Fallout archive   作:Rockjaw

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歴史とは現在と過去との対話である
―――歴史家『E.H.カー』


妄想全快ですがGemini先生にアビドス高等学校アレクサンドロス分校のデザインを描いてもらいました
これと併せて読んでいただけると色々と想起しやすいと思いますので是非

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Residues of Prosperity and Messages from the Ancient Times

いよいよアビドス高校アレクサンドロス分校内部に足を踏み入れたネイト・ホシノ・アヤネの一行。

 

「それにしても…本当に大きな学校だね…。」

 

「フロア数だけでもアビドス高校と比べ物になりませんね…。」

 

「これほどの廃墟は連邦でもお目にかかれなかったな…。」

 

現在はひとまず屋上の入り口から階段を降り一階を目指すことに。

 

「空気の状態はどうなの、ネイトさん?」

 

「…有毒ガスは検出されないがかなり薄い。マスクは取らない方がいいな。」

 

「備えあれば患いなしでしたね…。」

 

「水中呼吸ができる俺は問題ないがさすがに二人にはきついよな。」

 

そう言いつつマスクをとるネイトを見て…

 

「…サラッとキヴォトス人でも無理なこと言わないでもらえなぁい?」

 

「そんなことできるのネイトさんだけですからね?」

 

キヴォトス人の自分達よりも人外染みた能力をたまに発揮するネイトにツッコミを入れる二人なのであった。

 

そんな会話を交わしつつ三人は一階に到着。

 

「さて、これからどうしようか。」

 

「そうだなぁ…。」

 

「どこかに地図でもあればいいんですけど…。」

 

一先ずこの学校のより詳細な構造を調べるため周囲を探索し始めようとした…その時、

 

『侵入者検知、侵入者検知。」

 

『ッ!!?』

 

突如鳴り響く警報と輝きだす赤色灯。

 

「方陣ッ!!!」

 

『了解っ!』

 

素早く三人が背中合わせになり全方位を警戒する。

 

そして…

 

「なっ何か来ます!」

 

周囲を取り囲むようにこちらに迫ってくる駆動音が室内に響く。

 

現れたのは…

 

「み、ミニチュアの戦車…!?」

 

あちこち錆びているがいまだにその履帯を駆動させる小型の戦車のようなロボット。

 

砲塔には図体に不相応な大口径の大砲が搭載されている。

 

「警備システムがまだ生きていたか…!」

 

迂闊だった、とネイトは悔しがる。

 

連邦ならまだしも数十年砂の底だったこの学校のシステムなどとうに無力化されていると思っていた。

 

だが…連邦でできていたことがここでできないとも限らない。

 

現に警備システムは生きており数十年ぶりに現れた人物たちを警戒するため殺到しているではないか。

 

「二人とも…仕掛けるなよ…!」

 

「でッですが…!」

 

「撃ったらこいつら全員撃って来るぞ…!万が一の時はパルスグレネードを使って隙を作る…!」

 

「クゥ…油断した…!」

 

手を出そうにも取り囲まれた状態では分が悪い。

 

ロボット達には悟られない様に後ろ手でネイトはパルスグレネードを用意する。

 

「不審者に告ぐ。所属学園と役職を明かしなさい。」

 

近くにあるスピーカーからネイトたちに誰何するようにアナウンスが流れた。

 

「………アビドス高等学校、生徒会長『小鳥遊ホシノ』…!」

 

「お、同じくアビドス高等学校生徒会書記長の『奥空アヤネ』です…!」

 

「アビドス高等学校用務員『ネイト・マーティン』…!」

 

三人は各々アビドスの学生証を取り出しつつ答える。

 

その学生証に向け近くのロボットがスキャン用の光線を飛ばし、

 

「照合中、照合中…。」

 

警備システムが本当の身分かを確認し始めた。

 

『………。』

 

しばしの間、一瞬たりとも油断できない時間が続き…

 

「照合完了…」

 

警備システムが照合を終え…

 

「………アビドス生徒会長殿、書記長殿、用務員殿。ようこそ、アビドス高等学校アレクサンドロス分校へ。」

 

システムがそう唱えると赤色灯が消え警備用のロボットも引き下がっていき…

 

「非常用電源始動。」

 

足下が照らされる程度だが明かりがともった。

 

『………フゥ~…。』

 

危機が去り、三人はようやく力を抜くことができた。

 

「な、何とかなりましたね…。」

 

