Fallout archive   作:Rockjaw

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アニメ最新話で非常にむかつきましたので容赦なしです


Adult Fighting Style (the Reverse)

セイント・ネフティス社との大規模売電契約を締結して数日後。

 

「それで?今回我が社と契約を結びたいというのは貴方ですか?」

 

「はい、この度は弊社のために御社の貴重なお時間を用意していただき誠にありがとうございます。」

 

黒いスーツと黒縁メガネをつけてビシッと決めたネイトがある場所に営業へやってきていた。

 

その場所は…『カイザーコンストラクション』。

 

『カイザーコーポレーション』、その建設部門を統括する会社である。

 

それは昨日のことである。

 

「『起業』しようと思う。」

 

「何よ、藪から棒に…。」

 

いつもの廃校対策委員会の会議にて開口一番のネイトの発言である。

 

「起業するって言ってもいったい何をするつもりなんですか?」

 

「いやなに、食い扶持を増やすことに越したことはないからな。」

 

「でもぉ、あの発電機のおかげでめちゃくちゃ余裕が生まれたんじゃないのぉ?」

 

「ん…ネイトさんのおかげで学校の設備も完全に元通りになった。」

 

あれ以来、ネイトのクラフトによってアビドス高校の設備はほぼ元通りになっていた。

 

それだけではなく学校の裏にある数少ない高校所有の土地に簡単な工場を建設。

 

その内部では『弾薬工場』が設置され弾薬を日夜製造している。

 

さらに防衛部隊としてロボットソルジャーも配備済み。

 

今やアビドス高校はかつてないほどの安定を手に入れられている。

 

が、

 

「だからと言って現状で胡坐をかくわけにもいかない。いくら4000万弱ほどの現金が毎月入って来るとは言え利息込みだと返済までまだまだかかるし。」

 

「うっ…うすうす気づいていたのに改めて認識させないでよ…。」

 

「うへ~…不労所得があるのに働かなくちゃならないのはつらいよぉ~…。」

 

ネイトがくる以前もホシノ達は賞金首を捉えたりバイトをしたりしてなんやかんや毎月700万近い利息の返済を行っていた。

 

それであっても返済までに300年以上かかる計算。

 

いくらその5倍以上を安定して稼げるようになったとしても返済までは長い道のりであることに変わりはない。

 

なので、

 

「だからここはひとつ俺も会社を立ち上げて働こうと思う。もちろん、学校のメンテナンスもしっかりやるから安心してくれ。」

 

さらなる収益確保のために起業しようということである。

 

「でもネイトさぁん、事業内容はどんなことにするつもりなんですかぁ?」

 

すでに父親からネイトへのバックアップの件は聞かされているので起業自体はそこまで問題はないだろう。

 

ノノミが興味を抱いたのはその事業内容だ。

 

何度も言うが、ここは砂漠化が著しいアビドス。

 

はっきり言って事業を起こすには向かない土地柄。

 

さらに産業はほぼカイザーコーポレーションが牛耳っているようなもの。

 

この状況で収益を上げるのは至難の業。

 

そんな心配そうなノノミを見て、

 

「まぁ一応企業の体としては今後の展開を考えると『総合商社』で行こうと思う。で当面の事業内容としては…。」

 

そういい、ネイトは窓の外を指さす。

 

「ん…外がどうかしたの?」

 

「あるじゃないか…。やりたくても誰も手を付けたくない『金儲けの山』が。」

 

場面は冒頭に戻る。

 

「それで、今回そちらが提案されたのは『解体』作業の契約でしたね。」

 

「はい、弊社が提案いたしますのはアビドス砂漠におけるカイザーコーポレーションがアビドス高校より抵当として預託されている廃棄都市の解体事業でございます。」

 

現在、アビドス高校の自治領の多くは借金のカタとしてカイザーコーポレーションが所有している。

 

が、一見して分かるように家屋などは解体されずその廃屋群は放置され続けている。

 

