Fallout archive   作:Rockjaw

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今回で『船上のバニーチェイサー』本編の話は一応おしまいです


The Great Rabbit Riot

「それじゃ俺達が出て行ってから少しして出て行ってくれよ。」

 

「承知いたしました。」

 

「ではいってきますね、先生!」

 

「うん、アリスもネイトさんと楽しんできてね。」

 

少しして、水着に着替え終えたネイトとアリスはウォーターパークに出かけていく。

 

アリスはバンドゥタイプの白地にピンク・緑・赤の水玉模様のビキニに薄手のパーカーを着ている。

 

ネイトはというとトランクスタイプのシンプルな水着で上半身はスイムウェアの上にこの船で購入したアロハシャツを重ね着している。

 

二人を見送った後…

 

「…あの…先生。」

 

「どうかしたかい、アカネ?」

 

「私達…そんなに魅力ないでしょうか…?」

 

アカネが心配そうに先生に尋ねる。

 

「えっえぇっと…。」

 

答えに詰まる先生だが…そんなことはない。

 

アカネもカリンも出るところは出ていて引っ込むところは引っ込み身長も高い(アカネでさえネイトより1㎝低いだけ)高校生離れしたプロポーションだ。

 

そんな美少女たちが過激なバニーガールの服を着ているとなると世の男はもう辛抱溜まらんだろう。

 

一番『色々』と小さなネルも間違いなく魅力的である。

 

事実、先生も強靭な理性でいろいろと抑え込んでいる。

 

アカネたちも男性の先生が『我慢』していることは理解しているし、男性故仕方ない事だと理解もしている。

 

…が、ネイトにはそんな気配が一切ない。

 

まるで一切興味がないと言わんばかりに。

 

確かにそういう目で見られる過ぎるとあまりいい気分ではないが…全くないとそれはそれで自信を無くすという複雑な乙女心だ。

 

「気にすんな、アカネ。ダンナにはチビがいるんだ。色目使ってる暇なんかねぇんだろう。」

 

「そっそうだよ、アカネ。今はアリスのことが一番大事なんだよ、ネイトさんには。」

 

ネルのそんな意見に先生も乗っかる。

 

確かにネイトの内心としてはアリスへの親心が非常にウェイトを占めているのも事実だ。

 

が、一番の要因は…何度も言うようだがネイトの実年齢だ。

 

これもまた生徒を相手にするにはむしろ好都合なのだろうが…ネイトが問題に思っていない問題の一つではある。

 

「それならいいのですが…。」

 

「それよりも早くシステムルームへ向かおう。時間もあまりない。」

 

「だな。んじゃ気ぃ引き締めていくぞ、お前ら。」

 

ともあれ、ネルたちも行動開始。

 

白兎の捕縛のためシステムルーム奪取に向かう。

――――――――――

さて、そんな先生とC&Cと別れプールにやってきたネイトとアリス。

 

「行くぞ、アリス。」

 

「はいっ!」

 

アリスはネイトに抱えられ…

 

「それっ!」

 

「わーっ!」

 

少々宙を舞うほど放り上げられ水面に落ちる。

 

昼間なのでPerk『Solar Powered』によって強化されたStrength13あるネイトには小柄なアリスを放り投げるなど容易い。

 

「プハァッ!」

 

「どうだ、アリス?」

 

「アハハッ楽しいです!もう一回お願いします、パパ!」

 

「よし来た。」

 

そんな風に周りに配慮しつつ何度かアリスを放り投げていると…

 

「プハァ!じゃあ今度は…!」

 

「…え?」

 

「アリスがパパにやってあげます!」

 

「ちょおッ!?」

 

アリスがネイトを横腹を持ち…

 

「えぇいッ!!!」

 

「ヌオオオオオオオオオッ!!?」

 

アリスに放り投げられ先ほどの優に数倍長く宙に浮きプールに落下するネイトなのであった。

 

他にも、

 

「では、行ってらっしゃいませー!」

 

「きゃああああー!!!」

 

「初めて乗るがこれは中々…ッ!」

 

アリスもネイトも初体験のウォータースライダーも滑る。

 

「あははっ!グルグルします~!」

 

(これが本当に船の中とは思えないな…!)

 

チューブ状のスライダーをグルグルと回りながら滑っていく二人。

 

これがまた想像以上に長くアリスも大はしゃぎだ。

 

ネイトも連邦ではヌカ・ワールドでジェットコースターは体験したがそれとはまた違ったスリルを味わい…

 

「「わッぷッ!!!」」

 

二人仲良くゴールの水面に着水。

 

「ぷはっ!」

 

「フぅッ!」

 

「パパっパパっ!もう一回、もう一回一緒に滑りましょ!」

 

「分かった。じゃあ今度は別のコースの奴だな。」

 

「はい!アリス、コンプリートを目指しますっ!」

 

すぐさま次のウォータースライダーを滑るべくすぐにプールから上がった。

 

さらに…

 

(アラスカの行軍でスキーはやったことはあるがボード…それもサーフィンは…。)

 

「頑張ってください、パパ―!」

 

アリスにねだられ人工波でサーフィンが体験できる『ウェーブプール』に挑戦することになったネイト。

 

「さぁ、準備はいいですか!?」

 

「…よぉしっ!」

 

「では、どうぞ!」

 

気合十分で飛び出すが…

 

「行くぞぉぼぼばぼぼぼっ!!?

