Fallout archive   作:Rockjaw

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編成紹介
前線部隊『エイハブ』
エイハブ
ネイト(X-02):通常
ハルカ:爆発
ワカモ:神秘
イオリ:爆発

エイハブ2
ホシノ(臨戦)防御型:神秘
セリカ:爆発
ヒナ:爆発

戦車部隊『クイークェグ』
イロハ:神秘
番長:爆発
???:???
指揮部隊『スターバック』
サツキ:爆発

混成車両部隊『タシュテーゴ』
ノノミ:貫通
ムツキ:爆発
指揮部隊『スタッブ』
カヨコ:爆発

バイク機動部隊『パース』
シロコ(ライディング):神秘

砲撃部隊『ダグー』
アビドス生徒&万魔殿:通常
指揮部隊『フラスク』
マコト:貫通

ガウスキャノン射手『フェダラー』
アル:爆発

総合指揮部隊『ピップ』
アヤネ:貫通
アコ:神秘

オブザーバー
ヒマリ:貫通
エイミ:爆発
ウタハ:貫通
ハレ:爆発
モモイ:貫通
ミドリ:貫通
ユズ:貫通
アリス:神秘


Operation: Returning Pequod:Singing Echoes in the Desert

あの日以来、あの声は聞こえなくなった。

 

久しく聞いた…懐かしく耳心地が良いあの声…。

 

だが…あの音はどういうわけか突然泣き止んだ。

 

そして、雨も降っていなかった。

 

どうにも不可解だったが…あの声が聞けたことに比べたら些末なことだ。

 

また聞きたい…。

 

あの大地が目覚めだす『豊穣』の象徴である『産声』を…。

 

かつては幾度も聞けたのにそれももう記憶の彼方だ。

 

本当に久しかった…。

 

思わず我を忘れてしまうほど…甘美な響きだった。

 

また聞けたら…。

 

…………!

 

聞こえた!!!

 

またあの声が聞こえた!!!

 

願いが通じたんだ!!!

 

行かなくては!!!

 

今度こそ!今度こそ聞き逃したりしない!!!

 

行かなくては!そして…この地を豊かにしなくては!

――――――――――――――――――

《ピップより展開中の全部隊へ。『白鯨』は『延縄』にかかりました。繰り返す、『白鯨』は『延縄』にかかりました。誘導成功、こちらに接近中です。》

 

Operation: Returning Pequodの第一段階、ビナー誘導作戦である通称『延縄』。

 

アビドスオオハイギョの鳴き声の再生機器を等間隔で設置。

 

ビナー接近時の振動によって音量を上下させビナーから絶えず一定距離を保って鳴き声を再生させ、アビドス大オアシスまで引っ張り上げる作戦だ。

 

作戦は成功しビナーはこちらに迫りつつある。

 

「こちら、エイハブ1。了解した。総員、攻撃態勢をとれ。」

 

総合オペレーターのアヤネからの報告を受け、コッキングレバーを引きチャンバーに初弾を装填するネイト。

 

そんなネイトがチョイスした得物を見て…

 

「あ、あの兄様…。」

 

「どうかしたか、ハルカ?」

 

「そ、その銃で大丈夫でしょうか…?」

 

ハルカがおずおずと尋ねる。

 

パワーアーマーを着用しているネイトの得物と言えばレーザーやプラズマ、そうでなくても生半可なキヴォトス人では持て余すような重火器などだ。

 

だが、今日のネイトの武装は…

 

「み、見たところAKのようなライフルですが…。」

 

キヴォトスでも極々普通に使われている『AKシリーズ』のようなライフル一丁のみだ。

 

その名も…

 

「『ハンドメイドライフル』と言ってな、確かにAKに近い外観で弾薬も同じだが微妙に違う銃なんだ。」

 

『ハンドメイドライフル』、かつてヌカワールドを占拠していた『ヌカ・レイダーズ』が製造し愛用していたライフルだ。

 

とにかく頑丈で故障知らず、連邦を旅するうえでネイトの大きな助けになってくれた。

 

が、相手は戦車を凌駕する装甲を有するビナーだ。

 

神秘を有する自分達ならまだしもただのライフルではダメージを与えるのは厳しいと思うのだが…

 

「フフッご安心なさいな、便利屋の社員さん。」

 

「え…?」

 

「師父様のその得物は…例えるなら『呪い』が込められた『妖刀』の類ですわ。」

 

愛おしそうに『真紅の災厄』を撫でながらワカモはそう呟いた。

 

「よ、妖刀だと…?」

 