「解体するにも費用がかかります。その費用と解体した後の地価の関係上御社がなかなか廃墟の解体が進んでいないと聞き及んでおりますが…。」

 

「…えぇ、その通りです。何分差し押さえた当初はよかったものの砂漠化の進行が早く…今やあのあたりを更地にし販売するにしても利益が出ないのですよ。」

 

解体するにしても機材の輸送や燃料、人件費もかかる。

 

それら諸経費を含めると…解体しても解体しなくてもそれほど利益に差がないのだ。

 

そこで…

 

「なので弊社がそうですね…相場の6割ほどのお値段でその解体作業を受託できないかと…。」

 

「ほぉそれはそれは…。」

 

それを割引してネイトがその業務を肩代わりできないかとやってきたわけだ。

 

かなり割安な提案にカイザー側の担当者も感心したような声を上げる。

 

「何分、弊社はこのアビドスでは新参者。大手である『カイザーコンストラクション』様と関係を築きたく今回は弊社の出血大サービスでご提案に参った次第です。」

 

「ふむ、そうですねぇ…。」

 

非常に低姿勢のまま提案するネイト。

 

(フン、確かに新参者のようだな。あんな土地の解体業務を引き受けようとは…。)

 

そんなネイトをほくそ笑みながら値踏みする担当者。

 

アビドス砂漠の廃墟群は非常に広大だ。

 

廃墟の解体などたった一社の零細企業が行ったところで何年かかるか分からない。

 

さらに砂漠という環境も相まって重機の輸送やメンテナンスにも莫大な費用が掛かる。

 

そんなことも理解せずにこの男は解体費を割安にしてまで事業を引き受けたいと申し出ているのだ。

 

ならば…

 

「…ほんの少し検討の時間を頂きたいのですがわたくしとしては御社のご提案は非常に魅力的な物と感じております。」

 

この男の会社も利用しようではないか。

 

少しでも廃墟街の解体が進めば地価は上がる。

 

もし、この男の会社が途中で投げ出そうものなら…その時はその時でやりようはある。

 

『利益至上主義』、これがカイザーコーポレーションすべてのモットーなのだ。

 

「ありがとうございます!いやぁ、まさか新参者の弊社が『カイザーコーポレーション』様のグループ会社とかかわりを持てるのはこれ以上ない僥倖です。」

 

「いえ、弊社としても御社のようなチャレンジ精神旺盛な企業とは是非お取引したいと常日頃から思っているのですよ。それで、契約の提案書はお持ちでしょうか?」

 

「はい、こちらが弊社が作成した契約の提案書になります。」

 

必要以上にへこへこしながらネイトは作成してきた提案書を提出する。

 

内容はざっと要約すると…

 

『解体費は相場の6割』

 

『支払いは解体完了より2日以内』

 

『解体の際に出た廃材等はネイトが保有』

 

『解体場所はこちらの自由』

 

というものだ。

 

「ふむふむ、では少々お待ちを。上司と相談してまいります。」

 

その提案書を持ち担当者はいったん奥に引っ込んでいった。

 

そのまま待つこと数十分後、

 

「お待たせしてしまい申し訳ありません。提案書を精査したところ現状はこちらの内容で御社と契約を締結したいと上司も申しておりました。」

 

どうやら提案書の内容は上司にもウケがよかったようで契約締結にあとはサインを交わすだけとなった。

 

「ありがとうござ「ですが。」…なんでしょう?」

 

「何分我が社は御社のことを知らない。そこでまずは『テスト』という形で廃屋の解体を一軒解体してもらいたいのです。」

 

が、さすがはカイザーコーポレーション。

 

そう簡単には契約を交わしてはもらえない。

 

「ようは一軒だけの『試験契約』です。そう緊張せず御社のやり方で行ってもらいたい。正式な契約はそのあとで結ぶ、というのはどうでしょう?」

 

言い方は優しいがこの担当者の腹の内は…

 

(ふん、あんな契約を馬鹿正直に飲むだけではつまらない。この試験契約でさらなる有利な契約を突き付けてやる…!)

