Fへの挑戦   作:黒太陽

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金と銀がもたらす悲哀 上

 

 

 

-メゼポルタギルド-

 

「おいよ、今月分のハチミツだ」

 

荷車に大量のハチミツを載せて男は来た、今日は納品の日

 

「毎度ありがとうございます~数量数えるんで少し待ってくださ~い」

 

「ほいほい、終わったらサイン頼むぜ」

 

数え終わり納品のサインと代金を貰う

 

「ん!確かに!じゃまた来月な~」

 

そう言いながらも男は帰らずギルド内を覗いてみた

 

「あー!兄貴ィ!」

 

気付いた舎弟のアベックハンターが声をあげた

 

「久し振りッス!品卸しッスか?」

 

「おー、元気か?」

 

「元気ッスよ!それより良いタイミングで来てくれましたよ兄貴!」

 

「おん?どした?」

 

「今ね、山奥の村から特産品売りに行商人が来てんスよ!その行商人の子どもも一緒に来ててね、その子どもがハンターに憧れてて話聞きに来てんスよー!」

 

「ほーほーそれがどした?」

 

「英雄の兄貴に会ってやって欲しいっつー事ですよー!絶対喜ぶッスってー!」

 

「ああそういう事か、いいぞそれくらい、引退した英雄でいいんならな」

 

男はすんなり了承、忙しいわけではないし子どもにイジワルなんてする気もない

 

「アザッス!あっちに居るッス!」

 

舎弟に連れられて行くとそこには10歳ぐらいの男の子が現役ハンターに囲まれ話を興味津々で聞いていた

 

「おーいボウズー!ハンターの英雄が来てくれたぞー!」

 

「えっ!?ホントッ!?」

 

男の子が跳び上がり走り寄って来た

 

「よろしくな、もう引退してっけどハンターやってたぜ、裸の英雄なんて呼ばれてたよ」

 

「え……?裸……?裸の……英雄……?」

 

男の子のキラキラした目が濁った

 

「ダサッ……」

 

「まぁ……そうだよなぁ」

 

素直な感想に男も苦笑い、大人ならシバイてるがさすがに子どもにいきなりキレたりはしない

 

ちなみにメゼポルタギルドの面々は男の凄さと怖さを嫌と言うほど知っているので誰もダサイなど思っていない、自分達が呼びだした二つ名でもあるし冗談でも男に粛清されたくないからである

 

「ボ、ボウズ!兄貴はダサくなんてねぇぞ!ものスッゴイハンターだったんだ!」

 

「そうそう!マジでスッゴイんだから!」

 

「俺達が束になっても勝てないんだぞ!」

 

みんながフォローするが男の子の蔑んだ様子は変わらない

 

「……ごめんな、仕事あるから行かなきゃなんねぇ、機会がありゃまた話そうぜ」

 

ダメな空気を察して男は身を引いて踵を返した、後を舎弟が着いてくる

 

「すんません兄貴……」

 

「気にすんな、お前等とは違って何も知らねぇ子どもなんだ、何も知らねぇなら普通はあんなもんだろ装備も何も着けてねぇ裸なんだ尚更だ」

 

「すんません……」

 

「だから気にすんなって、それよりだからってイジメんなよ?他の奴等にも言っとけ、イジメたらオレがイジメるってな」

 

「ウッス」

 

ギルドの搬入口まで戻り停めてある荷車に男は乗り込んだ

 

「あ、そうだ、兄貴にはあんま関係無いんですが一応注意喚起って事で言っときたい事があるッス」

 

「お?モンスター関係か?何かあったのか?」

 

「へい、なんか偉い学者さんの話じゃ今周期的な移動期らしくて色んなモンスターがあちこち棲み家を変えてんですって、んでモンスター同士の接触の縄張り争いで被害が起こる可能性が高いって話なんスわ」

 

「あー前もあったなそれ……長距離の移動の時にゃ気をつけろってこったな、わかったサンキュー、農場の方にも言っとく」

 

「気ぃつけて!じゃ兄貴また!」

 

舎弟と別れ男は農場へ帰って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-数日後・農場-

 

「聞いたか相棒?モンスターの移動が本格的になってるらしいってよ」

 

「聞いてるニャ旦那、被害も結構出てるらしいニャよ、行商人が移動出来なくて困ってるみたいニャ」

 

