モンスターの一斉活性による世界的危機
大陸各地に多大な被害を与えた異常は突如収束した
大巌竜ラヴィエンテの討伐が機だったのか暴れていたモンスターの活性化が一斉に収まり異常は一気に収束へと向かったのだ
後に大活性事変と呼ばれる大事件
研究者達が原因をこぞって解き明かそうとしたがどれだけ時が経っても原因不明とされ事変以降1度も活性化が起きなかった事から次第に研究者達の興味から外れ一部の熱心な研究者しかその話をしない一切が謎の現象
だが一部の老人や歴史を知る者はこの現象を口を揃えてこう語る
運命の悪戯だろう、と……
「救援隊の編成急げ!1人でも多く助けろ!」
ラヴィエンテの討伐から3日、ギルドは収束したモンスター騒動の後始末も程々に被害に合った地区の救援・救助を優先していた
「……」
内容で言えば人が生き残った勝利と言える内容でギルドの面々は祝勝ムードで帰ってきたハンター達を労い、称えている
「……」
そんな中で受付嬢は暗い顔でカウンターで座っていた
「ぷぃぃ……」
頼まれたプーギーを抱き抱え彼女は待っていた、ラヴィエンテが討伐された報せが来た時からずっとこの場所で……
「大丈夫?無理し過ぎよ……休んだほうがいいわ」
女が心配で声をかける
大男達は既に帰って来ている
「大丈夫です……約束しましたから私、ここで待ってるって……いつものこの場所であの人を……」
憔悴した声を出しながら受付嬢は仄かに笑う
「……もう」
何度も言ったが彼女はその場所から頑なに離れようとしないのだ、このままでは彼女は体を壊してしまうというのに動こうとしないのだ
「あのバカ野郎……さっさと帰って来いってんだ」
大男もそんな受付嬢を見て愚痴る
「……ねぇ、まさか相討ち……なんて事ないよね?」
メガネがポツリと言う
「オイテメェ!」
大男がメガネに掴みかかる、小男も怒っている
「冗談でもんな事言うんじゃねぇ!ブッ飛ばされてぇか!」
「そうだそうだ!アイツが死ぬもんか!」
2人は信じているからだ、大男にいたっては約束もしている
「ごご、ごめん……」
メガネも失言だったと謝る
「君は本当にバカだなぁ……」
青いアイルーも呆れている
「まだ戻らんか?」
顔を出した大長老がギルドの上役に問う
「はいまだ……ゆっくり帰って来ているのだと思いたいですが……」
「……そうか」
男はまだ戻らない
「……あ、アイルーが帰ってきたよ」
メガネが乗り場に繋がる通路から入って来たアイルーに気付いて指差した
「……!アイツの……!!」
大男達はすぐわかった、男の専属アイルーだと
「!!」
「ぷいっ!?」
受付嬢も気付き立ち上がる
「オイッ!アイツは……!アイツはどうした!?」
大男はアイルーに詰め寄り周囲を見回すが男は居ない
「ニャ……ニャァァ……」
アイルーは困った顔をしている
「オイ……まさか……ウソだろ……!?」
大男が察する
「あの……その……ニャァァ……」
アイルーは答えない、ひたすらに困った顔をしている
「冗談だって言えよ……!なぁ!オイッ!!」
そんな大男の様子に受付嬢も察した
「嘘……」
「ぷいっ?」
絶望に体は崩れ、項垂れた
「ウソだぁ……やだぁ……」
その目から大粒の涙が溢れる
「約束……したじゃないですかぁ……」
「ぷい~?」
受付嬢の泣き声と大男の罵声が響く
「まさか……こんな事になるとは……」
大長老も上役も後悔に顔を伏せている
ギルドは悲しみに包まれていた
「うーす」
誰かがアイルーの後から入ってきた
「「「!!?」」」
驚愕したギルドがザワリと一瞬騒ぐも誰も言葉を紡がない
「……!!」
唖然としていた大男は「わりぃちょっと黙っててくれ」とジェスチャーされて渋々鼻息荒く腕を組む
「うぇぇん……」
「ぷい~~~♪」
泣いている受付嬢と久し振りに会えてご機嫌のプーギー
「おい」
「!!?」
声をかけられて受付嬢は顔をあげる
「あ……あぁ……」
待ち望んだ顔を見れた彼女は言葉が出なかった
「勝ったぜ……成功だ」