「えぇ…私が用意した重装甲兵器がまるで豆腐のように粉砕されましたもの、風紀委員会の切り込み隊長さん。私もダウンをとられましたから。」

 

「『災厄の狐』からダウンを…!?」

 

ワカモの手強さはイオリも知るところだ。

 

ネイトの実力は語るまでもないが…見かけは普通なこの銃で彼女をダウンさせたとはにわかに信じられなかった。

 

「あぁ…今でもあの夜のことを思い出すだけで体が滾ってしまいますわぁ…♡」

 

口元しか見えないが頬は染まりその眼は蕩けており完全に上気している。

 

((うわぁ…。))

 

そんなワカモの姿を見て若干ひくハルカとイオリ。

 

「落ち着け、ワカモ。今から興奮してたら作戦中に痛い目見るぞ。」

 

一方、彼女と手合わせする機会が多かったネイトが手慣れたようにワカモを鎮めさせるが、

 

「うふふ…師父様…。このワカモ、むしろこのような大戦おおいくさに巡り合えたことこそ幸せ…。存分に戦い力尽きたのならこの砂漠を枕に討ち死にするのもまた一興ですわぁ…♡」

 

上気した表情そのままに自らを省みない発言をするワカモ。

 

だが、

 

バチィン!

 

「キャンっ!?」

 

「バカなことを言うんじゃない。」

 

「うっうぅ~師父様ぁ~…?」

 

仮面の上からだがパワーアーマーの出力で引絞られたデコピンを喰らい涙目となった。

 

ぎょっとした目でハルカとイオリもネイトを見る中、

 

「お前たちの生き死には俺が決める。そして…俺はここで誰も死なせるつもりはない。」

 

『………。』

 

静かだが力強い言葉でその覚悟を言い放つネイト。

 

そして、

 

「総員、こちらエイハブ1ネイトだ。今回の任務、達成に関して条件を一つ付け加える。」

 

この場の全員に改めて言い聞かせるように…

 

「帰還率100%、それが唯一の成功条件だ。兵器なんてまた調達すればいい。危険な時は何を置いてでも逃げろ、以上だ。」

 

帰還率100%、つまり全員生還を言明するのであった。

 

《エイハブ2、言われなくてもです。》

 

《クイークェグ、面倒ですがそうさせてもらいます。》

 

《スターバック、お任せを。皆をちゃんとお世話するわぁ。》

 

《タシュテーゴ、了解しましたぁ♪》

 

《スタッブ、もちろん。誰も欠けさせたりしないよ。》

 

《ダグー。そうさ、皆で帰るんだ。》

 

《フラスクだ。キキキッ貴様があの戦争で成し遂げられたのだ。今度はこのマコト様の番だ。》

 

《フェダラー、了解よ。皆を生きて返すために私も全力を尽くすわ。》

 

その通信に全部隊が返信、その命令を受諾するのだった。

 

「…そう言うことだ。無理はしても無茶はするな。この中で誰かが死ぬくらいなら…作戦失敗の方がいい。生きていればまたチャンスがあるんだからな。」

 

「はっはい…!」

 

「分かった…!」

 

「…ウフフッえぇ…生きてまた貴方様と死合いたいので…必ず生きて帰らなくては。」

 

そして、ハルカ・イオリ・ワカモも生還の決意を固めた。

 

すると、

 

《パパッ!パパもちゃんと帰ってきてくださいね!》

 

《そうだよ!帰ってこなかったら絶交だからね!》

 

通信機から元気なアリスとモモイの声が木霊する。

 

そう、ネイトもその帰りを待ってくれている娘と友が増えた。

 

「フフッ、もちろんさ。」

 

纏っていた空気が少し和らぎ微笑んでいるのが分かる声音でそれに返信した。

 

その時、

 

《報告、『延縄』のエサは残り僅か。到着予定まで残り10分です。》

 

アコからの通信とともに…

 

ガタガタ…ッ!

 

地震とは無縁のアビドスの大地が…震え始めた。

 

「来る…!」

 

「いよいよなのね…!」

 

それを感じ取ったホシノと『ある武器』を担いだヒナの額に汗が伝う。

 

《残り5分。》

 

ガタガタ…ッ!

 

「ん…皆、いつでもエンジンを掛けられるよう準備…!」

 

さらに大きくなった揺れ、オフロードバイクに跨るシロコはゴーグルを付け備える。

 

《残り3分…!》

 

ガタガタッ

 

「さぁ、いよいよだよぉ…!」

 

車に乗っていても伝わり始めた揺れにムツキも緊張の面持ちを浮かべる。

 

《残り1分です…ッ!》

 

ガタガタガタガタッ!

