普段穏やかな人ほど怒らせると怖いよね
「ふんふんふふ~ふ~ん♪」
この日、ホシノはいつものように上機嫌でアビドス高校に登校していた。
ここ一か月、本当にアビドス高校は変わった。
校舎内には砂はない、今日も清掃用プロテクトロンが綺麗にしてくれている。
校内設備は完全復旧、税金対策で購入したエアコンや電化製品で快適な学校ライフを送れている。
いつ無くなるか心配だった補給物資はそんな心配をしなくていいほどの充実ぶり。
返済まで300年以上という途方もない借金も本年度中に返済できるめども立った。
しょっちゅう襲撃してきていたヘルメット団もネイトや皆の活躍ですでに前哨基地は壊滅させてある、物資も根こそぎ奪った。
あとは生徒数が増えて砂漠化問題をどうにかできれば完璧だが贅沢は言ってはいられない。
ちなみにだが…この一月でさすがにカイザーコンストラクション側が音を上げてしまっている。
さすがに週3で1000万以上の資産を持ってかれてはたまらないようだ。
その代替案として支払いの一部を現物、カイザーコンストラクション保有の重機やトラックで何とかならないかと泣きついてきた。
ネイトは仕方なくこれを了承。
なお、この次の日から…
「もうちょいアクセル踏むわ。」
ということで解体家屋の数を倍増させたので結局支払額が変わってないのはここだけの話である。
その重機たちもアビドス高校が保有する空き地でその出番を待っている。
と、そんなこんなで非常にいい方向に向かいつつあるアビドス高校。
ホシノ自身もここ最近は夜もぐっすり眠れて体調もいい。
と、そんな軽い足取りで今日も廃校対策委員会室に到着。
「おっはよぉ~。いやぁ、今日もみんな早…。」
いつものように柔らかい雰囲気でドアを開けみんなに挨拶をするホシノだが…
「………………。」
「むー…!」
「…ど、どういう状況なのぉ?」
委員会室の真ん中、青筋立てたアヤネの前にネイトが正座で座らされていた。
あまり見ない…というか女子高生が300歳の大人を叱っている光景にさすがのホシノも面食らう。
シロコをはじめとした他の対策委員もその様子を戦々恐々と眺めていた。
「あ、ホシノ先輩!ちょっと聞いてくださいよ、ネイトさんったら…!」
と、ホシノの到着に気付いたアヤネが事の顛末を説明する。
事件は今朝のことだった。
この日もアヤネは一番早くこの学校へやってきていた。
設備の修理は終わっているがそれでもエンジニアのネイトから学ぶことは多い。
こうやってたまに早くやってきて技術を学んでいるのだ。
ルンルン気分で校内を進んでいき、
「ネイトさ~ん、いらっしゃいますか~?」
いつものネイトの寝床である技術室にやってきた。
が、今日は返事がない。
「…あれ?失礼しま~す。」
そう断りドアを開けるアヤネ。
だが、中には各種作業台や記録用のコンソールにベッドとこの一月で少しごちゃっとした作業室だけでネイトの姿がない。
「どこに行かれたんでしょう…。」
まぁアポもとってなかったのでしょうがないが少し探してみるアヤネ。
しばし校内を歩き…ある場所でネイトの気配を感じた。
その場所というのが…
「家庭科室…朝食でも作っているのでしょうか?」
長く使われなくなった家庭科室である。
と、ここでネイトが作る料理というものに興味がわいたアヤネ。
男の料理、キヴォトスではなかなか見れないものだ。
なので、
「おはようございます、ネイトさん!」
元気に挨拶しながら扉を開けるアヤネ。
が、そこで待ち構えていたのは…
「え、アヤネ?」
「え?」
まな板に押さえつけた巨大な『トカゲ』目掛けディサイプルズナイフを降り下ろし頭を落としているネイトだった。
鋭いナイフで綺麗な断面をさらす首、吹き出す血液、ビチビチ暴れる体。
その衝撃的な光景に…
「……………きゅう。」
「アヤネぇ!?」
アヤネは気絶するのであった。
「なんで朝からあんなことやっていたんですか!?」
で、冒頭の場面に戻るということである。
「いや…朝飯を…。」
