Fallout archive   作:Rockjaw

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我、神仏を尊びて、神仏を頼らず
―――剣豪『宮本武蔵』


Operation to Transfer Top Secret Supplies

ゲヘナ万魔殿にて行われた極秘会談。

 

『雷帝』というかつて存在したキヴォトスの脅威。

 

その遺産、『列車砲シェマタ』の処遇。

 

そして…ゲヘナ学園のビナー討伐への参戦承諾。

 

様々なことが解き明かされ収穫があったこの会談。

 

…事態は俄かに動き始める。

 

トリニティはシスターフッドの本拠地『大聖堂』、

 

「…そう言うことで七転八倒団を預かっていく。」

 

「わざわざいらっしゃらなくてもよろしかったのに…。」

 

この日…ネイトは七転八倒団を迎えに来るため堂々とW.G.T.C.の車列を率いトリニティ学区に進入。

 

どうせ警戒されるなら正面切って公的に訪問した方が手っ取り早いというネイトの電撃戦的思考ゆえの行動だ。

 

さらにアポイントを取り付け彼女たちが身を寄せているシスターフッドのリーダーであるサクラコと面談を行っている。

 

「いや、彼女たちを保護してくれているシスターフッドに顔も見せずに七転八倒団を連れて行くのは礼儀に反する。」

 

「…とても『大変』なことを行うようですね。」

 

サクラコもうすうす勘付いている。

 

ネイト…いや、アビドスと七転八倒団は何か大きなことをやろうとしていると。

 

「全てを話せず申し訳ない。」

 

「いえ、誰にも秘めたる事はあります。私たちも無理にそれを解き明かすような行いは致しません。」

 

それを今はネイトが話せないことも重々承知している。

 

何せ…シスターフッドも似たような立場だからだ。

 

古来より『告解』として様々な生徒のカウンセリングなどを行う部活。

 

その過程でどうしてもプライバシーの観点から秘匿事項が多い。

 

さらには…数百年前から伝わる『黒い過去』も存在している。

 

とても公にはできない情報を抱える者同士、ネイトの想いがサクラコにはよく伝わっていた。

 

「重ね重ねすまない。だが…これだけは約束させてほしい。」

 

「はい、何でしょうか?」

 

ネイトはサクラコの目をまっすぐに見つめ、

 

「今日連れて行く七転八倒団の全員、誰一人欠けることなくここに連れて帰ることをだ。」

 

七転八倒団の全員帰還を固く誓うのだった。

 

「…フフッ、貴方ならきっと『成し遂げられる』と信じていますよ。ですが…。」

 

「どうかしたか?」

 

そんな誓いを立てるネイトにサクラコは、

 

「ネイトさん、貴方に『彼女たち』を『連れて帰ってきてもらう』…というお約束も追加でお願いします。」

 

今日と同じように、つまりネイトも無事ですべてを終えることを要望した。

 

「…無論だ。俺もそうそう簡単に自分の命を投げ出すことができない身分だからな。必ず、俺も無事でここにまたやってくる。」

 

以前のネイトなら最悪の場合は容易く自らの身を投げ打って全員を逃がす玉砕上等な作戦を考えていただろう。

 

だが、今のネイトは『娘』という大切な存在が増え…ショーンと新たな約束も交わした。

 

その約束を果たすため、全力でビナー討伐に全力を注ぐことを決意している。

 

「でしたら、何も心配いりませんね。」

 

サクラコのネイトの決意を聞き微笑んで答えて見せた。

 

「それはそうとネイトさんにお伝えしたいことが…。」

 

「どうかしたのか?」

 

「以前、お教えいただいたチャリティーで販売するTシャツについてですが…。」

 

ここで話題を変えサクラコがネイトに相談したTシャツについての話となった。

 

「ひょっとしてオリジナルTシャツは作れないって言われたか?」

 

「いえ、それは問題なくネイトさんの紹介ということで割引で引き受けてくださるそうです。」

 

あれからサクラコは慣れないながらもセイント・ネフティス社のアパレル部門と交渉を進めていたようだ。

 

「それはよかった。…で、それがどうかしたのか?」

 

「提出するTシャツのデザインを私なりに一つ考えてみたのですがご覧になっていただけますか?」

 

「俺のセンスで大丈夫か?」

 

一応、発注を受けた武器に装飾などしたりはしているがネイトのセンスがサクラコのような今どきの女子高生にウケるとは思えない。

 

「外部の方であるネイトさんだからこそご意見を伺いたいのです。」

 

「…分かった。まともなアドバイスができるかは分からないが見せてもらっても?」

 

「ありがとうございます。こちらになるのですが…。」

 

「どれどれ…。」

 

それでもというのでサクラコが考えてきたデザイン案を見てみると…

 

「………んン?」

 

ネイトは言葉に詰まった。

 

「如何なさいましたか?」

 

「いっいやぁ…なんともインパクトのある…。」

 

最大限言葉を選んだコメントだった。

 

「そうですか!ネイトさんのお召しになっていたTシャツをイメージしてシンプルに分かりやすく私達シスターフッドの教えを伝えようとうデザインを心掛けました!」

 

サクラコはそんなネイトの言葉に喜ぶがそんな彼女が考えたデザインが…これだ。

 

【挿絵表示】

 

インパクトがある…というか…

 

(い、インパクトしかない…!)

