-農場-
「あんだぁテメー?」
「…………」
大男が誰かにメンチきっている
「おいおいあのウザってぇギルドナイトさんが俺様達の農場にいったい何の用なんだっつーの?お?コラ?」
「…………」
相手はギルドナイトだった
ギルドナイトは尊敬される立場ではあるがそれ以上に嫌われやすい立場、特にヤンキーやチンピラハンターには毛嫌いされている傾向にある、処されがちだから
「何とか言えやあーん?」
「……はだ」
「なんだテメー!やるっちゅーのかよ!かかってこいや!」
「…………」
話が通じぬ大男のチンピラムーヴにギルドナイトは黙るしかない
「デブーおーいオデブー」
ギルドナイトが来たと連絡を受けた男が様子を見に来た
「おー心の友よ!このお高く止まった無愛想なギルドナイトぶっちめちまおうぜー!」
「!!?」
荒ぶる大男と反応して帽子を深く被るギルドナイト
やって来た男は大男の言葉を聞いていないかのように残念そうな顔で大男を見た
「あーあ、ついに逮捕されんのかテメー、御愁傷様……いやぁ寂しくなんなぁ、まっ面会には行ってやるからよ安心してお勤めしてこいよ!」
「まだやってねぇ!お勤めしねぇっつーの!」
「これからやって逮捕だったか!アバヨ!来世でまた会おうぜ親友!」
「オイコラッ!」
ふんがーする大男を他所に男はギルドナイトへ向く
「ごめんなー?こいつバカだからさぁ許してやってくれなー?頼むよー」
今は大男を抑えているが大男と一緒にとっちめる時もある、今日はたまたまそっちの気分だっただけ
「あ、いや……構わない」
ギルドナイトは帽子を深く被ったまま気まずそうに答えた
(ッ……また、会う事になるとは、な……裸の英雄……)
古い顔見知りを見ながらギルドナイトは発端の経緯を思い出す……
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-ドンドルマ・大老殿-
「ムォッホン!よく来てくれた、忙しいのにスマンのぅ」
大長老は呼びつけたギルドナイトを労う
「大丈夫……とは言えませんがね」
ギルドナイトは仕事を多く抱えている、犯罪ハンターの相手や滞っている高難易度クエストなど多岐にわたり仕事を抱えていて暇はほぼ無いと言える
「お主はFクラスギルドナイトじゃしな、当然か……いや本当にスマヌ」
それがFクラスともなれば更に顕著、選りすぐられたハンターから更に選りすぐられたFクラスで活動するギルドナイトなのだから数は更に少なく英雄に比肩する実力と秩序を併せ持たなければならないのだ
現在のFクラスギルドナイトは僅か3名しかいない
「それで呼ばれた理由は何でしょうか大長老様?」
「実はのぅ……」
大長老は非常に困った顔で理由を語り始めた
「今は違うがかつて名高きあの第三王女絡みでのぅ」
「第三……王女……ですか……」
ギルドナイトの顔が露骨に歪んだ
第三王女とはわがままで有名なあの第三王女である
「うむ、また厄介なクエストを発注してきてのぅ……それも超特急でな」
「……内容を聞いてもよろしいですか?」
ギルドナイトはめちゃくちゃ嫌そうだった
「何処から聞いたか知らんのだがFクラスのラージャンと激昂ラージャンとヴォージャンの体毛でニット帽と外套と手袋を作りたいのだそうだ」
「ッッ……また服ですか、よりによって超攻撃的生物とその始種ですか……」
相手に難色どころではない難色を示す
「超特急と言われましたが期限はいつまでに……?」
「…………1週間以内じゃ」
「イカレポンチがッ!!」
ギルドナイトは叫んだ
「馬鹿げてるッ!無理に決まってんだろそんなモン!頭イカレてんのか相変わらず!」
本家でも難敵扱いのラージャン、Fクラスともなれば尚更に難敵、更にはヴォージャンも加わるとなれば殊更
それをたった1週間でなど狂気の沙汰とも言える凶行
「これでも譲歩させたのじゃぞ……当初は3日だった」
「イャンクック狩るんじゃねぇんだぞバカヤロウ!?」
口が荒ぶりギルドナイトは暴言を吐きまくる
「……出来そうかのぅ?」
「出来るわけねぇだろ!」
荒ぶる即答に大長老が困った渋い顔をするとギルドナイトもハッとして落ち着きを取り戻した
「……私だけでは期限内は不可能です、達成したければ大英雄に頼むべきでしょう」
「それがな、ワシもそう思って連絡を取ろうとしたがほとんど音信不通での……それでも2名と連絡が取れたが断られたのじゃ」
「大英雄も忙しかったのですか?」
「いや、依頼主が第三王女と伝えたら食い気味に断られた」
「……嫌われてますね第三王女」
「無茶しか言わんからなぁ、全てのハンターに嫌われとるんじゃないかのぅ」
2人は遠い目をした
「ではせめてFクラスの応援を……」
「余裕なぞあると思うか?魔境F領域で活動するベテランハンターに?」
「……」
ギルドナイトは黙ってしまった
(南無三……!!)