 

「パパーッ!!?」

 

やはりサーフィン初体験はうまくいかずすぐに水の中に飲み込まれていった。

 

今朝がた騒動に巻き込まれこそしたがなんだかんだ二人でバカンスを満喫できている二人。

 

「ふぅ~…。」

 

「遊びましたねぇ~♪」

 

少し小休止ということで二人は一旦水から上がりデッキチェアでくつろいでいる。

 

「パパ、アリスが飲み物買ってきましょうか?」

 

「あぁいや。俺が…。」

 

「パパは休んでてください!」

 

「…そうか。じゃあ、何か冷たいものを頼む。アリスも好きなのを買ってきたらいい。」

 

「は~い。」

 

そんなアリスの気遣いを受け取りネイトは財布を渡しお使いを頼むのであった。

 

「ふぅ~…アビドスとはまた違った日差しが…。」

 

アリスを待つ間、サングラスをかけくつろぐネイトだが…

 

ドオオオオオオォォォォォ…ンッ…!!!

 

「…………。」

 

どこからか小さな爆音と微かな揺れが伝わってきた。

 

(…知らん、何も聞こえなかったし感じなかった。きっと気のせいだ。)

 

そう内心で自分に言い聞かせるも…

 

「失礼します、道を空けてくださいッ!」

 

「危ないですから下の安全が確認できるまでこのフロアにいてください!!!」

 

慌ただしく走っていくオデュッセイアの生徒たちが気のせいではないとネイトを現実に引き戻す。

 

「…全くハルカよりも分別ないんじゃないのか、あの爆弾魔アカネは…。」

 

ハルカもハルカで最近は加減は別にして分別ができるようになってきたとアルから聞いている。

 

対して…秘密作戦だというのに躊躇なく爆発物を使うアカネ。

 

危険度的にはどっこい…いや、ハルカにはアルというブレーキ役(兼ニトロ)がいる分アカネの方が高いだろう。

 

(…関係ない。アリスとの時間の方が大事だ。)

 

何はともあれ確実にあのメンツがやらかしたのだろうが無視を決め込む。

 

「パパー、買ってきましたよ~♪」

 

「あぁ、ありがとう。」

 

ちょうどアリスが飲み物を買ってきてくれたのでそこで頭を切り替えるのであった。

 

その後も休憩をはさみつつ様々なアクティビティを楽しむ二人。

 

「おぉ!昨日の嬢ちゃんじゃないか!」

 

「あ、こんにちは!」

 

「今日は父ちゃんと一緒かい!?」

 

「どうも、娘が昨日世話になったようで…。」

 

「なぁに、あんな気風のいい賭けっぷりはなかなか見れねぇから俺らもすっかり惚れこんじまったよ!」

 

途中で昨日プレイラウンジでアリスと一緒に丁半博打をやっていた博徒たちと出会い…

 

「俺達バスケやるんだけどよ、頭数足りねぇからやってくかい!?」

 

「いいんですか!?」

 

「どうだい、アンタも!相当鍛えこんでるみたいだしやれるクチだろ?!」

 

「それじゃお言葉に甘えて。」

 

近くにあったバスケットコートで3on3のバスケに興じたり、

 

「アリス!」

 

「はいっ!」

 

「止めろぉっ!」

 

「パパっ!」

 

「任せろッ!」

 

「だぁッ!また決められたぁッ!!!」

 

「ハハッさっすが親子!息がぴったりだ!」

 

アリスとネイトの親子のコンビネーションで相手を圧倒し、

 

「全くかなわねぇな!ほれ、勝ったご褒美だ!取っときな!」

 

「こんなにいいんですか?」

 

「気にすんな、嬢ちゃん!楽しませてくれた礼よ!」

 

「ありがとうございます!」

 

勝利のご褒美にたっぷりのお菓子を貰うアリスなのであった。

 

ネイトもネイトで…

 

「お、クレー射撃か。」

 

「クレー射撃?」

 

「掛け声でクレーを飛ばしてそれを撃つのさ。」

 

「パパっ!やってみてください!」

 

「…やってみるか。」

 

催し物で行われていたクレー射撃に参加し、

 

「…はっ!」

 

ドオンッ!!!

 

パリン!

 

『『『『おぉ~…!』』』』

 

「これで20枚目だと?!」

 

「凄い!凄いです、パパ!」

 

「なかなか楽しいもんだな。」

 

貸し出された上下二連式散弾銃で他の参加者を寄せ付けない成績と叩き出したりと昨日に引き続きバカンスを満喫。

 

「よし…はッ!」

 

さらに記録を伸ばそうとした、その時…

 

《なんとなんとっ!!!こちらのアスナ様がわずか10回目でAランクを獲得!》

 

「いぃッ!?」

 

ドオンッ!!!

 

ふいに鳴り響く大音響のアナウンス、予期していなかった声にネイトの照準がずれてしまった。

 

「な、何だって…!?」

 

驚く周りのギャラリーと同じように近くにあったモニターを見てみると…

 

《おめでとうございます!この勢いで一気にSランク、VIPとなるのでしょうか?!!》

 

でかでかと映し出される大喜びする蒼いバニー服姿のアスナとジャックポットを出しているスロットマシーン。

 

(10回!?全部ジャックポット出したのか!?)

 

たった10回のスロットでAランクに達するにはそれしかない。

 

そんな芸当、昨晩の自分にも不可能だ。

 

「わぁーアスナ先輩凄いです!」

 

「…ありがとう、楽しめたよ。」

 

係員に銃を返しアリスの手を引いてそそくさと退散するネイト。

 

何度も言おう、C&Cは極秘の潜入作戦でこの船に侵入している。

 

だというのにアスナは…

 

(これは騒動がさらに大きく…!)

