-???-
「楽しかったわね」
空での最後の遊覧が済み4人は降りてきた
「うん!お空ぶーんっておもしおかったぁ!」
男の子は興奮冷めやらぬ様子で跳び跳ねている
「ね!ね!お姉しゃん!お兄しゃん!」
「どうしたの?」
「あのね!ボクね、ボクね……!」
男の子は抱えるモンスター図鑑を掲げて3人に言う
「おっきくなったらはんたーになりたい!」
小さな夢を……
「ハンターになりたいの?へぇ……そう」
少女の表情が緩む
「だって……うふふふっ」
「ハハハ……」
「フフフ……」
3人は顔を見合せ笑っている
「頑張りなさいね?うふふっ」
「うん!ぜぇぇぇぇたいっなる!」
「そう……じゃあ約束ね」
「うん!あくそく!」
少女と男の子は指切りを交わす
「ではそろそろ……お別れ、ね」
白いドレスの少女がそう言うと男の子の顔が曇った
別れたくないのだ、ずっと一緒に遊びたいのだ
「うぅ……うわぁぁぁん……!?」
だから泣いた
別れたくないのに別れなければならない矛盾を飲み込めない男の子に涙を流させる
「もうまた泣いちゃって……そんなんじゃハンターになんてなれないわよ?」
優しく頭を撫でる白いドレスの少女と無表情なのにどこか寂し気で何故か名残惜しそうに見える顔で見つめる黒衣と赤衣の男
「強くなりなさい、龍なんて根絶やしに出来るくらい強くなって……私達に届くくらい」
「ぅん……ゔんっ……!」
意味を理解しているのかちゃんと聞いているのかすらわからないが男の子は強く頷き涙を止めようとしている
「また……あえる?」
問われる再会への願い
「そうねぇ……」
白いドレスの少女は笑いながら言った
「じゃあ定めた道を進みなさい、貴方が望むなら運命が導くから……その運命の果てに私達は居る」
その言葉を
「だから会いたいのなら……」
祖なるものが紡ぐ禁忌の言霊
「全てを超えた先で……また会いましょうね」
その言葉が最後だった
「お姉しゃん!?お兄しゃん!?」
3人の姿が遠く離れていき周囲が白い光に満ちていく
「お姉しゃーん!お兄しゃーん!また……また遊ぼうねー!」
男の子の視界は白く包まれた
〔待ってるわ……〕
3体の飛び立つ神々しい龍の姿を最期に見て……
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「……んあ」
男は目覚めた
「…………」
体を起こしボーッとしている
(懐かしい夢見たな……ガキの頃の……)
朧な記憶に想い馳せ、古いモンスター図鑑へ目を向ける
(元気かなぁ……姉さんと兄さん達……)
子どもの頃に遊んでくれた歳上の3人の友達を想う
(図鑑読んで貰ったぐらいしか覚えちゃいねぇけど……また会いてぇなぁ)
幼かった故にほとんど覚えていないがとても楽しかったのだけは覚えている
「……用意するか」
男はベッドから降り大きく伸びをして部屋を出た
「ぷい~♪」
「おはようプーギー」
プーギーを抱き上げテーブルに用意されている朝食を見て微笑む
「ありがてぇな毎日よ、なぁプーギー?」
「ぷいっ!」
愛情籠る朝食を食べながら新しく来ていた「狩りに生きる」を読む
「ほーん……最近の流行りはリバイバルでフルゴアゆうたとネセトのカマキリオンラインかぁ……あ?なに?抜刀コロリンおじさん絶滅の危機だぁ?今はタックルの時代だと?ざけんな!抜刀コロリンおじさんは永遠に不滅だボケッ!!」