「よく考えたら…おじさん達アビドスの関係者だから捕まえられないよね…。」

 

そうだ。

 

いかに数十年前に没した学校とはいえここはアビドス高等学校の分校だ。

 

同校の…それも生徒会役員をとっ捕まえはしないだろう。

 

「………。」

 

「どったの、ネイトさん?」

 

「いや…シロコ連れてこなくてよかったなぁ…って。」

 

「「あぁ~…。」」

 

その頃、

 

「クシュッ!」

 

「あら?シロコちゃん、風邪ですか?」

 

「ん…誰かが噂したのかも。」

 

閑話休題。

 

一先ず危機を脱し少しとはいえ明かりがつき、

 

「ネイトさん、校舎の見取り図がありましたよ。」

 

幸運にも校舎の見取り図も見つけることができたのでだいぶ探索がしやすくなった。

 

「二人とも、酸素の残量は?」

 

「…もって3時間くらいかな。」

 

「ゆっくり歩いて戦闘もなければですけど…。」

 

「じゃあ俺のを二人で分けて…猶予は多く見積もって4時間半といったところか。」

 

猶予はあるようだが何せここは広大な学校だ。

 

目的の物の在り処が分からないのであまり悠長にしている暇はない。

 

「よし、三手に別れよう。ちょうどここはエントランスのようだしここを集合地点にするぞ。」

 

「じゃあおじさんは左に行くね。」

 

「では、私は右の方へ。」

 

「俺はこのまま奥に向かう。曲がり角では曲がった方向にスティックライトを落としていくように。怪しい場所を見つけて入れないようならマーキングを頼む。成果が得られなくても二時間後には一度ここに戻ってくること、良いな?」

 

『了解。』

 

なので、少しでも効率を上げるために三人はそれぞれ別の場所を捜索することに。

 

しかし、三人を待ち受けていたのは…

 

「うへぇ~…!これはすごい…!」

 

「こ、これが知識の宮殿…!?」

 

「おいおい…ボストン公共図書館なんか目じゃないな…!」

 

圧巻の光景だった

 

目の前に広がるのは…本

 

本本本本本…

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本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本本…

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本棚どころか壁一面が本で埋まった広大な空間だった。

 

それもただの本ではない。

 

「わ、わぁ…!こ、これ昔骨董品店で見たとても高価な本だ…!」

 

骨董品などに造詣があるアヤネが驚愕するほど高価な稀覯本*1

 

「うへ~…この漫画雑誌…数十年じゃ効かない位昔の本じゃん…!?」

 

そこに収められている漫画雑誌*2ですら優に数十年、下手をすると100年以上昔の物ばかり。

 

「『如何準備和使用長生不老藥』…なんとも不穏なことが書いてある木簡だな…。」

 

果てにはキヴォトスではあまり使われていない言語従軍の経験である程度ネイトは読めるで書かれた木簡まで。

 

マニアどころか考古学や各分野の学者ですら腰を抜かすようなラインナップだ。

 

おそらくだが…ここにある本を本棚一つ分でも売り払えばかつてのアビドスの借金は一瞬で完済できるだろう。

 

それにしても…

 

「数十年放置されていたとは考えられないほどの保存状態だな…。」

 

ネイトは本の状態の良さに驚く。

 

本どころか見たところ数十年前ですら相当年代物の木簡や巻物ですら虫食い一つ見られず劣化も少ない。

 

「…なるほど、本棚に防虫効果のある木材が使われているのか。」

 

ネイトの嗅覚は先ほどから図書室内がウッディな香りが充満していることに気付いていた。

 

木材の中にはその香りによって防虫・防腐効果がある物がある。

 

それを本棚に用いれば…人の手を借りずとも長期間の本の保存が可能になるだろう。*3

 

そして…

 

「…砂漠の砂の中に埋まっていたってのも大きいか。」

 

この学校を沈めた砂も本の保存に一役買っていた。

 

熱気渦巻く砂漠だがそれはあくまで地上部のみ。

 

意外にも砂の中は生き物が生存できる安定した環境だ。

 

外気とも遮断され安定した気温が保持されるこの環境が本の保存に一役買っていたのだ。

 

そんなアレクサンドロス分校の状態を考えながら歩いていると…

 

「…あ。」

 

おそらく最も大きい図書室を探索中のネイトがある物を見つけた

 

それは…図書の返却ボックスだ。

 

「…マスター、約束果たすよ。」

 