 

そんな彼の予測を裏付けるように…船内から夥しい数の銃声が聞こえてきた。

 

「おっぱじめやがった…!」

 

重ね重ね言おう、秘密の潜入作戦なのである。

 

「………アリス、ランチはここのレストランで食べようか。」

 

「はい!」

 

このまま船内に戻れば巻き込まれる。

 

幸い、時間もちょうどよく最上階デッキのここにもレストランはあるので時間を潰すことにした。

 

「アリスは何を食べたい?」

 

「パパが食べたいお店で大丈夫です。」

 

とはいってもやはり選択肢はかなり多いので色々見て回りながら決めることに。

 

「俺がかぁ…。だったら朝は軽く済ませたから昼はガッツ…。」

 

ならばとネイトが食事する店を決めようとしたその時…

 

「あっ旦那様っ!!!」

 

「え?」

 

アスナの声が聞こえそちらを見ると…

 

「見~っけっ!!!」

 

 

自身よりいい体格(ネイトよりも身長が高い)とプレイメイトも真っ青な抜群のスタイルの少女がマリンブルーのバニー服を纏い地面に届くほどのブロンドの髪をたなびかせこちらに飛び掛かってきていた。

 

その光景を見て…

 

(あ、ドッグミートがはしゃいで飛び掛かってきたときこんな感…。)

 

数十年前の連邦で初めてできた相棒の思い出がよみがえり…

 

「ぶへぇッ!!!?」

 

「パパーッ!!?」

 

顔を覆う柔らかい感触など一瞬で吹っ飛ぶ勢いで二人ともプールに堕ちるのであった。

――――――――――

「ご注文をお伺いします。」

 

「あー…Tボーンステーキ。1ポンド、焼き方はミディアムで。あとガーリックバターライス。飲み物はバニラコーク。」

 

「アリスはピザセットをお願いします!ジュースはクリームソーダがいいです!」

 

「私はハンバーガーセット!飲み物はシェイクで!」

 

「畏まりました、少々お待ちください。」

 

水から上がった後、結局アスナも伴いネイトには懐かしさを覚えるダイナーをイメージしたレストランに入った三人。

 

「旦那様、すっごく食べるんだね!」

 

「朝からいろいろありすぎたからな…。こうなりゃやけ食いだ…。」

 

1ポンド、500g近い重量のステーキを自棄で頼んだネイト。

 

が、若いころは1ポンドある『リブアイ・ステーキ』を怪我からの回復のために数枚ペロッと完食できるほどの大食漢だった。

 

今更、1ポンドのステーキなど恐れるに足らない。

 

「アスナ先輩、シェイク美味しいですか?」

 

「一口飲んでみる~、アリスちゃん?」

 

「じゃあ、アリスのと交換しましょう!」

 

飲み物が届きアリスとシェアし盛り上がっているアスナを見て、

 

「…アスナはいいのか?」

 

「いいのって何がぁ?」

 

「ほら、逃げ出したっていうミレニアムの生徒を探さなくて…というか、先生たちと行動しなくて?」

 

今更ながらそんなことを尋ねるネイト。

 

見た時から遊撃向きとは思っていたがあまりにもフリーダム過ぎる。

 

それに対し、

 

「大丈夫、今は旦那様たちと一緒にいたほうが皆のためになる気がしているから!」

 

元気にネイト達と行動するメリットをふんわりした意見で答えるアスナ。

 

「俺達と一緒に行動したほうが?」

 

「そう!それに旦那様とアリスちゃんと一緒にいると私も幸せに思えるんだぁ~♪」

 

「幸せなのですか、アスナ先輩?」

 

「うん!だって二人ともすっごく幸せそうだもん!そんな二人のそばにいると私も幸せになったように思えるの~♬」

 

「よく…分からないな。」

 

相変わらずふわふわした考えの彼女にネイトも首をかしげるが…

 

「実はね、旦那様と戦ってからのリーダーったらとっても嬉しそうだもん!」

 

「ネルが?」

 

自分ではなくネルのことを今度は挙げてきた。

 

出会ってからこの方度々顔を合わせればリベンジのお誘いばかり。

 

割とさっぱりしているので憎まれてはいないだろうが嬉しいとは?

 

「リーダー、今までずっとこう…退屈そうだったんだよ。任務に行って暴れてもなんというか…満足できないっていうのかな?」

 

「あまりミッションが成功しないのですか?」

 

「ううん、任務は成功してるよ。けど…『やり甲斐』というのかな、そう言うのが感じられなかったんじゃないかな?リーダーって強いし。」

 

確かにネルは強い。

 

以前、アビドスまで出向いて勝負を仕掛けてきた際はシロコと便利屋68の面々が受けて立ち痛み分けに持っていくほどには。

 

そんな彼女の元に現れたのが…ネイトだ。

 

「リーダーにも初めてだったんだよ。銃も使わないで立ち向かってきて勝負に勝ちきれなかった人なんて。」

 

「そうです!パパはとっても強いんです!」

 

「そうだね。あの時からリーダー、とても楽しそうなんだ。多分、ようやく一緒のステージで立ってくれる人を見つけられたからじゃないかな?」

 

著しい強さは…孤独の生みの親だ。

 

ネルも知らず知らずのうちにその孤独に渇きを覚えていたのだろう。

 

いかに付き合いの長いアスナにもその渇きだけは癒せない。

 

そんな彼女の元に鮮烈な戦いとともに現れたのがネイトだ。

 

「リーダー、金属パイプ持ってるでしょ?あれって旦那様に憧れてるんだって。」

 

「憧れ?」

 

「旦那様みたいに強くなりたい、もっと一緒の光景を見てみたいって。リーダーに言うと真っ赤になって怒っちゃうんだけどね♪」

 

「なんだかチビメイド先輩、可愛いですね♪」

 