 

「い、いったいどれほどの化け物が…!」

 

とうとう戦車に乗っているイロハにすらその揺れが伝わり表情がこわばる。

 

さらには…大気中に砂の粒子が混じり始めた。

 

《こ、こちらノゾミ…!そっちに向って…何かが地中から接近中だよ…!》

 

《おっ大っきいー…!》

 

ここから離れたノゾミたちはそれが見えた。

 

彼女はおろかマイペースを崩したことがないヒカリですらその声に緊張がうかがえる。

 

砂漠の砂を噴き上げながらオアシス跡地に迫る…奴の姿が。

 

ガタガタガタガタガタガタッ!!!

 

いよいよ、その揺れはかつてのマサチューセッツの砲撃の際に発生したそれを優に超える強さとなった。

 

《残り30秒!!!》

 

「さぁ来い…!アビドスの未来のため…おまえを倒させてもらうぞ…!」

 

その揺れと共に湧き上がる闘気を隠すことなくネイトは今か今かとその時を待つ。

 

そして…その時が来た。

 

《きっ来ます!!!》

 

《皆さん、ご武運をっ!!!》

 

アヤネとアコの通信が来た次の瞬間、

 

ドッバアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

『白亜の摩天楼』…いや、ビナーが砂漠の大地を穿ち聳え立った。

 

だが…

 

ガシャアアアアアン!!!

 

―ッ!!?―

 

ビナーの顔面に重厚な鎖で作られた『網』が覆いかぶさった。

 

その端々には…

 

「ハルカッ!!!」

 

「きっ起爆ッ!!!」

 

ハルカが遠隔式の起爆装置を押し込むと、

 

ズドドドドドドォッ!!!

 

その端々にぶら下がっていた155㎜砲弾が起爆、ビナーの胴体を覆うように爆炎が花開いた。

 

「効果判定!!!」

 

ネイトが観測班に確認を求めると…

 

《ッ!効果アリ、効果アリ!!!奴に口篭を装着できたぞ!!!》

 

観測班からの報告、そして煙が晴れると…鎖の端々が赤熱しビナーの体にへばりついていた。

 

―~ッ!!?―

 

ビナーはなんとか振り払おうとしたり口を開いて引き千切ろうとするもビクともしない。

 

なんせこの鎖は…マサチューセッツの錨鎖と全く同じものだ。

 

たった一対で数万トンの戦艦を係留できる強度、生半可なことでは破壊できない。

 

さらに、

 

「アヤネ、檻を落とせ!!」

 

《了解ですっ!!!》

 

アヤネの操作で周囲に甲高い音が鳴り響き始め、

 

―ッ!!?―

 

ビナーの体がこわばった。

 

ビナーは…猛禽類の鳴き声を聞くと近づかなくなる性質がある。

 

では…それで周囲を覆われるとどうなるか?

 

答えは簡単、どこにも行くことができずこの場に釘付けになる。

 

ネイトはかつての偵察でビナーの音を聞き取れる範囲を割り出した。

 

その範囲ギリギリに…鷹の鳴き声を再生させる音響機器を設置。

 

あえて戦場と設定したアビドス大オアシス一帯がビナーにとって何とか耐えられるであろう領域にしたのである。

 

まさに『音の檻』。

 

これによってビナーは…この場に釘付けされることを余儀なくされたのだ。

 

「全部隊、行動開始!!!」

 

「ああ!ドキドキしてしまいますわッ!!!」

 

「はいっ!私がすべて消しちゃいます!!!」

 

「よし、目にもの見せてやる!!!」

 

「さぁ始めよっかーっ!!!」

 

「気合い入れていくわよ!!!」

 

「久しぶりに暴れさせてもらうわ…ッ!」

 

ネイトの号令を受け最前線部隊『エイハブ』は行動開始、

 

「目だ、奴の目を狙え!!!」

 

砂の大地を駆けだし、ビナーの目に向け弾丸を発砲。

 

眼というものは万物共有の急所だ。

 

特にビナーはミサイルのロックオンなどはアイセンサーに頼っているとのこと。

 

無力化できれば戦いを優位に進めるはずだ。

 

それが証拠に…ビナーも煩わしそうに鎌首をもたげている。

 

「効いてるわ!先輩たち、どんどん撃って!」

 

「うへぇ~!山椒は小粒でもなんとやらってねぇ!」

 

「油断はダメよ、二人とも…!」

 

エイハブ2であるホシノ達も散弾とライフル弾の弾幕を叩きこむ一方、

 

