Fallout archive   作:Rockjaw

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molon labe
『来りて取れ』
―――スパルタ王『レオニダス1世』


Contracts in the Devil's Garden Part2

「イオリ先輩、美食研究会の移送準備が整いました!」

 

「よし、じゃあ風紀委員会の拘置所に押し込んでいてくれ。鳥もちをとってボディチェックを忘れないように。」

 

「了解しました!」

 

ゲヘナの一角、イオリは部下の風紀委員を引き連れ…

 

「取れませんわー!なんでですのー!?」

 

「車からはすんなりはがれたのにー!?」

 

「みんな暴れないでよ!そのせいで私達一塊になっちゃったんだからぁ!」

 

余程藻掻いたのだろう、鳥もちによって互いにくっつき余計に身動きが取れなくなってしまった美食研究会の面々を護送車に押し込もうとしていた。

 

ムツキがフウカに説明していた通り時間が経ち車にくっついた部分は乾燥して綺麗に剝がれたが美食研究会にくっついた鳥もちは彼女たちが逃れようと激しく動いたせいで固まり切らなかったのだろう。

 

「んー!!!んんー!!!」

 

思い余って鳥もちを食い千切ろうとしたアカリは口がくっ付き自分たちが拘束していたフウカのような状態になっている。

 

「全く…通報があってきてみればまさか美食研究会全員を一網打尽にできるなんて。」

 

イオリはこの大捕り物に上機嫌になっていた。

 

美食研究会は戦闘能力もさることながら脅威となるのは神出鬼没さと逃げ足の速さだ。

 

極端なことを言えば食事ができる場所ならどこへでも現れて自分たちの価値観で様々な犯罪行為に及ぶ。

 

つまり、どこで何をやらかすか把握できないのだ。

 

しかも、同じ部活であっても仲間に執着せず各々勝手に逃げる上個々人の戦闘力もそれなりにあるという厄介っぷり。

 

そんな美食研究会をこうも容易く全員検挙できるのはまさに僥倖なのだ。

 

「…それにしてもなんでアイツら鳥もちまみれなんかに?」

 

イオリはふと疑問を抱く。

 

捕まえるのは楽だったがなぜあんな状況になっていたかが理解できない。

 

それに給食部の車両を奪ったのなら当然セットでフウカもあの場にいるはず。

 

だが、給食部に確認すると先ほどフウカは一人で帰ってきているそうだ。

 

一体どうやって逃げ出したのか?

 

そしてこの鳥もちは誰によって仕掛けられたのか?

 

謎が深まるばかりだ。

 

「一体何が…。」

 

と、イオリが頭を捻っていたその時、

 

《至急至急、現場の風紀委員会各員へ通達。》

 

無線から通信担当の風紀委員の声が響く。

 

《現在、ゲヘナ区第一公園付近にて温泉開発部の大規模な破壊活動発生との通報。至急、現場に急行されたし。繰り返す…!》

 

「なんだと!?温泉開発部が!?」

 

温泉開発部、美食研究会と双璧を成すゲヘナの問題児集団だ。

 

今しがた美食研究会を捕まえたと思ったらまた大物が登場、

 

「こちら銀鏡イオリ!これより現場に急行する!詳しい状況が判明次第送れ!よし、皆行くぞ!」

 

『了解っ!』

 

さらに手柄を上げようとイオリは急いで『UR-416装甲兵員輸送車』に他の生徒たちと共に乗り込み出発する。

 

「いいか、皆!今度は温泉開発部、美食研究会以上の規則違反者たちだ!人数も多い、気合を入れていくぞ!」

 

相手にとって不足無し、イオリは今日二度目の大捕り物に向けて自身と部下たちを鼓舞する。

 

先程の場所からゲヘナ区第一公園はそれほど離れておらず車はすぐに到着、

 

「私たちが一番乗りだ!決して容赦するな!全員逮捕するぞ!」

 

最後にそう檄を飛ばしイオリが一番槍として車外に飛び出した。

 

…が、

 

「…なッなんだこれはッ…!?」

 

そこに広がっていた光景に言葉をなくし立ち止まってしまうのだった。

 

場面を前話の最後に戻そう。

 

火蓋が切られたネイトとノノミに便利屋68のチームVS温泉開発部の戦い。

 

「覚悟してくださいね~♪」

 

まず先陣を切ったのはノノミ、リトルマシンガンVを連射しつつ温泉開発部の群れに突撃。

 

「がはッ!!?」

 

「うッ撃て撃てぇ!!!」

 

「ダメだ、アイツに銃は効果が薄いッ!!!」

 

G3を構え撃とうとするも待ったをかける温泉開発部。

 

彼女らの中にはあの配信映像を見ている者も少なくない。

 

ノノミが纏っているあの衣装にただの弾丸では効果が薄いことはすでに知るところ。

 