頼れるモノが無いから最悪死ぬ覚悟を決めているのだ
「そこで1人アテがおる、望みは薄めだが聞くか?」
「!!?……誰ですか!?」
希望の言葉にギルドナイトは食いついた
「引退した裸の英雄じゃよ、上手く説得出来れば達成の見込みは有ろう」
「ッッ!!?」
その名にギルドナイトは大きく狼狽えた
「裸の英雄……ですか……」
「そう、君もよーく知る彼じゃよ」
男はギルドナイトと因縁浅からぬ相手だったのだ
「まぁ無理にとは言わぬよ、クエストの方もな……ワシの首が物理的に飛ぶだけじゃろうし」
「……裸の英雄に協力を要請してみます」
ギルドナイトは踵を返した
「ホント無理しなくていいからの~」
大長老の思ってもいない言葉を背に大老殿を出て行きギルドナイトはドンドルマを出発した……
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「…………」
思い出し終えたギルドナイトは深く被った帽子のせいで前がよく見えていなかった
「んでよー何の用なんだー?」
男が下から覗き込んできていた
「ッ!!?」
「んーあれぇ?なんかあんた見た事ある気がすんなぁ……?あ!」
男はギルドナイトに見覚えがあった
「隊長!?隊長じゃんか!めっちゃ久し振りだなー!」
「……久し振りだな」
男もギルドナイトを覚えていた、大男はその様子を見て敵意を薄めた
「なんだ知り合いだったのかよ」
「アレだよ、昔に活性化でお前等がアカムとウカム行ってた時あったろ?その時にメゼポルタに来たクシャルダオラ撃退した時に組んでた討伐隊の隊長だった奴だよ」
男がまだ上位に上がってすぐの落ちこぼれ時代に初めて組んだ討伐隊の隊長だった
「あぁ?……あーあの時のか!あー確かにお前がぶちのめしたギルドナイトってこんなだったな、あんまよく見てねぇけど」
「ッ……」
嫌な記憶を思い出さされギルドナイトもとい隊長は顔を歪める
「オイオイ隊長~!あんたがオレの事イカレポンチって言ったのまだ覚えてんぞ~コンニャロ~」
冗談気に男は笑って言うが隊長は苦虫を噛み潰したような顔をしている
「……あの時は悪かった、今更だが謝らせて欲しい……すまなかった」
「んぉ……?」
からかったのにマジな様子で謝罪をする隊長に男と大男は顔を見合わせる
「どしたよ隊長?なんかあったのかよ?」
男も陽気からマジな雰囲気に切り替え隊長に問いかけた
「私が言えた義理ではないが……どうか助けて欲しい、裸の英雄」
隊長は事情を説明した
「……と、言う訳なんだ」
「服作りてぇから1週間でって……相変わらずだなあのバカ王女は」
ふざけた事情に大男は悪態ついた
「うぃわかった、手伝ってやるから行こうや隊長」
男は快諾した
「……いいのか?」
「珍しいなお前が一も二もなく承諾なんてよ」
あまりに簡単に了承を得られて半信半疑なギルドナイトと大男
「いやだってよぉ……隊長ってオレの事嫌いっつーか苦手っつーか負い目みたいなのあんだろ?」
「……嫌いなわけではない」
さっきの真剣な謝罪に男はそう感じていた
「それが恥を忍んで頼みに来たんだ、オレに嫌われてるかもしれねぇのによ……そりゃよっぽどの事だ」
それを承知でギルドナイトは来た
「なら知らん仲でもねぇし否やもねぇよ」
だから力になってやろうと思ったのだ
「……ありがたい、感謝する」
「んだよ隊長~よそよそしいぜ~?前みたいにもっと偉そうにしろって~イカレポンチって言ってみな~」
「……勘弁してくれ」
困惑と感謝が混ざった顔の隊長と笑顔でからかう男
「フン……よぉし、なら俺様も手伝ってやるか」
大男も参加を表明
「いや必要ねぇ、デブは要らねぇ」
「ざけんな!デブは関係ねぇだろ!要るだろっちゅーの!」
「ハハッ!ウソウソ要る要る!助かるぜ親友!……良かったな隊長、これなら間に合いそうだ」
「かたじけない」
受注した2人は装備を整え書き置きを残してメゼポルタに出発した
「あーそうそう隊長さぁ?受けてから言うのはなんだがちょっとよぉ……」
「報奨金か?経費を除いて全てやるから安心しろ」
「いやいや金はどうでもいいんだよ、もっと重要なお願いがあんだよ」
「何だ?」
男は困った顔で頬を掻きながら言った
「終わったら一緒に嫁に謝ってくれ」
「……それくらいは構わないが」
隊長はわざわざ頼むような事か?と首を傾げる
「怖ぇぞ~コイツの嫁さんは~コイツが心配でクエスト行くの絶対反対だかんなぁ、生きて帰れるといいなぁ~」
「……そんなになのか?」
大男の冗談のようで冗談に聞こえない呟きに隊長の顔は青冷めた
(大長老様が望みが薄いと言っていたのはこの事か……あぁ私はこのクエストを達成と同時に土に還るかもしれんのか……)
死に場所は此処かと決意するのだった
「大丈夫だって隊長!2乙くらいで済むって!知らんけど!」
「君の嫁はアマゾネスか何かなのか……?」
「ゲハハ!バーバリアンの嫁にゃあピッタリじゃねぇの!腕の1本くれぇは覚悟しとけ~」
「ウハハ!鬼嫁なのは間違いねぇわな!腕の1本で済みゃあ儲けモンよ」
「……イカレポンチドモガ」
野蛮な狩人3人衆……もとい三兄弟のわがまま御用聞きが始まる
隊長ギルドナイトで話作るか!と思っただけ……まぁ手慰みってやつです。