ガキの頃からハンターになりたかった
モンスター図鑑を見るのが大好きで……気付いたらそうなってた
だからなりたくてバカみたいな修行をガキなりにやってたよ、新しいダチも作らずに……
初めての友達に約束してたんだ、ハンターになる
って……じいちゃんはずっと辛そうな顔してたよ
そんで歳がハンターの規定に達した時にじいちゃんに言ったんだ、ハンターになるって……本気で
じいちゃんは大反対してた、あんなろくでもないモンになるな!って……寝たきりのまま
その時、親父も御袋もハンターだったってじいちゃんから聞かされた
俺がまだ赤ん坊の頃に古龍の襲撃に会った村へ助けに行って古龍と相討ちになって死んだらしい
他人を優先して家族も大事に出来ないろくでもない職業だってじいちゃんは怒ってたな……同時に泣いてた
血なんだと思ったよ……ハンターの両親から貰った血が俺をハンターの道に進ませてるんだってよ
それからはハンターになるって話はしなかった
たった1人で育ててくれたじいちゃんを悲しませたくなかったから
でもその後すぐに……じいちゃんは病気で亡くなった
たった1人の家族が死んじまったんだ……
だから俺はハンターになる事にした
大事にする家族はもう居ねぇから……
それに……
親父と御袋がハンターをしてた理由……何となくわかる気がしてたからよ
ハンターは……困っている人を助ける優しい仕事
そうなんだろ……?親父……御袋……
「もうすぐ着くニャ旦那」
「おう、そうかよ」
ギルドを出発して3日
男はラヴィエンテが上陸する海岸の近辺まで辿り着いていた
「しっかし……ヒデェ有り様だったな」
「ニャ……そうだったニャ」
道中、何度もモンスターが暴れている様を見た
気が狂ったように辺り一帯を滅茶苦茶にしているモンスター達を躱しながら男は進んだのだ
「抑えられてりゃいいがな……」
他のハンターが戦っているところも幾度となく見た、劣勢に見えた時は救援に行こうかとしたが自分の目的を思い出し自制し見殺しにした
その果てにようやく辿り着いた
ラヴィエンテとの対決の場所へ
「ここでいいぜ、後は歩いて行くからよ……お前は下がってな」
「ニャ……旦那……」
「んな顔すんな……死んでなかったら助けてくれよ、いつもみたいに……な?」
「……わかったニャ、約束するニャ」
「死んだら死体はそのままでいい、今まで散々モンスター狩って来たんだ……墓なんて贅沢言ったら罰が当たる」
「ニャ……死んだらなんて言わないでくれニャ!」
「……わりぃ、弱気になってたわ……約束したもんな俺達……悪かった相棒、信じて待っててくれや」
「……ニャ!!」
また拳を合わせ……男は1人行く
「ウオラァーーー!!」
叫ばれる雄叫び
大男の持つ巨大なハンマーがダラ・アマデュラの扇刃を打ちつける
ドゴオッ!
鈍く重圧な打撃音が鳴り、蛇帝龍の恐ろしく堅牢な扇刃の一部を欠けさせる
「ヌアアアアッ!!」
更に激しい鉄槌の乱打、持てる力の限りで握り、振りかぶり、打ち下ろす
「次はそっちだ!!」
小男へ指示を飛ばす
「了解!そらそらそらそらー!!」
小男が変幻自在に駆使する片刃の双剣が赤く光る尾を切り刻む
「変わった!次は胸だ!!」
光が変わる箇所を瞬時に見極め指示を出す
「任せて!狙い撃つよ!!」
メガネのライトボウガンが火を吹き撃たれた貫通弾が側面から蛇帝龍の剣鱗を貫き正確に胸殻を撃ち抜く
「そっちは大丈夫!?」
頭部に居る女へ呼び掛ける
「大丈夫!みんなのサポートは任せて!!」
蛇帝龍の頭部で舞うように奏でられる攻撃を兼ねた女の狩猟笛の旋律が3人の強化を途切らず維持させ力を与え続ける
「巨龍爆弾設置出来たよ!みんな離れて!!」
青いアイルーが叫ぶと大男と共に扇刃から距離を取る
ドンッ!!
一瞬の大爆発が扇刃を粉々に吹き飛ばす
「ジャアアアアアアアッ!!?」
直後に衝撃で跳ねたダラ・アマデュラが身を捩り回転する
「うおおっ!!?」
超巨体の回転には抗えず4人と1匹は成す術なくダラ・アマデュラの巨体から振り払われ大地を転がる
「ちっ、クソッ……!!」
立ち上がる大男達の前でダラ・アマデュラは前進している、巨体故に遅く感じるがそんな事はなく距離をドンドン離されている
「丸1日かけてまだくたばんねぇのかこのクソヘビッ!!」
追いかける大男が愚痴を叫ぶ
距離の関係で男より先に戦闘を開始していた大男達は回復と僅かな休憩を挟みながらダラ・アマデュラへ何度も攻撃を仕掛けていた
「ハァ……ハァ……もう1回行くぞ!!」
「「「オー!!」」」
疲労が目に見えているが攻撃は止めない
ダラ・アマデュラは攻撃を受けながら前進を止めないのだ、大男達の攻撃によって速度は落ちたが見張る程落ちていない、このままでも接触予想通り4日あればラヴィエンテまで辿り着く、ラヴィエンテ次第では更に早くなるかもしれないから少しでも早く討伐せねばならない
「シャアアア……!」
ダラ・アマデュラは進む
その身で大地を抉りながら
「アイツは1人なんだぞ!俺様達が諦めていいわけあるかッ!!」
蛇帝龍は進む
その進路に居る竜も獣も蹴散らしながら進む
帝の通る道に命無し
「はぁー……スゲェもんだな防具って」
男は歩きながら防具の恩恵を感じていた
(重そうなのに重くねぇ、逆に体が軽く感じるし全然疲れねぇ……力もいつもより強く入る、そういや腹も減らねぇな……防具の効果か?)