 

あまりにも圧が強すぎる。

 

そんなネイトの内心を察したか…

 

「あ、アハハ…。」

 

サクラコの後ろに控えているシスター帽の二か所がピンと立っている橙髪の生徒が困ったような笑みを浮かべている。

 

このデザインにかなりの自信を持っているサクラコ。

 

だが、このTシャツをそのままチャリティーで販売しようものなら確実に彼女…というよりシスターフッドそのものの誤解は加速する。

 

そのことをサクラコを傷つけずにどう伝えたらいいか後の彼女も分からないのだろう。

 

と、なると…

 

「…デザインのコンセプトは分かった。メッセージ性もあるしシスターフッドの想いも伝わるだろう。」

 

正直、インパクト一辺倒のこのデザインをこれ以上弄りようがない。

 

小鍋一杯のお湯に岩塩の塊をぶち込むようなものだ。

 

これ以上薄めようがない。

 

「まぁ、ありがとうござい…。」

 

ネイトに褒められ喜ぶサクラコだが、

 

「だが、これだけだと少々寂しいな。」

 

「寂しい…ですか?」

 

続けられたネイトの言葉に首を傾げる。

 

「あぁ、せっかくチャリティーで販売するんだったらバリエーションを増やしたらいいんじゃないか?」

 

小鍋で薄められないのならばもっと大きな鍋に移し替えればいい。

 

「せっかく多くの部員がいるんだ。シスターフッド内でデザインコンペをやってみるのも手だろう。」

 

バリエーションを増やし相対的にサクラコのデザインのインパクトを弱めようという作戦だ。

 

「まぁ、それはいいアイデアですね!私だけで考えることに固執してしまっていました!」

 

サクラコもこれは目からうろこだったようで中々の好印象のようだ。

 

「~!」

 

後ろのシスターの表情も一気に明るくなり小さく静かな拍手を送っている。

 

「ではさっそくシスターたちに告知を出してみようと思います!」

 

「あぁ、シスターたちの作品を楽しみにしているよ。」

 

どうにかいい方向に持って行けたようだ。

 

すると、ちょうどそのタイミングで…

 

「アニキ!七転八倒団の全員、出発準備完了だ!」

 

大聖堂の入り口から七転八倒団の生徒がネイトに呼び掛ける。

 

「分かった。…では、サクラコ。今度来るときは改めてゆっくり話をしよう。」

 

ネイトも席を立ち出口に向かおうとする。

 

すると…

 

「あ、待ってください。ネイトさんにお祈りを…。」

 

無事の帰還を願いサクラコが祈りをささげようとしてくれる。

 

だが…

 

「…サクラコ、俺はな…ある意味『神』を拒絶し続けてきた人間なんだ。」

 

「え…。」

 

まるで昔を思い返すようにネイトは言葉を発する。

 

「いや、ともすれば恨みさえしたこともある。君達からしたら罰当たりもいい所だ。」

 

「………。」

 

「神を尊ぶ君たちの気持ちはよく分かる。それを否定するつもりはない。だが…そんな俺が頼ったところで神は力を貸してはくれないだろう。」

 

「………。」

 

「だから、俺はこれ以上ないほど人事を尽くす。そこから先は天命を待つしかないのさ。それに…手を合わせるにしても俺の手は汚れすぎてしまってるからな。」

 

そう言い、ネイトが立ち去ろうとすると…

 

「まっ待ってください!」

 

サクラコの後ろに控えていた生徒がネイトに駆け寄りその手を取った。

 

「ッと?!」

 

「ま、マリー…?!」

 

まさかの行動をした彼女にネイトとサクラコは少々驚く。

 

「…ね、ネイトさん。もう片方のお手をこちらに…。」

 

「こ、こうか?」

 

彼女、『伊落マリー』がネイトの両手を手に取り…

 

キュッ

 

「………。」

 

「ま、マリー?」

 

その手を包み込むように自らの手を合わせた。

 

その仕草や表情は…祈りをささげているそれだ。

 

「ネイトさん、たとえ貴方が主を拒絶しようと…主は決してあなたを見捨てることはありません…。」

 

「………。」

 

「だって、この手は多くの人を救い愛する人々や我が子を包み込む…強くて優しい立派な手なんですから…。」

 

マリーには硬く節くれだったネイトの手の感触が伝わっている。

 

自分の細く嫋やかな手とはまるで違う戦い働き続けてきた男の手だ。

 

「もし、貴方が手を合わせられないのなら私達がこうやってお手伝いします。ですのでどうか…どうか祈られる資格がないなんて寂しい事をおっしゃらないでください…。」

 

「…優しいな、マリーは。」

 

自分よりも遥かに年若い少女の優しさは確かにネイトに伝わっていた。

 

そして…

 

「マリー、変わっていただけますか?」

 

「はい、サクラコ様。」

 

マリーと入れ替わるように今度はサクラコがネイトの手を包み込むように手を合わせ、

 

「主よ、この雄々しき戦士と彼の同胞に嵐を撥ね退け無事に旅を終えるようお恵みをお与えください…。」

 

「………。」

 

「そして、どうか戦士の安息できる場所をお守りください。主を憎もうと主に仕える私達を否定しない、優しき彼のために…。」

 

彼女を表すような深い思いやりが伝わってくる敬虔な祈りをネイトに祈念してくれた。

 

「…ありがとう、マリーにサクラコ。俺や皆のために祈ってくれて。」

 

「それを聞けて私どもも幸いです。ネイトさん、そしてアビドスの皆様に恩寵があらんことを…。全てが終わりましたら…ぜひ『お話』を聞かせてくださいね?」

 

「あぁ、分かった。凄い土産話をちゃんと持ってまた戻ってくるさ。」

 

「約束ですよ、ネイトさん。」

 

「約束を破るのはもうごめんだからな。じゃあ…行ってくるよ。」

 

二人の少女の祈りを受けネイトは改めて出口へと向かう。

 

その姿が見えなくなるまでサクラコとマリーは手を合わせ祈りをささげてくれていたのだった。

―――――――――――――――――

 

――――――――――

 

―――

その後、ネイトと七転八倒団の一行はすぐさまトリニティ学区を脱出。

 

