「んん……あー……よく寝た」
一応プロのハンターである男の朝は早い
「おうプーギーおはよう」
「ぷいっ!」
なんて事はなく普通、何なら一般ハンターよりも少し遅いくらい
「お?新しい「狩りに生きる」来てんな」
朝早くにギルドへ行って他のハンターとクエストを取り合うなんて事とは無縁だからである、いつ行っても何故か絶対にあるから、というより用意されてるから
だから朝は結構のんびりしている
「ふんふんどらどら……?」
お気に入りの飲料を眠気覚ましに飲みながら定期的に送られるハンター情報誌を捲る
(今回は英雄の紹介か……あ?大長老のコラムかよコレ、信頼度どんくれぇだ?)
過去に偉業を成した大英雄達の紹介、過去と言ってもここ数年の最近の話であり各大陸や新大陸で名を轟かせたハンターをギルドでは大英雄として認定しているのである
(ポポノタン納品クエストでティガレックスに襲われてクエスト失敗した事もある……ほぇー英雄でもんな時があんだな)
そんな大英雄達の成した偉業や武勇伝から失敗談まで結構詳しく書かれている
(はぁスゲェよなぁ……俺もそんな風に呼ばれるくらいになりてぇよ)
読み終えて残りの飲料を飲み干すと男は立ち上がる
「うし!行くか!」
プーギーを撫でてギルドへ向かう
「ニャ?ニャニャ?」
クエストに向かう猫車の道中、運転手のアイルーが頭を傾げている、目隠しと耳栓されている男は知るはずもなく鼻唄を奏でている
(ホントに良いニャ?まだ早いと思うんニャが……)
アイルーは目的地に不安があった
(これクエスト間違ってないのかニャ~?事情が変わったのかニャ?出発する前に確認しとくべきだったニャ~)
嘆くも行くしかなかった
「休憩休憩~♪」
受付嬢は陽気に飲み物を淹れている
「隠し味にハチミツを1滴っと……完璧!」
淹れ終わった飲み物を持って休憩所に行こうとするとギルドの上役と遭遇した
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様、休憩かい?なら今ちょっといいかな?」
「休憩中に仕事させるつもりですか~?ブラックだ~ブラックギルドだ~」
「人聞きの悪い事言わないの!ちょっと彼の現況を休憩がてら聞いとこうと思っただけだから!」
「報告書で充分じゃないですか」
「……君、私の事嫌い?」
「休憩を邪魔する人は敵ですねぇ」
「わかったよ!終わったら改めて休憩していい!それも飲みながらでいいから!」
「でしたら喜んで~♪じゃ資料持ってきまーす!これお願いしますね!」
上役に飲み物を持たせてパタパタ小走りしていく受付嬢
「はぁ……顔は可愛いんだよな顔は……」
上役は受付嬢の飲み物を溢さないように会議室へ向かう
「それでどうかな彼は?最近段階が上がって遂に飛竜へ本格的に挑んでいるんだろう?」
「そうです……報告書に書いてますよ?」
「わかってるよ、聞きたいのは報告書ではわからない彼本人の様子さ……一番詳しいのは君だからね」
「一番はG級の3人と思いますが……」
前にあった驕りによる失敗の時に何も出来なかった経験が受付嬢の顔を曇らせる
「彼と同じハンターだから君がそう言いたいのはわかるけど彼等は彼等で忙しいからね、何せこのギルドのトップだから引っ張り凧で話す機会がなかなか無い」
話したいのは当然だが単純に多忙で定期的な報告に向かないから彼等に報告の義務は無い、ただ同僚の立場からサポートをお願いしているだけ
「だから私……という事ですか」
「そう、ちなみに君が二番と肯定したような言い方したけれど私はそんな風に考えてないよ、君と彼等両方が一番と思ってる」
「はあ……ホントにそう思ってます?」
「しつこいな君も……クビにするよ?」
「そうなったらFクラスの事世界にバラマキます」
「その時は君は薄ーいエッチな本に出演する事になるよ」
「えぇ!?何それ怖ッ!?」
受付嬢はドン引きした
「ハハハ……冗談はさておき君も信用していると言う事さ、それでどうかな彼は?」
「調子は良さそうです、調子に乗り過ぎない絶妙なラインを維持して好調みたいです、武器が強化されたのが切っ掛けみたいで今まで苦戦していたモンスターを薙ぎ倒して喜んでましたよ、経験が活きてきたのか飛竜種との戦いにも手応えがあるらしく戦えているのが自信になってるみたいですね」
「そうか……精神面は問題なさそうだね、それにしても武器が切っ掛けか……あのこだわりがなければもっと早く上に行けただろうに勿体ない気がするね」
「そのこだわりがあったから今がある気がしますよ、半端なままで上に行ったら潰れてたかも」
「おっ言うね君、でも君が言うならそうなのだろうね、一番彼を見ている君が言うならそうなんだろう」
「へへっ……!」
よせやいと照れる受付嬢
「それで彼は今日は何を?」