ならば、

 

「パンツァーファウスト準備!取り囲んで一斉射だ!!!」

 

それ以上の威力、パンツァーファウスト3を叩きこむよりほかない。

 

素早く温泉開発部のメンバーがノノミを包囲しようと動く。

 

「あんな複合銃だッ!!!取り囲んじまえば…!!!」

 

確かに、ノノミはM134ミニガン『リトルマシンガンV』に25㎜グレネードマシンガン『マイクロボンバーG』を搭載した複合銃を扱っている。

 

恐ろしい火力を手に入れた一方、取り回しは悪化しているはずだ。

 

温泉開発部の見解は間違っていない。

 

唯一見誤ったとするなら…使用者の腕力だ。

 

「うんうん、だったらこうしますねぇ~♪」

 

『なぁッ!!?』

 

ノノミはリトルマシンガンVとマイクロボンバーGを分離、それぞれを片手で持ち…

 

「『アビドスは~生きていますよ~』♪」

 

『ぎゃああああああああッ!!!?』

 

まるで丘で愉快に踊るかのように回転しながら両手の重火器を発砲し全方囲に7.62×51㎜NATO弾と25mmグレネードHE弾を撒き散らす。

 

ある者は弾幕を浴びまたある者はグレネード弾の爆発に絡めとられる。

 

命中率こそ悪化するがそこは投射量でカバー。

 

アビドス最強の腕力を誇るノノミだからこそ可能な荒業だ。

 

「こういうアイドルも悪くないですよねぇ♡」

 

「いや、ンなアイドルいてたまグはぁッ!?」

 

「んもう、そんなひどいこと言わないでくださいよぉ♠」

 

ようやく回転を止めノノミは再び銃を結合、

 

「…貴方たちぃ、ネイトさんを燃やそうとしましたねぇ?」

 

顔は笑顔だが…その背後に恐ろしいほどの怒気を放つ。

 

『ひっ!!?』

 

短い悲鳴を上げる温泉開発部だが…

 

「お返しと言っては何ですがぁ『アビドスの葬送』を味わってくださぁい♠」

 

そんなことお構いなしにリトルマシンガンVとマイクロボンバーGをぶっ放しつつノノミは温泉開発部を吹き飛ばしていった。

 

「ノノミちゃん、すっごぉい!私も負けてらんないねぇ♪」

 

対する、アビドス独立戦争最終作戦時の陽動部隊の一員でもあるムツキ。

 

彼女もまた防弾ゴスロリを纏い温泉開発部の銃撃をほぼ完全にシャットアウト。

 

「コイツ、ちょこまかとっ!!!」

 

それを見て痺れを切らしたか工具を持った温泉開発部が殴りかかろうと迫る。

 

すると、

 

「そうそう、ここ私たちの事務所だったんだぁー♪だからぁ…。」

 

ムツキはおもむろに取り出したリモコンをその者たちの足元に向けスイッチを押すと…

 

ボシュゥッ!!!

 

「ゲホゲホッ!?さ、催涙ガス!!?」

 

「防犯用にトラップたぁっくさん仕掛けてるんだよぉ♪」

 

地面から勢いよく催涙ガスが吹き上がる。

 

「え~い!」

 

「ぐはぁッ!」

 

怯んだその者たちにトリックオアトリックの弾幕を浴びせかける。

 

しかし、

 

「バカがっ!!!種さえわかればこんなもの!!!」

 

「温泉開発はガスとの戦い!!!防備はばっちりなんだよ!!!」

 

流石に手慣れたものか、温泉開発部は素早くガスマスクを装着し催涙ガスを防御。

 

「あっそうなんだ!じゃあ…コレは慣れてないよね?」

 

それを見たムツキはバッグの中から数個のグレネードを周囲にばらまいた。

 

催涙ガスに紛れて落ちたそれに対処が遅れ…

 

バキィンッ!!!

 

「あ…がっ…!?」

 

噴出した靄を浴びた温泉開発部の動きが固まる

 

「くふふ~ネイトお兄ちゃんお手製の『冷却グレネード』だよぉ♡」

 

そう、これは炸裂すると周囲を凍結させる連邦製グレネードの『冷却グレネード』だ。

 

様々な事態を想定してネイトからいくつか購入していたのである。

 

「サッサササ寒っ…!」

 

「あっとそうだよねぇ。『温泉開発部』だから『温かい』のが好きだよねぇ♪じゃあ…。」

 

冷気に飲み込まれ体を震わす温泉開発部に向け…

 

「さっきのお礼に私が温めてあげるよぉ♡」

 

「やッやめ…!?」

 

トリックオアトリックのアンダーバレルに装着されたフレイマーピストル『ファンシーウィルオウィスプ』から炎を噴出させる。

 