幸い、トリニティ勢力が介入する前に事を終えることができた。

 

だが、アビドスに帰還してものんびりしている暇はない。

 

返す刀ですぐさまベルチバードの飛行小隊で飛び立ち…

 

「すっ…すっげぇ…!こんなの持ってくのか、アニキ…!?」

 

「いや…つーか…こんな造りになってんのか…!?」

 

「ばらされてるとはいえとんでもねぇ迫力…!」

 

翌日未明、廃墟区画水没地帯にて『ある代物』を数台のトレーラーに分けて積み込んでいた。

 

「これが…俺達の『切り札』だ。逆に言えば…これがアビドスに届けられなければ勝機は遥か彼方に遠のくと思ってくれ。」

 

荷台に積まれたそれを軽く叩き、この場に揃った生徒全員に伝える。

 

その言葉で全員の表情が引き締まった。

 

「いいか、やることはこの前と一緒だ!しかも、今日俺達の後ろにはキヴォトス最強の戦艦が控えているッ!!!なにも恐れることはないッ!!!」

 

『ウゥッスッ!!!』

 

生徒たちの声に反応するように数㎞沖で停泊している戦艦『マサチューセッツ』が汽笛を掻き鳴らす。

 

その主砲、80口径10インチ三連装ガウスキャノン3基の砲口がこれからネイトたちが駆け抜ける廃墟区画の道に合わせて向けられていた。

 

「では、これより輸送作戦を開始する!!!総員、指定された車両に乗車!!!」

 

『了解っ!!!』

 

こうして…ビナー討伐のための大作戦が始まった。

 

眼前に続くのはロボット兵がひしめく総延長100㎞越えの廃墟区画の通路だ。

 

前回のヘドロ輸送作戦でも数え切れないほどの弾薬を消耗し何とか突破できた難所である。

 

「さぁお出ましだッ!!!荷物に傷一つつけさせるなよ!!!」

 

この日も夥しい数のロボット兵からスイーパーがネイトたちに襲い掛かってきた。

 

《来やがれ、ガラクタども!!!アタシらの資材にしてやんよ!!!》

 

《テメェらと俺達オートマタとじゃ物が違うってとこ思い知らせてやんよ!!!》

 

《騎兵隊、パルス爆弾をブチかましに行くぞ!!!》

 

対するこちらは前作戦よりも重装備化した武装トレーラー*1のコンボイが食い破りつつ前進する。

 

航空騎兵隊のベルチバード編隊も敵の出鼻をくじく様に進行方向の地面に『Mk82E』を投下ていく。

 

車列中央には厳重な金属コンテナに格納された『切り札』を載せたトレーラーがいる。

 

前回ならたとえタンクに当たってもせいぜい道にヘドロが撒き散らされるだけで済んだ。

 

だが、今回この荷物を破壊されようものなら…また一からやり直しだ。

 

プレッシャーは凄まじいが…

 

「今通り過ぎた左の横道、ロボット兵の武器がそろそろ射程圏内だ!」

 

《了解、対処する!!!》

 

「航空機兵隊、左のビルにロケット弾を!!!」

 

《任せな、吹っ飛ばしてやる!!!》

 

「ッ!右ビルの地下からスイーパー多数!!!火力を集中しろ!!!」

 

《来やがったな、サイコロ野郎!!!》

 

『アイアン・グリズリーMk2』に乗り先頭を走るネイトがパワーアーマーのヘルメットに内蔵された『ターゲッティングHUD』に表示される敵の情報をつぶさに各部隊に伝達し素早く脅威を排除。

 

これにより何とか前回よりも激しいロボット兵の襲撃を食い破りコンボイは廃墟街を疾走し続ける。

 

HUDを利用した即興の火器管制の甲斐もあって道のりは順調に消化。

 

「現在、130㎞を通過!!!もう一息だ!!!」

 

廃墟区画脱出まであと一歩のところまで迫った。

 

その時…

 

《ッ!!?レーダー照射!!?》

 

上空のベルチバードに照準用のレーダーが照射された。

 

《全機、ブレイクッ!!!》

 

即座に編隊を解き回避行動に移った次の瞬間、ベルチバードがいた空間をビームが通り過ぎる。

 

しかも一本だけではない。

 

合計三本のビームが中を引き裂いた

 

《ビ、ビームだって!?》

 

《こんなの撃つ奴なんていなかったぞ!?》

 

まさかの兵器の登場に驚く生徒たちだが…

 

「最後の最後にお前か…!」

 

ネイトはこの正体に心当たりがある。

 

それを確かめるべく、

 

「航空機兵隊、高度を上げ10㎞程後退して発射地点の確認を!」

 

ベルチバードに敵の確認を求める。

 

その正体は…

 

《マジかよ!!?アニキ、出口にゴリアテが三体待ち構えてるぜ!!!》

 

大型機動兵器『ゴリアテ』、ロボット兵の最後の切り札のようだ。

 

「またお前らか…!」

 

鬱陶しそうに呟くネイトだが、

 

「ベルチバード、レーザーを照射!!!マサチューセッツ、『トールシステム』を起動しろ!!!」

 

ならばこちらも奥の手を使うまで。

 

《了解!!!各機、ゴリアテに誘導用レーザーを照射!!!》

 

指示を受け、ベルチバードに追加された赤外線レーザーが遠方のゴリアテに向って照射される。

 

そして…

 

「戦術長!『ヤールングレイプル』、誘導用レーザーの照射を確認!!!ロックオン完了!!!」

 

「各砲、『ミョルニル砲弾』装填完了!超電導キャパシター充電完了!!!」

 

水没地帯にてその時を今か今かとまっていたマサチューセッツのCICは即座に主砲の発射体制に入る。

 

「了解、これより支援砲撃を行う!!全門、一斉射!!!ってええええええええ!!!

