に言い聞かす

 

(でもやっぱ……怖ぇなぁ)

 

男は震えていた、ずっと……恐怖で

 

(……寝るか)

 

考えないようにして男は目を閉じる

 

UNKNOWNとの戦いの疲れからかすぐに意識はまどろみの中へ沈んで行く

 

(最後に……また……会っときたかった……なぁ……)

 

意識が眠りにつく刹那、男は思う

 

 

(ね……さ……ん……にぃ…………ん…………)

 

 

遠く朧な記憶を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大地ノ化身

 

暴レ狂イシ白亜ノ大蛇

 

黒き絶島主

 

 

 

大巌竜ラヴィエンテ

 

 

 

運命が導く決戦の行方とは

 

 

やはり運命のみぞ知る事なのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公、裸縛り辞めるってよ……
さすがにラヴィエンテに裸本家武器で挑むのはギャグが過ぎるんでね……ようやく装備整いました、なお本家Fだと防御力減算されるのでちょっと強い程度の防具だと容赦無くワンパン、強くてもワンパンされるのでスキルを得るゴツイ服くらいの認識でいいです。
ラヴィエンテの最低人数8は初期を採用しました(後期は最低4人)ダラ・アマデュラとの対比です。

ネタに走れないのが辛いですがあと少し……

次回……主人公死す  デュエルスタンバイ!!
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