男が笑っていたのだ、いつもの裸で、いつもの顔で
「この……バカァ!!」
「ぷいいっ!?」
カウンターに乗り上げた受付嬢が男を殴った、プーギーは落ちた
「ってーな!なにしやがる!?」
「心配したんですよ!ずっと……ずっと……!」
受付嬢は怒っていた、泣きながら怒っていた
「……んな怒んなって、いいだろ帰って来たんだからよ」
「……ぶえぇぇん!」
感極まってこれ以上何も言えなくなった受付嬢はそのまま抱きついた
「よがったぁ……よがったぁ……!!」
汚く泣くがそれだけ嬉しかった証
「……」
気まずさと気恥ずかしさで男は頬を掻いている
「ニャァ……だから言ったニャ旦那、絶対怒られるってニャ……」
「持て囃されるのは慣れてねぇんだ、んなガラでもねぇしよ」
男が死んだ風に感じさせたアイルーの演技は男の指示だった
英雄の凱旋のような出迎えが嫌だった男が1芝居無理矢理うたせていたのだ
「殺す……!ぜってー殺す!ああ殺す!!」
大男が怒っている、騙されて醜態を晒してしまったのだから当然
「まぁまぁ抑えて抑えて……」
「そうだよ、後でリサイタルに付き合ってあげるから抑えて」
小男とメガネが必死に取り抑えている後ろで女は笑っている
「よくぞ無事に帰って来てくれた、無理を頼んですまなかった」
大長老が頭を下げる
「気にすんなジジイ、あの援軍見りゃ何でも許せらぁ」
「ありがとう……彼等はまた何処かへ?」
「ああ、大長老様によろしくってよ、またなんかあったら言ってくれって」
「そうか……改めて礼を言う、ラヴィエンテの討伐……ご苦労であった、オヌシはギルドにこれ以上無い恩を返してくれたよ」
「……おう!」
男は笑う
「あ、そうだジジイ、せっかくくれた防具なんだが最後にブッ壊れちまったんだ、わりぃ」
「最後……とな?」
「ああ……討伐したと思ったらあのクソヤロウまだ生きてて俺を食おうとしやがってよ?油断してたし死んでたぜ実際」
「……そんな絶対絶命の窮地でどうやって生き残ったのじゃ?」
「コイツだよ、俺の相棒が助けてくれた」
男はアイルーを指差す
「約束してたからニャ!」
アイルーは男をずっと追いかけていた
生きていたら必ず助ける、そう約束していたから
「相棒が食われる寸前に突き飛ばしてくれてよ、そんでも防具にカスってブッ壊れちまったんだ……無かったら死んでたろうからマジで着ててよかったよ……キチッとトドメ刺して仇は取ったから安心してくれや」
「そうだったのか……いや構わぬさ、オヌシの命を救ったのなら贈った甲斐があったというものだ」
「ありがとなジジイ」
大長老は男の命があることに深く頷いている
「ムォッホン!ではオヌシに報奨を授けたいのだがいいかな?」
「いや……要らん」
「……なに?」
まさかの返事に大長老の目が点になる、ギルド職員も同様、見守っているハンター達も同様
「だって俺ぁ恩を返しただけだからよ、貰う気でクエスト受けたわけじゃねぇし要らねぇ」
「いやしかしだな……それでは示しが……」
「要らん」
「…………わかった」
納得いかないが大長老は了承するしかなかった
「いつまで泣いてんだ!つーか離れろ!!」
「だっでぇ……やだぁ……」
受付嬢は抱きついたまま離れようとしない
「あー……そうだジジイ!俺ってこれから階級はどうなんだ?Fクラ……あ、これ公に言っちゃダメなヤツだったな、えーとG級の上になんのか?」
「さよう、普通にすると約束したからには当然そうなる」
「確認だけどそれってG級より上で間違いないんだよな?」
「……?そうじゃ」
「うし、それを聞いて安心したぜ」
頷いた男はずっと泣いている受付嬢へ向いた
「なぁ俺と結婚してくんねぇか?」
「……え?」
「「「え?」」」
受付嬢とギルドの時が止まった
いや1人、女が嬉しそうに小さく拍手していた
「お前言ってたじゃねぇか、G級になってから口説けって?G級より上ならいいだろ?あー……金は無いんだけどよ、ダメか?」
「えあ……何……で……?」