 

ネイトの留守を任されている戦術長のMr,ガッツィーの号令で全ての主砲が蒼い閃光と共に砲弾を発砲。

 

同時刻、ゴリアテは手ぐすねを引いてネイトたちを待ち構えていた。

 

ビーム砲を指向し確実にコンボイを排除するために回避不能な距離まで引き付けている。

 

照準用レーダー照射はネイトのHUDも感知しけたたましい警報音を鳴らしている。

 

(まだか…!?)

 

だが、避けることはできない。

 

そう焦る気持ちを抑え込みネイトは今か今かと待つ。

 

そして…それは轟音と共にやってきた。

 

コンボイの頭上を一瞬のうちに蒼い光の尾を引いて通過する九筋の流星。

 

極超音速をも優に超えるそれは通り過ぎただけで…

 

《ッつぅ!?な、なんて音ッ!?》

 

《オッオイ窓にひびは入ったぞ!?》

 

《のぉッ!!?アッブねぇ、体勢崩れかけた!?》

 

距離を開けていたはずのコンボイやベルチバードにまで大きな影響まで与えたがそんなこと…

 

バガゴォォンッ!!!!!

 

待ち構えていたゴリアテ三体、それぞれの正中線に3発ずつ着弾し手足を残り消滅した。

 

「はッはぁッ!!!『鋼の巨人』の群れを『トール』が吹っ飛ばしたぞ!!!」

 

ネイトは特に信心深い性格ではない。

 

だが、形を変えた神話の再現にボルテージは上がる。

 

『トールシステム』、北欧神話にて最強と称される神の名を冠した戦艦マサチューセッツに搭載された精密砲撃用システムだ。

 

彼の神の籠手の名を付けられた照準用ユニット『ヤールングレイプル』とトールの持つ鎚を名を与えられた新型誘導砲弾『ミョルニル砲弾』の二つから構成されている。

 

連邦世界では存在しなかった砲弾内に搭載してなお十分な性能を実現できる高性能な電子部品があって初めて実現できた技術である。

 

誘導能力確保のため砲弾本体が6インチに縮小し炸薬量も減少したが従来の砲弾よりも速度が約40%向上しマッハ20に到達。

 

さらに炸薬量の減少は目標のみをピンポイントで破壊できるというメリットともなる。

 

以前、G.Bible入手の際に放たれたのはこのシステムの試作型である。

 

あれからテストと調整を重ね現在では誘導用ビーコンやレーザーに対しわずかな誤差での着弾を実現した。

 

距離100㎞程ともなるとゴリアテの胴体に三発叩きこむ芸当も可能だ。

 

「邪魔者は消えた!!!一気に突っ切るぞ!!!」

 

《よっしゃあ、ここまでくればもう怖いものなしだ!!!》

 

《どんな奴でもかかって来いってんだ!!!》

 

《次はもっと余裕持って飛ばなきゃな…!》

 

こうしてマサチューセッツの新兵器によって道は切り開かれコンボイは無事廃墟区画を突破し貨物駅に到着。

 

貨物を車両に乗せ込み…

 

「すまんが先に戻ってアビドスで準備を頼む。」

 

「了解っす!兄貴もお気をつけて!!!」

 

ネイトといくらかのアビドス生が荷物の警備のため貨物列車に同乗し列車はアビドスに向け動き出すのであった。

 

前回のヘドロなら極端な話だが列車強盗に襲われても被害はヘドロであまり痛手はない。

 

だが、今回の荷物だけは奪われるどころか破損されてはたまらないのでハイランダーと合同警備体制を敷き厳重な輸送体制を構築したのだ。

 

元よりハイランダー内部でも重要な任務と言伝られているようで貨物の情報は漏れている様子はなく列車は順調に運行。

 

日も昇りちょうど昼あたりを回ったところで、

 

《ネイト社長、まもなくミレニアムに到着します。》

 

「了解した。」

 

アビドスに到着するまでの最後の大きな学区のミレニアムに到着。

 

列車はそのままミレニアム中心部にほど近い貨物駅内に入り、

 

「お疲れ様です!この後は少々手続きなどがあるため出発は2時間ほど後になります!私共の警備もおりますので皆さんもお休みになってください!」

 

ハイランダーの手続き関連でちょうど手隙になった。

 

「よし、ではここで大休止とする!今のうちに食事なんか済ませてくるといい!」

 

『ウーッス!』

 

なので、ネイト達も一旦休憩に入ることに。

 

「あれ、アニキはどうするんですか?」

 

「俺は責任者だからな。何かあった時のために残って置こうかと…。」

 

食料は持ち込んでいるのでネイトがそんなことを言うと…

 

「…はぁ~これだからアニキは…。」

 

生徒は呆れたようにため息をつき、

 

「休むんならアニキもっすよ。だったらアタシらもここに残るっす。」

 

残ろうとするネイトにそう伝える。

 

「え、親分残んのか?じゃあ俺も。」

 

「んじゃウチも残るか。誰かデリバリーとってくんね?」

 

他の生徒も続々と駅に残ると答えていく。

 

「おいおい、皆は外に行って…。」

 

それでもネイトは生徒を外出させようと促すが…

 

「だぁーかぁーら、休むんならアニキもっすよ。それに…アリスちゃんとも最近会えてないんでしょ?」

 

「うぐッ…。」

 

「皆、知ってっぜ。この作戦が始まってからこっちにずっと来てなかってこと。」

 

生徒達にそう言われ言葉に詰まる。

 

そう、ネイトはビナー討伐が決まってからここ2週間以上にわたってアリスの元を訪れていない。

 