「トカゲ捕まえて食べるって何やってるんですか!?」
「解体作業やってるときに偶然見つけて…朝飯にしようかな…と。」
「なんでその結論に達するんですかって聞いてるんです!」
ネイトお得意のスピーチチャレンジがことごとく失敗するアヤネの勢い。
「ま、まぁアヤネちゃん。何もそこまで怒らなくても…。」
「ネイトさんもちゃんとトカゲさんを完食したみたいですし…。」
「ん…食べ物を無駄にしていないのなら怒るようなことじゃない。」
さすがの剣幕に少しはネイトを擁護しようとする三人だが…
「そういう問題じゃないです!なんでそんな食生活を送っているのかが問題なんです!」
『ハイ、すみません』
アヤネの剣幕は一向に収まる気配が見えない。
「大体、ネイトさんはお金持ってるでしょ!?ちゃんと普通の食事をとってください!」
そうだ。
いまやネイトはアビドスの中では間違いなく裕福だと言えるほどのたくわえを持っている。
だというのに食生活があまりにもワイルドというかサバイバルすぎる。
「…というか、ネイトさん普段何を食べてるんですか?!」
まさかと思い今まで知ってるようで知らなかったネイトの食生活について尋ねるアヤネ。
その問いに対し…
「そ、その…ヘルメット団のアジトから分捕ってきたレーションを…。」
おおよそ普通の生活ではありえない食事事情を明かすネイト。
「あれは非常用食料で常食するものじゃないんですよ!?」
その答えにさらに青筋立てるアヤネだが…
「でも旨いんだぞ!俺の世界のMREなんてただカロリーとれりゃいいって感じの奴ばかりだったんだからな!?」
昔懐かしい従軍時代、味なんて二の次以下だったレーションと比べるとキヴォトスのそれはちゃんと人が食べることを想定されたクオリティだ。
個人的には満足していると説明したつもりだが、
「そういう問題じゃありません!」
アヤネの怒りには火に油だった。
「も、もちろんそればかりじゃないぞ!生鮮食品もちゃんと…!」
「トカゲって言いませんよね!?」
「…他には蛇やネズミです、はい…。」
「はあああああああああ!!!?」
今日はネイトの弁はすこぶる悪いようだ。
語れば語るほどアヤネの怒りが爆発していく。
「なんでそんなのばかり食べなきゃいけないんですか、貴方が!?」
「まっ、待ってくれ!野菜もちゃんと食べて…!」
「まさか雑草だなんて言いませんよね!?」
「大丈夫、これは普通に食べれる奴だ!」
「じゃあ何ですか!?」
「ウチワサボテンの葉っぱと実とユッカ!」
「結局その辺に生えてる奴じゃないですかああああああ!」
なお、ネイトが挙げたものはちゃんと『野菜』として食べられるものである。
サボテンは食物繊維やβカロテンにマグネシウムやカルシウムが豊富で各種健康効果も期待できる健康野菜。
実のほうにもカルシウムやリン、カリウム、リグニンなどダイエットに有効な成分がたくさん含まれている。
味は良く熟したものだとスイカに近いと言われている。
ユッカはマイルドな甘さでややナッツのような味わいがある。
「へぇ、サボテンの実って結構いけるのね。」
「ん…サイクリング中のおやつにいいかも。」
「お肌にいいっていうのもプラス評価ですねぇ♪」
「ネイトさぁん、今度見つけたら採ってきてよぉ~。」
「そこッ!好反応を示さない!」
いつの間にかネイトが食べているというサボテンの実を食べている対策委員メンバーにアヤネの鋭いツッコミが刺さる。
その後もしばしアヤネの怒りは続き、
「ぜぇー…ぜぇー…。」
息切れするころ合いになってようやく落ち着くのであった。
「はぁい、アヤネちゃん落ち着いたぁ?」
「ほ、ホシノ先輩…すみません、ヒートアップし過ぎました。」
「アヤネちゃんがネイトさんの食生活を案じているのは重々分かったからもうその辺に…。」
「ん…ネイトさん、立てる?肩貸したほうがいい?」
「す…すまん、シロコ…!足がしびれて動けない…!」
「あはは…正座の文化の無いところご出身でしたものねぇ。」
その後、シロコとノノミの肩を借り椅子に着けたネイト。
