「ようこそ、ゲヘナにミレニアムの諸君。あれこそが我がW.G.T.C.が保有する唯一にして最強の艦艇…戦艦『マサチューセッツ』だ。」
「せ、戦艦…!」
「マサチューセッツ…っ!?」
とうとう明かされたW.G.T.C.の誇る最高戦力の一角。
「な、なんて大砲と対空ミサイルの量なの…!?」
「後部甲板にとんでもなく巨大なVLSもありますよ…!」
「こんな船、オデュッセイアだって保有してませんね…!」
空からの猛威を一切寄せ付けさせないという決意の表れかのような対空火器とミサイルの山、
「あんな大きなレーダー…どんな出力なんだろう…!?」
「それだけじゃないですよ、マキ…!」
「艦橋各所にもさらに高出力なレーダー郡…!どんな航空機だろうと見逃さないだろうね…!」
遥か彼方を見通す『神』の如き戦艦にとっての『眼』ともいえる数々のレーダー、
「見るからにとんでもなく分厚い装甲が施されていますね…!」
「えぇ…私の攻撃でも余程至近距離で叩きこまなきゃ貫けないわね…!」
「カリンのホークアイでもありゃ傷すらつけられねぇだろうな…!」
生半可な攻撃など寄せ付けず弾き返すことが容易に伝わってくる重厚な『装甲』。
これらだけでもとんでもない脅威をひしひしと感じるが最も目を引くのは…
「あれが…ガウスキャノンの本来の…!」
「本当に艦砲だったんだ…!?」
象徴的な巨大な砲…マサチューセッツが誇る最強の矛、『80口径10インチ三連装ガウスキャノン』だ。
たった一門でも圧倒的な破壊力を見せつけたあの巨砲が三基九門搭載されている。
かつて予算の大半をつぎ込み開発した『光の剣・スーパーノヴァ』、あの武器も元は艦載砲として考案された物。
それとはメカニズムが別物とはいえ…エンジニア部の夢の果てともいえる代物がそこにはあった。
「全ての機能が『戦う』ことのみに集約された姿…!最早、芸術品級の機能美ですね…!」
自分の美に圧倒的な自信を持つヒマリ。
そんな彼女もマサチューセッツに確固たる『美』を感じ取っていた。
「カヨコ課長にアル様…!本当に来ちゃったんですね…!」
「ここからキヴォトス中のカイザーの基地を叩き潰したってこと…!?」
「あれが兄さんの戦艦…!話には聞いていたけど想像以上の存在感ね…!」
アル達もかつてアビドス砂漠で目の当たりにした二つのキノコ雲を思い出しマサチューセッツから放たれる圧倒的なオーラに目を見張っている。
「うわぁ…!アビドスの峡谷にあったアレよりもヤバそうな雰囲気がぷんぷんするねぇ…!」
普段はスリリングな場面であってもテンションが高いムツキでさえ表情がこわばっている。
そして、
「わぁ~…カッコイイ~…!ネイトさんのお船、スッゴォ~い…!」
イブキも窓に張り付き目を皿のようにさせてマサチューセッツを眺めている。
詳しい事は分からないがそれでも力強い姿が彼女の心をとらえて離さなかった。
そして、
「鋼の津波をも撃ち砕く『黒鋼の要塞』…!モモイが言ってたパパの話はホントに本当だったんですね…!」
父であるネイトの逸話の舞台であり象徴ともいえるマサチューセッツに彼女も目を輝かせながら見つめていた。
まるでゲームの中にしかいないような『英雄譚』だった。
モモイだけでなくミドリにユズ、先生までも目の当たりにしたというその戦いぶりは決して嘘ではないと思っていた。