アビドスの生徒一丸で事に当たっている中、自分だけが休むわけにはいかないと思っての行動だ。

 

「だから、休むんならみんな一緒。そいで短い時間でもいいんでアリスちゃんに会いに行ってやってくださいよ。」

 

そんなネイトを気遣い外に連れ出そうとするが…

 

「しかしなぁ…。」

 

ここの所任務モード入りっぱなしのネイトは難色を示すので…

 

「よぉしテメェら!!!親分を担げ!!!」

 

『オォウッ!!!』

 

「ちょおッ!?お前ら!?」

 

業を煮やした生徒たちがネイトを取り囲み担ぎ上げ駅の外へと駆け出す。

 

「いいから行けってんだよ、アホ親父!!!」

 

「娘寂しがらせんな、馬鹿!」

 

「姉御に言いつけんぞ!!!」

 

軽い調子でネイトを罵りつつそのまましばらく走り続け駅から少し離れたところで…

 

『せぇーのっ!』

 

「ぐへッ!?」

 

「いいから!ハイランダーがいるんだから気にすんな!」

 

「よぉし、テメェらも飯行くぞッ飯ッ!!!」

 

「アニキもさっさと会いに行けよ!」

 

雑に放り捨てられどこかへと行ってしまった。

 

「イツツ…アイツら…!」

 

これでも一応隊長だ。

 

あまりにもぞんざいに扱われ腰をさすりながらぼやくも…

 

「…すまんな。」

 

小さく礼を述べスマホを取り出し、

 

「…あぁ、アリス?今俺…。」

 

そんな生徒たちの気遣いに甘えることにした。

 

そして、電話して僅か10分と経たずに…

 

「パパ~♪」

 

「とぉッ!?」

 

全速力で走ってきたであろうアリスがやってきてネイトに飛びつくように抱き着いた。

 

速度を緩めてくれ光の剣と嵐の弓と矢を一式は下ろしてくれていたが彼女の抱擁は激しくネイトが押し倒される形に

 

「パパ!パパ、パパ、パパぁ~♪会いたかったですぅ~♪」

 

二週間以上ぶりのネイトに火でも起こすかという勢いでぐりぐりと顔を擦り付けるアリス。

 

「…すまなかったな、アリス。忙しくて会いにこれなくて…。」

 

事態が事態なだけに仕方ないがそれでも会いにこれなかったことを謝罪するネイトに対し、

 

「大丈夫です!パパは大規模レイドミッション中なのですし毎日電話をくれていたので寂しくなかったです!」

 

二週間分の時間を取り戻すようにネイトを抱きしめその感触を堪能するアリス。

 

と、そんな彼女の後を追ってきたか、

 

「アリスー、走っちゃ危ないよー!」

 

「わぁッ!?ネイトさん、大丈夫ですか!?」

 

「け、怪我してない、ですか…!?」

 

モモイ達ゲーム開発部もやってきた。

 

「やぁ、皆。アリスを任せっぱなしですまなかったな。」

 

「ううん!アリスも一杯友達作って毎日楽しそうに過ごしてたよ!」

 

「ネイトさんの電話も毎日嬉しそうに話してくれてました。」

 

「でも…やっぱり少し寂しそうで…。」

 

モモイ達から会えなかった間のアリスの様子を聞いていると…

 

「パパ~…。」

 

アリスの元気が少し減り抱きしめる力が弱まった。

 

「…そっか、本当にごめんな。」

 

胸の中のアリスを抱きしめ返すネイト。

 

「短い時間だけど…楽しもうな。」

 

「はいっ!」

 

あと二時間弱、わずかな時間だが久しぶりの親子の時間を過ごすこととなった。

 

ネイトたちは近くにあったファミレスに入り昼食をとることに。

 

「ほら、アリス。あーん。」

 

「あ~ん♪」

 

「美味しいか?」

 

「はい、パパにもお返しです♪」

 

今はネイトの隣に座ったアリスと触れ合いながら食べ進んでいる。

 

「私達もご馳走になってよかったの、ネイトさん?」

 

「構わないさ、モモイ。これくらいでアリスを任せてる礼になるなら安いものさ。」

 

「そ、そんな、友達と一緒に過ごすことは当たり前なのに…。」

 

「だったら俺も友達だから気にしないでくれ、ユズ。」

 

「じゃあ遠慮しないよぉ~!」

 

と、賑やかに食べ進んでいると…

 

「いいなぁ、アリスちゃん…。」

 

アリスを羨ましそうに見つめるミドリに気付いたのか、

 

「んむ?ミドリもパパにアーんしてもらいたいのですか?」

 

「えぇッ///!?」

 

アリスがそんなことを彼女に尋ね、

 

「いいですよぉ♪パパ、ミドリにもアーンしてあげてください♪」

 

ネイトに彼女にもアーンするようにお願いする。

 

「そっそんないいよ、アリスちゃん!?///」

 

慌ててミドリは否定するも…

 

「いいじゃ~ん、ミドリ~♪せっかくなんだからさぁ~♪」

 

「お姉ちゃん!?」

 

面白いものを見つけたように笑うモモイに抑え込まれ、

 

「…それじゃ、ほらミドリ。アーン。」

 

「ネイトさんッ///!?」

 

ネイトも微笑みながらミドリにスプーンを差し出す。

 

「あ、あー…。///」

 

観念したかミドリが口を開ける。

 

…が、

 

Prrr…Prrr…

 

『………。』

 

突如としてなり出すネイトのスマホ。

 

「…ミドリ、アーン。」

 

「あ、アーン。」

 

ムードぶち壊しだがネイトは微妙な表情となったミドリの口にスプーンを入れる。

 

「アリス、ちょっとすまない。」

 

アリスに退いてもらい少し離れた場所に向い、

 