 

ネイトを完全に搾りつくすための下ごしらえに過ぎない。

 

「なるほど。確かに弊社の作業を知ってもらうためには必要な工程ですね。」

 

ネイトも担当者の言い分に理解を示し、

 

「分かりました。では、明日から作業に入りましてそれが済みましたらまたご連絡差し上げるということでよろしいですか?」

 

「えぇ、それで構いません。その連絡後、私と上司がまいりまして改めて本契約ということで(どうせ解体作業なんて代わり映えしないしな)。」

 

「承知しました。本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。」

 

と、初交渉を終えネイトは『カイザーコンストラクション』の社屋を後にするのであった。

 

…そんなこんなで3日後、アビドス砂漠廃墟街の一角。

 

「どうも、お疲れ様です」

 

「いやーなかなか綺麗な仕事ですね。」

 

「うむ、期間も申し分ない。」

 

解体が済みぽっかりと開いた土地を前に作業服姿のネイトと先日の担当者とその上司が顔を合わせていた。

 

工期の短さや仕事の丁寧さに満足げなカイザー側の社員だが…

 

「フム、これなら御社と契約を結ぶのもやぶさかではありませんが…。」

 

「?何かご不満な点でも?」

 

「ただ一つ、あの重機だけはいただけませんな。」

 

そういい、ネイトの背後のほうを指さす。

 

そこにあったのは…

 

「あぁ、セイント・ネフティス社が中古機材を格安でリースしてくれたのでこれを主力として使おうとしていたのですが…。」

 

古ぼけたセイント・ネフティス社のロゴが刻まれたショベルカーとブルドーザーだった。

 

「う~ん、少し言いにくいのですが…。」

 

「アレを使われると少々我が社としても体面が悪いのですよ。」

 

セイント・ネフティス社とカイザーコーポレーションはライバルとして因縁深い関係。

 

そこと契約を結ぼうとしている会社がライバル社のロゴが入った機材を使うのは正直良い気持ちではない。

 

「あぁ、それは申し訳ありませんでした。」

 

「いえいえ、御社は新参の企業。新天地での力関係を把握していないのも無理はないでしょう。」

 

「仕事のクオリティも問題はありませんので契約は締結しましょう。ですが提案書の内容に一部付け加えをしても?」

 

「それは構いません。」

 

「では契約書のご確認を。」

 

と、仕事そのものは問題ないので改めてネイトと本契約を結ぼうとするカイザーの社員。

 

が…ネイトが提出した提案書に加えて、

 

『使用機材は自社保有か『カイザーコンストラクション』からのレンタルのみ。他社からのリース・レンタルは使用不可。』

 

『契約履行不可、未達成の状態で終了を申し出た場合、相手方に未解体エリアの正規解体費を賠償すること。』

 

という内容が追加された。

 

傍から見たら無理ゲーもいいところだ。

 

おそらくカイザーからの重機レンタルも非常に足元を見たものになるだろう。

 

「どうでしょうか?この契約内容であれば我が社はアビドス砂漠にあるすべての廃墟の解体業務を御社に委託してもよいと考えておりますが?」

 

それでも『解体業務の独占』という甘い言葉で契約を進めるカイザー社員二人。

 

が、

 

「おぉ、なるほど。それで構いません。」

 

ネイトは満面の笑みで了承。

 

あまりにも簡単に了承するものでカイザー社員が逆に面食らったくらいだ。

 

それでも向こうは乗り気なのにこちらがしり込みするのは不信感を与えてしまうかもしれない。

 

「承知しました。ではこちらの書類にサインを…。」

 

早速本契約書を取り出しネイトにサインを求めた。

 

ネイトも今一度契約書をしっかり隅々まで読み直してサインをした。

 

「はい、確認いたしました。こちら契約書の写しになります。」

 

「確かに。今後とも末永いおつきあいをお願いいたします。」

 

「それはこちらこそ。今後とも『カイザーコンストラクション』をよろしくお願いいたします」

 