しかし、『百聞は一見に如かず』の言葉の通り実際に見ると一層実感を持ってモモイの話に確信が持てた。
十人十色の反応を見せる中、
「全員見れたか?それじゃ…着艦するぞ。」
まるで普通のことだと言わんばかりの冷静な態度でネイトはヘリを操りマサチューセッツ後部甲板に設けられたヘリポートへと降下していき…
ズゥン…
「…陸出身のはずなのに船へのランディングが上手くなったなぁ…。」
誰に聞かせるでもない独り言を呟きマサチューセッツにランディングに成功した。
「ムツキ、お疲れ様。」
「お、お兄ちゃんもお疲れ様…!」
「ハハッ、さすがのお前もびっくりしてるか。」
「そっそんなことはないよぉ~?!」
「ハイハイ、帰りもあるんだ。また頼むぞ。」
傍らのムツキの肩を軽く叩き労をねぎらい、
「パパっパパっ!早くおりましょう!」
「まぁ待て、アリス。少し前置きがあるんだ。」
はしゃいでいるアリス…いや、今すぐにでもおりたくてうずうずしている面々を落ち着かせるように声をかけ…
「さて、ユウカにマコト。俺が出した条件は分かっているな?」
ミレニアムとゲヘナの代表者である二人に向けそう尋ねる。
「…はい、重々承知しています。」
「無論だ。それを履行する準備も整えてある。」
ユウカとマコトも彼に向き直って答えた。
今回、二校の視察員をマサチューセッツに連れてくるにあたりいくつかの条件をネイトは飲ませていた。
一つは『検閲』、写真や映像の撮影は許可するが持ち帰る際はW.G.T.C.の検閲を受け許可されたもののみ持ち帰れ、隠匿した場合や盗聴器などを設置した場合は没収すること。
二つ目は『機密の保持』、把握した情報は各校の生徒会が一括で管理し資格が無い者…この場合は視察員が属する部活の上層部以外に決して公開しないこと。
三つ目は『保管』、今回得られた情報の一切合切を厳重に保管し外部の者が決して閲覧できないようにし、廃棄に関しても徹底して情報流出の可能性を0にすること。
そして…
「で、もし情報流出が認められた場合は?」
「…W.G.T.C.に即座に報告し対処に対する全権限を同社に委ね…。」
「対処に係る全責任を当該校が負い保管している情報全てを廃棄すること、だな?」
「よろしい。」
情報流出の際の厳しい罰則、それも条件に含まれていた。
つまり下手をやらかせばW.G.T.C.が確実に大暴れしその損害が全部降り掛かりマサチューセッツの情報も失ってしまうということだ。
((絶対に流出なんてできない…!))
これにはユウカもマコトも血の気が引く。
「全員にも周知させてるな?」
「はい、特にヴェリタスやヒマリ先輩には徹底的に。」
「ゲヘナ情報部は今日は休部にさせてある。」
なお、ミレニアムにもゲヘナにもドデカイ『穴』が開きうる条件がそろっているのでこの条件を口ずっぱく伝えてある。
奥に目をやるとコタマとサツキがばつの悪そうな表情を浮かべていた。
「よし、二人の言葉を信じさせてもらうぞ。」
疑念を持つときりがないのでネイトは二人の言葉を信じ、
「それじゃ…そろそろ行くか。」
ネイトは立ち上がりタラップを開け放ち先に降りていった。
「…!行きましょう、マコト議長…!」
「あぁ…!」
意を決し、ユウカとマコトもその後に続き後部甲板に足を付けた瞬間…
「艦長並びにゲヘナ・ミレニアム代表団へーッ!!!捧げぇッ銃ッ!!!」
ザアォッ!!!