「あはは、そうだねぇ♪もっと素直になっちゃえばいいのに♬」

 

ネイトと出会い、ネルは新たに歩むことができた。

 

出会いこそ激しく痛みを伴うものだった。

 

それでも…確かにネルは孤独の渇きは癒された。

 

「だから、アスナも大好きなリーダーが大好きな旦那様が大好きなんだぁ♪アリスちゃんのパパの旦那様ってとっても素敵だもん♬」

 

「素敵…か。」

 

屈託のない笑顔でネイトに『大好き』と伝えるアスナ。

 

「ねぇねぇアリスちゃん!たまに旦那様をアスナに貸してくれない?」

 

「それはダメです!パパはアリスのパパなんですから!」

 

「えぇ~ずる~い!すぐに返すからぁ、ねぇいいでしょ~?」

 

アリスにそう駄々をこねるアスナ。

 

年上で身体の大きさは違うのにこれではアスナが妹のようだ。

 

「おいおい、他人をペットみたいに貸し借りするのは止めてくれよ…。」

 

「えぇ~旦那様もアスナと遊んでくれないの~?」

 

「アリスと一緒でたまにだったらいいですけどアスナ先輩が独り占めするのはダメです!」

 

「いいのっ!?じゃあ、アリスちゃんと三人で今度遊ぼう!」

 

「それならアリスはいいですよ♪」

 

「やったー!」

 

「アリス…。」

 

そして独りでにアスナも一緒に遊びに行くことが決まってしまった。

 

「…まぁ、いいか。」

 

娘がいいと言っているのだ。

 

親の自分がとやかく言うのは野暮という物だろう。

 

これでアリスの交友関係が広がるのならそれもまた彼女にいい影響を齎すかもしれない。

 

「お待たせいたしました。」

 

そんな風に賑やかに話していると各々注文した料理が到着。

 

「さぁ、何はともあれ食べよう。」

 

「いただきま~す!」

 

「美味しそ―!いただきま~す!」

 

空腹だったため、一旦お喋りを切り上げ三人は料理に手を付けて行く。

 

「パパ、ステーキ美味しいですか?」

 

「うん、焼き方もばっちりだしいい肉だ。少しいるか?」

 

「じゃあお返しにアリスのピザを少し上げます♪」

 

「私もポテトあげるからステーキちょうだぁい、旦那様~♪」

 

そんな風にシェアしたりしながら賑やかに食事していると…

 

「レディースエンドジェントルメーン!」

 

「ん?」

 

突如店内に鳴り響くアナウンス。

 

見るとプールのど真ん中にあるステージでMCが立っている。

 

「本日もゴールデンフリース号名物のペアダンスコンテストの時間がやってまいりました!」

 

「流石豪華客船、催し物も派手だなぁ。」

 

「ダンスショーですか、初めて見ます。」

 

「演出も派手だね!まるでライブみたい!」

 

花火に火炎放射と浮上に派手な演出に観客のボルテージも上がる。

 

「そして、今イベントは飛込参加OK!優勝したラッキーなペアにはこちらッ!無条件でワンランクアップする『SPECIALチケット』!こちらを進呈します!」

 

「へぇ、商品も豪華なことで。」

 

と、この船に乗っている客なら誰しも喉から手が出るほど欲しい代物が賞品と聞きつつネイトはステーキを頬張る。

 

特に今の自分には必要ないからだ。

 

「では、最初のチャレンジャー!我こそはという方、いませんか?!」

 

が、MCが観客に参加を求めたその時…

 

「はいは~いっ!!!私出た~い!!!」

 

「あ、アスナッ!?」

 

「旦那様、一緒に踊って!」

 

これだけ人のいる会場だというのに非常に通る声でアスナが名乗りを上げた。

 

会場の視線が一斉に三人がいるテーブルに注がれる。

 

「おい、ダメだって!ダメダメダメ…!」

 

無論、いきなりのことにネイトも拒否するが…

 

「ダメだよ、ダメダメダメ!アリスちゃんと一緒なら旦那様借りてもいいって今言ってくれたじゃん!」

 

「さっきの今でか!?」

 

「私、また旦那様とダンスしたいの♪優勝したいの♪あのチケットが欲しいの♬」

 

先程の約束を持ち出しなんとしてもコンテストに出たいと言ってきかない。

 

「って言うかまたアリスに…!」

 

正直あまり目立つのは好きではないネイト。

 

アリスはOKしないと思い彼女を見るが…

 

「…………!」

 

「うぐッ…!」

 

期待の籠ったキラキラした眼差しでネイトを見つめるアリス。

 

逃げ道は…完全に封じられた。

 

「…分かったよ、優勝できなくても文句言うなよ…。」

 

「やったー!」

 

「では、最初のチャレンジャー登場です!皆さん、盛大な拍手を!」

 

そう断り、ネイトとアスナは席を立ち拍手に見送られステージへと上がった。

 

「それではチャレンジャーをご紹介しましょう!お嬢さん、お名前は?」

 

「ミレニアムサイエンススクール三年生っ一ノ瀬アスナで~す!」

 

「では、お相手さんは?」

 

「あぁ~…ナサニエル・マーティン。彼女に誘われて参加した。」

 

「踊られるダンスは何ですか!?」

 

「アスナ、この前踊った系統のダンスでいいか?」

 

「うん、あのダンス大好き!」

 

「じゃあ、ツイストとタップダンスを組み合わせたもので。」

 

「分かりました!ばっちりな曲を用意しましょう!では、優勝目指して張り切ってどうぞ!」

 

アスナは履いていたハイヒールを脱ぎネイトもサンダルのバンドをきつく締め直す。

 