「はい、もしもし…。」

 

電話に出ると…

 

「………は?」

―――――――――――――――――――

 

―――――――――――

 

―――

「ですから、この先は立ち入り禁止なんですって!!!」

 

ハイランダー貨物駅、そこでハイランダーの生徒とある者たちが口論になっていた。

 

「いぃ―えっ!!!ちゃんと中央委員会から許可を頂いている正当な生放送です!!さぁ、その奥の荷物について取材させてください!!!」

 

「この必至な動き…特ダネの香りですね!!!」

 

「止めなさい!!!中央委員会が許可しても荷主様からの許可がなければ取材はお断りします!!!」

 

多数いるハイランダーの生徒相手に立った二人で一歩も引かない勇敢な…というよりしつこい取材体制。

 

そう、この日なんとも間が悪い形である学校がこのミレニアムにやってきていたのだ。

 

その学校は…

 

「皆さん!クロノス報道部の川流シノンと!!!」

 

「風巻マイが生放送でお伝えしています!!!」

 

クロノススクールの人気キャスターであるシノンと同じくレポーターの風巻マイという生徒がこの貨物駅に押し掛けているのだ。

 

「見てください!!!多数のハイランダー生徒の奥に鎮座する謎の貨物列車!!!見るととても巨大な何かが積まれています!!!」

 

「彼女たちの様子を見るにとても重要な貨物が積まれていることは一目瞭然ですね!ひょっとッしてキヴォトスの運命を左右するほどの物でしょうか!?」

 

「果たしてその正体は!?今より突撃取材を行いたいと思います!!!」

 

と、そんな二人はいつものような強引な取材姿勢で格納庫に収められた貨物列車に迫る。

 

「止めろって言ってるだろ!?お前ら、あの荷物の持ち主分かってんのか!?」

 

「おぉ、それも教えていただけると助かります!!!」

 

「あなた達がここまで守ろうとする荷物とその荷主について教えていただけますか!?」

 

「皆さん、見てください!私達を追い返そうというハイランダー生徒たちのこの気迫!!!これはより一層確かめなければとジャーナリスト魂に火が付きました!!!」

 

「いい加減にしろ!!!幾ら中央委員会が許可したとはいえ目に余るぞ!!!」

 

とシノンとマキと彼女たちを阻もうとするハイランダー生徒でもみくちゃになる格納庫前。

 

その時だ。

 

「おい。」

 

決して大きくはない声がその場に響いた。

 

それだけで…

 

『ッ!!??!!??』

 

今まで騒がしかったその場が水を打ったように静まり返る。

 

ハイランダー生徒たちの顔も青くなりシノンとマキ達クロノスの生徒は…まるで錆び付いたロボットのように振り返った。

 

そこには…

 

「俺の荷物に何か用か、クロノス?」

 

仁王立ちで怒りの形相を浮かべている一人の大人、ネイトがいた。

 

「こ…これはネッネイト社長…!?」

 

「は、はじめっまして私っクロノスでリポーターをやってます風巻マ…。」

 

シノン、そしてマキの両名は言葉に詰まりながらも挨拶するが…

 

「俺、お前たちに取材の申請とかもらった覚えないんだが?ん~?」

 

それを無視しネイトは取材チームに歩み寄る。

 

「で?誰からうちの荷物の取材していいって許可が出たんだ?」

 

「そっそれはその…!」

 

「中央委員会に確認したがハイランダーの施設の取材は許可したが運搬中の貨物に関する撮影許可は出してないと言われたが?」

 

「えぇっとその…!」

 

「で、許可も一切なく俺の荷物に近づき剰え生放送で衆目の目に晒そうとした…と。」

 

淡々とここに戻ってくるまでに調べた情報を二人に告げるネイト。

 

先程の勢いはどこへやら、シノンとマキのトーンはどんどん小さくなっていく。

 

「変わらんな、クロノス。プレジデントと一緒にタコ踊りしてた頃と何も変わらん。」

 

「そ…そのようなことは…。」

 

「おいおい、このテレビを見ている視聴者全員が証人なのを忘れるなよ?それを考えてものを言え。」

 

「は…はいぃ…!」

 

「なるほど、下がった視聴率を稼ぐためたとえ制止されようが『知る権利』を盾にその後に起こるであろうウチの被害は一切度外視で取材をしようと。そうかそうか。」

 

「………。」

 

とうとうネイトの迫力に気圧され黙りこくる二人。

 

「おい、カメラはこれか?」

 

「はっはい…!」

 

ネイトは今撮影中のクロノスのカメラに向き直り…

 

「いいか、これを見て俺の荷物を狙おうと思っている馬鹿どもに告げる。もしこの荷物を狙うのなら…俺がカイザーなんか目じゃないっていうくらいの地獄を味合わせることをここに誓う。」

 

この生放送の全視聴者に向け警告を発した。

 

「俺はこの列車と一緒にアビドスまで向かう。やる気があるなら相手になってやる。ヘイローが砕けても構わない覚悟があるなら…掛かって来い。」

 

そう短く言い終え、ネイトはシノンとマキに向き直り…

 

「去れ、今回はこれくらいで済ませてやる。」

 

ここから出ていくように二人に言い放った。

 

が…

 

「しっしかし我々も遊びで取材をしてるわけでは…!」

 

「ま、まだ生放送の時間中ですので…!」

 

二人は選択を誤った。

 

「は?」

 

「~ッ!!!」

 

一段とネイトの声が低くなり…

 

「聞こえなかったのか?………さっさと出て行けと言ってるんだ、このスピンドクターマスゴミのガキ共がァッ!!!!!」

 

貯め込んでいた怒りが一気に爆発、

 

『はっはいいいいいいいいい!!!』

 

