Fallout archive   作:Rockjaw

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今回、結構オリジナルな部分が入ります


Adult Fighting Style (Table)

「…ん…ふぁ~~あぁ…。」

 

老衰で永久の眠りについたと思ったら別の世界に送り出されて数年ぶりの実戦。

 

なんというか…いろいろ濃すぎる一日を過ごしたネイト。

 

「…体は若いが年寄りだから早起きしてしまった。」

 

日付は変わっているが日が昇るにはまだ早い時間にアビドス高校の技術室で目が覚めた。

 

「…そうだ、校内でも見て回ろう。」

 

まだ対策委員会の面々がやってくるまでには時間がかかるだろう。

 

暇つぶしがてら昨日はあまり見れなかった校内を散歩することに。

 

(まぁ、生徒がいるからそうでもないが…かなり荒れてるなぁ。)

 

生徒は五人、教師はいない。

 

そんな状況では学校のメンテナンスが疎かになるのも無理はない。

 

しかも、ここは砂漠化が進むアビドス自治区。

 

校内の廊下や一部の教室内にまで砂が積もっていた。

 

さらに…

 

(…ライフラインにもがたが来てるな。)

 

電灯のスイッチを入れてみるもつく場所があったりつかない場所があったりと設備も相当傷んでいる。

 

(…と、そういえば。)

 

と少し気になることもありPipーBoyを操作し始めるネイト。

 

(えぇっと確か『C.A.M.P.』が…。)

 

アパラチアに赴いた際に現地のレジテントの子孫たちから伝授された技術『C.A.M.P.』。

 

いわば移動型ワークベンチでこれを使えば自分の好きな場所で拠点の建築のクラフトが行えるのだが…

 

「…あれ?」

 

と、どこを探しても『C.A.M.P.』がない。

 

「まさかユメ…入れ忘れたのか?」

 

ホシノの話を聞く限りでも抜けている部分の多い梔子ユメ。

 

いやな予感がよぎるが…それは杞憂だった。

 

「…ン?このホロテープは…。」

 

インベントリ内を探しているとき見覚えのないホロテープがあった。

 

タイトルが文字化けしているのでどんな内容か一見しては分からない。

 

「…取り出してみるか。」

 

この中に入っているのだからまさか危ないものではあるまい。

 

そういい、ネイトがインベントリ内からそのホロテープを出現させ確認するとテープ表面に手書きで…

 

「『Mysterium Terrae Impiorum』?」

 

と書かれてある。

 

描かれてある言葉の意味はネイトにはさっぱりわからない。

 

「英語はともかく、せめて日本語かロシアか中国語で書いてくれよ。」

 

何はともあれそのホロテープをPipーBoyの差込口に挿入し読み込ませる。

 

次の瞬間…

 

「…え!?」

 

画面の中のVaultボーイが頂くヘイローが輝き周辺を光が埋め尽くした。

 

――――――――――

 

―――――

 

――

 

「ふわぁ~…。」

 

日も登り、一年生のアヤネがあくび交じりで一番早く登校してきた。

 

昨日は遅くまで働いていたというのもあるがそれ以上に…

 

(久しぶりですね…。次の日がワクワクして寝れなかったのなんて。)

 

まるで遠足前夜のような興奮で寝付けれなかったというのが大きい。

 

何せネイトという異世界の大人がアビドスを蘇らせるために生徒会長から派遣されてきたのだ。

 

その実力もさることながら技術力も未だ未知数。

 

(ひょっとしたら学校の設備も修理できるかも…。)

 

対策委員会で戦闘時はオペレーターも務める奥空アヤネ。

 

昨日バギーを運転できたことからも分かる通り操縦技術も習得しておりなんとヘリまで操縦できる。

 

そんな技術力の高さもあってか学校設備の修理も請け負っているが正直一人では手が回っていないのが現状だ。

 

それもネイトが加わればもっと設備が使えるようになるかもしれない。

 

「さ~て今日もがんばっちゃいますよー!」

 

何はともあれアビドス高校の新たな日々の始まりである。

 