メグのそれにはさすがに劣るがやはり火炎放射器、次々に温泉開発部を絡めとっていく。

 

「なっなんだよ、それっ!!?」

 

まさか自分たちが火炎放射器の餌食になるとは思っておらず愕然とする温泉開発部だが…

 

「くふふっ!貴方たちぃ…アルちゃんどころかお兄ちゃんまで燃やそうとしたでしょぉ?」

 

ムツキはうつむきながらそう呟いたかと思うと…

 

「だったらぁ…ッ今度はアンタたちがフッ飛ばされて燃やされても文句言えないよねぇッ!!?」

 

『ヒィッ!!?』

 

凶暴な笑みを浮かべ、

 

「かかってきなよ、モグラ共ッ!!!巣穴ごとぶっ潰してあげるからさぁッ!!!」

 

『『『『ぎゃああああああッ!!!?』』』』

 

爆弾と弾丸、火炎を撒き散らし温泉開発部に襲い掛かっていった。

 

そんな怒りをあらわにするムツキの一方、

 

「許せない許せない許せない!!!」

 

「がはッ!!!」

 

「皆さんを燃やそうとよくもッ!!!」

 

「グハッ!!?」

 

「死んで下さい死んで下さい死んで下さい!」

 

「なっなんだよコイツはぁッ!!!?」

 

最初からフルスロットルで怒りを爆発させ温泉開発部のただなかに殴りこんだハルカ。

 

手当たり次第にブローアウェイをぶっ放し散弾を叩きこんでいく。

 

それだけではない。

 

「このッチビがぁッ!!!」

 

飛び掛かってきた者には…

 

「うわあああああッ!!!」

 

「ぐへぇッ!?」

 

ブローアウェイのバッシュ攻撃を叩きこみ引き下がらせ…るだけではなく、

 

「あなた達の爆弾であなた達をフッ飛ばしてあげますっ!!!」

 

『ぎゃあああああッ!!!?』

 

いつの間にか掏り取っていた温泉開発部が持ってきていたダイナマイトを括り付け一集団丸ごと爆破した。

 

が、

 

「あっ…!」

 

ヒートアップし過ぎていたか、ブローアウェイの残弾数に気付かず弾切れに。

 

「チャンスだっ!!!」

 

その隙に制圧しようとハンマーを振りかぶる温泉開発部。

 

次の瞬間、

 

ゴキィンッ!!!

 

「ぶばっ!!?」

 

吹き飛んだのは温泉開発部の方だった。

 

「なっなんだ!?」

 

今の音、打撃音にしてはあまりにも硬質なものだった。

 

その音の正体は…

 

「はぁー…!はぁー…!」

 

「め、メリケンサック…ッ!!?」

 

ハルカの右拳に装着された格闘武器『ナックルズ』だ。

 

しかも、その打撃部分には殺傷力を高めるためのスパイクが装着されている。

【挿絵表示】

 

 

このメリケンサックは以前、アル達の銃の空薬莢を集めてネイトに作ってもらったものだ。

 

それを先ほどの温泉開発部の顔面に叩きこんだのだ。

 

「な、なんだよ…!?それ…!?」

 

キヴォトスではあまりにも異質な得物に慄く温泉開発部だが…

 

「私は…庭師にして荊…。」

 

まるで幽鬼のような気迫を漂わせハルカは彼女たちを見据える。

 

「私の役目は…『大切な方々』の葉を貪る『虫』を駆除し綺麗な花を『手折ろう』とする『不届き者』をその棘で阻むこと…。」

 

リロードを終えたブローアウェイとそのナックルズを両手に構え…

 

「あなた達は…私の大切な人たちを奪おうとした…ッ!!!」

 

目をこれ以上ないほど見開き、

 

「だから…貴方たちを駆除します…!」

 

ハルカは慄く温泉開発部達に再び突撃するのであった。

 

そんな大暴れしている三人とは対照的に、

 

「のろいね…ッ!」

 

「あぐッ!?」

 

「がっ…!?」

 

ハンドガン『デモンズロア』を操るカヨコは巧みな銃さばきで的確に温泉開発部を撃ち抜いていく。

 

『C,A,Rシステム』という近接射撃に特化した構えで彼女の十八番だ。

 

「相手はハンドガンだ!間合いをとれ!!!」

 

「させると思う?」

 

ズバァンッ!!!