これにはシノンとマキ達も跳び上がって一斉に退散していった。

 

「はぁ~ックソッ!」

 

珍しくいら立ちが隠せずネイトは地面をける。

 

「もッ申し訳ありません、ネイト社長!」

 

すぐにハイランダーの生徒が謝罪するが…

 

「…いや、俺もイラ立ってすまない。それから、君たちが謝ることはない。君達はよく業務を果たしてくれた。」

 

すぐに調子を戻しクロノスを阻んでくれた彼女たちに礼を述べる。

 

「で、ですが休憩中に呼び出してしまって…。」

 

「む、娘さんとお会いになってたようですし…。」

 

それでも自分たちが対処すべき案件で休憩中で家族と触れ合っていたネイトを呼び出したことに申し訳なく思うしかない。

 

「…手続き関連はあとどのくらいで終わる?」

 

「はっはい!あと1時間ほどで…!」

 

「分かった、急ぐ必要はない。確実にやってくれ。」

 

ネイトは出発までの時間を確かめ…

 

「二つほど頼みがある。」

 

「なんでしょうか?!」

 

「一つは…あの子たちをここに入れてもいいか?」

 

後を指さすと…

 

「「「「………。」」」」

 

駅の入り口付近でこちらを見つめるゲーム開発部の姿があった。

 

「はっはい構いません!」

 

「ありがとう。それから…。」

 

ネイトはある予想をハイランダーの生徒たちに伝えた。

 

その予想は…的中した。

 

これからほんの10分経たずに、

 

「うふふ…先ほどの生放送見ましたよ、ネイトさん?」

 

「凄い迫力だったね。でも、あそこまで怒るのは分かるよ。」

 

「久しぶりだな、ヒマリにエイミ。」

 

ミレニアムサイエンススクール『特異現象捜査部』のヒマリとエイミ、

 

「おぉぉぉ…!いったいこれは何なんだ…!?」

 

「見たい、調べたい、組み立てたイィィィ…!」

 

「一体どんなものを運んでるんですか…!?」

 

技術者集団、エンジニア部の面々に…

 

「一体どんなシステムを組んでるんだろ…!?」

 

「見たことないコンソールの構造…!」

 

「し、真空管!?真空管で動いてるの!?」

 

ハッカー集団『ヴェリタス』の面々と錚々たるメンツが貨物駅に集っていた。

 

「はぁ~…。」

 

「あら?この超天才清楚系病弱美少女ハッカーを前にため息とは…幸せが10個ほど逃げてしまいますよ?」

 

「もうそれ以上逃げてるんだよなぁ…。」

 

ネイトの予想、それはミレニアムからの来客だ。

 

これだけの騒動を起こしネイトの存在も露見すれば確実にやってくると踏んでいたのだ。

 

そして…

 

「ねぇねぇネイトさん!これってもしかして!」

 

「アレですか!?アレを持ってきたんですか!?」

 

「す、凄い…!でも一体何に…?」

 

「…さすがにモモイ達は気付くか。」

 

まだ覆いに隠されているというのにモモイ達はこの荷物の正体に気が付いたようだ。

 

「あらあら…そんなにすごいものを運んで何を行うおつもりで?」

 

「パパ、パパっ!モモイ達は何を知ってるんですか?!アリスにも教えてください!」

 

ヒマリだけでなくアリスもこの荷物の正体と用途を聞き出そうとする。

 

「…はぁ~、荷物の正体は明かせないが…何をしようとしているかは明かそう。」

 

どう考えても何も言わないでこの場を収めるのは不可能な上、

 

「それに…『特異現象捜査部』の領分にも被ってるだろうからな。」

 

ネイトはそう言い、タブレットを取り出しヒマリに差し出した。

 

「拝見させていただきますね。」

 

それを受け取ったヒマリは中身を確かめる。

 

周りにいたエンジニア部やヴェリタスの面々も覗き込む。

 

「…なんとこんな怪物がアビドス砂漠に…!?」

 

「一体どんなメカニズム、どんな構造でこれほどの巨体を…!?」

 

「プログラムが一切見当がつかない…!どうやってこんな活動を単独で…!?」

 

初めて見るビナーのデータにヒマリ達は言葉を失うが…

 

「こっこれって…!」

 

「まさかケテルの…!?」

 

「あ、あれよりも、ずっと大きい…!」

 

モモイ達は違う。

 

かつて水没地帯で目の当たりにした機械の化け物『ケテル』と同類の存在だとすぐに気付いた。

 

「ケテル?パパが倒したという『鋼鉄の猛獣』のことですか…?!」

 

「そうだ。」

 

アリスの問いかけにネイトが答え…

 

「これは…そのビナーを倒すための切り札だ。だから何としてもアビドスに送り届けなきゃならない。」

 

自分たちがなぜここにいるのかの理由を明かす。

 

「だが…あん畜生どものせいで…!」

 

「…ご愁傷さま、ネイトさん。」

 

苛立ちが復活したネイトをエイミが慰めてくれた。

 

おそらく自分たちがあんな事をされたらもっと過激な行動に移っていただろう。

 

ネイトの気持ちが全員痛いほどよくわかった。

 

だが、

 

「でも、どうして私達はすんなりここまで入れたんだい?」

 

ウタハの疑問ももっともだ。

 

クロノスをあれだけ威圧して追い払ったというのに自分たちはすんなりほぼ顔パスで入れた。

 

あまりにも対応に差がある。

 

「お前たちは絶対来ると思ったしな。それに…。」

 

「それに?」

 

「…俺がどうこう言おうと…付いて来るつもりだろ?」

 

ウタハの疑問への答えと同時にネイトはこの場にいる全員にそう尋ねると…

 

『…エヘッ。』

 