ネイトはPip-Boyからマスターから預かった返却期限が過ぎた本を取り出しボックスの中に入れた。

 

すると…

 

「『ミューズ』隊員に通告。装備の受領のため隊員控室へ向かってください。」

 

「…え?」

 

「通算648,696時間の遅刻です。直ちに向かってください。」

 

おそらくマスターが借りたせいであろうが隊員室に出頭を求められてしまった。

 

ノイズのせいで正確な遅刻時間は不明だが…大遅刻だろう。

 

「…行ってみるか。他の所も見て回りたいし。」

 

ついでということで見取り図を頼りに警備司書部隊『ミューズ』の控室に向かうことにすることに。

 

「…ここだな。」

 

図書館の一角、ひっそりとその部屋はあった。

 

これまたカードリーダーが備え付けてあり通すとロックは解除。

 

中に入ると…

 

「…警備司書隊とはよく言ったものだ…。」

 

なんと隊員室内部にまで本棚が置かれてあった。

 

しかし、やはりこの場所の警備を申し付かっている部隊だけあり武器も保管されてあった。

 

「いやはや…どれもこれもクラシックな銃ばかりで…。」

 

これまた数十年前のまま時が停まっているのでそこにあるのはどれもこれも古式ゆかしい銃ばかりだ。

 

さらにどの銃も装飾が施してあり当時のアビドスの金満っぷりがうかがえる。

 

だが、これで分かる部分もある。

 

「…武器の発展が今ほど進んでいなかったということか…。」

 

この大規模な分校の警備隊ともなれば装備も相当上質な武器が支給されているはず。

 

それこそゲヘナ風紀委員会クラスの武装でもおかしくない。

 

しかし、ここにある銃でビナーが倒せるかというと…ネイトは即座に『否』と答える。

 

しかも銃の年代を考えると…重火器の威力も察しが付く。

 

装甲戦力もあまり望めないだろう。

 

「…と、装備を受領しなきゃな。」

 

気を取り直しネイトはガンラックの傍らにあるカードリーダーに今日何度目かのカードを通し読み込ませるとある銃ノックが解除され持ち出せるようになった。

 

「…コルトSAAにウィンチェスターM1873のカービンモデルか…。また渋いの使ってたんだな、昔のマスターは。」

 

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ハープと本を模った装飾、これがこの部隊のシンボルなのだろう。

 

「…マスター、アンタの青春の証…持って帰るからな。」

 

若かりし頃のマスターの相棒たちをPip-Boyに収納しネイトは隊員室を後にした。

 

その後もいろいろと探すも…

 

「そっちはどうだった?」

 

「見たことない本ばかりで楽しかったけど…それらしきものはなかったねぇ…。」

 

「こちらもマスターが仰っていたような石板は…。」

 

「俺の方も一応小部屋も調べたがそう言うのはなかったな…。」

 

二時間後、三人は集合場所に集まったが収穫はあまり芳しくなかった。

 

マスターの言葉に嘘がないとするとビナーの情報が刻まれた石板がどこかにあるはずだ。

 

残り時間は二時間半、当てずっぽうで探し続けるのは得策ではない。

 

「…当時の状況を整理しよう。」

 

「当時の状況…ですか?」

 

なので、少しでもあたりを絞るためにネイトは推理する。

 

「そうだ。当時、アビドスはビナーの出現と大砂嵐で大打撃を受けていたはずだ。」

 

「最強校の凋落…他学区が黙ってないはずだよね。」

 

「そんな時に見つけた古代のビナーに関する石板…。」

 

「…ホシノ、お前がトリニティやゲヘナの生徒会だった場合…その情報を入手したらどうする?」

 

「ちょいとネイトさん、生徒会長にそんな質問しちゃうの?」

 

歯に衣着せぬネイトの質問に苦笑を浮かべながらも…

 

「…普通はアビドスには弱ったままの方が都合がいいからその石板を破壊しようとするかな?」

 

「もしくは恩を売るためにその石板を奪取する…とかでしょうか?」

 

手段は違いはあれど『妨害』ということでホシノ、そしてアヤネの意見は一致。

 

「…それはおそらく当時のアビドス高校も理解していたはずだ。だとすると…。」

 

「それを防ぐために何か手を打っているはずですね…。」

 

「警備の増員は…マスターの話じゃそう言うことはなかったようだし…。」

 

それに対する対策とマスターの話を勘案し…

 

「…警備しなくても入り込みにくく厳重な場所にしまった?」

 