「う、ウワアアアアアア!!!壊れてください壊れてください壊れてください壊れてくださいぃぃぃぃぃ!!!」

 

エイハブ1では半狂乱になりながら『ブローアウェイ』を乱射するハルカを見て、

 

「あらッゲヘナにもこんな素晴らしい思想の方がいらっしゃったとは!」

 

「おい、そいつは校則違反…ってお前は七囚人だったな!」

 

何故か上機嫌になるワカモとそれを諫めようとするイオリ、

 

「よく狙え、俺達はあっちより手数に劣るんだからな!」

 

ネイトはフルオートでとにかくビナーに弾丸を叩きこむ。

 

既にドラムマガジン5つ分は空となっていた。

 

さらに、

 

「Alle Panzer Vor…ッ!!!」

 

「各車、砲撃開始ッ!!!」

 

番長、イロハ率いる戦車部隊『クイークェグ』も行動開始。

 

M1A4E2 ThumperとティーガーⅠ、時代も世代も世界も違う二つの戦車の主砲が火を噴いた。

 

二種類のAPFSDSはネイト達に当たらないよう少々高い位置にあるビナーの露出している胴体に着弾する。

 

ティーガーⅠの88㎜砲ですら30㎝以上、140㎜砲に至っては1m以上の装甲板を撃ち抜く貫徹能力を持ってはいるが…

 

ギギギギギィンッ!!!

 

「なっ…!?」

 

「くそ、刺さっただけかッ!!!

 

良くて半分ほど突き刺さったところで止められ88㎜砲に至っては大半がはじき返された。

 

「万魔殿戦車隊、HE弾に変更…!アビドス戦車隊が射撃した箇所に集中砲火…!番長さん、そちらの隊のウチの戦車も同様の指示お願いします…!」

 

「了解したッ!アビドス戦車隊はそのままAPFSDSを発砲!撃ちまくってりゃティーガーの榴弾が装甲を破砕してくれる!!!」

 

すぐさまイロハと番長はそれぞれ対応を変更しビナーの装甲を破砕しようと試みる。

 

本来ティーガーⅠは行進間射撃には向かないが標的は巨大なビナー。

 

例えるならビル大の標的、これを外すヘボは万魔殿戦車隊にはいない。

 

さらにそこへ、

 

「ん…皆、番長たちが撃ってる場所を狙って…!」

 

「了解、シロコの姉貴!!!」

 

「テメェら、あんなデケェ的外すんじゃねぇぞ!!!」

 

シロコ率いるバイク遊撃部隊『パース』が器用にバイクを安定させながらそれぞれ与えられた得物を構える。

 

RPG-7、パンツァーファウストⅢなどのロケットランチャーがビナーを捉え一斉に発砲。

 

多数のロケット弾が煙の尾を引いて飛翔、戦車隊が攻撃を集中させている箇所に多くが着弾。

 

命中率に劣るロケット弾のため数での勝負だ。

 

《こちらイロハです。パース隊、火力支援に感謝します。》

 

それに呼応するように万魔殿戦車隊も榴弾を発砲。

 

いまだに装甲を破壊するには至らないが確実にダメージを与えていく。

 

「ポジションを変更、数台ずつに分かれて的を絞らせないで。」

 

「うっす!うちらは喰らったらヤバいっすからね…!」

 

「もしもの時は近くのバイクが拾うように。皆、絶対に帰るのが命令だから。」

 

『了解!』

 

器用にロケット弾を装填しつつパースは複数班に分かれて展開。

 

再びロケット弾をビナーに叩きこんでいく。

 

その姿は弓矢をロケットランチャーに持ち替えた現代に蘇った騎兵隊だ。

 

だが、

 

―………ッ!―

 

相手は全盛期のアビドスですら仕留めきれなかった怪物ビナーだ。

 

その長い胴体をうねらせて地上に出し背部VLSを解放。

 

《こちらピップ、ビナーがミサイル発射態勢に入りました!》

 

アヤネがドローンの映像からそれを察知し素早く警告の無線を飛ばすと、

 

《こちら『スタッブ』、『タシュテーゴ』対空防御開始!》

 

「待ってました~!皆さん、いっきますよぉ~!」

 

「手当たり次第に撃ちまくっちゃって~!」

 

『オォスッ!!!』

 

多数の車両を率いる機械化部隊『タシュテーゴ』の搭載火器が一斉に火を噴いた。

 

MG42にミニガンやM2重機関銃、果てにはKPV重機関銃や歩兵戦闘車からは機関砲から放たれた夥しい弾丸の雨がビナーに降りかかる。

 