「ギルドも対応で忙しいみたいだな、一月くらいで収まるんだったかないつも確か」

 

「ボクらは平気だけどニャー、配達担当の旦那か番長に勝てるこっちのモンスターはいないのニャ」

 

「へへっよせやい」

 

農作業をしながら雑談してると受付嬢がやって来て男を呼んだ

 

「どしたー?」

 

「あなたに用があるって子どもが来てますよー!」

 

「子どもぉ?」

 

よくわからないがとりあえず作業を中断して相棒アイルーと受付嬢の元に向かうと子どもも一緒に居た

 

「あれ?お前この前の子どもじゃねぇか」

 

居たのは数日前にギルドに居た男の子

 

「オレに用があるって?どうしたよ?」

 

聞いてみると男の子は気まずそうに口を開いた

 

「あの、村に帰るまでの護衛を……して欲しい」

 

「護衛?オレにか?」

 

そんなもんハンターに頼めばいいのに何で引退したオレに言ってくんだ?と疑問顔をしたら男の子は話し出した

 

「他のハンターの人は忙しくて!お金も高くなってて……今回あんまり売れなかったから母さん困ってて……それで、どうにかしたくて……」

 

事情を話してくれてある程度は理解出来た、外の移動は危険になっていて護衛を雇うにも普段より割高になっていて人手もいないらしい、そこで前に英雄だと聞いた男のところへ来たのだと

 

「母親は?」

 

「一緒には来てないです、たぶんこの子の独断でここに……」

 

「そうか……」

 

男は男の子を見ると男の子は必死な顔で頼み込んでくる

 

「お願い!この前の事は謝るから!助けて!」

 

「よしわかった!いいぞ!」

 

男は引き受けた

 

「え……?」

 

「護衛してやるって言ってんだ、喜べボウズ!」

 

母親を助けたい一心でバカにしていた男に頭を下げに来た男の子の心根を気に入ったのだ

 

「あ、でもお金……どれくらい?高い?」

 

「タダだ!って言いてぇとこだがそれじゃハンターやってる奴等に悪い、そうだな……オレは引退してっし普段の相場の半額でいいぞ、その代わりメシは食わせてくれ」

 

「……!わかった!ありがとう!」

 

「いいって事よ」

 

決定した男は受付嬢へ向き直す

 

「わりぃ、ちょっと行ってくる」

 

「もぉ~あなたはホントもぉ~」

 

相談もせずに決めてしまった男に受付嬢は頬を膨らませるが怒ってはいない

 

(だから自慢の旦那なんですよねぇ)

 

昔と変わらず優しい男の姿が嬉しいのだ

 

「いいですけど条件があります!誰かもう1人一緒に行ってください!」

 

「じゃ相棒で……行くだろ?」

 

「当ったり前ニャー!絶対行くニャー!」

 

「よし、んじゃ準備すっかー」

 

「気をつけて行ってきてくださいねー」

 

護衛クエスト開始

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度は本当にありがとうございます、どうかよろしくお願いします」

 

護衛対象の男の子の母親から深くお辞儀された

 

「あいよ!任せとけ!」

 

「ですが、その……」

 

母親は男を凝視する

 

「防具は着けないんですか?武器だけ……なんですか?」

 

男はいつもの裸だったからだ、武器は大剣と弓を持って来ている

 

「ああ問題ねぇ」

 

「……まるで裸の英雄のようですね」

 

「お、知ってんのか、それオレだよ」

 

「!!?」

 

ビックリした母親はそうなの!?と男の子を見た

 

「ギルドの人達がそう言ってるから間違いない、と思う」

 

男の子も英雄の部分だけはいまだ半信半疑、直接狩りをしているところを見たわけでもないしハンターとはほぼ関係無い行商人だから信じ切れないのも無理は無い

 

裸のハンターを信頼せよという方が難しいのだ

 

「噂はかねがね聞いてます、こんな偉大な方に護衛してもらえるなんて……何と御礼を言えばいいか」

 

「気にしなくていいよ、メシだけよろしくな!じゃ行こうぜ」

 

挨拶を済ませ出発

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-農場-

 

「あれぇ?アイツはー?」

 

「護衛クエストに行っちゃいました」

 

「はぁ!?」

 

大男は激怒した

 

「また俺様ノケ者にしやがったあの野郎!帰ったらギッタンギタンのケッチョンケチョンにしてやる!!」

 