他のメンバーも席に着き、
「で、ネイトさんはなんでぇそんな食べ物に無頓着なのぉ?」
「いやぁ、連邦にいたころにはそれこそ食べ物をえり好みしている状況じゃなかったしなぁ。」
ネイトの食生活についての質問タイムとなった。
「核戦争ってやつの後だったんでしょ?食べ物なんてあったの?」
「ないことはない。廃墟漁れば戦前の食料とか結構あったし。」
「そんなの食べて大丈夫だったんですかぁ…?」
「俺の時代の食品、賞味期限なんてなかったからなぁ…。」
「ん…それってすごいけど…健康には悪そう。」
「だからまぁ、野菜育てたり動物狩ったりして食料は確保してたんだ。」
意外に初めて聞くネイトの連邦での生活風景。
そんな知らない世界の話に対策委員会メンバーも興味深そうに聞き入っている。
「うへ~動物もいたんだぁ。どんなのがいたのぉ?」
「放射線で変異してたからなぁ。二つ頭の牛とか鹿とか。」
「わ、わぁ…なんだかすごい光景になってそう…。」
「あとは『マイアラーク』と言ってな、デカい蟹もいた。身は臭いが味が結構いいんだ、これが。」
「ん…蟹は美味しい。そんな大きい奴なら食べてみたい。」
「他はまぁ…『デスクロー』っていうカメレオンを遺伝子改造しまくったクリーチャー。なれると結構楽に狩れていい食料になった。」
「だ、だからトカゲなんかも躊躇なく食べようと…。」
「他に旨かったのは『ヤオグアイ』っていう熊の肉だな。食うとすごい力がわくんだ。」
「熊さんのお肉はまだ私も食べたことないですねぇ。」
キヴォトスでは見られないような生物の数々の話。
が、ネイトは言えなかった。
(この状況でバカでかいハエやゴキブリとかも食ってたとか言ったら…またお説教だな。)
こんなの序の口でもっとヤバいブツを食べていた時期もあったことを。
それはともかく、
「何はともあれここはキヴォトスなんです!ネイトさんにはちゃんと人間らしい食生活を送ってもらいますよ!」
改めてネイトに対して食生活の改善を訴えるアヤネ。
「と言ってもなぁ、どうすればいいんだ?」
「とりあえずレーションばかり食べるのは禁止です!」
「それは賛成ですねぇ。せっかくですのでもっとおいしいものを食べましょうよぉ。」
「美味しいもの、ねぇ。仕方ない、食費が浮くからやってただけだ。食料品店の場所教えてもらえるか?」
「あ、じゃあ安くいっぱい買えるお店教えてあげるわ!」
「ん…私も普段使っているお店、教えてあげる。」
野郎料理ではあるが元から調理自体はまともにできるネイト。
セリカやシロコからアビドス高校周辺の食料品店の情報を聞きPip-Boyに登録していく。
すると、
「後、外食するならここがおすすめ。『柴関ラーメン』。」
「ラーメン?ヌードルか?」
「ん…そう。私もサイクリングの帰りとかでたまに寄ってる。」
ついでにシロコがおすすめの外食先も教えてもらえた。
が、
「え”…。」
なぜかセリカの表情がひきつった。
さらにそこへ、
「うへ~じゃあネイトさんの食生活改善を祈願してぇ皆でそのラーメン屋に行こうよぉ。ネイトさんの奢りでぇ。」
ホシノが柴関ラーメンへラーメンを食べに行くことを提案。
「あっ賛成です~!ネイトさんにもこっちの世界の料理を食べてもらいたいですし~!」
「そうですね。まずはこの世界の普通の料理を知ってもらうところから始めましょう。」
ノノミもアヤネも結構乗り気のようだ。
「ん…ネイトさんは今日この後何か予定ある?」
「まぁ、今日はフリーにする予定だったし構わないが…。」
「じゃあ、行こう。」
「分かった。じゃあ着替えてくるから少し待っててくれ。」
ネイト自身もラーメンに興味があるのか作業服から普段着に着替えるため対策委員会室から出て行った。
「え”…ホントに行くの…?!」
唯一セリカだけが今もってなお表情がひきつっている。
「ん…何か不都合なの、セリカ?」
「い、いやいや全くそんなことないわよ!?」
シロコに不審がられるも何とか普段の勢いでごまかすのであった。