「そもそもタックルって何だコラ!大剣持ってタックルしてどうすんだ!大剣の意味ねぇだろハゲッ!トンファーキックじゃねぇんだぞクソがッ!!」
「なぁ!お前もそう思うよなプーギー!」
「ぷい~」
何やら気に入らない記事だったらしく御立腹、プーギーは知るかと無視した
「あークソ……そろそろ行くか」
洗い物を済ませた男は装備を保管してある棚に目を向ける
「ん~……今日はいいか」
防具を着けずそのまま家を出た
「親方~!」
ギルドに向かう前に鍛冶屋へ顔を出す
「おうどうした?」
していた作業をすぐに中断し親方が出てきた
「やっぱあの大剣直んねぇか?」
「何度も言わせんなボケナス、刃が半分近く消し飛んで致命的にひん曲がってんだぞ?あんなもんもう剣じゃねぇただの鈍器だ……直すレベルじゃねぇんだよアレは」
男が使った大剣は死んでいた
ラヴィエンテとの長い戦いを研磨も無く使い続けていた故に討伐と共に命が尽きたように刀身が折れたのだ
「いやでもよぉ……」
それでも男はしぶとく食い下がる、大事な理由があるからだ
「せっかく親方が造ってくれた大剣なんだぜ……一生使いたかったのによぉ……大剣はアレしか使いたくねぇよ~」
「……」
いつもしかめっ面の親方の顔が緩む
(ったくテメェは……)
自分の造った武器を本当に気に入ってくれていた事実を知らされては鍛冶屋冥利に尽きるというもの
死んでしまった武器を諦められず想ってくれている事は造った本人には堪らなく嬉しい事なのだ
「また新しいの造ってやる、次はアレ以上のをよ……」
「え~!?アレが良いんだって~」
「やかましい!いつまで女々しく駄々こねてやがんだアホンダラ!テメェはさっさとF素材集めてこい!」
「ちぇ……わかったよ」
不満タラタラで鍛冶屋をあとにする男
「……ふん」
見送った親方は工房に戻り飾ってある壊れた大剣を見上げる
「まったく……とんでもねぇ奴の専属になっちまったな」
記念に残してある親方の宝物
鉄に戻して生まれ変わらせる事は出来たがしたくなかった親方のたった1つの宝物
男との繋がりを証明する宝物
「頑張れよ小僧」
親方の鍛冶屋はメゼポルタの英雄御用達の鍛冶屋として有名になった
だがどんなに忙しくても男の用は最優先で行い約束通り貴族や王族の依頼であっても男を一番にした
そのせいで王・貴族に潰されかけた事もありブチギレた男が英雄達を召集してカチコミをかける事件などもありながら腕が良い人気の鍛冶屋として今も楽しく営業している
「うーす」
男がギルドへ入った
「オイッス!」
「あ、今日はそっちなんですね」
「おはよー」
ギルドに居るハンターから挨拶がかけられる、昔は考えられなかった今は当たり前の光景
「来たな!」
「お前が裸の英雄か!」
男の前に2人のハンターが立ち塞がった
「お?誰だテメー等?新米か?」
フルゴア装備に身を包んだ見た事無いハンター2人に首を傾げている
「ハッ!英雄がどんなもんかと思やぁなんだこりゃ!」
「大した事ねぇな!なんだこのヒョロそうな体!へし折ってやろうか!ワハハ!」
「……あ?喧嘩売ってんのかテメー等?」
明らかな嘲笑に男の額に青筋が浮かぶ
「オイオイオイ」
「死ぬわアイツ等」
男を知る他のハンター達は笑っている
「お前をブッ倒して俺達が英雄になってやるぜ!」
「覚悟しな~!」
2人は男へ襲いかかった
【バーサーカーソウルインストール中……】
∧ ∧
/(・ω・)/キュッ
∧ ∧
\(・ω・)\キュッ
∧ ∧
/(・ω・)/キュッ
∧ ∧
\(>ω<)/にゃあー!