「んじゃ…行くぞ。」

 

「うん!」

 

やるからには目指すのは優勝だ。

 

音楽が始まり二人はダンスを始めた。

 

結果は…

 

「優勝はアスナ・ナサニエルペアですッ!!!」

 

「いぇぇえええええい!」

 

危なげなくネイトとアスナのペアの優勝だった。

 

以前、即興とはいえペアで見事なダンスを披露。

 

元より高い身体能力を誇るアスナに体の動かし方には一家言あるネイト。

 

アスナもネイトのダンスにしっかり付いて行きペアダンスをやり遂げた。

 

元より一般参加型のイベント…初っ端のこのペアのダンスに参加者の心は圧し折れた。

 

「それでは賞品のランクアップ『SPECIALチケット』を進呈します!」

 

「わーい、ありがとう!」

 

アスナとネイトは賞品のSPECIALチケットを受け取る。

 

その時だ。

 

「退いてッ退いてください!!!」

 

ステージの周りをオデュッセイアの生徒が取り囲み、

 

「そこのバニー服の生徒!手を挙げて膝を付けっ!!!」

 

アスナに向け銃を向ける。

 

(先生たちが捕まったのか…!)

 

アスナの存在がばれたということは…他のメンバーは捕縛されてしまったのだろう。

 

つまりそれは…標的の生徒が見つかったということだ。

 

ミレニアム生ならネルたちの存在を知っていてもおかしくない。

 

いかに追われる身とはいえその生徒は正当な手段でこの船に乗り込んでいる。

 

不法侵入したネルたちが捕まえられるのは自明の理と言える。

 

ネイトも急いで離れる。

 

だが…

 

「あぁちょっと待って!」

 

アスナはそう言い…

 

「じゃーん!AランクチケットとSPECIALチケットだよ!」

 

『~ッ!!?』

 

どこからか先ほど獲得したAランクチケットとSPECIALチケットを掲げると生徒たちが驚愕する。

 

無条件でランクを上げるSPECIALチケット、しかもそれの保有者がAランクとなると…

 

「じ、銃を下ろせ!SランクのVIPだっ!!!」

 

『えええええええッ!??!!』

 

この船における最高ランク保有者のSランクとなるのだ。

 

ゴールデンフリース号におけるSランクとは…まさに他学区でいうところの『生徒会長』に匹敵する。

 

…いや、それ以上かもしれない。

 

なにせ、この船の校則をすべて無視できるまさに特権階級なのだ。

 

「もっ申し訳ございません!Sランクをお持ちのお客様とは知らず…!」

 

「大丈夫だよ!」

 

先ほどまで追われる身だったのが一転、この船の頂点となったアスナ。

 

「ねぇねぇ、あなた達背が小っちゃくてスカジャン着てる子見なかった?」

 

「は、はッ!先ほどプレイラウンジで騒ぎを起こし密航者ということで捕縛していますが…!」

 

「じゃあ、その人の所に連れてってもらえる?」

 

「か、畏まりました!では、アスナ様こちらへ!」

 

ネルの現在の状況を確認し彼女たちの元へ向かうことにする。

 

「じゃあね、旦那様!私もう行くからまた今度遊ぼうね♪」

 

「…あぁ行って来い。」

 

ネイトもそんな彼女を見送る。

 

「あ、あのこちら…。」

 

「あぁどうも。」

 

ネイトも賞品のSPECIALチケットを受け取りアリスのいる席に戻る。

 

「パパ、おめでとうございます!」

 

「ありがとう、アリス。」

 

色々あったが娘の前でカッコいいところを見せられたのでネイトも満足げだ。

 

さらに…

 

「なんやかんや…俺もSランクかぁ…。」

 

アスナに引き続きネイトも流れでSランクのVIPに到達できた。

 

(アスナ…彼女には幸運の女神の加護でもついているのか…?)

 

僅か10回プレイしてAランクに到達しその少しあとでSランクにも到達。

 

しかも、あのままプレイラウンジでゲームをしていたのならば即刻捕縛されていたはずのところをネイトに会うため脱出しこの時間まで逃げのびた。

 

強運・豪運…などという段階の話ではない。

 

(いや…まるで本能的に最善手を引き寄せる因果の力が働いているのか…?)

 

ネイトですらそんなことを想わせる彼女の神秘的力。

 

「いやはや…全く飽きない世界だよ、ここは。」

 

「どうかしましたか、パパ?」

 

「いいや。」

 

そう言い、残りの食事を楽しもうとするネイトだが…

 

「…パパ。」

 

「ん?」

 

「先生やチビメイド先輩たちは…ミレニアムのためにここにいるんですよね?」

 

先程と打って変わって心配そうな表情を浮かべそう尋ねるアリス。

 

「…そうだな。」

 

「もし、その生徒が捕まえられなかったら…。」

 

時間はもう昼を過ぎている。

 

試算の債務化が持続して行われているとも限らないが…猶予は少ないだろう。

 

「…アリス、パパとこうして過ごせてとても楽しいです。でも…。」

 

「でも?」

 

「モモイやミドリにユズ…いいえ、皆のいるミレニアムが無くなっちゃうのは…悲しいです…。」

 

ネイトをとても大切に思っているようにミレニアムも…彼女にとって重要な場所だ。

 

その場所が無くなるということは…

 

「…どうしたい、アリス?」

 

「え…?」

 

「自分のやりたいことを言ってみてくれ。」

 

そんな心配そうな表情を浮かべるアリスにネイトは優しく問うた。

 

「いいの…ですか?」

 

「なぁに、旅行はまだ楽しめるしアスナのおかげでSランクにもなれた。借りを返すくらい働いてもいいと思ってる。それに…。」

 

