Fallout archive   作:Rockjaw

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最も心躍る瞬間は未知の土地へ出発する時、だと私は思う。
―――探検家『リチャード・フランシス・バートン』


Rhapsody of the Rabbits
After all, This Man is loved by the Case.


ある日のこと…

 

「え?これをおじさん達に?」

 

「そうだ。この前の取引先から送られてきたんだ。」

 

アビドス復興施策委員会の部室にてネイトがホシノ達とある話をしていた

 

「これって…オデュッセイア海洋高等学校の校章よね。」

 

『オデュッセイア海洋高等学校』。

 

個性豊かなキヴォトスの学校の中で唯一…『船』で構成された海の上の学校だ。

 

そんな学校の封筒がなぜここにあるかというと…

 

「この前の出張で設計図の発注をしただろ?」

 

「はい、水没地帯で使う水上プラットホームと…。」

 

「マサチューセッツ用の乾ドックの物ですよね?」

 

「そうだ。」

 

先日のミレニアムの一件の直前、ネイトはD.U.に訪れていた。

 

その目的がオデュッセイアへのこの二つの設計図の製図の依頼だ。

 

「それがこの前出来上がって送られてきたんだ。」

 

「ん…これでアビドスの復興も進むしマサチューセッツもメンテナンスできるね。」

 

「そうだな。」

 

「それで…それとこの封筒に何が関係あるの?」

 

オデュッセイアへの仕事の件は分かったが…この封筒の意味が分からない。

 

お礼の手紙かと思われるが…どうもネイトの反応からそういうものではないらしい。

 

「それで昨日、オデュッセイアの生徒会からそれが送られてきたんだ。」

 

「中身見てもいい?」

 

「いいぞ。」

 

ネイトの許可を得てホシノが中を検めると…

 

「ふむふむ…えぇー!?」

 

驚きの声を挙げた。

 

「ん…どうしたの、ホシノ先輩?」

 

「こ、これ見て!」

 

珍しく冷静さを欠きホシノが封筒の中身をみんなに見せる。

 

まずは依頼完了の報告書。

 

そして…

 

「え、ネイトさん…こんなに寄付を…!?」

 

「節税対策の一環だ。それからもしもの時に仕事を受けてもらいやすくする関係構築も兼ねてな。」

 

これまた結構な額の寄付に対するお礼状も入っていた。

 

「いいの?こんなにポンポン寄付しちゃって?」

 

「ひょんなことで金は腐るほどある。社会に回さなきゃ置物と一緒だからいいんだよ。」

 

カイザーからの違約金およそ6000億もさることながら順調に業績を伸ばし続けているW.G.T.C.。

 

今更これくらい(それでもかつてのアビドス高校の借金の大半を返せる額)をだしてもあまり痛手ではない。

 

「それより…本題はもう一つの奴さ。」

 

そう言い、ネイトは重なっていた『ソレ』を取り出す。

 

それは…

 

「ご、『ゴールデンフリース号』の招待チケットですかぁ!!?」

 

「『ゴールデンフリース号』ってあの豪華クルーザーの!?」

 

「予約だって数年待ちの人気ですよ!?」

 

オデュッセイアが保有する豪華クルーザー『ゴールデンフリース号』の招待チケット。

 

それも…

 

「うん、それも…最上級の『Aランク』客室にペアでご招待だって…。」

 

「ん…!凄い、こんなの見たの初めて…!」

 

早々お目にかかれない超VIP待遇にペアでご招待だ。

 

「ど、どうしてこれを私達に…?!」

 

なぜこんなものをポンと差し出してきたのか疑問に思いセリカが訪ねると…

 

「いや、俺はあまりそう言うの興味ないし…。」

 

そう朴訥に返すネイト。

 

そうだ。

 

この男…金は持ってるのに暮らしは質素その物。

 

豪華な食事もブランド品も興味がなく、自炊な上に日用品は実用性重視の物ばかり。

 

自分たちと違うのは『本』と『お酒』に使うくらいか。

 

大金を使うときはそれこそ自分たちに奢る時くらい。

 

そんな男だ。

 

豪華客船の旅など興味を示さないのも無理はない。

 

「で、送り返すのも向こうの顔を潰すしW.G.T.C.の重役で慰安旅行も兼ねてホシノたちの中の誰かに行ってもらおうかな…と。」

 

なので、借金返済とアビドス奪還が終わっても委員会の業務に忙しくしているホシノ達を労う意味を込めて譲ろうと思ったのだ。

 

が、それを聞いて…

 

「「「「「・・・はぁ~。」」」」」

 

「…どうした?」

 

ホシノ達は深くため息をついた。

 

「…ネイトさん、あっち連邦でこういう経験は?」

 

「いや、ある訳ないだろ。」

 

「ん…戦前はどうだったの?」

 

「高校卒業後は士官学校に入ったんだ。行く暇もない。」

 

「じゃあ…最近お休みは?」

 

「…そりゃ週二日きっちり。」

 

「そうじゃなくて…有給休暇は消費してるの?」

 

「……いいや、休暇なんか一度も。」

 

「では…アリスちゃんとは最近会えてますか?」

 

「………週一回以上は必ず。」

 

ホシノ達の立て続けの質問にどんどん歯切れが悪くなっていくネイト。

 

それを聞いて…

 

「しょうがないなぁ、ネイト君はぁ~。」

 

ホシノがどこぞの青タヌキのようなだみ声を発し、

 

「てててれってれ~!『豪華客船チケット』~!」

 

ゴールデンフリース号のチケットをネイトに差し出した。

 

「…いいのか?」

 

「働き詰めなのはネイトさんだって同じでしょ~?大丈夫、いない間はばっちり任せてぇ。」

 

「前世じゃ体験できなかったことですもん、楽しんできてください♪」

 

「私達は自分の力でいつか行って見せるわ。だから、今回はネイトさんに譲ってあげる。」

 

「ですから…ネイトさんが行ってきてください。羽を伸ばすのも仕事の内ですよ。」

 

「ん…アリスとの思い出作りも兼ねてね。皆へのお土産はよろしく。」

 

不安げなネイトにホシノたちは温かい言葉をかける。

 

「…ありがとう。」

 

そんな少女たちの気遣いに深々と頭を下げて礼を述べるネイト。

 

「さっ、早くアリスちゃんを誘っちゃいなよぉ~♪」

 

「茶化すな、ホシノ。言われなくても。」

 

ニンマリとした表情を浮かべるホシノを往なしつつネイトはアリスにお誘いの電話をかけるのであった。

 

………この時、ネイトには珍しく『浮かれていた』。

 

おおよそ70年ぶり、それも大切な娘との初めてのバカンスだ。

 

場所は豪華客船。

 

騒動とは無縁…のはずだった。

 

………忘れてはならない。

 

Hero主人公というものは…天性のトラブルメイカーでもあるいうことを。

 

これは…ある『兎たち』の追跡劇である

 

【挿絵表示】

 




人生の半分はトラブルで、あと半分はそれを乗り越えるためにある!
―――『八月の鯨』より

ネイトの苗字は…

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