【バーサーカーソウルインストール中……】
「オイどうしたルーキー?こんなもんかよ?」
男がボコボコにした2人を掴み上げていた
「あばば……」
「ちゅ、ちゅよしゅぎぃ……」
自分で立てないくらいボコボコにされていた、防具の上から一瞬で、1分も掛かっていない瞬殺劇だった
「オイ何とか言えよコラァ、ブッ殺されてーのか?」
まだ殴ろうとする男を他の2人のハンターが取り抑えた
「まぁまぁ兄貴!その辺で勘弁してやってください!」
「コイツ等には私達からキツーく言っときますから!」
取り抑えた2人はかつてのアベックハンターの2人、今や立派な上位ハンター
「……ちっ、ちゃんと教育しとけよ」
「了解ッス兄貴!オラこっち来いお前等!お前等学習室行きだ!」
放した2人をアベックハンターが引き摺り教官の前で敬礼する
「よろしいですか!」
「うむ、しっかり教育してあげなさい……お前等!終わったら廊下に立っとれ!!」
連れて行かれる2人の新米ハンター
「しっぽきって……やくめでしょ……」
「ハチミツください……」
このギルドには暗黙のルールがある
男と大男を怒らせるなという絶対のルールがある
普段は気の良い男だが怒らせると猛り暴れるバーサーカーとなるからだ、これまでも男をバカにしに来た新米や他のギルドのハンターを無慈悲な暴力で全て返り討ちにしてきた事から自然と決まった
無論、男から喧嘩を売った事は滅多に無い、普段は本当に優しく気の良い男なのだ、ただ沸点が低過ぎるのだ
そして男がバカにされると親友である大男が怒るのだ、心の友をバカにする奴は相手が誰だろうとぶちのめすギルドの番長なのである、それに連なり小男と女も来るからまず誰も勝てないのだ
逆もしかりで大男が怒ると男も怒るからギルドでは2人を怒らせるなと最初にみっちり教えられるがそれでもバカは居るからたまにこういう事がこのギルドでは定期的に起きている
「ちょちょっと!何してんですか!」
パタパタ慌ててやってくる受付嬢
「朝食ありがとな、美味かった」
「いえいえ貴方の為なら……って違いますよ!何でぶちのめしたんですか!期待の新人だったのに!」
「いやだってよ……俺の事バカにして襲って来やがったからよ……正当防衛ってヤツだ」
「……は?」
受付嬢の顔が般若になった
「誰の旦那バカにしてんだあのクソガキャー!絶対許さん!ブッ殺してヤラー!」
「オイ待て待て」
突撃しようとする受付嬢を男が抑える
「もういいって、これ以上やったら死ぬ」
お前が言うなとギルドの誰もが思ったが口にはしない
「だって……だってなんだかだってだってなんだもん……」
「ハハ……怒ってくれてありがとよ」
頭をポンポンされて受付嬢は照れながらもじもじしていた
「……あ!待ってますよ皆さん!早く行かないと!」
思い出して男を急かす
「やっべ!そうだったそうだった!変なのに絡まれて忘れてたぜ!」
「早く早く!あ、お弁当どうぞ!」
「おうサンキュー!行ってくるわ!」
男は弁当を受け取り乗り場へ急ぐ
「遅ぇぞバカヤロウ!!」
大男が怒鳴った、傍には小男と女が苦笑しながら手を振っている
「わりぃ!変なのに絡まれてよ!」
「あぁ?またかテメェ……んな格好してっからだ」
大男は呆れたように男の装備無しの裸姿を見る
「コレじゃなきゃ気が弛むんだよ」
男は今だ裸を続けていた
「だからテメェは裸の英雄なんてバカにされんだよこのバカが」
「うっせぇ!」
それは自らを驕らせない為に
防具の防御力やスキルを過信し依存して油断しない為に男は防具を着けないのだ
だが全てのクエストで防具を着けない訳ではない、クエストの危険度によっては防具を着ける、必要無いと男が判断すれば着けずにクエストに行くのだ、そうしていつも心が驕り弛まないようにしている
その姿から付いた二つ名が「裸の英雄」
(ちっ……ちゃんと強ぇから文句は言えねぇんだよな)
それでも男はその名に恥じず裸でクエストをクリアしているのだ
「なんだよ?」
「……なんでもねぇよ裸の英雄!!」
その姿こそが男の証であり
英雄の証だから
「あれ?今日もお前か……メガネは?最近見ねぇけど」
「あいつは廊下に立たされるからまたガンナーのおっさんの所に逃げたよ」
「ハハ……先生あいつには厳しいもんなぁ」
笑いながらする友との会話
「今日はディオレックスだったよな?」
「そうだ、俺様達は初めてだから悪いが最初は頼むぞ」
「あいよ、イケると思ったら入って来い……んじゃ現地で」
「おう」