それと同時にビナーの無数の背部VLSから大量のミサイルが放たれた。

 

只の弾丸ではビナーに目に見えたダメージは与えられない。

 

だが、その弾丸の雨は打ち上げられた多数のビナーのミサイルを絡めとり空中で爆破する。

 

無論、すべては撃墜できず弾幕を潜り抜けるミサイルもあったが、

 

「アビドス戦車隊、『L-APS』を起動しろ!」

 

アビドス独立戦争でもミサイル迎撃に活躍した戦車部隊の『L-APS』が迎撃する。

 

「万魔殿の戦車は発煙弾を射出!奴はアイセンサーで狙い付けてんだ、見えなきゃ命中率は下がる!」

 

《了解、発煙弾発射!!!》

 

ティーガーⅠも発煙弾発射機から発煙弾を発射、これにより車列をビナーのアイセンサーから隠しロックオンを妨害する。

 

前線を張っているエイハブ部隊は…

 

「私が耐えてる間に攻撃してッ!!!」

 

「お願い、ホシノ先輩!」

 

「よろしく、小鳥遊ホシノ…ッ!」

 

IRON HORSを展開したホシノがミサイルを防ぎつつ、

 

「そんなんじゃウチの先輩の盾は貫けないわよ!」

 

「自分の体以外で攻撃を防ぐのは久々ね…ッ!」

 

セリカとヒナが攻撃を叩きこむ。

 

「全員集合!」

 

ネイトは右手のライフルで攻撃を続けながら背部防御ユニット『スカラベ』を展開し、

 

「はっはい!お邪魔します!」

 

「委員長の攻撃でビクともしないなら大丈夫だな!」

 

「相合傘なら師父さまと二人きりがよろしいですが…!」

 

それを掲げて三人をその中に入れて降り注ぐミサイルの破片を防ぐ。

 

《こちらエイハブ1!『フラスク』、奴のVLSを黙らせてくれッ!!!》

 

防御だけではらちが明かない、すぐさまネイトは火力支援を要請。

 

「ようやく出番か、待ちくたびれたぞ!」

 

砲兵指揮部隊『フラスク』のマコトは口角を吊り上げこの要請を受託、

 

「『ダグー』各車へ!熱砂の猛将が我々の助けを求めているぞ!!!目標、化け物胴体!!!前線部隊に『晴れ』を届けてやれ!!!」

 

彼女が率いる砲兵部隊『ダグー』へすぐさま砲撃指令。

 

「了解、直ちに砲撃する!目標座標指定、アビドス自走砲部隊全車両『MRSI砲撃』を行う!」

 

「万魔殿自走砲部隊、我々の精強さをアビドスに見せつける時だッ!!!」

 

これを受け前線から数㎞後方に離れた『ダグー』所属のアビドス所属の『クルセイダー自走砲』の155㎜砲弾と万魔殿自走砲部隊の『フンメル自走砲』の150㎜砲弾が一斉に放たれる。

 

ドローンによる観測と精強な二勢力の砲兵部隊の実力は見事にかみ合い、

 

ドゴゴゴゴォォォォンッ!!!!!!

 

―~ッ!?―

 

ビナーの胴体がうねる地点に多数の砲弾が殺到。

 

装甲そのものは依然としてダメージは軽微なもののそれより脆弱なVLSを次々に破壊していきミサイルの弾幕が薄くなる。

 

さらにいかに装甲は無傷でもこれまでを超える爆発の嵐はビナーの内部にまで到達し着実に損傷を与えた。

 

そして…

 

「我々も行くぞッ!!!キヒヒッ全弾発射ァッ!!!」

 

指揮官であるマコトも自ら指揮を執り与えられたアビドス最強の野砲部隊『ブラックヒュドラ』に発射命令を下すも…

 

「いっいいのかよ、議長さんよ!?」

 

思わず砲手がこの状況に戸惑い声をかける。

 

それもそのはず…

 

「構わん、これくらいのことは慣れている!!!早く発射しろぉッ!!!」

 

マコトは砲口の前に陣取って仁王立ちし指示を飛ばしている。

 

確かにマコトは普段からこのようなポジションでわざわざ砲兵隊を仕切っている。

 

そのやり方をここでも持ってきたのだろう。

 

「えぇい、どうなっても知らんぞ!!!撃てぇッ!!!」

 

それを聞き、ブラックヒュドラも発砲。

 

が…マコトは失念していた。

 

彼女が普段指揮している万魔殿の砲兵隊が用いているのは…高射砲『8.8cm FlaK 18/36/37』だ。

 

確かに対地攻撃にも用いられる間違いなく傑作の大砲だ。

 

で、今回マコトに任されているのは…『M1 240㎜榴弾砲』、口径だけで3倍は違う。

 

そんな化け物のような砲の前に突っ立って発射されようものなら…

 

ドッゴオオオオオオオオンッ!!!