ネイトは一つの結論に達する。

 

「…アヤネ、見取り図を。」

 

「はい。」

 

アヤネから今一度見取り図を受け取り…

 

「………ここを見てみろ。」

 

ある一角に目星をつけた。

 

「全ての場所や部屋には名前が振られているのにここだけ何も書かれていない。」

 

「つまり…ここに何かが…。」

 

「一先ずここに行ってみよっか。」

 

酸素の残り時間も少ない。

 

慌てず、それでも速足でその場所に向かってみることに。

 

到着すると…

 

「タイルの壁…。」

 

そこは何もないタイルの壁だった。

 

何の変哲もない…だが、

 

「こういうのは多分この辺に…。」

 

長年、連邦の様々な廃墟を訪れ培われたネイトの勘は…

 

「…あった。」

 

それを見つけ出した。

 

壁のタイルの一枚、それを押すとその箇所が開き…

 

「…古い施設はホントどこもこれだな。」

 

「ま、またカードリーダーですか…。」

 

「行くぞ。」

 

そこから覗くカードリーダーにマスターのIDカードを通す。

 

マスターの情報が正しければ有効なはずだが…

 

「あっ見て!」

 

「おぉ…これはまた派手な仕掛けだ…!」

 

眼前のタイル壁の中心付近のタイルが跳ね上がり左右に分かれ現れたのは…

 

「これって…貨物用のエレベーター…!?」

 

どう見ても人が乗るには大きすぎるエレベーターだった。

 

「やはり地下に運び込まれていたか…!行くぞ…!」

 

早速三人は乗り込みエレベーターで地下へと降りる。

 

「やはり昔のアビドス高校って凄かったんですね…。」

 

「収蔵されている物品もそうだが設備も一級品ばかり。どれほど豊かだったか想像もつかないな。」

 

「カイザーがここ見つけたらそれはもう酷いことになってただろうね…。」

 

そんな会話を交わしていると…エレベーターが停まり扉が開いた。

 

その先は…上とは全く違う無機質な空間。

 

「おそらくここが…研究エリアか。」

 

「さて、どこを探そっか?」

 

「あ、見てください。受付がありますよ。」

 

アヤネの言うように降りてすぐの場所に受付カウンターがありそこにはPC端末も備え付けてある。

 

「よし、調べてみるか。」

 

何か分かるかもしれないと思い、ネイトはカウンターの中に入り込みPCを起動。

 

「…検索ワード『ビナー』っと。」

 

真っ先にビナーに関する研究にアクセスすると…

 

「…この奥の研究室で一連の研究がおこなわれていたらしい。行くぞ。」

 

その場所が判明しすぐさま向かう。

 

そこにあったのは一際大きな扉の研究室で扉を開けると…

 

「うわッ…これは…!?」

 

「おっ大きい…!」

 

目の前に優に畳三畳ほどはあろうかというほどの巨大な石板が鎮座していた。

 

おそらく大昔のアビドスの言語であろう文字と…人々と共に長い胴体の巨大な怪物の彫刻が刻まれている。

 

探し求めていたビナーのことが記録されている石板だが…

 

「こ、これはさすがにPip-Boyにも入らないよねぇ…。」

 

「入っても確実に俺が動けなくなる。」

 

「でもどうしましょう…。写真を撮ろうにもこれだけ暗いとピントが…。」

 

これをそのまま持って帰るのは不可能だ。

 

あまりにも巨大すぎる上、たとえ運べても軽トラまで運ぶのは不可能だ。

 

いや、たとえ運べたとしても軽トラに乗せたら確実に動かなくなる。

 

が、

 

「いや、別に石板をそのまま持って帰る必要はないだろ?」

 

『え?』

 

ネイトはそう言うと石板の周りに置いてあった『模造紙』と『コンテ』を手に取り…

 

「こうすれば…。」

 

模造紙を石板の上においてコンテを撫でるように擦り付けると…石板の内容がそのまま模造紙に転写された。

 

「こうすれば紙で石板の正確な内容を持って帰れるってことさ。」

 

「…賢いねぇ、ネイトさん。」

 

「アヤネ、ホシノは石板の転写。俺はそこら辺にある資料を集める。」

 

「分かりました!」

 

そうと分かれば早いもの。

 

三人は役割分担をしてすぐさまこの研究室内の物品を収集していく。

 

書類系統はPip-Boy内ではMISCというカテゴリーで扱われるため重量負荷がなく幾らでも詰め込めるのだ。

 