普段と明らかに違う、高い効果を実感していた
「食わず嫌いだったな……こりゃ確かに良いな、他の奴等が着ける理由わかるわ」
本当に良い防具とは恩恵も大きい、男はボーン装備しか知らなかったから今まで防具を防御力でしか見ておらず有効性を知らなかったのだ
「……へっ!」
そして親方から貰った大剣を見る
「なぁんかやれそうな気がして来たな」
根拠も何も無いがそう思ってしまうほど男の戦闘力は上がっていた
ズンッ……!!
そしてそれは自惚れに過ぎないとすぐに思い知らされる事になった
「来やがった……」
巨大な何かが大陸にぶつかった振動、遠目に見える海岸から衝撃で打ち上がった水柱がその大きさを物語る
「フゥゥゥ……」
大きく吐かれる息、止まっていた震えがまた体を揺らす
ズズズズズズッ……!!
登ってくる音がまだ遠く離れているのに聞こえ、男の周囲を小刻みに揺らす
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
大地を震わす咆哮が天に轟き
大巌竜ラヴィエンテがその姿を現した
「……ッッ!?」
男は圧倒される
(で……デカ過ぎだろ……!!?)
それ程までに巨大で力強き竜
人が挑む存在とは思えない質量の差
「ハァ……フゥゥゥ……」
体の震えが止まらない
どんなに集中しても体から恐怖が抜けない
(やるしかねぇんだ……やるしか……!)
その時に頭に過るのは己の原点
困っている人を助けたいと思う……
男が持つハンターの信念
(……!)
そして……1人の笑顔
「よし……やってやるぜ、やってやらぁ!!」
震えは止まった
ならば後は成すべき事をするのみ
「ヤロォォォブッ殺してやらァ!!」
大剣を構え……男は駆けた
大巌竜ラヴィエンテへ
絶死の狭間へ
「ウオラアアアアアアアアアアアッ!!」
「ヴォオオオオオオオオオオオオッ!!」
大剣を振り下ろす
「ギルド間の連絡は取れたか?」
ギルドでは皆寝ずの業務を続けている
「半数が取れました、いずれのギルドも手が足りず状況は悪いとの事です……幾つかの村や町がギルドごとモンスターに蹂躙、壊滅したとも……」
「そうか……」
大長老は悔しく拳を握る
「現大陸の沈静状況は?他大陸はどうなっておる?」
「中型はほぼ鎮圧、大型は4割程……古龍種は1割といったもよう」
「現大陸の被害状況はわかるか?これもわかるなら他大陸もじゃ」
「お待ちを……正確ではありませんが現大陸の全体被害割合は2割、他大陸も同程度、多くて3割といったところです」
「……2割?」
大長老はその答えに違和感を感じる
(古龍種も含めたモンスターの一斉活性から3日……まるで準備が整っていなかったのに被害が少な過ぎる)
想像よりも被害が少ないと感じたのだ、大長老の直感では5割近いと思っていたのにその半分
(情報が錯綜しているだけか……?)
そう思った大長老は正確な情報を得て村や町に近いモンスターから対処するように指示を飛ばし手を合わせる
(そろそろ彼も相対した頃か……)
一番の大災害を起こす可能性を持つ超巨大モンスターの迎撃……と名目したダラ・アマデュラ討伐までの時間稼ぎ、ダラ・アマデュラを討伐すれば2体の衝突という最悪は避けられ、更に目標を失ったラヴィエンテが止まるのではと期待した作戦
その為に男を人柱にしてしまった事を悔いている
(間に合えばいいが……)
祈る
今はそれしか出来ない
届かないなら祈りはしない、ただ虚しく響くだけだから
だから祈る、届くと信じて
「大長老様ッ!!」
そんな祈りが通じたのかギルドの連絡員が飛び込んで来た
「どうした?」
「これを……」
情報が記された紙を受け取り大長老は読む
「これは……なるほど合点がいった」
それは果たして絶望か……
「何とかなるかもしれん……」
それとも希望か……
「大変ですッ!!」
同時に容赦無く凶報を知らせる苦声も響く
「ラオシャンロン!岩山龍ラオシャンロンがこの町に接近!!迎撃戦力有りません!どうしますか!?」
「……ならばワシが出る」
立てば10mに届かんとする体躯を誇る巨人が腰を上げる
曰くラオシャンロンと相撲を取った
曰くラオシャンロンの尻尾を切断した
曰くラオシャンロンの頭を一刀両断した
語られるギルドの生ける伝説すらも戦場へ赴く
まさに……総力戦
人と龍達が織り成す竜大戦
弄ばれる運命の戦争……
語らねばなるまい……
お前達にも教えよう、主人公がハンターになった理由と続ける理由を。
って特に無いですがね、子どもの頃によくあるヒーローになりたいって類いの夢が夢で終わらず実現したのが主人公、体の強さの理由はハンター(モンスター)とハンター(モンスター)から生まれたハンター(モンスター)だからです。
次が山場ですかねぇ……たぶん。