 

「ぐぁッ!?耳がッ!?」

 

相手がカヨコの有効範囲内から逃れようとすればデモンズロアお得意の大音響の銃声で怯ませ、

 

「悪いけど付き合ってもらうよ。」

 

「ちょッ!?」

 

カヨコは左手にあるものを構え手近な温泉開発部を捉え背中に担ぐ。

 

「ヒィッ!?」

 

「あッアイツナイフを!?」

 

その生徒の首にはカヨコ愛用の折り畳み式のナイフが当てられている。

 

これまたネイト作成で彼女から注文されたデザインが施されている。

【挿絵表示】

 

「よっと。」

 

「グハッ!」

 

そのまま目の前の相手に射撃を続行するカヨコ。

 

「撃て、撃ちまくれ!!!」

 

「ぐはあああああ!!?」

 

「ま、待てッ!仲間に当たる!!!」

 

しかも背後からの銃撃は拘束した温泉開発部が盾になってくれるので完全防御。

 

「かはっ…!?」

 

流石に盾とされてはキヴォトス人と言えど長くは耐えきれずすぐに気絶。

 

「ありがと。」

 

その者をすぐに放棄しデモンズロアとナイフを握ったまま構えカヨコは突撃、

 

「シュッ!」

 

「げはッ!?」

 

すぐさま近くにいた温泉開発部に前蹴りを叩きこみつんのめらせ、

 

「動くとしばらく声出せなくなるから。」

 

「なぁッ!?」

 

今度はその者の首筋にナイフを宛がい盾代わりにし前方にいる者たちを次々撃ち抜いていく。

 

「次ッ。」

 

「がっ…!?」

 

離れる際は後頭部をナイフで強打し意識を刈り取ることも忘れない。

 

「こっこいつ容赦ねぇ…!」

 

躊躇なくこちらを盾にし用が済めば撃ち捨てるカヨコの戦闘スタイルに絶句する温泉開発部だが…

 

「容赦…?いきなり火炎放射器ぶっ放したアンタ達がそれを言うの…?」

 

マガジンを変えながら『鬼気』としか言えない気迫を放ちカヨコは睨みつける。

 

「どうやって知ったか知らないけど…とんでもないことしたね。」

 

「と、とんでもない…こと…!?」

 

「『藪をつついて蛇を出す』って知ってる…?アンタ達…蛇どころか『悪魔』を超える『怪物』を呼び覚ましちゃったんだよ…?」

 

再装填を終え再びデモンズロアとナイフを構え…

 

「でもまぁ、良いよね?その覚悟があったから…アレに手を出したってことだからさ…!」

 

まるで機敏な猛獣のように温泉開発部へと襲い掛かるのだった。

 

そして…

 

「うわぁ…みんなすごい暴れようね…。」

 

そんな戦場の様子を廃墟の屋上からアルが見下ろしていた。

 

眼下では自分以外のメンバーが大暴れしているが、

 

「でも…ここからなら狙い放題だわ。」

 

つまりそれは自分はノーマークに等しいということだ。

 

アルはワインレッド・アドマイアーを構え狙撃支援を開始、

 

「あがっ!?」

 

「なっ!?どこかギャッ!?」

 

ただでさえ目の前で仲間たちが次々に討ち取られて行っているというのに意識外からの狙撃に温泉開発部はどんどん撃ち抜かれていく。

 

さらに、

 

「ッ!させないわよ!」

 

アルはダイナマイトを投擲しようとしている温泉開発部を見つけ発砲。

 

『どワアアアアアア!!?』

 

弾丸は寸分たがわず撃ち抜き暴発させまとめて吹き飛ばす。

 

「いたぞ、あそこだぁッ!!!」

 

「ぶっ放せ!!!」

 

しかし、さすがに温泉開発部も気付きアルのいる廃墟の屋上に向けパンツァーファウスト3を発射。

 

「やっぱり一筋縄じゃ行かないわよねぇッ!!!」

 

一歩速く発射の兆候に気付いたアルは素早く廃墟のビルから飛び降りる。

 

「そこを退きなさい!」

 

「がはッ!?」

 

「お、落ちながら撃ってぐえッ!?」

 

落下中も巧みに狙いを定め撃ち抜いていく。

 

そして、地面に着地すると…

 

「便利屋の社長はスナイパーだ!」

 

「間合いを潰せばこっちのもん…!」

 

近くにいた温泉開発部がアルに襲い掛かる。

 

「嘗めるんじゃないわよ!!!」

 

「ギャンッ!?」

 

「は、ハンドガンまでもってグハッ!?」

 

だが、素早くアルも『グラスシルバー・ヴィジランス』を抜き連射。

 

流石にカヨコほどではないがそれでも温泉開発部を寄せ付けない。

 

「おまけよ!」

 

さらに左手一本でワインレッド・アドマイアーを構え、

 

「片手でも命中させられるわ!」

 

重いPSG-1だというのに一切ブレることなく発砲、

 

狙ったのは…

 

「喰らいやがれっ!!!」

 

こちらを狙い放たれたパンツァーファウスト3の弾頭だ。

 

アルの弾丸は吸い込まれるようにパンツァーファウスト3の弾頭の先端に命中。

 