校門をくぐり下駄箱で上履きに履き替え、

 

「おはようございまーす!」

 

中にいるであろうネイトにも聞こえるように元気に挨拶するアヤネ。

 

が、アヤネのあいさつに返事をしたのは…

 

「オハヨウゴザイマス。今日モ良イ一日ヲオ過シ下サイ。」

 

「うひゃああああ!?」

 

卵型の丸っこいフォルムをしたロボットだった。

 

見ると脚部はキャタピラの上に大型掃除機が乗っけられ廊下に積もっている砂の掃除中のようだ。

 

そして、

 

「…お、アヤネ。おはよう。」

 

作業服姿のネイトが天井の点検口から頭をにゅっと出して挨拶を返すのであった。

 

数時間後…

 

『保安ト奉仕ニ努メマス。』

 

『タンクガイッパイニナリマシタ。排出ニ向イマス。』

 

『作業終了、次ノブロックノ作業へ向イマス。』

 

「うへ~…こりゃあ長生きもしてみるもんだにぇ~…!」

 

「こ、これ全部ネイトさんが作ったっていうの…?!」

 

「凄いです~!お掃除ロボットなんて夢見たいですねぇ!」

 

「こんなに砂の無い廊下初めて見ました…!」

 

「ん…ネイトさんの世界のロボットすごい…!」

 

対策委員会の面々も登校し、一晩でがらりと変わった校内の様子にあんぐりしていた。

 

視線の先では先ほどのロボット数台が砂をどんどん吸い込み廊下をきれいにしていっている。

 

「いやぁ、朝見回ってたらいろいろ気になってな。勝手で悪いが備品倉庫の故障した掃除機を使わせてもらったぞ。」

 

対するネイトは作業着の上着を腰に巻き首にタオルをかけ汗をぬぐっていた。

 

「ふぅ~いやぁ、久々にロボット作ってみたがうまい具合に組み合わせれてよかった。」

 

「いや、あんなのそんな一晩で何台も作れるわけないじゃない…!」

 

こともなげなネイトの発言にセリカが突っ込む。

 

が、

 

「できるんだなぁ、これが。ついてきてくれ。」

 

いたずらな笑みを浮かべネイトが作業室へ皆を連れていく。

 

そこにあったのは…

 

「え。えぇっと…これは?」

 

昨日にはなかった作業アームとコンソールがつけられた円形状の台だった。

 

「『ロボット作業台』と言ってな、これを使うと俺のいた世界のロボットがクラフトできるんだ。ほかにも精密部品の製造にも使える。」

 

「これであのロボットを…えぇっとなんて言いましたっけぇ?」

 

「『プロテクトロン』、俺の世界だと公共事業や店のスタッフとしてよく使われていたんだ。それをベースに『ロボブレイン』というロボットのキャタピラを付けたんだ。」

 

連邦におけるネイトの所属組織『ミニッツメン』。

 

壊滅寸前まで落ちぶれていた組織が復興できた一つの要因がこの『ロボット作業台』である。

 

「元来は戦闘用ロボットを作る代物なんだが少々いじくって純粋な掃除用ロボットを作ることができた。昔は俺の部下の補助として戦闘ロボットを配備し戦力の拡充を図ったもんだ。」

 

「せ、戦闘用ロボットも作れるんですか!?」

 

「ん…プロテクトロンって強いの?」

 

「いや、また別の軍事用ロボットの『セントリーボット』や『アサルトロン』というのも作れるからそれをベースに作ってた。」

 

「んへ~こんなとんでもない物どこで手に入れたの、ネイトさ~ん?」

 

「元の持ち主がちょっと手違いで騒動を起こしてな。まぁちょっと『説得』して止めさせたが。で、その時、助けたロボットから設計図を貰ったんだ。」

 

「『説得』に色々含まれているような気がするんだけど気のせい?」

 

ロボット作業台の働きは分かった。

 

が、ここで新たな疑問がうまれる。

 

「でもぉ…ロボットはこれで作ったとしてぇ…この作業台はどうやって作ったんですかぁ?」

 

そうだ。

 