その後、ネイトが作業服から普段着向きの『きれいなフランネルシャツ&ジーンズ』に着替えてくるのを待って、
「じゃあ柴関ラーメンへれっつごぉ~!」
少し早いが一行は柴関ラーメンへ向かうのであった。
場所は変わり
「…そういえば何気にアビドスの市街地をまともに歩くの初めてかも。」
「あっるぇ、そだっけ?」
「カイザーコンストラクションに営業行ったときは結局そのままとんぼ返りだったしな。」
アビドス高校から歩いて少しのアビドス市街地。
ここはまだそれほどまで砂漠化の影響がなく人の往来もそこそこある地域だ。
が、
「…やっぱり異世界だな。ヘイロー持ってない奴で『ヒト』がいない。」
道を歩く者たちはキヴォトス人かそれ以外は二足歩行で人間大の動物にロボットばかり。
逆にその動物たちからヘイローがない自分が奇異の目で見られているくらいだ。
「どうですかぁ、アビドスの市街地は?」
「そうだなぁ。まず建物が崩れてないってのがいいな。」
「って、また連邦にいたころの思考出てますよ?」
「…でも、建物はきれいなのにあちこちに弾痕があるのは連邦よりキヴォトスだと思い知らされるよ。」
確かに建物はきれいだがよくよく見るとまだら模様に修繕の跡が見られる。
銃撃が日常茶飯事のキヴォトス、その痕跡がいたるところで見られた。
「ん…ネイトさんのいた町、ボストンってどんなとこだったの?」
「戦前はキヴォトスみたいな学園都市でな、最先端科学の発祥地だった。」
「うへ~世界が違っても似たような場所があるんだねぇ~。」
「その科学が今アビドスの役に立っているなんてなんだか不思議な縁ですね。」
そんな世間話をしつつ街中を歩いていく一行。
だが、
「………。」
唯一セリカだけいつもの溌剌さが身を潜めダンマリとしている。
「…なぁセリカ。なんでさっきからそんなに静かなんだ?」
「ふぇ!?な、何でもないわよ!」
「そ、そうか…。」
「ん…ついた。」
「え”!?」
と、想像よりも早く目的地に着いた。
「…なんというか前衛的な看板だな。」
見上げるとそこには『柴関ラーメン』という店名と店主であろう傷だらけのかっぽう着と三角巾を纏った柴犬が掲げられた看板があった。
「まぁまぁ、とりあえず中に入っちゃおうよ~、」
「お店の前に集まってるのも迷惑ですしね。」
「それもそうか。んじゃ入るか。」
「あぁちょっと…!」
何やらセリカが引き留めようとするももはや止まらず、
「こんにちは~。」
「ヘイいらっしゃい!」
ネイトが店の引き戸を開けて中に入ってしまった。
中には看板通りの傷跡の多い柴犬の店主がラーメンを調理していた。
「6人なんだけど大丈夫?」
「はい、じゃあテーブル席へどうぞ!」
手早く人数を告げ席に付こうとした、その時だった。
「…ン!?おや、セリカちゃんじゃないか!今日はお友達と一緒かい?」
「「「「「え?」」」」」
「ど、どうも店長…///。」
店主がセリカの姿を見つけ親しげに声をかけてきた。
「セリカちゃんとどういったご関係なんですかぁ?」
「どういう関係ってうちでバイトしてくれてるんだよ。ということは君たちがアビドスの対策委員会の子たちでアンタが噂のネイトさんだな?」
「…あぁ~だぁからここの話題出た後ずっと変なテンションだったんだぁ♪」
そう、何を隠そうこの柴関ラーメンはセリカのバイト先なのである。
さすがにそれが知られると恥ずかしかったのだろう。
「そうかそうか!んじゃあ今日はサービスしちゃわないとな!ささっ、早く席に付いちゃって!」
嬉しそうな店長に促され顔を赤くするセリカを引き連れ一行は席に着く。
「…なんか、ごめんな。」
「謝られると逆に辛いことがあるのよ、ネイトさん…。」
「ん…これは誰も悪くない。」
「まぁまぁ~今日はラーメン食べに来たんだから暗いこと言いっこなしってことでぇ。」
「うふふっ、今度はセリカちゃんがお仕事中に来ちゃいましょうかぁ♪」
「ちょ、ちょっとノノミ先輩…。」
そんなふうにセリカを慰めたりしていると、