『ッ!!?』
戦術長であるMr,ガッツィーの号令の下、優に100体にも昇るMr,ガッツィーが『M14』を掲げ一糸乱れぬ敬礼の姿勢をとった。
その奥には雄々しいオーラを放つマサチューセッツ後部主砲塔が鎮座していた。
「こ、ここがマサチューセッツ…!」
「上で見るのと立ってみるのとではやはり違うな…!」
「Mr,ガッツィーがこんなに…!」
「うちの子達でもこれほど整然とできるかどうか…?!」
圧巻の光景にユウカにマコト、ヒナやアコも言葉を失っていた。
と、そこへ…
「ようこそ、代表団の方々!私はこの艦を任されております戦術長のガッツィー少佐であります!!!」
海軍の制帽をのっけたMr,ガッツィーが近づき挙手の敬礼をし挨拶をする。
「ご、ご丁寧にどうも…!私はミレニアムの『セミナー』で会計を担当しています、早瀬ユウカと言います…!」
「ゲヘナ『万魔殿』議長、羽沼マコトだ。盛大な歓迎、感謝する…!」
ユウカはもちろん、マコトでさえ姿勢を正しそれに答える。
「そして『艦長』、帰艦をお待ちしておりました!」
「ただいま戻った。いつも留守を任せっぱなしですまない。」
「何の!海兵たる者、待つことも任務!!!どうということはありません!」
そして、ネイトも敬礼をもって彼の労をねぎらい挨拶を交わす。
「わぁ~…本当にパパがこの黒鋼の要塞の艦長なのですね…!」
「なんだか普段のネイトさんと全然違う…!」
普段とも戦いの時とも違う純然たる『指揮官』としてのオーラを纏うネイトにアリスとイブキも見入っていた。
それを見ていたこの場の全員もネイトがこの巨艦の背負う『艦長』であると認識し自然と背筋が伸びた。
「さて、挨拶は手短にして早速我が艦『マサチューセッツ』をご案内いたしましょう!質問は随時受け付けます!」
こうして、ゲヘナ・ミレニアムの二つのマンモス校の代表団たちのマサチューセッツの視察が始まるのであった。
まず…というより真っ先に紹介されたのが…
「こちらは我がマサチューセッツの誇る主砲、『80口径10インチ三連装ガウスキャノン』になります!」
マサチューセッツの象徴ともいえる『80口径10インチ三連装ガウスキャノン』である。
「こちらは建造当初より搭載されていた『45口径16インチ砲Mark6』から換装されさらなる大威力と長射程を実現した傑作艦砲ともいえるものです!」
「じゅ、16インチ…!?」
「最初からとんでもない大きさの大砲が乗っていたんですか…!?」
「…なぁ、イロハ。㎝に換算するといくらだ?」
「…406㎜、虎丸の主砲の約4.5倍です…!」
「なぁッ!?」
元より搭載されていた砲ですらキヴォトスでは類を見ない巨砲であったことに驚愕する一同。
これを上回る口径はあの雷帝の遺産である列車砲『シェマタ』位だろう。
だが…
「その後の大改修で搭載されたこのガウスキャノンも負けていませんよ。口径こそ小さくなりましたが電磁投射方式により8インチ砲弾は弾速はマッハ15、6インチ誘導砲弾はマッハ20にも上ります。」
「ま、マッハ15とマッハ20ですって!?」
「そんなの小口径になっても威力はとんでもないんじゃ…!?」
「ざっと元の砲弾の7倍はくだらない。高強度金属砲弾ならさらに威力は跳ね上がるな。」
「あ、あの…ちなみに射程は…!?」
「最大射程は2,000㎞、ここからキヴォトス全域を射程に捕らえることが出来き固定目標に対しては寸分たがわず的中させる精度を誇ります。」
「に、2,000㎞…!?」
「下手なミサイルなんかよりも飛ぶってこと…!?」
「そりゃキヴォトス中のカイザーの拠点を叩けるわけだ…。」
それを優に超える性能を誇るのが80口径10インチ三連装ガウスキャノンだ。
考えても見てほしい。
このキヴォトスのどこにいたとしても音速の15~20倍の砲弾が上空から降り注いでくる。
悪夢以外の何物でもないだろう。
ならば撃ち落とせばいいじゃないかと思われるが…
「あ、あのヒマリ先輩…砲弾の迎撃って…!?」