「今日はわざわざご足労いただきありがとうございました。」

 

「いえいえ、では我々はこのあたりで。」

 

貰う物も貰ったのでカイザー社員たちはそそくさと退散。

 

その車内で…

 

「あいつは馬鹿か?それとも底抜けのお人よしなのか?」

 

「しかし、これでまた我が社の利益が上がりますね。」

 

「あぁ、あのバカな男…ネイトと言ったか?少なくとも今は感謝せねばな。」

 

そうネイトをけなしながらほくそ笑んでいた。

 

「そうそう奴の会社…なんと言ったかな?」

 

「確か…『Wasteland General Trading Company(ウェイストランド総合商社)』ですね。」

 

一方、現場に残されたネイトはというと…

 

「…なぁんだ、悪徳と聞いていたが…Vault-tecやNukaColaと比べると大したことないな。」

 

不敵な笑みを浮かべ契約書の写しをひらひらさせながら帰宅の途に就いた。

 

―――――――――――――――

 

――――――――

 

―――

 

 

4日後、『カイザーコンストラクション』にて…

 

「重機は!?重機のレンタルはなかったのか!?」

 

「セイント・ネフティス社か!?やつらの最近の動向を洗え!」

 

「誰か!この会社を調査しろ、急げ!!!」

 

始業時間から少し経ち、社内は天地がひっくり返ったかのような大騒ぎになっていた。

 

なぜかというと…

 

「なんなんだよ、この請求書は!?どう考えても不可能だろ!?」

 

昨晩締め切りの請求書であった。

 

そこには

 

『宛 カイザーコンストラクション御中

                    請求日(三日前)

                     アビドス自治区

                Wasteland General Trading Company

   件名 解体事業費

  支払期限 (昨日)

   振込先 ○○○

   合計金額 ¥16,350,000                  』

 

と書かれていた。

 

しかも、これと似たような今日締め切りの請求書がもう一通ある。

 

傍から見れば『んなあほな』と思われるだろうが…

 

「た、大変です!」

 

「どうした!?」

 

「現地を確認したところ二通の請求書に記載されている区画の廃屋や廃ビルがすべて消えてるんです!!!」

 

「なっ何だってぇッ!?」

 

現に記されている箇所の廃墟がきれいさっぱり解体されているではないか。

 

ざっと解体されたのはビルも含めて40棟弱。

 

それらの合算としては納得できる金額だが…。

 

「バカな、早すぎる!?まだ契約を交わして4日だぞ!?試験契約の時は3日で一軒しか解体できてなかったじゃないか!?」

 

正直一人で一軒当たり3日で解体完了するのも相当早いのだがこれは明らかに常軌を逸した速さだ。

 

「げ、現地に向かった者からの報告です!隣の区画の廃屋が消え始めたそうです!」

 

「と、ともかく現地へ行くぞ!真相を確かめるんだ!!!」

 

この異常事態に件の担当者と上司はすぐさまアビドス砂漠へと向かった。

 

数十分後、この二人が見たものは…

 

「な、なんだ一体、あれは…!?」

 

「い、家が…どんどん消えて行っている…!?」

 

ガシャンガシャンと音を立てて目の前でどんどん家やビルが消滅していっているではないか。

 

あの音一つなるたびに大金がカイザーコンストラクションから出ていきネイトに入っていると考えると…

 

「と、ともかく彼に話を!」

 

何はともあれ話を聞かなければとネイトのもとに急ぐ二人。

 

「ネ、ネイト社長…!」

 

「ン?あぁ、カイザーコンストラクションの。どうかしたのか?」

 

慌てる二人に対し作業着姿のネイトは先日の物腰の低さから一転普段の様子で話しかける。

 

「あぁ、そうそう。困るよ、契約に定めてあった期限内に支払い済ませてくれないと。」

 

と、挨拶もそこそこに支払いが遅れていることを指摘するネイト。

 

「そ、そんなことはどうだっていい!!!これは一体何の真似だ!?」

 