「はい、お冷ね!さぁなんにしましょう!」
大将がお冷を運び注文を取りに来てくれた。
「あぁ、おすすめは何かな?」
「そりゃうちの自慢は柴関ラーメンだよ!」
「じゃあそれで。大盛りってできる?」
「大丈夫だよ!他の皆さんは?」
と、一先ず初めてなのでおすすめをチョイスするネイト。
他の面々も各々ラーメンを注文する。
「しかし…ヌードルなんて久々だな。」
とここでもネイトは連邦での思い出を語る。
「連邦にもラーメンってあったんですか?」
「アレをラーメンて言っていいのかな。ダイヤモンドシティっていうコミュニティで『タカハシ』っていうプロテクトロンが『パワーヌードル』っていうのを売ってたんだ。」
「へぇ~意外にちゃんとした料理屋さんもあったんだにぇ~。」
「まぁ当のタカハシが何を言っても『ナニニシマスカ?』しか言わないんで意味が分からずにみんな困ってたな。」
「ん…たぶんそれみんなは英語でそのタカハシさんは日本語だったから伝わらなかったんじゃ?」
「…あぁ、そういうことか…。ちゃんと注文取ろうとしてたんだな、タカハシ…。」
「味はどうだったんですかぁ?」
「連邦だと結構よかったんじゃないかな。ダイアモンドシティの名物だったし。…あいつ、元気にしてるかなぁ。」
「なんだか気になるわね。連邦のラーメンっていうのも。」
そんなかつての連邦の景色をしみじみと語っていると…
「あいよ、柴関ラーメンお待ち!煮卵とチャーシューはサービスだよ!」
大将がラーメンを持ってきてくれた。
「おぉ~…これが…ラーメン…!」
おそらく戦前にさかのぼってもネイトにとっては初のラーメンだ。
興味深そうにしげしげと眺めていると、
「そんな眺めてばかりじゃ麺が伸びちまうよ。旨いうちに食べちゃいな!」
大将がネイトの様子を愉快そうに見ながらも早く食べるよう促す。
「ん…はい、ネイトさん。箸は使える?」
「あぁ、向こうでも使ってたから大丈夫だ。」
「んじゃ~みんなで…。」
『いただきます。』
なので早速割り箸を割ってラーメンに手を付ける一同。
まずは気になるのか、レンゲでスープを口に含むネイト。
「…旨い。こんな複雑で濃厚なスープは初めてだ。」
戦前から今まで味わった事のない深い味に目を見開き感想を述べる。
次に麵を食す。
ホシノ達は慣れているように啜るがネイトは手繰るように麺を口に含み咀嚼。
「…麵も旨い。小麦の味がスープとすごくマッチしている。」
しみじみとそう零すように語るネイトのラーメンの感想に、
「ははッ!初めて食べたラーメンでそう言ってもらえるたぁ、ラーメン屋冥利に尽きるねぇ!」
大将も非常にうれしそうである。
「ん…大将のラーメンはいつ食べてもおいしい。」
「んもぉ~シロコちゃんもこんなお店があるなら教えてくれてもいいのにぃ~。」
「お値段もリーズナブルですしまた食べにきたいですねぇ♪」
「そうですね。たまにみんなで集まって食べに来ましょう!」
「え”…アヤネちゃん、それ本気…!?」
「アッハッハッハッ!セリカちゃんのお友達たちならいつでもうちは大歓迎だよ!」
と、賑やかにラーメンを食べていくネイトたちとそれをにこやかに眺める大将。
「しっかし、ネイトさんってホントにヘイローがないんだなぁ。」
「えぇ、一応外から来たんで。」
「それでいてヘルメット団を叩きのめしちまってんだろ?やるじゃないか。」
「いやぁ、それは皆がいたからできたんで…。」
「何言ってんのよ、勘取り戻すためって言ってこの前はナイフ一本で奴らのアジトに乗り込んでたくせに。」
「しかも、それで一発も撃たせず完全制圧してましたし…。」
「ん…キヴォトスでもあんなことできる人はそうはいない。やり方を教えてほしいくらい。」
「うへ~おじさんもさすがにあんなのやろうともできるとも思わないもんねぇ。」
「いやぁ、アンタやセリカちゃんたちのおかげでこの辺の治安も少し良くなって感謝してるんだよ。」
そう、ヘルメット団はなにもアビドス高校だけを襲っているわけではない。