「ネイトさん、石板の転写終わったよ!」

 

「そろそろ酸素がギリギリです…!」

 

「よし、引き上げるぞ。」

 

目的が果たせたのならばここに留まる理由はない。

 

三人は急いで地上へと上がる。

 

「プハァッ!あぁ~空気が美味しい!」

 

「もうすっかり日が暮れちゃいましたね…。」

 

地上に出るとすでに日が落ち空には星が輝き始めていた。

 

「よいしょっと。」

 

「あれ?ネイトさん、コンクリート塀上に伸ばしてどうしたの?」

 

「…ここをこのまま埋めておくには勿体ないって思ってな。いずれちゃんと掘り起こして保全したいなと。」

 

「…ですね。ここはキヴォトスの歴史が詰まった場所ですもんね…。」

 

ここはかつてのアビドスの先輩たちの想いが詰まったまさに宝物庫だ。

 

ちゃんと整備しさえすればまた人が入れるようになり様々な調査が進むだろう。

 

「幸い広大な砂漠の掘削のノウハウがある奴がウチにはいるしな。」

 

「うへぇ~…店長、また大忙しになりそうだねぇ…。」

 

「さぁ、帰ろう。皆が待ってる。」

 

こうして、砂漠に沈んだかつてのアビドスの繁栄を示す知識の宮殿の探検は幕を閉じた。

 

…が、その翌日。

 

「…ダメだぁ…!」

 

「ん…全然分からない…。」

 

「戦闘データなんかはありますけど…。」

 

「性能差がありすぎて参考にならないわよぉ…。」

 

「あ、アハハ…まさかここで躓くとは…。」

 

アビドス生徒会の面々は机に突っ伏し苦悩していた。

 

確かに持ち帰った資料には当時のアビドス高等学校とビナーとの戦闘記録もあった。

 

だが…正直現在のアビドスの装備の技術差がありすぎあまり参考にはならない。

 

どれほどかというと…南北戦争前後と湾岸戦争くらいの差だ。

 

「だが…この騎馬部隊はある程度効果があったようだな。」

 

「ん…早く動けばビナーも照準を合わせにくくなるのかも。」

 

「大砲もある程度は…ブラックヒュドラをアイツに当てれるかが問題ね…。」

 

それでも何とか現代の技術で再定義すれば一部は使えるが問題は石板だ。

 

「まだ一部分も解読できないよぉ…。」

 

「これだといつ完了するか気が遠くなりますねぇ…。」

 

「それに解読しても解釈の問題もありますから…。」

 

古代のアビドス語を収めている生徒など今のアビドスにいるわけがない。

 

今から勉強するほど悠長に構えるわけにもいかない。

 

「………仕方ない、他所の力を借りよう。」

 

しばし考えこんだネイトがそう声を発する。

 

「うへ、どゆことぉ?」

 

「どなたか読めそうな方をご存じなのですか?」

 

「あぁ、俺が生涯であった奴の中じゃ…文句なしで一番のキレ者だ。」

 

「…ネイトさんにお任せするよぉ。」

 

当時のアビドスならまだしも既に衰退しきり復興し始めた現状なら外部の人物に助力を求めるのも一つの手だ。

 

しかも、長生きしているネイトが『生涯一のキレ者』と評する人物。

 

この場の全員が興味がわいた。

 

ホシノからの了承も得てネイトはスマホを取り出し…

 

「………やぁ久しぶりだな、『Ha,P』。」

 

この場の面々が把握していない…おそらく渾名のような名前で呼びかけ、

 

「…あぁ、そうだな。俺も会いたくて堪らなくなってたところさ。」

 

『…ん?』

 

何やらネイトらしくない文言にホシノ達が首を傾げる…間もなく

 

「早速で悪いんだが俺とデートしてくれないか?」

 

《えぇッ!!?》

 

ブウウウウウウウウウウッ!!!?

 

電話口から漏れる驚きの声をかき消すように一斉に噴き出すのであった。

*1
安くても数十万、最高値では数十億にもなる

*2
最も高価なコミック本はアメコミの『アクション・コミック』の第1号でオークションで600万ドルで落札された

*3
高い防虫・防腐効果のある『ヒバ』という木材は2500年前の地層から発見された木片からも香気が残っていた記録がある




過去を広く深く見渡すことができれば、未来も広く深く見渡すことができるであろう
―――英国首相『ウィンストン・チャーチル』
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