「………私の頭脳をもってしても現状…迎撃する手段は思いつきません…!」
「ゲヘナの防空技術でも迎撃は不可能…ね…。」
元よりミサイルよりも迎撃が困難な砲弾、それも極超音速で襲ってくるものとなるとなす術がない。
つまり一度この砲が放たれたが最後、奇跡的に狙いを大きく外すことを祈るよりほかないということだ。
「まさに規格外の性能…!光の剣もいずれこれくらいの性能に…!」
「そしていつか…いつか必ずこの大砲を超えて見せましょうね、ヒビキ…!」
ヒビキとコトリは目を輝かせてガウスキャノンを見上げる。
正にこれは自分たちが造り出した『光の剣・スーパーノヴァ』の最終形態と言ってもいい。
ちなみに…
「あ…あの~…。」
「何でしょうか?」
「その…ゆっユニットコスト?っていうのかしら?それはいかほど…。」
アルがそんなことを尋ねてきた。
「…艦長?」
「そうだ、彼女が…だ。教えてやってくれ。」
「Aye, Sir。」
戦術長Mr,ガッツィーはネイトからメモ紙を受け取りつつわずかに言葉を交わし、
「私は運用がメインですので詳しくは把握しかねますが…概算はこれほどかと。」
手早くその紙に数字を書き込んでアルに渡した。
「あ、ありが…。」
それを受け取り中を検めた瞬間、
「………。」
「あ…アル様?」
「ちょ…どうしたの、ア…。」
「………キュウ。」
「あ、アルちゃーーーんッ!!?」
白目を向いて気を失うのであった。
と、少々トラブルがあったがマサチューセッツの恐ろしさはガウスキャノンだけではない、
「本艦の主武装はもう一種、あちらの『Mk41VLS Mk176 mod6』になります。96セルのミサイル発射装置が二基設置され巡航・対弾道・対空・対艦・対潜といった様々な場面に対応したミサイルを発射できます!」
「ミサイルまであるの…!?しかも192発ですって…!?」
「全部じゃないだろうけど…あれだけで並の学校は壊滅できますね…!」
まるでチョコレート板のような形状をした甲板の一部を見てヒナとアコが目を見張っている。
後部甲板に設置されたミサイル発射システム、これもまたも筆舌に屈しがたい威力だ。
現にカイザーの拠点にも夥しい数の巡航ミサイルが叩き込まれている。
そう言う運用はしないだろうが一度に200発近い巡航ミサイルが降り注ぐなど悪夢以外の何物でもない。
正にマサチューセッツのもう一つの『主砲』と言える装備だ。
しかも、遠距離への攻撃だけでなくマサチューセッツに襲い掛かるあらゆる兵器に対する防御装備としても破格の性能だ。
「まだ迎撃できるだけマシ…と思うしかないか…。」
「ウチのシステム飽和したりしないわよね…?」
と顔をこわばらせながら語るマコトとユウカ。
この装備も遥か彼方のカイザーの拠点を破壊した実績がある。
射程はガウスキャノンに匹敵するものと考えていいだろう。
他の面々もかなり表情が硬くなっているが…
(本当はもっとエゲつない攻撃を食らわせることは黙っておいた方がいいな…。)
『現役』のころのマサチューセッツはこんな『生ぬるい』構成をしていないとネイトは内心独り言ちていた。
すると…
「パパ、パパ。」
「ん?どうかしたか?」
「あれは…。」
ネイトの袖を引きアリスが指さした先にあったのは…
「ゲーム開発部のエンブレムですよね?」
後部マストにはためくゲーム開発部のエンブレムが描かれている旗だった。
『…え?』
この場の全員の視線が一斉に後部マストに注がれる。
他にはW.G.T.C.の社章やミレニアムとゲヘナの校章の旗が揺らめく中…その旗だけ異彩を放っていた。
「あぁ~…モモイ達、俺から言った方がいいか?」
誤魔化しようがないのでネイトは先ほどから沈黙を貫いているあの三人に問うと…
「いいよいいよ、ネイトさん。」
「別に悪いことはしてませんから。」
「む、むしろ、名誉なことだと、思ってます…。」
モモイ達は一切動じることなく答えた。
「ま…まさかモモイ…!?」
「ムフフ…そのまさかだよ、コトリ!」