クラフトの説明は昨日教えてもらったがあれは武器などのこまごましたもの限定である。

 

「確か、巨大なものは『ワークベンチ』や『C.A.M.P.』が必要になるんでしたよね?」

 

ロボット作業台ほど巨大なものになるとアヤネの言うとおりどちらかが必要なはず。

 

しかし、それらしきものはどこにも見当たらない。

 

「いやぁ、恥ずかしながら俺も今朝気付いたんだが…。」

 

その答えと言わんばかりにネイトはPipーBoyをいじくり始めると…次の瞬間にはミシン付きの作業台が出現した。

 

「「「「「え?!」」」」」

 

「なんか…このホロテープ読み込んだらPipーBoyだけでクラフトと解体できるようになっちゃった。タイトルにどこかの言葉が書かれているんだが読めなくてな。」

 

「ちょ、ちょっとおじさんにそれ見してくれない?」

 

「読めるか?」

 

何か気になることがあるのかネイトから受け取ったホロテープをしげしげと眺めるホシノ。

 

「…『Mysterium Terrae Impiorum』。カッコつけて言うと『神無き地の神秘』といったとこかねぇ~。」

 

「『神無き地の神秘』、確かにこれは神秘と言っても文句は言えないわね。」

 

「ん…キヴォトスでもこんな神秘使えるのは連邦生徒会長くらいかも。」

 

「しゃれた言い回しだな。確かにあの世界は…神なんて存在しないだろう。」

 

復興する前の連邦、力こそすべての狂気の世界。

 

『神無き地』、そう称されても不思議はない。

 

そして、ホシノは懐かしそうな眼をしながら…

 

「それにこれ…ユメ先輩の文字です…。」

 

「なんだって?」

 

「間違いないです、ネイトさん。これはユメ先輩からの贈り物です。」

 

愛おしそうにその手書きのシールをなでる。

 

彼女の痕跡はもうないと思っていたがまさかこんな形でまた出会えるとは思わなかった。

 

「そうか…。それは君が持っておけ、ホシノ。」

 

「いいんですか…?」

 

「一回読み込んだ後は抜け殻みたいになって文章データすらない状態だ。俺が持っておくよりホシノが持っておくほうがいいだろう。」

 

ネイトにとっては役目を終えたものだ。

 

ならば望む誰かのもとに向かうのが有効に使えるだろう。

 

「…ありがとうございます。」

 

ホシノも微笑みながらそのホロテープを受け取るのであった。

 

「さて…で、意図せず拠点クラフトができるようになったんでロボット作った後暇だったから設備の修復と点検もやってたんだ。」

 

「え。そんなことまで!?」

 

「じゃあ見せるか。シロコ、そこの壁にぶっ放してみてくれ。」

 

「ちょ、ネイトさん何言ってんの…!?」

 

突然とんでもないことを言い出すネイトに突っ込むセリカだが…

 

「ん…分かった。」

 

「シロコせんぱあああい!?」

 

言うが早いかシロコも何の躊躇なく技術室の壁目掛け『WHITE FANG 465』をワンマグ分連射。

 

貫通力が強化されているだけあってその箇所にはぽっかりと穴が開いてしまった。

 

「ちょ、ネイトさんにシロコ先輩!?何やって!?壁に穴開いちゃったじゃない!?」

 

突然の暴挙にセリカは当然眉を吊り上げ激怒する。

 

が、

 

「何やってって穴なんて開いてないだろ?」

 

「はぁ!?馬鹿言ってんじゃ…。」

 

ケロッと反論するネイトにさらに声を荒げて今しがたシロコが撃った場所を見ると…

 

「…あっれぇ!?」

 

「あ、穴が…塞がって…!?」

 

先ほどまであった穴が一瞬目を離しただけでなくなっていた。

 

「まぁ冗談はさておき。ありがとう、シロコ。これ弾の補填な。」

 

「ん…どういたしまして。でも、すごい。今ある建物にも作用するなんて。」

 

「その辺も強化されてるみたいだ。」

 

「あれもクラフト機能の一部ですかぁ?」

 