「それに…?」

 

「…誰かの役に立ちたいっていう子供の願いを聞くのも親の務めだ。」

 

そんな背中を押す父の言葉を受け…

 

「…でしたらっアリスはネル先輩たちのお手伝いがしたいです!」

 

アリスは力強くそう答えた。

 

「…よし、じゃあ食い終わったら一天号に戻るぞ。」

 

「一天号にですか?」

 

「本当は帰った時に渡すつもりだったんだが…。」

――――――――――――――――

 

―――――――――

 

―――

しばし後…

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁーーー!!?何でなんでなんでーーー!!?」

 

「待てや、ゴルァあああああーッ!!!」

 

アスナの特権によって解放されたネルと先生一行。

 

施設破壊の被害額さえ清算されれば…大暴れしても構わないとお墨付きをもらいC&C全員で白兎…いや『黒崎コユキ』を捉えようと襲い掛かる。

 

「ヒィッ!嫌です、待ちません!!!」

 

「良いね良いねぇ!!!楽しくなってきたじゃねぇか!!!さぁなけ、叫べ、わめけっ!!!」

 

相当フラストレーションがたまっていたのだろう。

 

悪役のような…というより完全に悪役のセリフを吐きツイン・ドラゴンと金属パイプを振り回しコユキを追いかけるネル。

 

「お前が泣こうとあの会計が泣こうとッ!!!最後に笑うのはあたしだけだぁッ!!!クハハハハハっ!!!」

 

…完全にコンバットハイである。

 

だが、

 

「しかもオメェ、よりにもよってダンナの金まで狙いやがって!!!ミレニアムを本当の意味で更地にする気かぁッ!!!」

 

それ以上にコユキが先ほど言い放った言葉にネルのボルテージは上がっていた。

 

コユキの思想としてはこうだ。

 

『お金が無くなったらどこかから貰ってくればいい』

『ミレニアムの資産が無くなっても他の学校がある』

『お金はもともと巡るもので寝かせているのはもったいない』

『寝かせておくのなら自分が勝手に使ってもいい』

 

…身勝手極まりない理論にこれを聞いたネルも先生も頭を抱えた。

 

が、問題はこの後。

 

「それにもう次のお金の入手先は決めてるんですよ。」

 

「はぁ?」

 

「大丈夫ですって!使ったミレニアムの資産も利子付けて返却できますから!」

 

そんなことを言い放つコユキ。

 

ミレニアムは三大校の一角、そんな学校の資産を一発で返却できるような場所はあるのか?

 

「…一体どこに目星付けたってんだよ、オメェ?」

 

ネルは視線を鋭くし尋ねるが…

 

「知ってます?この船には資産6000億越えの超お金持ち企業のW.G.T.C.の社長さんが乗ってるんですよ?」

 

「なぁッ!?」

 

「アァッ?」

 

その返答に先生は言葉を失いネルの片眉が吊り上がった。

 

「カイザーを丸ごとぶっ潰した会社ってことはなぁ!!!単純な軍事力ならウチ越えてるってことなんだよッ!!!」

 

「そ、そんなの知るわけないじゃないですかぁー!!!」

 

「テメェは本気でミレニアムをぶっ潰すつもりだって事はよぉ~く分かった!!!ただ捕まえるだけじゃ物足らねぇ、ぎったぎたにしてやる!!!」

 

「ひぃやああああああああああーーー!!?」

 

ミレニアムを護るために結成されたC&C。

 

その長であるネル、粗暴ではあるが…ミレニアムを愛する気持ちはとても強い。

 

そんな彼女の前でミレニアムの滅亡の序曲を奏でようとしたコユキ。

 

ネルが激昂するのも無理はない。

 

「うぅ…!わ、私がこのまま終わると思ったら大間違いなんだから!!!」

 

それでもコユキは逃げ続ける。

 

見つけた生徒に金を握らせたりして対ネルの障害としながら。

 

なお、その障害は障子紙以下なのだが。

 

「あそこまでたどり着けさえすれば…!そしたら私は自由に…!」

 

ミレニアムからの解放を求めコユキは歩を進める。

 

「くそっあの野郎どこに…!」

 

ネルはそのまま屋上テラスまで上がってきた。

 

他のC&Cメンバーも同様だ。

 

「おかしいですね…。逃げ道は殆ど潰してここに来るように誘導を…!」

 

アカネが不思議そうに呟く。

 

ネルとコユキの追いかけっこの途中、アカネは先回りしコユキの逃走経路を爆破し行動を制限していた。

 

被害額を考えるととんでもないことになりそうだがお墨付きを得た彼女を止められる者はいない。

 

それでも…今ここにコユキの姿はない。

 

すると…

 

「…あ、リーダー!あそこっ!!!」

 

アスナが何かを見つけ空を指さす。

 

その先には…一機の脱出用個人ドローンが飛行していた。

 

「あの子兎っ脱出ドローンでッ!!!」

 

「リーダー、私に任せて。」

 

だが、まだそこまでの距離はない。

 

撃ち落とそうとカリンが『ホークアイ』を構える。

 

この距離ならば外す方が難しいが…

 

「…ッ!待って、カリン!」

 

「ッどうしたの、先生?」

 

「邪魔すんな、奴を逃がすと…!」

 

先生が何かに気付き待ったをかける。

 

ネルが異を唱えると…

 

「今撃ったらだめだ!!!大爆発が起こるよ!」

 

「なぁッ!??」

 

「…ッ!この匂いはガスッ!?」

 

先生に続き爆破のプロフェッショナルのアカネも気付く。

 