驚愕するコトリに対してモモイは怪しく笑っていると…
「火器管制官並びに電子技術官、こちらを。」
近くにいたガッツィーが三人に制帽を渡し、
「ありがとう!改めて…戦艦『マサチューセッツ』対空射手の才羽モモイだよ!」
「主砲砲手の才羽ミドリです!」
「で、電子技術官の、花岡ユズ、です…!」
それを被り挙手の敬礼をもってこのマサチューセッツにおける自身の役職を堂々と宣言した。
普段はゲームを作り遊び時々トラブルを起こすゲームオタクであるこの三人がこのマサチューセッツでかなりのポストについている。
その理解が追い付いた瞬間…
「えええええええぇぇぇぇぇッ!!!」
代表団全員の叫び声が水没地帯に響き渡った。
「おぉぉぉ!!!モモイは遊び人だけではなくこの要塞の護り手でもあったのですね!」
「ミドリちゃんもユズちゃんもスッゴぉ―い!!!」
そんな中であってもアリスとイブキは純粋に目を輝かせモモイ達を見つめるのであった。
――――――――――――――
――――――
―――
その後、
「こちらがマサチューセッツを護る防護火器群、『75口径3インチプラズマ連装砲』『四連装2MW級レーザー砲』『四連装1インチガウスキャノン』。そして近接防空用の『500kw級L-CIWS』に『ASAM』になります。」
「これが防護火器…!?これだけでこちらの艦艇を上回る武装量ではないか…!」
「ミレニアムのF14でもここに突入させるのは無謀としか言えませんね…!」
「あの…砲弾の運搬などはどのように…?」
「連装砲の例ですが砲塔直下に弾薬室がありそこよりオートメーションで自動若しくはマニュアルでの装填になります。」
「オートメーション…!戦車乗りの私からすれば羨ましい限りですね…!」
「こ、ここにもガウスキャノン…!しかもこんなに小型に…!?」
「アリスの『光の剣』のお友達ということですか?」
「そうだな、アリス。機構に差異はあるが確かに光の剣の同類だな。」
「こりゃ乗り込みゃどうにかなると思ってたが…。」
「そもそも乗り込むのが一苦労ね…。」
舷側にあるまさにハリネズミとしか形容しようのない防護火器や…
「あれがいわばこのマサチューセッツの眼ともいえる設備、多機能レーダー『AN/SPY-1L』並びに『SGレーダーMkⅨ』『SKレーダーMkⅧ』となります。」
「うんやっと見慣れた設備の登場だけど…私たちが知る型式じゃないね…!」
「イージスレーダーだけじゃなくてどうして旧式のレーダーまで搭載されているんですか?」
「推し量るに…『ステルス』対策…ですね?」
「流石はミレニアムの『全知』と呼ばれる生徒さん、鋭いですね。」
「ステルスって…レーダーに見えないのにどうやってレーダーで捉えるの?」
「ステルスも万能ではありません。このように多くのレーダーを統合運用すれば…見つけることは難しくはありません。」
ステルス機すら丸裸にするレーダー群に、
「後部煙突上に設置されているのが照準用レーダー『ヤールングレイプル』になります。」
「おぉ~アビドスで使ったミョルニル砲弾…だっけ?その照準用だよね?」
「あれが本来の…。…そ、その…壊してごめんなさい…。」
「いいえ、お気になさらず。むしろ感謝しているくらいですよ。」
「か…感謝…!?」
「貴女は得難い運用データを我々に提供してくれたのです。さすがは艦長の義妹さん、船員の間でも話題になってました。」
「へぇ…やるじゃん、社長。壊して褒められるだなんてそうそうないよ。」
「さっさすがです、アル様!悪い事をして賞賛されるなんて正にアウトローです!!!」
「ど…どんなもんよ!最高のアウトローを目指すんだったらこれくらい軽いもの…!」
「アルちゃんったらさっきお値段聞いたとき卒倒してたのに強がっちゃってぇ~♪」
「…あぁ、それを聞いたらまた気が遠く…。」
新たに加わったマサチューセッツの眼である照準用レーダーである『ヤールングレイプル』、
「よぉく来た、お客人方!!!少々オイルと鉄臭くてすまんな!!!」