「あぁ、あれもコンクリートを消費して修復したんだ。電気設備は銅とか電気回路を使って修理してた。」

 

「じ、じゃあ学校内の設備の不調も…!?」

 

「9割がた修復できてるぞ。外壁も見かけは修復して内部に防弾用の鉄板仕込んでる。」

 

「ま、まさか一晩もかからずに全部直してしまうなんて…。」

 

今までさんざん苦労してきてそれでも修理に手が回らず申し訳なく思っていたというのにネイトにかかればそんな短時間にほぼ完全に修復。

 

「わ、私の苦労って一体…。」

 

その事実に打ちひしがれアヤネは膝をつきうなだれた。

 

「アヤネ、そんな落ち込むな。こんなの比べるほうが無理がある。」

 

ネイトはそんなアヤネの肩に手を置き自分の異常性を引き合いに出し、

 

「ネイトさん…。でも…。」

 

「第一、学生の君がこんなことをやっているのがおかしかったんだ。こういうのはな、大人の俺に任せておけばいいんだよ。」

 

アヤネがやっていたことは本来『大人』の役目であることを告げ

 

「そうだよぉ~、アヤネちゃん。むしろ、お昼寝できる時間ができたって思っちゃおうよぉ~。」

 

ホシノもこれでようやくサボれるとポジティブに捉えるように柔らかな雰囲気で伝え

 

「アヤネちゃんの頑張りはみんな知ってますからねぇ~♪だから落ち込まないでネイトさんを頼っちゃいましょ~♪」

 

ノノミもせっかく頼れる大人がいるのだからとこちらも柔らかい雰囲気で励ますのであった。

 

「ホシノ先輩にノノミ先輩…。…分かりました。ネイトさん。」

 

「うん?」

 

「私の代わりにこの学校のこと、お任せしてもよろしいですか?」

 

アヤネもそんな二人の励ましに顔を上げネイトに今までやっていたことを託してもよいかを尋ねると、

 

「もちろん、俺はそのためにいる。修理はエンジニアの俺に任せてアヤネは君のできることに全力を注いでくれ。」

 

浅い笑みを浮かべ二言目には了承、アヤネの特技を発揮するよう頼む。

 

「…はい、お任せください!」

 

アヤネもそんなネイトに満面の笑みで返すのであった。

 

その後、いい時間になったので一行は廃校対策委員会室に向かい…

 

「は~い、じゃあ改めてぇアビドス高校の『用務員』としてネイトさんがやってきてくれましたぁ~、拍手ぅ~。」

 

『わ~。』

 

「はい、よろしくな。」

 

ホシノの音頭で昨日は結局できなかったネイトの紹介と歓迎を行い、

 

「では、対策委員会の定例会議を始めていきたいと思います。今日はネイトさんが初めて参加されるのでいつもよりまじめな議論でお願いします。」

 

「何よアヤネちゃん、いつも不真面目みたいじゃない。」

 

「まぁまぁ、セリカちゃん。」

 

アヤネ司会のもと、廃校対策委員会の定例会議が始まった。

 

「まずはヘルメット団の件ですが昨日押収した資料からあの襲撃は複数支部の合同で行われたようでそれが失敗かつ拠点と物資の喪失によって今後しばらくは大規模な来襲はないと判断できます。」

 

「うへ~しばらくはあんな大変なのはもういいかなぁ。」

 

「他の近場の拠点の場所も割れている。暇を見て物資の補給がてら俺が潰しに行くさ。」

 

「ん…ネイトさん、私も付き合う。もっと戦い方を学びたいし武器とか多く持ち帰ったほうがいい。」

 

「私もお付き合いしますよぉ~。リトルマシンガンVも使ってみたいですし~♪力仕事だってお任せ下さい♪」

 

「シロコ先輩もノノミ先輩も完ぺきにネイトさんに感化されちゃってるわね…。まぁ、その時は私も付き合うから誘いなさいよね。」

 

「でもこれでしばらくは借金の返済に集中できると思います。」

 

「そういえば…借金があるってのは聞いていたが実際どのくらいあるんだ?」

 