と、そんなネイトの態度に業を煮やしたか上司の社員が食って掛かる。

 

「何の真似って随分だな。解体だよ、解体。この前契約交わしただろ。」

 

「バカなことを言うな!じゃあ解体した家の廃材はどこに…!」

 

「じゃあ見せてやるよ。」

 

そういうや否や、ネイトがPipーBoyをいじり再びガチャンとなったかと思うと…

 

「な、なぁ!!!?」

 

「し、資材が突然!?」

 

今しがた更地になった場所にきれいに整理された木材や鉄、コンクリートの山が現れる。

 

「これで分かったろ、俺はちゃんと仕事をしてる。で、アンタたちは契約を果たしていない。どっちに非があるか明白だろ?」

 

再びガシャンと音を立てその山をなくし社員たちに向き直るネイト。

 

「あ、あり得ないだろ!?なんでそんなことが!?」

 

「悪いな、これが俺の神秘みたいなものだ。」

 

「そんなの契約違反だ!!!」

 

こんな方法を認められないと喚く社員だが…

 

「はぁ?契約では自社保有の機材で解体しろって明記してあったろ?何の問題があるんだ?」

 

「うぐっ!?」

 

「それにアンタ等が苦情言ったからセイント・ネフティス社の機材はちゃんと返したぞ。」

 

「そ、それは…!?」

 

「じゃあ何か、この腕のデバイスをどこで作られてるかアンタは分かってるのか?」

 

ネイトはPipーBoyを指さしながら契約を順守していることをなおも主張する。

 

カイザー社員もこんな装置を見たことも聞いたこともない。

 

セイント・ネフティス社の商品にも存在しないことは先ほどの調査で確認済みだ。

 

かえってこの事実がネイトが契約を順守している事実を補強する。

 

「ともかく、契約を守ってるのは俺の会社。破ってるのはカイザーコンストラクション、おたくらだ。この事実、お分かり?」

 

「クゥ…!」

 

「分かったらさっさと請求書を処理してくれよ。初回だから見逃すが今後は遅れるなよ、契約通りにな。」

 

と、まるで眼中にないかのようにさっさとカイザーの社員を追い払うネイト。

 

「待て!止めだ止め、こんな契約!」

 

それでもカイザーの社員は諦めない。

 

ならばと契約の打ち切りを持ち出すカイザー社員。

 

すると…

 

「あぁいいぞ。」

 

「…え?」

 

なんともあっさりネイトはそれを了承する…かに見えたが、

 

「じゃあちゃんと俺が解体できなかった分の解体料金を俺に支払ってくれるんだよな?」

 

なんとカイザー側にまだ未達の解体料金を要求したのだ。

 

「はぁ!?何を言って…!?」

 

「だから契約にそう書いてあるだろうが!」

 

そういい、いい加減苛ついてきたのか声を荒げネイトは手に契約書の写しを出現させる。

 

「ほら、ここ!『契約履行不可、未達成の状態で契約終了を申し出た場合、相手方に未解体エリアの正規解体費を賠償すること。』って書いてあるだろ!」

 

「それがどうしたんだ!?」

 

「だから!これは俺が申し出た場合と明記されていない、つまりカイザー側が履行不可や未達成で契約終了を申し出た場合でもこの条項は有効だってことだ!」

 

「…あ!」

 

完全にネイトを格下に見ていたカイザー側の社員は完全に足をすくわれた。

 

普段通り、利益至上主義を貫いた結果確認が疎かになってしまっていたのだ。

 

つまり…

 

「どうする!?契約を終了してこの膨大なアビドス砂漠全ての廃屋費用を正規料金で俺に払うか!?」

 

「うぐっ…!」

 

「このまま俺に仕事をさせて料金を払うか、二つに一つだ!さぁどうする!?」

 

どちらに転んでもカイザーにとってもはや利益云々の話ではなくなってしまった。

 

このまま契約を破棄すれば…アビドス自治領の半分近い面積を占める砂漠の廃墟群すべての『正規解体費用』をネイトに支払わなくてはならない。

 