「フルフルですね、ハンマーでドツキ回してやるって意気込んでましたよ、これ受注票です」
上役へクエスト受注票を見せ受付嬢は飲み物に口をつける
「ほうフルフルか、亜種じゃなく原種の方か……ん?」
受注票を見て上役は違和感に気付いた
「これ認可の印がされてないけど?」
「ブフッ!!?」
受付嬢が飲み物を吹いた
「うぇ……?嘘……?」
「……君まさか、またやってしまった……のかい?」
上役はすぐに察した、あの最初の事件の時のようにまたミスをしてしまったのだと
「彼を何処へ行かせたんだ!何へ行かせた!」
「あわわわわわ……!」
慌てて資料を漁る受付嬢は認可の印が押されている受注票を見つけ取り出した
「……これは!今朝に事前通達してあった彼に受けさせるなと念押しした3体の内の1体……!」
ギルドには毎日のように依頼が来る、危険な依頼から楽な依頼まで多種多様、なので毎日のように依頼の難度のレベルが上下する
「これはマズイぞ……!」
たまに依頼主が我儘だったりする事情で下位クエストに上位並のクエストが来たりもする、その3体もその類いの案件であり他のFクラスハンターに任せる予定だったもの
「何でこんなミスを……!」
「あわわ……ご、ごめんなさいぃ……」
事の経緯は単純だった
朝にしっかりと説明を受けた受付嬢は絶対に間違えて受注させないようにしっかりと頭に重要事項と入れていた
だがその事が頭に残り過ぎて男のクエスト受領の際にフルフルのクエストを取ったつもりが無意識にそのクエストを取っていてフルフルだと思い込んでいたから確認もせずに認可を押してしまっていたのだった
言葉では説明しずらいし理解される理由でもない、そもそも受付嬢すらも何でフルフルじゃないのか本気でわからないと頭を抱えるレベルのしょうもないヒューマンミス
「本当にクビになるぞ君……!」
他のハンターにしても許されないレベルのミスではあるが男に関しては更に話は変わる
ギルドが期待する未来の大英雄候補に関する事だからだ
しかもそこはFクラス、小さなミスでハンターが簡単に死ぬ生命の危険が段違いに高い魔境地帯なのだから
「うえぇーん……ごめんなさいぃ……クビやだぁぁ……!」
「泣いてないで大長老様のところへ行くぞ!救助隊を組んで彼を助けなきゃならない!」
ギルドのミスで死なせる訳にはいかない上役は受付嬢を引っ張って急いで向かうのだった
「着いたニャ旦那!」
アイルーが目隠しを外す
「……うぅん?」
周囲を視認した男が違和感に唸る
(沼地じゃなかったか……?)
今日狩る予定のフルフルが居るのは沼地の筈なのに今居るのは何故か雪山
(あれ?っかしーな……見間違えたか?つか寒いな)
納得がいかず頭を傾げて肌を擦る
「どうかしたかニャ旦那?」
「ん?ああいや……」
アイルーにこの疑問を言おうかなと思った男だったが口は動かなかった
(まぁ雪山にもフルフル居るし俺の勘違いか)
そう納得したし運んでくれるだけのアイルーに言っても仕方無い事だと思ったからだ
「寒ぃなって」
この疑問を口に出していれば事情を知るアイルーが機転を利かせて帰還したのだがそうはならなかった、これも男にFクラスを秘密にしている弊害だった
「そりゃインナーじゃ寒くて当たり前ニャ!支給品のホットドリンク早く飲むニャ!」
「そうするわ……んじゃ行ってくる」
「頑張るニャ~!」
男はギルドの支給品を持って雪山へフルフルを探しに出発する
ゴウッ!
その上空を飛行する影があった
力強く流麗に空を駆ける飛竜
原種より強く、白き身体に黒雷を纏う冥府からの使者
その猛き竜の名は……
冥雷竜 ドラギュロス
次回、激闘……!?
・キャラ紹介
受付嬢
顔が可愛い元気なアンポンタン。
彼女のやらかしたミスが全ての始まり、起源にして頂点。
それなりに器用でギルドの仕事もそつなくこなすが誰しもがたまに起こすミスのレベルが禁忌クラスのヤベー奴。
奇行が密かに有名で変わり者だがその愛嬌の良さと顔で何とかカバー出来てるアンポンタン系女子。
主人公が居なければとっくにクビにされてる見えてる地雷ガール。
彼氏は今まで数人居たがその全員に数日で逃げられている残念アホガール。
大長老
主人公のギルドを含めた全てのギルドの最高責任者。
受付嬢の起こした事件で主人公の存在を知り新たな大英雄にすべく育成計画を発案した、その関係で主人公のギルドに常駐している、諸悪の根源。
主人公の不幸の元凶であり考え無しなその場の思いつきでテキトーな事をしたりする権力を持った厄介なアンポンタン。
何やらとんでもないツテを持っているらしいが内容を言わないのでホラ吹きジジイ扱いされている。
最近の悩みは威厳が無くて部下に舐められている事。
とりあえずメインはこんなところですかね、話の内容によって随時追加するかもしれません。