と、いまさらながらアビドス高校の財務状況について尋ねるネイト。

 

昨日の話から借金が100万1000万ではきかないことは察しがついていたが…

 

「ん~…ざっと9億くらい?」

 

「き、きゅう…!?」

 

「正確には9億8747万です。」

 

「毎月の利子の返済だけで700万は越えてるわよ。」

 

「は…はぇ~…。」

 

まさかの総額と利子に気が抜けたような声しか出なくなってしまった。

 

ネイトのいた世界の戦前もハイパーインフレだったがそれ基準でも莫大な額だと分かる。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「…あぁすまん。ちなみに…返済完了までにどのくらいかかる?」

 

「…あと309年と8か月って回収業者さんは言ってましたねぇ。」

 

「…ん~…ッ。」

 

まずアビドス砂漠をどうにかする前にこの借金をどうにかしないといけないことが判明した。

 

しばし腕を組み唸りながら考えこみ…

 

「………セリカ、たしか君は会計だったな?」

 

「えぇ、そうよ。」

 

「今すぐ、この学校の支出と借入先に関する資料を見せてくれ。」

 

「…分かった、すぐに持ってくるわね。」

 

その後、セリカに持ってきてもらった各種資料とにらめっこし始めた。

 

「…この『カイザーローン』ってかなり悪徳だな。」

 

「うへ~…まぁまともな金融機関ならアビドス高校に融資しようなんて思わないからねぇ。」

 

「…いつもどこでも金貸しというのは性格が悪い。」

 

一目見てわかったがネイト基準でもこのカイザーローンという所は絵にかいた悪徳業者だ。

 

「ん…『カイザーコーポレーション』は昔から黒い噂が絶えない。合法と非合法の間でずっと活動している。」

 

「完全な利益至上主義、利益のためなら何でもやるっていう連中よ。」

 

『カイザーコーポレーション』、名前の通りカイザーローンの親会社である。

 

その実態は多角形経営を行っているキヴォトス有数の大企業。

 

銀行経営はもちろんリゾート開発、兵器開発と製造・販売、果てには自社で民間軍事会社まで有している。

 

その実態はブラックもブラック。

 

「…まぁ、これは今はどうすることもできない。」

 

だが、いくらネイトであっても悪徳業者とはいえ何の証拠もなく借金を踏み倒すなどという行動には移れない。

 

なので、

 

「だが…支出面なら俺にもどうにかできる。」

 

アビドス高校のコストカットに移ることに。

 

「まずは設備修繕費、これは俺が修理すれば半ば支出は0に抑えられるな。」

 

「はい、ネイトさんのおかげで業者に修理依頼を出す必要もなくなりました。」

 

「次に弾薬などの消耗品。あとで『弾薬工場』をクラフトする。そちらのほうが経費が掛からない。」

 

「えぇ!?弾薬まで作れるの!?」

 

「アパラチアの連中は自前でクラフトできてたがな。次に…。」

 

資料を見ながらどんどんコストカット案を出していくネイト。

 

これでもかつてはフリーのエンジニアをやっていた身。

 

経費削減や節税対策には余念がない。

 

しかも、妻のノーラは弁護士。

 

法律関連の知識も多少はある。

 

と、

 

「最後に光熱費だな。…思い切って電力会社との契約切るか。」

 

「ちょ、ネイトさん!?」

 

いきなりとんでもないことを言い出しアヤネに驚かれる。

 

「まぁまぁアヤネちゃん、落ち着いてぇ。そういうことを言うってことはちゃんとネイトさんには考えがあるんだからさぁ。」

 

「そ、それはそうかもしれませんけど…。」

 

「ん…発電機も作れるの、ネイトさん?」

 

「鋭いな、シロコ。そう、俺が発電機を作ってこの学校の電力を賄えば電気代もタダだ。」

 

「う~ん、作って置くだけでただで電気が作れるのって…。」

 

「あっ分かりましたぁ!太陽光発電機を一杯並べるんですねぇ!」

 

ここは日中の日差し激しいアビドス。

 