 

「ウワアアアアアアアアッ!!?」

 

普段の優に数倍はあろうかという爆音と風圧で盛大に吹き飛ばされてしまった。

 

「ふわぁ…ありぇ…いびゅきぃ…そんなにいっぱい…ひゅえて私をどこへ…ちゅれてくんだぁ…?」

 

「だぁから言ったんだ!!おい、あのバカ議長連れて水ぶっかけて叩き起こせ!!!」

 

あまりの衝撃に幻覚が見えているマコトを引っ張り起こすブラックヒュドラ隊員であった。

 

そんな馬鹿々々しいマネをしてダウンしたマコトだが…

 

ズガガガァァァァァァンッ!!!!!!

 

狙いは実に正確で全弾ビナーの胴体に叩き込まれた。

 

あまりの衝撃にビナーも相当なダメージを負っただろう、ミサイルの雨が収まった。

 

好機到来。

 

「風紀委員長ちゃん、頼んだよ!」

 

ホシノはIRON HORSUをどかしビナーとの射線を開かせ…

 

「無様なところは…晒せないものね…ッ!」

 

ヒナが背負っていたソレを構えた。

 

ソレは…『ゼータパルスボム』が載せられている金属製のスプリング式のカタパルトだ。

 

いわばこれは…連邦世界を象徴する代物と言ってもいいだろう。

 

『ヌカランチャー』、『小型核爆弾』である『ミニ・ニューク』を射出するために開発された『携行型核爆弾発射装置』だ

 

まさしく狂気の代物だが構造自体は至ってシンプルでバネと燃焼ガスを用いたカタパルトだ。

 

これでミニ・ニュークを約130m先まで飛ばせるのだ。

 

この武器の利点はある一定の大きさと重量以内であればどんなものでも打ち出せるという点にある。

 

現にこのヌカランチャーをボウリング玉を打ち出せるように改造していた一般人もいる。

 

『ゼータパルスボム』もミニ・ニュークとほぼ同形状同重量に設計しているので問題なく撃ちだせる。

 

ヒナは小柄ながらもしっかりとヌカランチャーを構え…

 

「効いてよ…!」

 

祈るようにつぶやいてゼータパルスボムを射出する。

 

ヒュウウウ~…という気の抜けた風切り音が妙にこの戦場に響き渡った。

 

ゼータパルスボムはそのままビナーの下顎あたりへと飛んでいき…

 

バリバリバリィッ!!!

 

着弾と同時に溶接でもしているかのような破裂音と共に赤黒い波動がビナーの頭部を包み込んだ。

 

―~ッ!!?―

 

ダメージなどないに等しい。

 

なのに…ビナーの全身が震えるほどの衝撃が走る。

 

それと同時にビナーが持つ巨大なヘイローに変化が発生まるでノイズが走ったかのように乱れだす。

 

「イロハ、もう一発APFSDSを撃ち込めッ!」

 

明らかな変化、そして効果のほどを確かめるために…

 

「了解です…!主砲、よく狙って…撃って…!」

 

イロハは先ほど弾かれた88㎜APFSDSを発射。

 

放たれた超音速の重金属の矢は宙をかけ…

 

バギャァンッ!!!

 

先程よりも鈍い金属音が鳴り響き…亀裂と共に風穴が穿たれた。

 

ゼータ放射線が…効いた。

 

「総員、一斉攻撃ッ!!!」

 

ネイトの怒鳴るような指令を受け、

 

「ぶっ放せ、野郎どもッ!!!」

 

「弾種そのまま、砲撃開始…!」

 

「ドキドキする時間がやってきたよぉ~!」

 

「全弾発射~♠」

 

「ん…ライディング用グレネード弾だよ…!」

 

「155㎜の雨を喰らいやがれ!!!」

 

「ゲヘナのフンメルの毒針は痛いぞ!!!」

 

「ブラックヒュドラ、奴を食い千切れっ!!!」

 

戦車、車両部隊、バイク機動部隊、砲兵部隊からの一斉射撃、

 

「リロード完了ッ覚悟しろ!!!」

 

「と、とりあえず撃ちます!」

 

イオリとハルカ、

 

「覚悟しなさい!メッタメタにしてあげるわ!!!」

 