男は大男達と行く場所は一緒だが一緒には行かない
「おはようニャ旦那」
「おう、おはよう相棒」
アイルーと別で行くのだ
「ほい、いつものニャ」
「サンキュー」
アイルーから目隠しと耳栓を渡されて男は付ける
「出発ニャー!」
いつもそうしていたからしてないと落ち着かないのだそうだ、こうする事が男にとっての狩猟前のルーティンでありリラックスの方法となっていた
「きゅっ!きゅっ!きゅっ!ニャ~♪」
男がソロで行く時は一緒に、大男達と行く時でも運転手としてクエストの時はいつも一緒の相棒アイルーは楽し気に道を走る
今日も
「うーし!準備いいかお前等?」
「あ、こんがり肉忘れた……」
「初歩的なミスだね~肉忘れるとかよくそんな事出来るよね~肉は普通忘れないでしょ」
「んだとテメコラ!テメェの肉寄越せコラ!」
「うわわ!?助けて番長~!裸の英雄に襲われる~」
「やめろ!変な意味に聞こえるだろ!」
「おうおう俺様の舎弟に手ぇ出したらギッタンギタンにしてやるぞコラ?」
「あーん?やってみやがれコラァ~?」
ベースキャンプで話される愉快な会話
「しょうがない奴等ニャ」
「ねぇ……でも楽しいわ」
笑うアイルーと女
「……へっ」
「……はっ」
つられて2人も小男も笑う
「やんぞ
「おう
今日も
「一狩り行こうぜ」
運命の果てへ向かって……
終わりになります。
最後のキャラ紹介
・男(主人公)
チンピラ
大男の心の友
大英雄の一角
称号 【裸の英雄】【運命の寵愛を受けし者】
家族が出来た事で祖父の言葉を思い出し稼げるだけ稼いだらハンターを辞めようかなとちょっぴり思ってる。
・大男
男の親友、メゼポルタギルドの番長格
ダラ・アマデュラ亜種討伐の功績を以てFクラスハンターに4人共に昇格が認められた、男と一緒に狩りが出来るようになったが男におんぶにだっこではなく自力で強くなろうとしている。
残り3人は割愛、強いて言えば女が中々告白してこないメガネにやきもきしているくらい。
・受付嬢
アンポンタン、大英雄の嫁
男を支えて支えられる奇天烈女、活性化事変の後も何度かやらかして男が尻拭いをしている、一番ヤバかったのは闘技場に手違いでFクラスモンスターを入れてしまいギルドが壊滅しかけた事件が有名、ラージャンとヴォージャンを間違えたらしい。
夫婦仲は良好だが朝早い受付嬢故に朝を男と一緒にできないのが小さな不満。
・大長老
ホラ吹きジジイとは呼ばれなくなったが相変わらず舐められている全ギルドの最高責任者。
男の成長を見届けて今はドンドルマに戻っている。
近い未来に男と大男にブッ殺される運命を背負う悲しき卵愛好家。
・男の子
謎の3人と友達になって遊んでもらった子ども、まだ字が読めないが祖父に買って貰ったモンスター図鑑が宝物。
男の幼少期の姿。
赤ん坊の頃に両親を亡くし祖父に引き取られ幼少期を山奥で過ごす、遊び相手が欲しくて家の軒下を探検していたら変な場所に来て3人に出会った
この時の事はほとんど覚えていない。
・???
謎の場所で座す謎の3人。
全てが謎、誰もわからない、一乙おじさんでもない。
名前を付けるなら黒がボレアスくん、赤がバルカンくん、白がルーツちゃん。
改めて言っておくが黒と赤が同一個体なのはわかっててあえて分けてます。
3人は同格で優劣は無いがルーツちゃんがリーダーっぽい感じになってる、ルーツちゃんが一番人への理解度が高くて次にボレアスくん、一番低いのがバルカンくん、でも決して平均が高いわけじゃなく10段階の理解度で言えばルーツちゃんが3、ボレアスくんが2、バルカンくんが1、程度の差でしかない。
一緒に遊んで3人とも男をとても気に入っている。
全てを超えた先で待つ運命の龍達。
あと語られなかったですが活性化について少し捕捉。
通常の活性化はルーツちゃんの男の子と遊ぶという想いが未来の遊べる年齢になった男へ向かったから活性化したモンスター達はメゼポルタを目指してました、時期がズレて種が違うのは男の子が訪れる度に読んで貰っていたのが関係してます。
最後の大活性は別れを告げられ遊べなくなって少しどうでもよくなった3人の想いが反映されて無規則になっていたのです。
つまり活性化の原因を作ったのは主人公なわけですが主人公はそんな事当然知るよしもありません。
はい、こんなところで終わらせてもらおうと思います。
読んでいただきありがとうございました。
外伝とエピローグ書くよ!装備付けるようになったから書ける事もあるのです!