鼻を引く突かせると…確かにガス臭い。

 

見ると…設営されたステージや店のコンロからガスが噴出している。

 

《にははははッ!!!残念でしたぁー!!!》

 

「コユキ、テメェッ!!!」

 

今度は近くにあったスピーカーからコユキの声が聞こえてきた。

 

《そう簡単に捕まる私じゃないですよぉーだっ!!!さっきハッキングを仕掛けて屋上テラス一帯のガスをどんどん噴き出させていますからね!!!》

 

「なんてことを…!」

 

《安心してください!3分経てば勝手に止まりますから!でも、その間に私を撃ち落とそうとカリン先輩が撃ったらどうなるか!》

 

「クッ…!」

 

《先輩たちはそこで見ててくださぁーい!私、黒崎コユキは今度こそミレニアムから自由になって見せまぁーすっ!!!》

 

「コユキ、テメェぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

とんでもない方法で自分たちの動きを封じたコユキ。

 

煽りまくる彼女に激昂するネルだが…打つ手が無…

 

《こちら、アリス!先生、聞こえてますか!?》

 

「あ、アリスッ!?」

 

突如、先生のインカムにアリスからの通信が入る。

 

「チビ、今は遊んでる暇は…!」

 

《あのドローンを撃ち落とせばいいのですか!?》

 

アリスはネルの注意を無視し先生に尋ねる。

 

「そ、そうだけど駄目だッ!光の剣なんか使ったら…!」

 

確かにアリスならコユキが操るドローンを撃ち落とせるだろう。

 

だが…今この場でそんな大火力の兵器を撃とうものなら…

 

だが、

 

《大丈夫です、先生!アリスは『隠し装備』を入手しました!》

 

「か、隠し装備!?」

 

心配ご無用と言わんばかりにアリスは返信する。

 

そして…

 

「あ、見て!あそこにアリスちゃんがっ!」

 

またアスナが指さしたのは…自分たちがいる場所よりもさらに上。

 

艦橋の屋根の上に立つアリスの姿がそこにあった。

 

そして…その手に持つものに全員が驚愕する。

 

「ゆ…弓…ッ!?」

 

そう、弓だ。

 

唯一変わったところがあるとするなら…

 

「な、なんて馬鹿でけぇもん構えてやがる…!?」

 

小柄なアリスと比較して…さらに巨大というところか。

 

「ターゲット捕捉…。」

 

アリスはしっかりと立ちその弓を構える。

 

長さ1m80㎝、材質は高張力合金鋼と炭化チタンを組み合わせた複合材質。

 

そこに滑車やカムに照準器を取り付けたコンパウンドボウだ。

 

弦も耐衝撃ファイバーをより合わせた強靭な糸を用いている。

 

重量40kg、引分に要する力は…およそ500kg。

 

並のキヴォトス人ではまず扱えない重さだ。

 

ノノミですら…弓を固定して両手を使い全力を出してようやく少し引っ張れたと言えばその扱いの難しさが分かるだろう。

 

まさにキヴォトス人であっても扱いきれないと言い切れるコンパウンドボウ、その名も…

 

「任せてください!この『嵐の弓:ガンマレイバースト』で先生たちをお助けします!」

 

超新星スーパーノヴァから放たれる宇宙最強の光線の名を冠した『対装甲兵器用超長距離射的コンパウンドボウ』である。

 

そんなバカと冗談が総動員の化け物弓を…

 

「すぅぅぅ…。」

 

ノノミ以上のパワーを誇るアリスは矢を番え容易に弦を引き絞る。

 

弓に合わせて矢も特注仕様、矢羽根にはケブラー、軸にはケテル装甲材、鏃にはタングステン鋼を使用。

 

その威力は側面からであればクルセイダーを串刺しにできるほど。

 

(風向き…右から15m…距離450m…高度…50m…。)

 

自身の優れた感覚により照準に必要なデータを取得し計算。

 

そして…

 

「悪を打ち砕く正義の一撃…!」

 

照準が…完璧に定まった。

 

「穿て、蒼穹の果てまでも!!!」

 

次の瞬間、

 

ズバァンッ!!!!

 

「クゥッ!?なんて音…!?」

 

「あれが本当に弓矢の出す音かよ…!?」

 

離れていた先生たちの耳すら劈く発射音、カリンの『ホークアイ』の銃声にも負けていないだろう。

 

放たれた矢も高速の飛翔体が発する風切り音を伴い飛翔し…

 

ドォン!

 

「当たったッ!?」

 

「な、なんて威力と精度ですか…!?」

 

少し間を置き空を飛ぶドローンに命中、爆散した。

 

載っていたであろうコユキはそのまま海面に落下する

 

《ターゲット、撃墜しましたっ!》

 

「すごいすっごーい!!!さっすがアリスちゃん!!!」

 

「よくやったぞ、チビっ!!!あとで頭撫で繰り回してやる!!!」

 

銃が使えないこの状況でまさかの弓による長距離狙撃を成功させたアリス。

 

アスナとネルが称賛の声を上げる。

 

だが…

 

《あ、あれ?ドローンの反応が…?!》

 

「…え?」

 

スピーカーからは相変わらずコユキの声が聞こえてきた。

 

それも海面に落ちたにしては嫌に冷静ではないか。

 

「…まさかッ!?」

 

嫌な予感がしてカリンがスコープでコユキの姿を確認すると…

 

「り、リーダー!!!アレはコユキじゃない!!!コユキと同じ格好をしたマネキンだ」

 

「んだとぉっ!?」

 

「お、囮だったのか…!?」

 

水面に浮かんでいるのはただのマネキン。

 

「じゃあ本物はどこに…!」

 