契約を続行すればこの始末ではほぼ毎日1,000万以上の支払いに追われることになる。

 

即刻首を吊られるか、真綿で首を締められ続けるかの違いでしかない。

 

社員達が選んだのは…

 

「わ、分かった…!」

 

「何が?」

 

「や、やはり契約は…継続する…!」

 

契約の継続であった。

 

「そうか、じゃあ提出した請求書をさっさと処理してくれよ?け・い・や・く・ど・お・り・に。」

 

「クゥ…!では、失礼する…!」

 

その答えを聞き煽りに煽るネイトに苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらカイザー社員達はその場を後にしていった。

 

「な、なんなのだ…!?あの男、この前と人が変わったように…!?」

 

帰りの車中ネイトの豹変ぶりに顔を青くするカイザー社員。

 

数日前までまるでただの世間知らずの新興企業、悪く言えばただの小さく弱い『獲物』にしか見えなかった。

 

だが、今はどうだ?

 

まるで狡猾にもこちらの喉笛に食らいつきカイザーコーポレーションを『獲物』としか見ていない『捕食者』ではないか。

 

しかも、カイザーコーポレーションのやり方と違い契約上は何の問題もないクリーンなやり口なのでなおのこと性質が悪い。

 

すると…

 

「す、すみません!奴の会社について調査結果が届きました!」

 

「見せろ!」

 

ようやくネイトの会社の素性の資料が届きタブレットで急いで確認する上司。

 

すると…

 

「そ、そんな…馬鹿な…!?」

 

見るや否や上司は愕然とし手からタブレットが零れ落ちた。

 

そこに記されていたのは…

 

『Wasteland General Trading Company

      創立:8日前

      資本金:1万円

      連携機関:アビドス高等学校』

 

「あ、アビドス高等学校…だと…!?」

 

そう、本社から何が何でも借金漬けにするよう厳命を受けているアビドス高等学校とつながっていたのだ。

 

つまり…カイザーコンストラクションは本社の意向に反し借金返済の一助を担ってしまったということに他ならない。

 

ならば…

 

「…この資料は即刻破棄しろ!本社には今回の件は何が何でも隠し通せ!!!」

 

彼らは今回の件を隠ぺいすることに決めた。

 

もし、このことが本社にばれればただでは済まないことは明らかだ。

 

隠し通すしかない。

 

「あぁ、最悪だ…!契約もやめられない、本社にも伝えられないなんて…!」

 

この数日で瞬く間に『詰み』の状態となってしまったカイザーコンストラクション。

 

彼らの胃痛の日々は続く。

 

その日の午後、仕事を終えたネイトはアビドス高校の対策委員会室にやってきていた。

 

「アヤネ、どうだ?」

 

「はい、少々お待ちを…。」

 

まだPCなどの連邦にはなかった機器の操作にはなれないネイトの代わりにアヤネに頼んで先日開設した口座を残高の確認を行っていた。

 

他の対策委員会メンバーもワクワクしながらのぞき込んでいる。

 

そして、口座残高を確認すると…

 

「おぉ。ちゃんと振り込まれてる。」

 

「す、すごっ!?土木作業って三日でこんなに稼げるの!?」

 

「いえ、これはネイトさんが理外中の理外の存在ですので…。」

 

「わぁ~!売電の収益をもう超えてますよぉ~!」

 

「うへ~カイザーもこりゃぶったまげてるだろうにぇ~♪」

 

「ん…これなら今月は利子だけじゃなくて元本の返済がだいぶ進む。」

 

ネイトが提出した請求書分と今日の解体作業分の報酬がしっかりと入金されていた。

 

正直…売電の分の利益も合わせると億に届きかねない。

 

「でも、ネイトさん。こんな派手な動きしてたらカイザーに怪しまれない?」

 

と、セリカがそう懸念するように尋ねるも、

 

「そりゃ怪しむさ。だが、奴らは何もできない。」

 

無論そのあたりもネイトは織り込み済みで今回の奇襲的な作戦に打って出たのだ。

 