確かに太陽光発電を行えばかなりの発電量を得られるであろう。

 

が…

 

「ン?いや、太陽光なんて使わないぞ。」

 

にべもなくネイトはノノミの答えを否定。

 

代わりに…

 

「え?じゃあどうやって…。」

 

「『常温核融合』。」

 

「「「「「…え?」」」」」

 

さらっと彼女たちにとってもとんでもない爆弾発言をぶちかますのであった。

 

…数時間後、

 

《はい、ではいかほど我が社に売却していただけるのでしょうか?》

 

委員会室でネイトはスーツを着たロボットのホログラムと何やら商談を行っていた。

 

(まさか…こういうこともあるんだなぁ。)

 

それをネイトはしっかりと聞きながら内心呆けたような声を上げる。

 

あの後、ホシノを含む全員が…

 

『うっそだぁ~。』

 

みたいな空気が流れ…

 

『だったら見せてやろう。』

 

ということで勢いそのまま校舎の裏側に一瞬でクラフトしてしまった。

 

『Vault-Tecリアクター』、かつてネイトも入ったVaultの電力を賄うための『常温核融合発電機』である。

 

大きさこそプレハブよりも少し小さい位だが侮るなかれ。

 

その発電量は…(ネイトも初めて知ったが)キヴォトス換算でなんと150MWh。

 

一見して分かりにくいが、1MWで一般家庭約300世帯の年間消費電力を賄える発電量とされている。

 

その150倍、つまり約45000世帯分、もはや大都市クラスの電力をこれ一基で生み出せるということに他ならない。

 

当然、そんな電力を学校一つで使いきれるわけがない。

 

全員口をあんぐり開けている中いち早く立ち直ったノノミから提案があったのが…『売電』である。

 

電気を売るなどネイトには発想すらなかったがとんとん拍子で卸先も決定。

 

卸先は…『セイント・ネフティス社』。

 

カイザーと同じくキヴォトスでもかなり大きな勢力である企業だ。

 

十六夜ノノミ、彼女はなんとこの大企業の社長令嬢。

 

噛み砕いて言うとすげーお嬢様なのである。

 

すぐさまノノミから連絡を受けた担当者が来校、リアクターとその発電量を見て腰を抜かしていた。

 

その担当者はすぐさま会社に飛んで帰り…現在に至る。

 

「えぇっと…一部こちらでも機械を使いたいので全部を全部売るわけにはいきませんが…。」

 

と、呆けているわけにもいかないのでネイトも交渉に本腰を入れる。

 

その後、今後立てる製造工場並びに学校で消費する電力分を余裕があるように差し引いて…

 

「…一日に付き105MWh分の電力で如何でしょうか?」

 

《はい、私共としても問題ございません。》

 

リアクター一基で発電される量の7割をセイント・ネフティス社に売却することが決まった。

 

《それでお値段ですが…こちらになります。》

 

「どれどれ?………………え"?」

 

そしてその値段を見せられ…ネイトは固まった。

 

「ン?どったの、ネイトさ…え”?」

 

「ん…先輩も固まっちゃっ…ん~?」

 

「ちょ、二人とも?いったいいくらに…はぁッ!?」

 

「せ、セリカちゃんまでどうし…えぇ!?」

 

「皆さん、そんなに驚いちゃ…ほぇ~?」

 

続けてその価格を見た全員も固まる。

 

そこに映し出された値段は…『¥1,425,000-』。

 

「え…この値段は…一月で?」

 

まさかと思いネイトがそう担当者に質問すると…

 

《いえ、この契約が有効な限り毎日お支払する値段でございます。》

 

『……………………………エエエエエエエーッ!!!!????!!!?』

 

なんと日給がこれなのである。

 

ほぼ不労所得で。

 

単純計算、毎月何もせずとも『42,750,000』円が懐に転がり込んでくる。

 

税金等でもろもろ引かれるであろうが…それでも恐ろしい大金だ。

 

無論、四の五の言わずに即契約にサインするネイト。

 

そんな即決でいいのかと思うが相手はノノミの一族の会社なのだ。

 