何分銃を持った武装組織だ。
そこらの店から略奪なども行っていたりもしている。
そんな連中をネイトたちは訓練がてら・物資補給がてらではあるがネイトたちはここ一か月で拠点を潰しまわっている。
少なからずではあるがそれがアビドスの治安を改善していたようだ。
「それになぁ、アンタが来てからセリカちゃんもいい意味で変わったんだよ。それもあんたにゃ感謝したいんだ。」
さらに変化はここでバイトとして働くセリカにもあったようだ。
「ちょ、大将!?」
「変わったってどんな風にですかぁ~?」
「そうだなぁ。それまでは本当に余裕なんてなくただ必要だから働いてるって感じだったけど…。」
「けどぉ?」
「ネイトさんが来たのは一月くらい前だろ?それからは余裕が出たというか…心から笑ってくれるようになったんだよ。」
ネイトがくる以前、対策委員会の面々はそれぞれの方法で借金を返すべく動いていたのは知っての通り。
賞金稼ぎだったり近隣住民からの依頼をこなしたりなどいろいろやってきていた。
そんななかセリカはそれ以外にもバイトをいくつも掛け持ちしていた。
そのバイト先の一つがここ柴関ラーメンである。
かつては300年以上という終わりのないトンネルのような借金地獄が今や終わりが見える状況まで改善された。
それがセリカの心にも余裕を、心からの笑顔を生み出していたのだ。
「ネイトさん、アンタぁすごいよ。俺だってできなかったことをアンタぁこんな短期間でやっちまったんだからなぁ。」
「うぅ~…///。」
そう普段の自分の様子を大将にバラされ顔を真っ赤にするセリカ。
ネイトは特にこれといった反応はないが、
『へぇ~♪』
付き合いの長い対策委員会メンバーはにんまりとセリカを眺めるのであった。
「ネイトさん、セリカちゃんやお友達をよろしく頼むよ。アンタはこの子たちの力になれる『良い大人』だからよ。」
「…それはもう、俺はそのためにここに来たんですから。」
「あっはっはっはっ!こりゃ敵わねぇな!」
こうして終始賑やかに食べ進んでいくネイトたち。
その後、ホシノの提案通りネイトが全員分奢り帰宅の途に就いた。
「いやぁ…初めてのラーメン、旨かったなぁ。」
「でしょ~?だからネイトさんもレーションばっかじゃなくてもっといろんなの食べなきゃだめだよぉ?」
「ただ生きるために食べるなんてつまりませんからね。そこは本当に理解してくださいね。」
「食べることを楽しんでこそ人生ですよぉ~♪美味しいもの、どんどん知っていきましょうねぇ~♪」
「ん…でもネイトさんが作るちゃんとした料理も食べてみたい。」
「ちゃんとってのはひどいな。トカゲ料理も味そのものは良かったんだぞ。」
そんな今後のネイトの食生活について語る一行。
すると、
「ネ、ネイトさん…!」
意を決したようにセリカがネイトを呼び止め、
「どうかしたか?」
「その…た、大将が言ってたことだけど…。」
「あぁ。」
「あ、アタシもその…ネイトさんに感謝してるってことは…ホントだから…!」
耳まで真っ赤にしてネイトへの感謝を伝えるのであった。
「…そっか、どういたしまして。」
ネイトもそんなセリカの告白を浅い笑みを浮かべながら答えるのであった。
「ん…私もネイトさんにはとても感謝している。」
「私もですよ。いつもありがとうございますね、ネイトさん。」
「はい、感謝してもしきれないくらい皆感謝してますからね~♪」
「…私も貴方には感謝してもしきれないくらい感謝してますよ、ネイトさん。」
セリカに続いてか、シロコもアヤネもノノミもホシノもネイトへの感謝を述べるのであった。
「…フフッ、皆もどういたしまして。」
こうして、ネイトのキヴォトスにおける初めての外食は幕を閉じるのであった。
その後、シロコたちから教わった食料品店でちゃんと買い物をし普通の料理をするようになったネイト。
シロコたちもたまにごちそうになるくらいは普通に美味しかったという。
………………それでもたまにトカゲを捉えて帰ってくる彼の姿が目撃されたとかされてなかったとか。