『のわああああああああッ!!?』

 

それと同時に信管が誤作動、発射した生徒も飲み込んで盛大に吹き飛んだ。

 

「アンタ達、誰に手を出したか分かってるんでしょうねッ!!?」

 

その爆炎をバックにアルは高らかに宣言する。

 

「私達は『便利屋68』、己が矜持で道を突き進むアウトローよ!!!」

 

自分たちの在り方を、

 

「そしてっ!!!戦友にして義兄のあの人まで害そうとした!!!落とし前はきっちりつけてもらおうかしらッ!!!」

 

社員達と同じく大切に思っている義兄への想いを叫び、

 

「来なさい、真のアウトローが何たるか刻み込んであげるわッ!!!」

 

『感嘆』と『警戒』、二つの想いを構え次々に温泉開発部を撃ち抜いていくのであった。

 

ノノミも便利屋68の面々も多勢に無勢ながら一歩も引かずに奮闘。

 

だが…そんな5人を足しても劣らないほど…

 

「せっかく新調した装備だ!!!少しは歯ごたえを見せて見せろッ!!!」

 

ネイトはパワーアーマーの巨体に見合った『化け物』を操り大暴れしていた。

 

「ごバァッ!!?」

 

その攻撃は一撃で温泉開発部の部員を吹き飛ばし、

 

「だ、ダメだ!!!遮蔽が役に立たなドハッ!?」

 

「反則だろ、あんなのおおおおおお!!!」

 

廃墟の中に隠れようと『壁ごと』ぶち抜かれる。

 

「ひええええええっ!?ひっひええええええええッ!!?」

 

その暴力の嵐の前に先ほどまであれほど自信満々だったカスミも悲鳴を上げながら頭を押さえ地面に臥すしかない。

 

そう、それは本来『人』に向けてぶっ放すような代物ではない。

 

以前、アケミが所持していたM2重機関銃を超える全長と大口径の巨大な銃、

 

「さぁ、お前たちも『ウラジミール』の坊やに挨拶しろッ!!!」

 

『KPV重機関銃』、14.5x114mm弾を連射するソ連が生み出した怪物級の重機関銃だ。

 

本来は車載、もしくは銃架か三脚架に取り付けて運用されるような物をX-02の怪力に任せて軽機関銃かの如き軽快さで撃ちまくる。

 

『シモノフPTRS1941』や『ゲパートM6』でも紹介した通り14.5x114mm弾とは本来『対物』・『対軽装甲車両』・『対空用途』に対して用いられるものだ。

 

そんな銃弾など掠っただけで一般の生徒は意識を刈り取られる。

 

先日のトリニティへの出張での出来事とゲヘナの治安の悪さを鑑み過剰火力を承知で用意していたのだ。

 

「う、うわあああああああ!!!」

 

そんな中、一人の温泉開発部の生徒が果敢にネイトに肉薄しスレッジハンマーを振りかぶる。

 

がら空きの頭部への一撃、

 

(貰ったっ!!!)

 

勝利を確信したが…

 

ガキィイイイイインッ!!!

 

「え…?」

 

伝わってきたのは掘削中に当たった岩盤よりも固い感触と金属音でハンマーがはじき返された。

 

「なっちゃいないな。ハンマーっていうのはな…。」

 

ネイトは素早く今しがた振り下ろされたスレッジハンマーを奪い、

 

「こう使うんだよ!!!」

 

「ご…ッ!!?」

 

その生徒目掛け大上段から降り下ろし叩きこんだ。

 

「軽いな、重量化とロケットエンジン、電撃コイルを付けてく…れッ!」

 

普段使っているものよりも『軽すぎる』のでネイトはそのスレッジハンマーを手近な温泉開発部に向け投げ返す。

 

但し…

 

「「「「ぐはあああああ!!!?」」」」

 

大リーガーも裸足で逃げ出す剛速球で。

 

「これならどうだッ!!!」

 

ならばとパンツァーファウスト3を発砲する温泉開発部。

 

確かに、いかにX-02の装甲でも対戦車火器はかなり悪くまともに食らえば大ダメージは必至だ。

 

が、

 

「そぉらっ!」

 

ネイトは冷静に今しがたハンマーを叩きつけた生徒を掴み盾にする。

 

ロケット弾はその生徒に命中し…そこで停止、

 

「…返すぞ。」

 

そのロケット弾を掴み方向転換させ撃ってきた生徒へ返した。

 

「そっそんなんアリかよおおおおお!?」

 

馬鹿みたいな方法で跳ね返ってきたロケット弾にそう叫びながら吹っ飛ぶのであった。

 

と、そこへ…

 

「皆をよくもー!」

 

メグがメグマパワー!を構え再び豪火を放射しネイトを飲み込んだ。

 

「まだまだ足りないよね?!」

 