そのあたりは交渉術に長けるネイトも信用している。

 

《では、ネイト様。この度は我がセイント・ネフティス社とお取引していただきありがとうございます。》

 

契約も終えたのでセイント・ネフティス社のロボットは一礼をしてホログラムが消えた。

 

「…なぁノノミ、これは夢じゃないよな?自家発電の電気売って稼ぐ値段じゃないだろ…?」

 

「あはは…多分うちの人もそう思ってるかもしれませんねぇ…。」

 

「これで夢だったらぁ…おじさんセイント・ネフティス社にかち込むかもねぇ…。」

 

「ん…あんな金額見たの初めて。銀行強盗でもしないと稼げない。」

 

「あぁ~…私のバイト代なんて小遣いみたいじゃないのよぉ~…。」

 

「まさか…一気に借金問題に光が差すなんて思いませんでした…。」

 

まさかまさかのクラフト一発でこの衝撃。

 

全員が口をぽかんと開け呆然としていた。

 

その時、

 

「あ、電話が。」

 

ノノミのスマホに着信が入った。

 

「…え、お父様から?」

 

相手はノノミの父親、つまりセイント・ネフティス社の社長である。

 

「ちょっと失礼します。」

 

電話に出るため、いったんノノミは部屋を出て行った。

 

「……かんっぜんにさっきのことよね?」

 

「じゃなかったら逆に何の話か気になりますよ…。」

 

「え、何?俺ひょっとしてお叱り受けるの?」

 

「だいじょ~ぶ、ちゃんとどっちも納得して契約したんだからぁ。…………たぶん…。」

 

「おいホシノぉ!そこは断言してくれよぉ!」

 

「ん…その時はみんなで謝ろう。」

 

と、ノノミにかかってきた内容をあれやこれや予想するネイトたち。

 

が、

 

「はい、はい…分かりました、代わりますね。ネイトさ~ん、お父様がネイトさんとお話があるようで…。」

 

いよいよ先程の話の通りになりそうだ。

 

「…………いないって言ってくれ。」

 

「子供みたいなこと言ってんじゃないわよ!早く出なさい!」

 

「はい…。」

 

居留守を使おうにも無理なので肩を落としながらノノミからスマホを受け取り、

 

「はい、お電話変わりました。アビドス高校用務員のネイトです。」

 

先ほどの情けない雰囲気を消し去りいよいよセイント・ネフティス社社長と電話での会談である。

 

《はじめまして、Mr,ネイト。十六夜ノノミの父です。娘からは貴方のことは聞かされています。》

 

「この度はこのような大きなお取引を結んでいただきありがとうございます。」

 

《いえ、わが社としても非常に利のある取引ですのでこちらこそお礼を言いたいくらいですよ。》

 

まずは社交通りのあいさつを互いに交し合いネイトは出方を窺う。

 

「しかし…なぜこのような契約を結んでいただけたので?それも…その…。」

 

《あんな未知の技術で生み出されたものを、ですか?》

 

「…はい。社長はすでにノノミさんから自分のことを聞かされてますでしょうか?」

 

《えぇ、昨晩非常にうれしそうな声で話してくれましたよ。…梔子ユメの遺志を継いだ人物が異世界からやってきた、とね。》

 

(やっべ、完全に俺の情報握られてる…。)

 

まぁ、情報封鎖しなかったネイトが悪いのだが内心焦りが止まらない。

 

《まさか、とは思いましたが…『常温核融合』、ミレニアムでも手も足も出ないような代物が目の前に瞬時に現れたとなれば信じざるを得ないでしょう。》

 

「…それで自分などに一体どのようなご用件で?」

 

望みは何だ?と素早く思案し続けるネイト。

 

が…

 

《ふふっ、そう警戒しないでください。私は貴方にお礼がしたいのですよ、ネイトさん。》

 

「…お礼、ですか?」

 

そんな警戒心を感じ取ったか、社長は口調を崩しネイトの警戒を解こうとする。

 

《えぇ。…我が社が果たせなかった『アビドスの復興』、それの一助になれるという…ね。》

 