「どれくらい耐えられるか見物ね…ッ!!!」

 

セリカとヒナは得物に神秘を込めた攻撃をビナーに叩きこんだ。

 

その一撃一撃がビナーの装甲を削り穿ち砕いていく。

 

おそらく、このキヴォトスにおいても類を見ないほどの大火力がたった一つの標的に集中しているだろう。

 

だが、そんな兵器やゲヘナ最強がいる中で…

 

「さぁ、問題を解決しようか!!!」

 

ネイトは相も変わらずハンドメイドライフルを構えフルオートでぶっ放した。

 

正直言ってただの弾丸ではこの状態のビナーにも大した手傷は与えられないはずだ。

 

…ただのライフルなら、だが。

 

既に発射弾数はドラムマガジン10個、750発を超えている。

 

そして、新たに装填されたドラムマガジンから放たれた弾丸は…

 

バガガガガガガガッ!!!!!!

 

『ッ!!?』

 

まるで削岩機のような桁違いの着弾音を轟かせビナーの装甲を爆砕していく。

 

とても自分たちの見慣れたライフルで放たれてた攻撃とは思えず思わず周りにいた者たちはネイトの銃に注目する。

 

その中で唯一…

 

「あぁなんて心地の良い音ッ!あの夜の事を思い出しますわぁ、師父様ぁッ!!!」

 

この銃を身をもって味わったワカモのボルテージは跳ね上がる。

 

これこそ…この銃に付与された『呪い』…もといレジェンダリー効果。

 

本来ならが近接武器にしか付与されることを許されることのないその効果は…『猛烈』。

 

同一の標的に当てれば当てるほど際限無く威力が上昇していく破格の効果が…連射可能な銃に付与されているのだ。

 

その名も…『The Problem Solver問題解決人』、どんな強大な問題もその弾丸で解決してきたネイトの持つ銃の中でも単一標的に対して『最強』と言ってもいいレジェンダリーウェポンだ。

 

『猛烈』の効果は同一目標に攻撃するごとにその威力が15%加算されていくという物。

 

切りよく弾丸一発のエネルギーを2000Jとする。

 

その15%は300、微々たるものだ。

 

だが…それが750発も積み重なると?

 

300×750=225,000、これに元の威力を足して227,000J。

 

これが今ネイトが放っている弾丸の威力でその数値はなおも上がり続けている。

 

最早これはライフルや重機関銃を凌駕する威力だ。*1

 

そんな者をただでさえ弱体化したビナーの装甲に受け止め切れるわけがない。

 

そして、ダメ押しと言わんばかりに…

 

「ワカモッ奴にも花占いをしてやれ!!!」

 

「あはははははははっ待っていましたわぁッ!!!」

 

ワカモの体から凄まじい量の神秘が溢れ、

 

「さあ、貫かれたい子は誰かしらッ?!」

 

ビナーに向かって『真紅の災厄』を6連射。

 

次の瞬間、ビナーの頭上に現れる桜花紋。

 

「なっなんですか、あれ!?」

 

「構うな、撃ち続けろ!!!」

 

「はっはい、兄様!」

 

一瞬戸惑う者も出るが攻撃はなおもビナーに降り注ぐ。

 

そして、花弁はどんどん散っていき…最後の1枚が散った瞬間、

 

―――――――!!!

 

ビナーの体に膨大な量の神秘のダメージが刻まれた。

 

その衝撃はビナーのその巨体が地に伏せるほどだ。

 

「やっやったッ!今のうちに!!!」

 

手ごたえは確かにあった。

 

好機と言わんばかりにイオリは間合いを詰めビナーにとどめを刺そうとする。

 

だが…相手は腐っても全盛期のアビドスが倒しきれなかった怪物だ。

 

―!!!―

 

「え…!?」

 

その目は睨みつけるように…イオリを捉えていた。

 

ヘイローはすでにノイズが無くなっている。

 

さらに生き残っているVLSからミサイルを発射。

 

狙いは…自らの頭部だった。

 

イオリが飛びつくよりも早くミサイルはビナーの頭部に着弾。

 

それによって…ビナーの頭部を拘束していた錨鎖の口篭が外れ…

 

「キシャアアアアアアアッ!!!」

 

金属の擦れる音か、はたまた鳴き声か分からない音を発しビナーの巨大な口が開かれた。

 

「あ…。」

 

このままでは…。

 

「あの突撃馬鹿ッ!!!」

 

ネイトはそう悪態付き適当な薬莢を一発手に取り投擲、

 

「アヤネ、『スフィンクス』起動!!!」

 

素早く指示を飛ばしV.A.T.S.を起動、

 

「わぁッ!!?」

 

一瞬のうちにイオリの前に現れ抱えて一気に間合いを取る。

 

ほんの10mほど背後でビナーの口が閉じられるような音が響く。

 

それと同時に…

 

ドドドドドド…ッ!!!!!!