「なっなんですか、あれは…!?」
「紹介しよう!あれこそがこのマサチューセッツの心臓部『5GW級常温核融合炉』だ!あの二つのリアクターを使ってこの船は最大速力40ノットで走ることが出来る!」
「じ、常温…核融合炉…!?」
「通常の動力ではないとは想定していたが…!」
「キヴォトスだとせいぜい原子力発電が精いっぱいなのに…!?」
「しかも5GWが二基…余裕で学区内の電力が賄えるくらいの発電量じゃない…?!」
「ねーねーロボットのおじさん、かくゆーごーってなぁに?」
「そうだなぁ…。青と黄色の粘土を混ぜると緑色の大きな粘土になるだろう、お嬢ちゃん?その重さが変わる時に物凄いパワーが生まれるのを船を動かすパワーに使うのがこの機械ってことさ。」
「へぇ~…!」
「…待ってください。蒸気タービンなどはどこに…?」
「そんなものはない!この艦は『統合電気推進』、この発電機のエネルギーだけで進むのさ!」
「…だから本来煙突であろう設備の上にも電探設備が…!」
艦内に入りキヴォトスでも類を見ない規格外の動力炉『5GW級常温核融合炉』、
「ここがマサチューセッツの『頭脳』とも言える部署『CIC』になります。ここで火器管制や索敵、ECMなどの電子戦なども行えます。」*1
「フォォォォ…!なんてハイテクな設備の部屋なんですか…!?」
「風紀委員会の通信室よりも進んだ設備…!本当にここが船の中なのですか…!?」
「まるで特異現象捜査部の部室みたいだね、ヒマリ…!」
「まぁ…私の部室はここまで武骨ではありませんよ、ちーちゃん。…ですが、やはりこのような場所は興奮を覚えますね…!」
「そして、ここでユズ電子技官が構築した火器管制システムが現在マサチューセッツで運用されている『アイアース・システム』になります。」
『…なんですって?』
「ヒィウ…ッ!?」
マサチューセッツで最も重要な部署である戦闘指揮所『CIC』に至るまで様々な場所を見て回った。
そして一頻りマサチューセッツの視察を終え一行は…
「あんむ!ん~ご飯も美味しんだね、この船!」
「こんな豪華な料理初めて食べたよ!」
「普段のお小遣いじゃ絶対無理だね…!」
「これは味の感想もしっかり記録しておかなければ!」
「ありがとよ、嬢ちゃん達!こっちも久々に腕をふるえてうれしいよ!」
「ほらイブキ、口の周りが汚れてますよ。」
「んむぅっありがとう、イロハ先輩!」
かつてマサチューセッツの乗組員の腹を満たしていた食堂でランチを食していた。
元より食事の質の高さが売りの海軍所属の厨房担当Mr,ガッツィーが腕を振るってくれたのだ。
「あの子たちよく食べれるわね…。」
「正直情報だけで満腹なのだがな…。」
元気に食べるモモイやマキと言ったちびっ子組やチアキとは対照的にユウカやマコトと言った首脳部組はかなりグロッキー状態である。
無理もない。
自分たちが保有する軍事の常識を軽々超えるマサチューセッツの機能に脳の処理が追い付いていないのだ。
しかも…
「早く食ってしまえよ、二人とも。冷めたら作ってくれたMr,ガッツィーに悪い。」
「…でしたらメニューを考えてほしかったのですけど?」
「何が不満だ、天雨アコ?ロブスターにリブロースステーキ、この船の一番のご馳走だぞ?」
「重たいと言ってるんですよ…!」
「重たい?筋力はそれほど必要ではありませんよ?」
目の前の鉄板にはロブスターの黄金焼きとステーキが載せられ付け合わせにはシーザーサラダとコンソメスープにパンというかなりの豪華なメニューだ。
「もう…『ミレニアム最高の天才清楚系美少女ハッカーであり、雲の上に咲く一輪の花』にお出しするにはいささかメニューに繊細さが無いのではないですか?」
と、いつもの調子で自画自賛を交えつつヒマリが皮肉をこぼすと…
「あ、じゃあヒマリ部長の料理は私がもらってあげます。」
近くで料理に舌鼓を打っていたコタマがロブスターにフォークを伸ばしてきた。
が、
ガキン!