「サブクエスト受注、っと」

 

#大男の機嫌を直す が追加されました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「村までどれくらいかかるんだ?山奥にあんだっけ?」

 

「そうだよ、ここからなら3日くらいかな」

 

「結構遠いニャ」

 

道中の会話は他愛の無い雑談

 

「村付きのハンターとかいんのか?」

 

「うん、前の人が隠居して交代で若い女の人が居るよ」

 

「若いのか……ふーん」

 

新米かな?と男は思いながら外をずっと眺めている

 

「それにボクの父さんは村の衛士なんだ!」

 

「ほうほう、そりゃあ村は安泰だな……」

 

「スゴイニャー」

 

男と相棒アイルーはずっと外を見ている

 

「ッ!?……あんたよりスゴイんだからな!父さんと姉さんは!」

 

話し半分に聞いているような2人の姿が男の子の癇に障り声を荒げる

 

「コラ、護衛してくれる英雄様になんて口の聞き方ですか」

 

母親が諌めるが男の子は鼻息荒く2人を睨む

 

「ん?ああわるい、バカにしてるみたいになっちまってるな、んなつもりはねぇから怒んなボウズ」

 

男は笑って見せたが男の子はまだ怒っている

 

「旦那、アッチのが来そうだニャ」

 

そこへ相棒アイルーが外を指差す

 

「わかった……2人ともちょっと息止めてな」

 

親子に指示を出すと男は小さな箱を開け中に沢山ある玉の1つを矢尻で刺して弓を持ち相棒アイルーが指差した方角へ構えた

 

「よっ」

 

放たれた矢はかなり遠くに居た移動中と思われる大型モンスターに命中しモンスターは方向を変えて消えて行った

 

「うっし……もういいぞ」

 

箱の蓋を閉め許しを得た男の子は息を吸い男を見る

 

「何を……したの?」

 

「モンスターが近寄って来たからこやし玉で追い払ったんだよ」

 

「え……えぇ?」

 

男の子は信じられないとかなり驚いた目をした

 

(村の上手いおじさんも姉さんもあんな距離無理だよ……)

 

馬鹿げた事を平気でやってのけた男にドン引き

 

「やっぱ移動期ってのはウゼェな、ランポスの群れが居やがる……相棒、石ころくれ」

 

「あいニャ」

 

「そのまま行ってくれ」

 

進路上に見つけたランポスの群れに近付いていく

 

「うらっ!散れ散れ!」

 

握り込んだ大量の石ころを投げつけた

 

「「「ギャアッ!!?」」」

 

散弾に撃たれたような衝撃を受け仰け反ったランポスの群れはビックリして即座に散ったが当たりどころが悪かった一部は気絶していた

 

「この手に限る」

 

「弾代はタダだからお財布にも優しいニャ」

 

「えぇ……キモォ……」

 

男の子は更にドン引きした

 

「順調順調~♪」

 

「きゅっ♪きゅっ♪きゅっ♪ニャ~♪」

 

 

「ねぇ?この人って人類なの母さん?」

 

「たぶんね……」

 

その後も問題無く進み村を目指す……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~!」

 

若い女ハンターが村へ戻って来て衛士に挨拶をした

 

「すっごいでしょコレ!」

 

大きな卵を抱えている

 

「でっかい卵だなぁ、何の卵だ?」

 

「飛竜の卵だけど何の飛竜かはわかんない、巣に何も居なかったから貰って来ちゃった!」

 

「ほぉ……にしても見た事無い卵だな、金と銀が混ざってる……豪華な卵だ」

 

「でしょ!絶対美味しいよ!」

 

若い女ハンターは喜んでいる

 

「こんなのどこから取ってきたんだ?」

 

「あそこ!村の近くの古塔!今まで何も居なかったけど飛竜が住み始めたのかも、あー楽しみ!じゃあね!」

 

若い女ハンターは意気揚々と村へ入って行く

 

 

 

 

 

 

村の誰もが甘かった

 

その夫妻の愛情を甘く見ていた

 

 

我が子が奪われた悲しみ、苦しみ、怒り

 

全てを孕んだ執念を

 

 

 

「「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」」

 

 

 

白銀の太陽、黄金の月

 

火竜の怨嗟が天地に(どよ)めく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思い立ったので上下短編を……

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