 

野太い砲声と共にビナーの頭部に多数の機関砲弾が叩き込まれる。

 

―~ッ!?―

 

ゼータ放射線の効果が切れたためか衝撃は大したことはないがそれでも…ビナーは驚愕する。

 

戦車隊とネイトたちの間の地面を押しのけ現れたものの正体を見て…

 

「あっあれは!?」

 

「なんで…!?」

 

ヒマリとエイミは言葉を失った。

 

砂漠迷彩を施されているが…間違いない。

 

『ケテルッ!?』

 

ビナーと同様に特異現象捜査部が調査していたヘイローを持つ戦闘兵器…ケテルだ。

 

スフィンクスは30㎜チェーンガン『Mk 44 ブッシュマスターⅡ』を連射しビナーに機関砲弾を浴びせ続ける。

 

背部VLSは今作戦では威力不足と判断され代わりに『BM-21』の同型の多連装ロケット砲と一回きりだが再装填装置に換装されている。

 

その隙にネイトは再びV.A.T.S.で間合いを取り直した。

 

「あっあの…!」

 

「説教はあとだ、突撃馬鹿ッ!!!次は指示してから突っ込め!!!」

 

イオリを下ろしネイトはすぐに射撃再開、

 

「わ、分かった!」

 

それにイオリも短く答え攻撃する。

 

スフィンクスも参戦し戦況が有利になるかと思われたが…

 

―煩わしい…ッ!!!―

 

とうとう…ビナーが眼前のネイトたちを捉えた。

 

―ここまでいいようにやられたのは初めてだ…!!!

 

傷一つつけられない武器で戦ってきた者たちにも、

 

―こいつらは今までの奴とは違う…!!!―

 

自らを仕留めようと群れとなって襲ってきた者たちにも向けなかった。

 

―認めよう…ッ!!!―

 

その砂漠を縦横無尽に走る長大な全身から…

 

―貴様らは…私の敵だッ!!!―

 

自らを苛むTorment打倒すべき『外敵』に向ける『殺意』を迸らせた。

 

そして…ビナーの全身が橙色に発光し始めその大口が開かれた。

 

「ネイトさん、奴が熱線をっ!!!」

 

話しに聞く、砂をも瞬く間に溶解する熱線砲アツィルトの光の発射動作だ。

 

そんなものが放たれようものなら…無事では済まないだろう。

 

しかし、ビナーは失念していた。

 

熱線砲を放つためには…動作を止めエネルギーをチャージしなければならない。

 

つまり…

 

「出番だ、『フェダラー』ッ!!!ブチかませ、兄妹っ!!!」

 

こちらにとってもチャンスだ。

 

戦域より20㎞離れた砂漠の線路の上。

 

「待ちくたびれたわ、兄さん!」

 

その指示を今か今かとまっていたアル、

 

「さぁ皆、準備はいい!!?」

 

「超電導キャパシタ、充電完了!!!」

 

「レーダーにて標的補足!!!」

 

「現地ドローンによる誘導レーザーの照射を確認!!!」

 

「砲尾の閉鎖及び装填完了!!!弾種『ミョルニル砲弾』!!!」

 

「ガウスキャノン発射システム、最終安全装置解除!!!」

 

「アル砲術長、最終調整願います!!!」

 

FCS担当のMr,ガッツィー達の報告を受け…

 

(大丈夫…!要は普段の狙撃の微調整と一緒…!

 

アルは操縦桿のような形状の制御装置を操作し最終調整に入る。

 

優れたFCSに強力かつ高精度な誘導砲弾。

 

あとは…こんな重大な役目を託してくれたネイトが信じた自分の腕を遺憾なく発揮するまでだ。

 

そして…今ビナーは大技発動のために静止している。

 

この状態ならば…

 

《外しはしないわ…!》

 

そんな静かな声が全員の無線から聞こえた次の瞬間、

 

―――――――――――――ッッッ!!!!!

 

雷神の鉄鎚がアビドス砂漠を駆け抜けた。

*1
ちなみに30㎜ガトリング砲『GAU-8 Avenger』の威力は200,000J以上とされている




誇りが勇気を与えてくれる。誇りのために闘うんだ。それでいいんだよ、海の男俺達は!
―――『白鯨』よりスターバック
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