つまり、コユキはまだ船内にいる。

 

「探せっ、あの白兎嘗めやがって!!!」

 

その時、

 

《あぁーこちらネイト。応答願うどうぞ。》

 

アリスに続きネイトからの通信が入る。

 

「ネイトさん、どうかしましたか!?」

 

《一つ聞きたい。お前たちが追っているのは…『黒崎コユキ』という桃色の髪の奴か?》

 

「なぁッ!?知ってたのか、アンタっ!!?」

 

知らないと言っていたネイトから飛び出したコユキの名前にネルは知らないふりをしていたと思い食って掛かる。

 

《がなるな、ネル。俺だって今朝あったばかりだし名前教えてもらってなかったんだからな。》

 

「ちっ!まぁいい、ダンナもソイツ探して…!」

 

そう言い、ネルがネイトに救援を求めると…

 

《ところで諸君、兎狩りの方法を知ってるか?》

 

「おい、今そんなのどうだって…!」

 

突然の質問をネルは無視しようとするが、

 

「なになに、どうするの?」

 

アスナが興味を持ったか尋ねてくれた。

 

《『巻狩り』と言ってな、追い立てる役と仕留める役に別れた複数人の連携作業だ。》

 

「それが一体どういう関係なのですか、旦那様?」

 

《あるだろ?他人の金を躊躇もなく使うようなやつが使いそうな脱出手段がもう一つ。》

 

ネイトのその言葉に…

 

『…………あッ!』

 

全員、あるものが思い浮かんだ。

 

《アスナには借りがある。俺が獲物を抱えて帰ってくるのを待っててくれ。》

―――――――――――――――――――

 

――――――――――

 

―――

「ま、まさかドローンが撃ち落とされるなんて…!」

 

予想外だったがまんまとC&Cの裏をかくことに成功したコユキ。

 

彼女が向かっているのは…

 

「でも、もうここまでくれば…!って、あったぁ!」

 

艦首のヘリポートだ。

 

そこには…あれが鎮座している。

 

「いやぁ、さすがはW.G.T.C.の社長!移動にもヘリを使うなんて豪勢ですねぇ♪」

 

そう、ネイトとアリスがゴールデンフリース号にやってきたときに乗ってきたベルチバード『一天号』だ。

 

「よぉし、さっそく乗り込んでこんな船からおさらばしますか!」

 

いかにC&Cでも他人のヘリ、しかもあれほどまで恐れているW.G.T.C.所属のヘリを撃ち落としはしないだろう。

 

「流石に操縦ハッチはしまってるだろうから後部ハッチから…!」

 

意気揚々と乗り込もうとハッチを開けたコユキ。

 

が、

 

「…へ?」

 

その瞬間、彼女は固まる。

 

なぜなら…すでに先客がいたのだ。

 

それも…

 

「不審者発見。識別名『白兎』を捕捉しました。」

 

「なっなんですか、このロボットはぁぁぁ!!?」

 

両腕から明らかにヤバそうな刃物を突き出させた戦闘ロボット『アサルトロン』だ。

 

その正体をコユキは知らないが見るからに戦闘ロボットの登場に…

 

「あっあぁの私怪しいものじゃ!!!」

 

慌てて距離をとり弁明するコユキ。

 

実はコユキ…強さでいうとキヴォトス人換算だと最低ランク。

 

せいぜい中学生程度の戦闘能力しかない。

 

そんな自分がこんなロボットに勝てるわけもないと即座に理解した。

 

さらに…

 

「よぉ。コユキ。俺の機体に何か用か?」

 

「ひっ!?」

 

背後から声を掛けられ振り向くと…

 

「ネッネイト・・・さん…!?」

 

そこには水着にアロハシャツ姿な上…肩にオールを担いだネイトがいた。

 

「お前さぁ…ひどいよ。」

 

「ひ、酷いって…!?」

 

「なんでウチの会社の金を狙っちゃうの?」

 

「ギクッ!」

 

「悲しいじゃん。せっかくこうやって知り合ったのにさ。」

 

既にコユキがネイトの資産を狙っていたことは先生から聞かされている。

 

嫌な予感が現実のものになったとネイトは頭を抱えていた。

 

「それに俺のヘリまで盗もうとするなんて…。」

 

「あぁ、あのこれには訳が…!」

 

徐々に徐々に間合いを詰めてくるネイトにコユキは完全に足がすくむ。

 

何せ…相手はカイザーコーポレーションを打ち破った会社の社長。

 

その強さも…調べた記事に乗っていた

 

自分の手元には愛銃のM60機関銃『マリ・ガン』があるがそんなもの気休めにしかならない。

 

「せっかくお前の事怪しいと思ってたけどネルたちには黙ってたのによぉ…!」

 

「え…!?」

 

「俺達に何もしなかったら関係ないから見逃してやるつもりだったのになぁ…。なのに…なんでこんな真似すんの?」

 

そう虚しそうな表情をしつつなおもコユキとの間合いを詰め、

 

「お前のこと見逃すわけにはいかないよ…。」

 

約10mほどの位置で立ち止まり…

 

「もう仕留めるしかなくなっちゃったよ。」

 

「ひぃっヒイイイイイイーーー!!?」

 

怒りの形相を浮かべるネイトに恐怖し踵を返し走り出そうとするコユキ。

 

だが…ここはもうネイトの間合いだ。

 

次の瞬間…

 

ドッパアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

みぎぃやああああああああああああああああーーー!!!??!??!!!

 

爆発音かと聞き間違えるような打撃音とコユキの悲鳴がゴールデンフリース号中に響き渡るのであった。




人間万事塞翁が馬
―――中国の諺
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