さらにトリガーを引き絞り炎の勢いを上げる。

 

だが、

 

「おいおい、こんな火力じゃBBQはできないぞ?」

 

そんな炎を浴びてもなおネイトは涼しい声を上げて…メグに歩み寄っていく。

 

「えぇッ!?そんなッ!?」

 

驚愕するメグだがネイトは止まらず、

 

「いい年なんだから火遊びは…卒業しなさい!」

 

「ギャンッ!!?」

 

そのままメグの頭頂部に拳骨を振り下ろして彼女をノックアウトした。

 

「ネイトさん、そちらはどうですかぁ?」

 

「今終わったところだ。」

 

「こっちも片付いたよぉ♪」

 

「み、みんなみんな退治しました!」

 

「ふぅ、何とか皆無事みたいね。」

 

「そういうネイト兄は平気なの?陽炎たってるけど…。」

 

「このくらいじゃパワーアーマー装着者は焼けないさ。」

 

ちょうどノノミやアル達も温泉開発部を撃退し終えたようで一同が集結。

 

当たりには意識を失った温泉開発部が至る所に倒れていた。

 

「…で、あのフィクサー気取りはどこ行った?」

 

「まさか逃げたんでしょうか…?」

 

だが、周囲を見渡しても部長のカスミの姿が見えない。

 

「いや、アイツはそんな諦めがいいわけでも薄情な訳でもないよ。」

 

「そうでもなきゃこいつらがアイツに付いて行くわけないもんねぇ。」

 

「じ、じゃあ一体どこへ…。」

 

その時、どこからか響き渡るキャタピラ音と掘削音。

 

そして…

 

「ひゅ~ん、バゴーン!ハッハッハッハ!」

 

高らかに響くカスミの笑い声。

 

「散開っ!!!」

 

素早く指示を飛ばし周囲に散らばるネイトたち。

 

次の瞬間、ネイトたちがいた場所にドリルが生えた巨大なマシーンが降ってきた。

 

しかも地面に突き刺さったそれはドリルを駆動させ地面へと潜っていく。

 

「ボーリングマシンかッ!?」

 

「そのとーり!!!」

 

声のした方向を向くと…

 

「これぞ我が温泉開発部が誇る掘削マシーン『ジャイアントヒール・クラッシュ』だぁッ!!!」

 

手にリモコンを持ったカスミが高らかに宣言する。

 

「君たちはよく戦った!まさか我が部員達やメグを一蹴してしまうとはッ!!!さすがは便利屋68!さすがはアビドス!そしてさすがは熱砂の猛将!!!」

 

カスミは先ほどのネイトたちの戦いを称賛しつつも、

 

「しかーし!!!この凶悪マシーンを持ってきたからには快進撃もここまでだ!!!」

 

自身が持つ『ジャイアントヒール・クラッシュ』には勝てないと言い放つ。

 

地面の揺れからかなりの速度で地中を掘り進んでいることは分かる。

 

あんなマシンが地面から奇襲を仕掛けてくるのは確かに脅威だ。

 

「さぁ、怯えろ!!!そして我が温泉開発部の発展の礎に…!」

 

勝利を確信するカスミだが…

 

『………。』

 

「…あ、あれ?」

 

ネイトたちは冷ややかな視線をカスミに向けている。

 

「…アル。」

 

「えぇ。」

 

ネイトの呼びかけに答えアルはワインレッド・アドマイアーを発砲。

 

「あ。」

 

その弾丸はカスミの手に会ったリモコンを弾き飛ばす。

 

すると、操作が乱れたからか地中からジャイアントヒールクラッシュが中途半端に飛び出し機能を停止。

 

『…………。』

 

何とも微妙な空気が周囲に漂い…

 

「…おっオッホン!今日の所はこれくらいにしておこう!」

 

カスミはそそくさと立ち去ろうとするが…

 

「「「「「「………。」」」」」」

 

ネイトたちは各々の得物をカスミに構え…

 

―――――――ッッッ!!!!!

 

「ぎゃあああああああああああああッ!!!!」

 

カスミに一斉射撃をくらわすのであった。

――――――――――――――――

そして、時系列は現在に戻る。

 

「さぁ、話してもらおうか?」

 

「ひ、ひ、ひえええぇッ!!!」

 

「鳴けっていってるんじゃないよ。吐けって言ってるんだよ。」

 

「なっ…!?」

 

イオリが目の当たりにしたのはX-02でアイアンクロウをされて泣き叫ぶ宙ぶらりんのカスミにすごい形相で詰め寄るカヨコの光景だった。

 

しかも、周囲には気絶した大勢の温泉開発部まで。

 

戦闘の痕跡から通報は間違いではないだろうがあまりのカオスにイオリや他の風紀委員も固まる。

 