そう前置きし、社長は話し始める。

 

『セイント・ネフティス社』は元はアビドス発祥の企業。

 

かつてのアビドス自治区が栄華を誇っていたのもこの企業の働きが大きい。

 

アビドスとともに発展し、自治区の経済を殆ど担うほどに。

 

だが、数十年前の砂嵐によって徐々に不毛な砂漠になり始めてからは自治区ともども衰退に歯止めがかからなくなった。

 

それでも起死回生の一手として十数年前に大規模な鉄道事業に着手するも…結果は有り体に言えば大爆死。

 

その結果、アビドス経済を道連れにする形で経営が傾き、倒産を逃れるために本社はアビドスを捨てて活動せざるを得なくなった。

 

この決断で今のアビドス高校の借金程度すぐに返せるほどの経済力まで持ち直したが、内外共にアビドス衰退のとどめを刺してしまったとみなす声も多い。

 

さらにその隙をつくようにカイザー・コーポレーションの跳梁を許し今のアビドスの悲惨な経済状況を生み出してしまった。

 

《ノノミがアビドス高校に進学したのも我が社の失敗が原因なのです。情けない話です、親の負債を子供にまで背負わせてしまっているのですから…。》

 

「なるほど…。」

 

後悔をにじませる声でこれまでのセイント・ネフティス社の歴史を語り終える社長。

 

しかも、もしセイント・ネフティス社がアビドス高校を救おうものなら外部から見れば学校の所有権がネフティスのものになったと思われても仕方がない。

 

だから…援助したくても今までできなかったのだ。

 

《今更…どんな顔をしてアビドスの助けになればいいか、そんな思いに駆られる日々でした。ですがそんなときに貴方が現れたんです、ネイトさん。》

 

「俺ですか?」

 

《はい、キヴォトスどころか…『別世界』からの来訪者であるあなたがです。》

 

そんな日々もネイトがやってきたことでようやく終わった。

 

「そんな大層な物じゃないですよ。俺はただの技術屋ですよ。」

 

《ハハッ、御謙遜を。現にアビドスの負債の打開策を打ち出しているではないですか。》

 

「まぁ、俺としてもその発想がなくてコストカットの一環で作っただけなのですが…。」

 

《ですが、これで我々もアビドスの復興の一助を担えるようになったのは事実です。貴方がいなければ…もっと事態が深刻化していたでしょう。》

 

そう、今回はネイトとの正当な取引だ。

 

これならば陰からでもセイント・ネフティス社がアビドスを救う力になれる。

 

だから、この売電契約を即決で結んだのだ。

 

《ありがとうございます、ネイトさん。貴方のような方がアビドス高校にいらっしゃってくれて…。これで…我が社の過ちを正す機会が得られました。》

 

「いえ、礼には及びません。…俺は彼女との約束を果たすためにここにやってきた、ただそれだけのことです。」

 

《フフッ、娘の言った通り『優しい大人』なのですね。》

 

聞いた通りのネイトの人柄に社長も笑顔を浮かべているのが伝わってくる。

 

《…今後、わたくし共は貴方のアビドスにおける活動を全力でサポートしていきます。経理、法律関係、起業、調査、資材調達、節税対策などどんなことでも仰ってください。》

 

「…ありがとうございます。何分こちらの世界に来てまだ1日しかたっていない自分にとってはまたとない申し出です。有難く貴方方を頼らせてもらいます。」

 

この申し出はネイトにとっても僥倖だった。

 

いくらネイトが戦闘力もクラフト能力もあったとしても『個人』ではいずれ限界が来る。

 

そこにセイント・ネフティス社という大きな後ろ盾を得られるとなると活動の幅が大きく広がる。

 

ならば…

 

「ではさっそくで申し訳ありませんが一つお願いがあります。」

 

《はい、なんでしょう?》

 

「カイザーコーポレーション、その詳細と簡単な内部事情を教えていただきたい。」

 

さらなる一手を打つため、ネイトは暗躍し始めるのであった。




売電の価格設定は本年度版の物を参考としています
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