「食べないとは言ってませんよ、コタマ。」
それをナイフで受け止め阻止するヒマリなのであった。
「お行儀の悪い事は止めてください、ヒマリ先輩にコタマ先輩。」
「ウチのイブキの教育に悪いわ。」
「「…ごめんなさい。」」
ノアとサツキに注意され二人は大人しくフォークとナイフを引き下げる。
「兄さんのいたとこの海の軍人さんってこんなに美味しいのを食べてたのね…。」
「俺は陸の人間だから知り合いから聞いた話じゃネイビーはこの食事が出ると調子が悪くなるらしいぞ。」
「えぇ~?こんなご馳走が出るのに何でテンション上がんないの?」
「こういうご馳走が出た後はな…決まってヤバい作戦やキツイ訓練が始まるってさ。」
「………あぁなるほど、『最後の晩餐』的なご馳走ってことなのね。」
「まっまさか私達もこの後とんでもない無茶なことを…!?」
「…安心しろ、ハルカ。特に何もないからこのご馳走を楽しんだらいい。」
便利屋メンバーもおっかなびっくりしながらこのランチを楽しむのであった。
その後、昼食を全員完食し食後のコーヒーブレイクにて…
「ユズさん…!ほんの、ほんの少しでいいんです…!」
「プログラムの一部…いいえ、コード一行だけでもいいですから…!」
「『アイアース・システム』、それが一体どんなのなのか教えてもらえない…!」
「ひっひぃぃぃ…!」
ユズはヒマリを筆頭にしたヴェリタス3年生組に詰められていた。
『アイアース・システム』…1,000㎞以上彼方のカイザーの拠点に寸分違わず叩きこむ弾道計算能力、聞くところによれば空を埋め尽くすほどの砲弾にミサイルを全弾迎撃できたというではないか。
そんなシステムを常人よりプログラムに慣れ親しんでるとはいえゲーム開発部のユズが元よりあった火器管制システムを再構築するだけでなく発展させたというではないか。
ハッキングを通じプログラムに秀でたヴェリタスが…それを逃すはずがなかった。
「お願いです…!この際一文字だけ、一文字だけでもいいですから…!」
最早それだけ知ってどうする気かと聞きたくなるほど鬼気迫った様子で迫るヒマリだが…
「さ、最高機密なので、お教えできません…!」
ユズも決して口を割らない。
あのプログラムはネイトやアビドスに先生との絆を紡いだ自分の作品も同然。
幾ら『全知』相手でもゲーム開発部部長として…このマサチューセッツの電子技官として『アイアース・システム』の内容は決して語らなかった。
一方、
「どうして教えてくれなかったんですか、モモイにミドリ!?」
「いやだって…。」
「私達だって『光の剣』のこと知ったのあの時だし…。」
「…つまり、あの時にはもうこの船に乗ってたってことだね…!」
「「あ…!」」
「そうなんですね!?…ということはまさか先生も!?」
モモイとミドリもコトリ・ヒビキのエンジニア部の二人に詰め寄られていた。
エンジニア部が建造を目標にしている『宇宙戦艦』、予算の関係で未だに主砲のミニサイズ版である『光の剣・スーパーノヴァ』を開発するにとどまっているウタハを含めた三人の『夢』だ。
そして…二人にとってこのマサチューセッツはまさにその『夢』に近づく宝の山そのものだ。
主砲のガウスキャノンはもちろん防護火器群に超高性能のレーダー、終いには動力に常温核融合炉。
自分たちはおろか尊敬するウタハですら『確実』に作り出せないものばかり。
殆ど…浮いていないだけで『宇宙戦艦』といっても一切名前負けしないだろう。
許されるのならばこの戦艦を持って帰ってネジの一本まで解析したい。