「し、知らないっ!!!知らないんだよォォォォ!!!」

 

「知らないわけないでしょ?」

 

「本当だぁ!!!嘘なんかじゃないんだよぉぉぉ!!!」

 

号泣しながらそう弁明するカスミだが…

 

「…ネイト兄。」

 

「あぁ。」

 

「イタタタタタタタタァッ!!!?わッ割れる、割れてしまうウウウウ!!!」

 

言い逃れしようとしていると判断されさらにアイアンクロウのパワーが上げられ彼女の頭が握りしめられる。

 

人の頭など容易く握りつぶせるパワーアーマーの出力だ。

 

頭蓋骨がミシミシと音を上げているに違いない。

 

しかも、カスミ自身はキヴォトス人換算ではひ弱な部類。

 

幾らもがこうがX-02から逃れることはできなかった。

 

「だったら早く吐け。このままだとお前の頭が『ピニャータ』か『フォーチュンクッキー』みたいになるぞ。」

 

「どっちも割られること前提じゃないかい!?」

 

「だからその前にアンタたちにあんなことを吹き込んだ奴の情報を。」

 

カスミの悲鳴などお構いなしに拷問に片足突っ込んだ尋問を続けようとしたその時、

 

「うっ動くな!!!風紀委員会だっ!!!」

 

「あん?」

 

「ッチ、余計なタイミングで…!」

 

再起動したイオリが威嚇射撃を一発放ち一般風紀委員たちがネイトたちを取り囲む。

 

「フッ風紀委員会!?頼む、助けて…!」

 

地獄に仏とはこの事か、カスミは急いで助けを求めるが…

 

「そいつの身柄をこちらに引き渡せ!!!さもなくば全員逮捕するぞ、規則違反者共!!!」

 

「そ、そんなぁッ!?」

 

どっちにしろ捕まることは確定しているので絶望する。

 

一方、

 

「断る。」

 

「なッ!?」

 

「この馬鹿には聞きたいことが山ほどあるからね。」

 

ネイトとカヨコはそんなイオリの言葉などどこ吹く風でカスミの尋問を再開する。

 

「止めろ、本気なんだぞ!!!」

 

さらに声を張り上げ指示に従わせようとするイオリだが…

 

「…フンッ髄分軟弱になったな、黒兎。」

 

「なっ何を!?」

 

「気付いてないのか?まるで…生まれたてみたいに足が震えてるじゃないか。」

 

「~ッ!!!」

 

こちらを一瞥したネイトに鼻で笑われそう指摘された。

 

確かに威勢のいいイオリだが…その足は震え続けている。

 

他の風紀委員も…ネイトとカヨコの気迫に飲まれ恐怖している。

 

「そこにいてはいいが邪魔をするな。今はコイツが最優先だ。用があるなら列に並べ。」

 

「…さい…!」

 

「悪いけど出る幕じゃないよ、風紀委員会。仕事したいのなら余所行って。」

 

「うるさい…!」

 

まるで自分たち等路傍の石と言わんばかりに見向きもせず淡々と話すネイトとカヨコに…

 

「さぁて…尋問の続き…。」

 

「うるさいって…言ってるんだよ!!!!」

 

とうとうイオリは激昂、引き金に指を掛けたクラックショットをネイトに構えた。

 

が、撃つよりも早く一発の弾丸がクラックショットを弾き飛ばした。

 

「なっ…!?」

 

「銀鏡イオリ…アンタ、兄さんに何しようとしたの?」

 

「り、陸八魔アル…!?」

 

見ると、銃口から硝煙を立ち昇らせる『グラスシルバー・ヴィジランス』を構えたアルが睨みつけていた。

 

さらに…

 

「くふふ~♪お兄ちゃんに構ってもらえなくてイオリッたら拗ねてんの~♪」

 

小馬鹿にしつつも一切の油断を感じさせないムツキ、

 

「もっもうあなたたちなんか怖くありません…!兄様に手を出すなら…全員吹き飛ばしちゃいます…!」

 

風紀委員会を叩きのめす覚悟をとうに決めているハルカ、

 

「あらら~♠そんなにあの時の続きをしたいんですかぁ、ゲヘナ風紀委員会のみなさぁん♠」

 

笑顔だが言い知れぬ迫力をほとばしらせるノノミが風紀委員会を包囲する。

 

「お、お前ら…!!!」

 

直感的に察してしまった。

 

だが、それを何とか理性で押し殺すイオリだが…

 

「怪我はしたくないだろ?邪魔するんだったらさっさと帰れ。」

 

そのことを…ネイトたちに恐怖し勝てないことに気付いていることを言い当てられ…

 

「…~ッ!!!」

 

悔しさから涙が溢れ歯を食いしばり立ち尽くしてしまった。

 

…その時だ。

 