受付嬢は泣くのも忘れて男を見ている
「何でも何も一目惚れだった、初めて見た時から好きだったな、お前と話すうちにもっとな……好きになった」
「あぅ……あぅあぅ……」
受付嬢の顔はみるみる真っ赤になって茹で蛸
「でもお前G級と金って言ってたからよ……頑張る理由の1つだったんだぜ?お前と話せるし」
「あぅぅ……」
赤くなり過ぎてまるでラングロトラ
皆の居る前で公開処刑のような告白をされたのだから佐茂有南
「金は……これから頑張って稼ぐからよ、ダメか……?」
「うぁぁ……あの、その……」
受付嬢は恥ずかしさで上手く話せない
「……ねぇ」
「……!了解♪」
それに見かねた他の受付嬢がアイコンタクトで通じ合い一斉に男へ群がった
「そんな芋臭い女より私にしない?」
「絶対私の方が貴方を満足させてあげられるわ」
「うほっ……良い男……♡」
急に色仕掛けを始めだす
「なんだお前等……俺は……」
「あっ……やだっ……あっ……!」
困惑する男と焦る受付嬢
「やだダメッ!この人は私のです!!」
取られまいと強く抱き締めた
「は~い一丁あがり~♪みんなお疲れ~」
「末長く御幸せに~♪」
「リア充爆発しろ~♪」
受付嬢達はすぐに引っ込んだ、ハニートラップを仕掛けたのだ受付嬢に対して
「いいか?」
「……うー……はい……」
もう受付嬢も認めるしかなかった
男が好きなのだと
「ムォッホン!!」
見ていた大長老が大きく手を叩く
「めでたい!大変めでたい事じゃ!式の費用はギルドが持とう!復興が落ち着き次第新しい英雄を称える祭りと同時に行う!!」
鶴の一声でギルドは歓声に湧いた
「それくらいはさせてくれ、報酬が要らないのならそれくらいは、の?」
「あー……まぁな……金ねぇからな……助かる」
そこでようやく受付嬢が男を放し少し離れた
ガシッ!
即座にギルドの上役達に肩を掴まれる
「よくやった、これで彼がハンターを辞める事はそう無いだろう……君のお手柄だ」
「え……えへへ……」
気恥ずかしく笑っている受付嬢
「しっかり捕まえておきたまえ、絶対に逃がすなよ?他の業務はしなくてもいい、彼だけに集中してもらうぞこれからは」
「え……え?」
何やら雲行きがおかしい感じがして受付嬢の顔が曇る
「今までやらかした責任を取ってもらう時が来た、君はこのギルドに永久就職だ……死ぬまで彼をFクラスハンターの嫁として支えたまえ、言っておくが育休など認めんからな、だが安心しろギルド内に託児所を作っておく」
「えぇ!?何それこわっ!?」
「不満かね?」
「いえ……別に良いですけど」
思わぬ了承に上役達が驚く前で受付嬢は嬉しそうに笑っていた
嫌がる理由も断る理由も無かったのだから
「でもボーナスは上がりますよね?なんてったって私のお陰で彼を見つけれたんですから!」
「それは君のお陰ではなくミス……ああもういいわかった、ボーナスアップだ!これからも頼むぞ!」
「はーい!やったー!!」
受付嬢は喜びを表すヘンテコな舞をし奇行が始まったと上役達を呆れさせている
「……ん?なぁオイさっき新しい英雄つったかジジイ?まさか俺の事じゃねぇだろうな!」
「オヌシ以外に誰がおる?ラヴィエンテに1人で挑み英雄達の助力があったとは言え勝利し生還した、充分過ぎる偉業じゃ……これまでの活動も相まり何ら不足は無い」
「……ガラじゃねぇよ」
「英雄らしく在れと言っているのではない、オヌシはオヌシらしくしていればよいのだ、その姿を我々が英雄と呼ぶだけの事だ」
「……ちっ、わーったよ」
不承不承に承諾しながらも憧れた英雄達に並べた事がとても嬉しく誇らしく男の頬を緩ませていた
「ホッホッホ……さてオヌシはどんな英雄になるかのぉ?」
大長老は男を見ながら微笑んだ
「なぁ……メゼポルタの英雄よ」
此処はメゼポルタ
本家と
新たな英雄が生まれた町……
大団円……と思います。
なのに蛇足感が拭えない、何故だ……前話が濃過ぎるのか……?
でもやりたい事はやったので満足なのでよしとします。
次、最終話です。