どこか照れ臭そうに笑った。

 

「だろうと思った…。」

 

そうネイトは諦めたように息をつき、

 

「…あぁ、もしもしマコト?今大丈夫か?」

 

スマホを取り出しマコトに連絡を取った。

 

《キャヒャヒャヒャヒャッ!!!災難だったなぁ、ネイト社長!》

 

「…あぁ、さっきの放送見てたか。」

 

《あのクロノスのリポーター共の顔!久々に胸がすく思いだったぞ!》

 

どうやらマコトも先ほどの生放送を視聴していたようでなんともご機嫌な様子だ。

 

「で、だ。一つ相談がある。」

 

《キキキッどうかしたのか?》

 

「今ここにミレニアムのお歴々が集合している。どうやっても俺に付いて来るって言ってきかないんだ。」

 

《…それがどうしたんだ?》

 

「例の計画、ミレニアムをW.G.T.C.の『オブザーバー』として何人か連れて行ってもいいか?」

 

『ッ!!?』

 

ならばとネイトはさっそくヒマリ達を連れて行く旨をマコトに伝えた。

 

《…正気か?ただでさえ機密事項が多い作戦なんだぞ?》

 

「分かってる。だが、こいつ等連れて行かなかったら絶対覗き見して情報が流出するぞ。」

 

《グヌっ…!》

 

異を唱えそうになったマコトだがネイトの言うことに言葉を詰まらせる。

 

もうネイトが何かやろうとしていることはキヴォトス中に広まってしまったも同然。

 

その詳細を知るものはまだいないだろうが…ミレニアム相手では隠し通せる可能性はかなり低い。

 

マコトもそのことは重々理解していた。

 

「だから損切だ。こいつらを招くことでこれ以上の情報流出を防ぐ、決して無い手ではないだろ?」

 

そして、ネイトのこの言葉で…

 

《…分かった、ミレニアムのオブザーバーとしての参加を認めよう。但し、我々の邪魔はしないこと、それが条件だ。》

 

渋々だがミレニアムの同行を認めるのであった。

 

「マコト議長、私はミレニアムサイエンススクール3年生の明星ヒマリと申します。参加のご承諾、感謝します。」

 

《ほぉミレニアムの『全知』とは…。良かろう、その頭脳に我がゲヘナの威光をとくと刻み込むがよい。》

 

「えぇ、この『ミレニアムの超天才清楚系病弱美少女ハッカー』たる私がすべてを記録いたしますわ。」

 

といつものように自画自賛100%の自称でマコトに自己紹介すると…

 

《…なぁ、ネイト社長。本当に大丈夫か?》

 

「どッどういう意味で…ッ!?」

 

「まぁ…実力は確かだ。うん…。」

 

「ネイトさん!?」

 

言葉を失うマコトと明らかに口数が減ったネイトなのであった。

 

《…まぁよかろう。それからネイト社長。明日だ、明日にこちらも動く。》

 

「了解、こっちも明日にはアビドスに到着できる。」

 

双方情報共有を行い通話を終える。

 

「ネイトさん、今のはどういう意味ですか!?」

 

「まぁまぁ部長。ゲヘナの生徒会長に交渉してくれたんだから。」

 

「そうだよ、ヒマリ。ネイトさんに感謝しなくてはね。」

 

ネイトに食って掛かりそうになるヒマリをエイミとウタハは抑える。

 

「とりあえず…ゲーム開発部は全員と特異現象捜査部の二人は決定だな。」

 

「ぃやったー!」

 

「フフッ当然ですね。」

 

一方冷静にネイトはオブザーバーとしての同行者を選別していく。

 

まずはケテル討伐経験のあるモモイ達とこの手の専門家であるヒマリ達。

 

「アリスもパパと一緒に行けるのですか?!」

 

「あぁ、だがアリスは今回は見学だ。良いな?」

 

「は~い!」

 

アリスもネイトと一緒に行けることに大喜びのようだ。

 

そして…

 

「エンジニア部にヴェリタス。ジャンケンしてくれ。勝者一人を連れて行く。」

 

エンジニア部とヴェリタスの参加者を選抜することに。

 

「えぇーッ!私達は全員じゃないのー!?」

 

「贔屓ですよ、依怙贔屓!!!」

 

マキとコトリが非難するも、

 

「情報流出の可能性は低くしたいからな。いやなら留守番だ。」

 

『うぐッ…!』

 

この場の決定権はネイトにあるのでぐぅの音も出せず受け入れることに。

 

結果、

 

「フフッこれが部長の実力というやつさ。」

 

「皆の分までしっかり見てくるからね。」

 

「「「「グヌヌ~…!!!」」」」

 

エンジニア部からはウタハ、ヴェリタスからはハレが勝ち残った。

 

と、ちょうどそのタイミングで…

 

「ネイト社長!手続きが完了、いつでも出れます!」

 

ハイランダーの出発準備が整ったようだ。

 

「よし、ヒマリ以外は警備を手伝ってもらうぞ。ヒマリ、客車を用意してもらった。そこに乗ってくれ。」

 

「痛み入ります。」

 

「よし、全員乗車!アビドスに向かうぞ!」

 

『了解っ!』

 

休憩から戻ったアビドス生徒と共に貨物列車に乗り込むミレニアムのオブザーバー達。

 

その全員が一路アビドスへ。

 

そして翌日…キヴォトスに激震が走る。

 

ゲヘナ学園、二日後アビドス及びW.G.T.C.とともにアビドス砂漠にて実弾演習の実施を連邦生徒会に通達

*1
前回作戦で入手したロボットのJunkでレーザー武装を追加してある。なお、電源はレーザーマスケットのクランク発電機




次話、役者が集う

追記
25日午前0時に記念エピソードを投稿します
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