「貴方たち、あまり私の部下をいじめないでもらえるかしら?」

 

あの声が響いた。

 

イオリが振り向くと…

 

「いっ委員長!!!」

 

さらに大勢の風紀委員を引き連れたゲヘナ最強の風紀委員長『空崎ヒナ』がそこにいた。

 

「…空崎ヒナ、ようやく話の分かる奴が来た。」

 

「顔を合わせるのは久しぶりね、ネイトさん。」

 

ヒナの登場にネイトもようやくこちらを向いて対応する。

 

なお、カスミの頭は未だ握りしめられたまま。

 

「それで…温泉開発部の大規模な活動の通報を受けて見てみれば…これは貴方たちがやった事なの?」

 

「有無を言わさずにローストされかけたんでな。正当防衛だ。」

 

「………まぁ、これだけの人数を6人で相手にしたのだからそれは認めるわ。」

 

最早どっちが被害者か分かったものではないがそれは置いておいて…

 

「どうして温泉開発部の部長はそんな愉快な玩具みたいになってるのかしら?」

 

「ひどいッ?!酷いぞ、ヒナ委員長!!?」

 

なぜカスミが風紀委員会の取り調べでも受けないような状況になっているかを尋ねる。

 

「………言ってもいいのか、カヨコ?」

 

「誤魔化し誤魔化しでお願い、ネイト兄。」

 

カヨコからの了解を貰い…

 

「…こいつが今日俺がここに何しに来たかをおぼろげながら把握していた…でいいか?」

 

今この状況になっている理由を簡単に説明すると…

 

「ッ!!!」

 

「い、委員長…!?」

 

一気にヒナの表情が険しくなり、

 

「…そう、分かったわ。」

 

一呼吸開けて、

 

「ネイトさん、温泉開発部の部長への取り調べは…風紀委員会と万魔殿の合同で行うわ。だから彼女をこちらに引き渡してちょうだい。」

 

「なっ…!?」

 

通常ではありえない、風紀委員会と万魔殿の合同捜査を約束し改めてネイトにカスミの身柄引き渡しを求めた。

 

「…いいだろう。」

 

「分かった。そう言うことなら私達もそっちの顔を立てるよ。」

 

ならばとネイトとカヨコも取引に応じ、

 

「フンっ!」

 

「ギャンッ!?」

 

「さぁ連れて行け。ボディチェックは済ませてある。爆薬はどこにも持っていないぞ。」

 

「ありがとう。鬼怒川カスミの拘束を。」

 

「はっはい!」

 

カスミに頭突きをかまして気絶させてから近くにいた風紀委員に引き渡した。

 

「他の温泉開発部もボディチェックは済ませてるわ。」

 

「分かったわ、陸八魔アル。総員、温泉開発部を全員検挙して。」

 

『了解っ!』

 

続いて気絶している他の温泉開発部にも手錠をかけていく風紀委員たち。

 

「…どうも事態がこんがらがってるようね。」

 

「そのようだな。いったいどこから水漏れを起こしたのやら…。」

 

「ネイトさん、申し訳ないけどアナタ達にはこのまま私と一緒に万魔殿へ向かってもらうわよ。」

 

まだ会談まで時間はあるがネイトたちをこのままにしておくとまた更なる厄介ごとが彼らを襲いかねない。

 

「分かった。俺はそれでもかまわない。」

 

ネイトもそれを重々承知しているのですんなり了承。

 

「じゃあ後のことは頼んだわ、イオリ。」

 

「りょ、了解!」

 

この場の対処をイオリに任せヒナは車両へと向かい始める。

 

そのすれ違いざま…

 

「…泣くほど悔しいのなら…もっと強くなって見せなさい、イオリ。」

 

「ッ!」

 

「風紀委員会の未来を担うのは貴方よ。…大丈夫、貴方なら強くなれるわ。」

 

イオリを鼓舞する言葉をかけた。

 

さらに…

 

「さっさと震えを止めて跳び上がれ、黒兎。」

 

ネイトもすれ違いざま…

 

「お前の足はもっと高く飛べるはずだ。この俺を…超えて見せろ、『銀鏡イオリ』。」

 

初めて彼女の名前を呼び激励の言葉を掛けるのであった。

 

「ぐすっ…!」

 

ヒナとネイト達が立ち去った後、イオリは涙をぬぐい…

 

「…よし、全員拘束するんだ!油断するな、まだここにいない温泉開発部が襲ってくるかもしれないぞッ!!!」

 

『ハイッ!!!』

 

ヒナから任された仕事を完遂するため気合を入れ直すのであった。




“痛みには2種類ある”。体の痛みと改心の痛み。今どちらか選べ。
―――映画『イコライザー2』よりロバート・マッコール





周年企画のご提案ははまだまだ受け付けてますのでお気軽にお送りください
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