…それはそれとして、だ。
「ずるい、ずるいですよ!!!ミドリに至ってはあのガウスキャノンの砲手だなんて!?」
「あ、あの時は緊急事態だったから私も無我夢中で…!」
「きっと私が光の剣の紹介していた時だって腹の中で笑ってたんでしょう!?」
「そんなことないよッ!?」
「モモイだってあんな凄い大砲を操ってただなんて…!」
「うん、凄かったよ!もう空が埋まりそうなくらいのドローンが来たって一機も近付けさせなかったんだから!」
「性能は…?!弾道特性は…?!出力は…?!あぁもう何から聞いたらいいか分かんないよ…!」
そんな戦艦に人知れず乗り込みそれだけでなくその武装を遺憾なく使っていたモモイとミドリが羨ましくてしょうがない。
ミドリに至っては自分たちが多額の予算を注ぎ込んで完成させた『光の剣・スーパーノヴァ』の最終形態ともいえるガウスキャノンを撃ったというではないか。
「さぁ、私の疑問が無くなるまできっちり答えてもらいますよ!」
「ウタハ先輩に泣きつかれても振り払って来たんだからその分きっちり聞かせてね…!」
エンジニア部の未来を担う二人が同級生でもある双子をまるでモルモットでも見るかのようなぎらついた目で見つめるのであった。
「ありゃりゃ…先輩たちに火が付いちゃったね。」
「コトリもヒビキもモモイ達に夢中ですね。」
「頃合いを見て助け舟を出してくれるか、マキにアリス?」
「「は~い。」」
「んくっんくっ…プハァッ、甘苦くて冷たくて美味し~。」
「コーヒーフロートを気に入ってくれたようでよかったよ、イブキ。」
少し離れた場所で食後の一服を楽しんでいるネイト達。
度が超えたら止めるつもりだがミレニアムの探求心は止めようがないのでモモイ達にはヒマリたちの探求心を満たしてもらうことに。
そして…
「さて…俺は君たちの応対をしようか。」
ネイトも色の薄いアメリカンコーヒーの入ったマグカップを傾けつつネイトは目の前の面々を見つめる。
「えぇ、この戦艦に関しても驚きの連続でしたが…。」
「我々には共通の疑問がある。」
同じく食後のコーヒーを受け取りつつも口を付けることなく真っすぐにネイトを見つめるユウカにマコト、
「この戦艦とアビドスの『リバティ・プライム』…。」
「どちらもこのキヴォトスの技術水準を大きく超えた規格外の存在です。」
気分を落ち着けるようにコーヒーを少量ずつ飲んでいるヒナとアコ。
「おそらくこの船が出来上がったのは極々最近…。」
「それもまるでいきなり現れたかのような新品具合だわ。」
周囲を解析するように見回し続けているノアにサツキ、
「あたしゃ細けぇことはよく分かんねぇけどよ…ダンナがただの外の人間じゃねぇってのは分かるぜ。」
愉快そうな目線を向けながらアイスを頬張るネル、
「…オッホン、失礼…さて、そろそろお話していただきましょうか?」
「クゥ…ユズのシステムは非常に気になりますが…!」
「本来の目的を果たさなくちゃね…。」
話の流れが変わった気配を察知しユズへの追及を切り上げてこちらにやってきたヒマリ・コタマ・チヒロ。
そんなキヴォトス内でも名実ともに最高峰の陣容の視線を一斉に浴び…
「さて…何から話したものか…。」
ネイトは今一度コーヒーを含み…
「………この中に何人かは知っていると思うがおさらいと行こう。」
一切の動揺を感じない表情と口調で全員の視線をまっすぐに受け止め…
「『転生』…という言葉を知っているか?」
『砂塵のベール』の奥に隠され続けてきたその素顔が明かされようとしていた。