「それはなんでですか?さすがに何らかのアクションを起こしてくるのでは?」

 

「かもな。だが、奴らは利益至上主義。もしその理念が崩れるようなことをおいそれと自ら招くようなことがあれば普通どうする?」

 

「…隠ぺいする、少なくともカイザーコーポレーションにすぐにばれないように。」

 

「その通りだ、シロコ。奴らの内部事情も少し調べたがどうも部門間の連携はあるがかなり隠ぺい体質なところもあるらしい。」

 

裏で非合法なこともやっていると噂のカイザーコーポレーションとそのグループ企業。

 

同じグループ同士でも知られたくないようなことは山ほどあるに決まっている。

 

だからこそ、付け入るスキができる。

 

これがクリーンなセイント・ネフティス社相手ならばそうはいかないだろう。

 

「なるほどぉ~。その隠ぺい体質に付け込んでお金を稼ごうってことですねぇ。」

 

「おまけに俺は解体資材を手に入れてクラフト素材もたんまり確保できる。一石二鳥さ。」

 

そう、今回起業した理由はネイトの資材確保も一つの目的である。

 

ユメから当座の必要な資材はもらっているがそれだけではいずれ不足してしまう。

 

ならば…誰も手を付けずばらせば資材にも、会社の体裁をとって行えば金にもなる廃墟群を解体しない手はない。

 

「うへっへっへ~。ネイトさぁん、お主もワルよのぉ~♪」

 

「セイント・ネフティス社に調査を依頼して助かったよ。ノノミのお父さんにはお礼を言わなくちゃな。」

 

「うふふ、お父様もこの話を聞いたら喜ぶでしょうねぇ。」

 

こうして憎きカイザーコーポレーションからまんまと大金をせしめることに成功したネイト。

 

先制パンチは強力にかましたがあいにくネイト自身はこの学校の用務員。

 

学校での作業や訓練もあるので解体作業は『週3』で加減して行うようになった。

 

さらに対策委員会の面々もバイトや賞金稼ぎもネイト同伴で行い…あっという間に今月の支払い日となった。

 

『か、カイザーローンとお取引していただき毎度ありがとうございます。』

 

やってきた担当のカイザーローンのロボットはいつになくぎこちない。

 

もしこれが生物だったら顔から滝のような汗が流れていただろう。

 

対してネイト含むアビドス高校側は全員ニンマリ顔だ。

 

それもそのはず。

 

いま両者の間には…どでかいジュラルミンケースが置かれているのだ。

 

『で、では今月のご入金の総額を確認いたします。』

 

そう言い、カイザーローンの社員は機材で素早くジュラルミンケース内の紙幣を数えていく。

 

そして…

 

『げ…現金1億1675万8571円、確かにお預かりしました…!』

 

なんと今まで利子の返済で精いっぱいだったというのに利子どころか元本まで一気に減らせる金額ではないか。

 

なお、納税や貯蓄にも回しているのでこの一月に稼いだ金額自体はまだまだ大きい。

 

「で、カイザーローンさん。ウチの借金はこれでいくらになったんだ?」

 

「えぇ…今回の返済で総額が…8億7801万1429円となりこのペースですと…完済まであと…。」

 

「あと?ねぇえ、あとどのくらいでおじさんたちに完済できるか教えてよぉ~♪」

 

「…あと9か月で完済…ということになります…。」

 

先月までの完済までの期間は309年と8か月。

 

それを考えると…ゴールはもはや目の前だろう。

 

「で、ではまた来月伺います…。」

 

こんな大金を納めたというのにどこか暗い雰囲気のカイザーローンの社員は車に乗って帰っていった。

 

それを笑顔で手を振って見送り車が見えなくなった後…

 

『……………やったああああああああああああ!!!!!!!!!!』

 

ネイトも対策委員会ももろ手を上げたり抱き合って喜びを爆発させるのであった。




カイザーいじめ、こんなんなんぼあってもいいですからね
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