「『転生』…という言葉を知っているか?」
「てっ…転生…?」
突如としてネイトの口から飛び出た言葉にユウカやマコトたちは面食らう。
「てんせーってなぁに?」
「ん~ざっくりいうと『生まれ変わり』とかそう言うことだな。」
とネイトがイブキにかみ砕いた説明をしていると…
「…ちょっと、ネイトさん。私達は真剣に尋ねているんですよ?」
アコが呆れた目線を彼に向ける。
「そっ…そうですよ。ここまで来てそんな誤魔化しはなしで行きましょうよ。」
「いくらなんでもそれは無理があると思うぞ、ネイト社長。」
さらにユウカとマコトもこれに続く。
なにを言い出すかと思ったらいきなりこの事だな。
「そ、それはいままで見てきた貴方くらいの大人よりも色々経験しているようですけど…。」
ネイトの経験や指揮能力に交渉力などはいかに大人と言えど歳不相応なところが多々ある。
「確かに貴様の技術はキヴォトスには存在していないが…。」
ネイトの多岐にわたる技術はキヴォトスの常識の外の物ばかりだ。
「それに貴方の武器やその腕の装置だって不思議ではありますが…。」
ネイトの武器はどれもこれもキヴォトスでも『不可解』としか言えない能力が付与されている。
Pip-Boyに至っては搭載されている機能はおろか情報圧縮技術すら既存のキヴォトスの技術を圧倒している。
…と、
『………あれ?』
ここでこの三人も気が付いた。
「ねぇマコトにアコ、私だって飲み込みづらい話だけどそれって…。」
「余計にダンナの話に信憑性持たせてるんじゃねぇか、会計?」
そう、ネイトをキヴォトスでも強者たらしめている上記の様々なファクター。
どれもこれも今目の前にいる『ネイト』という人物像だけで比較するとあまりにもちぐはぐすぎる。
だが…それがネイトが外見以上の年齢で『異世界』の人間だとしたら?
外見以上の年齢ならば桁違いの経験値も説明がつく上…異世界の生まれだとするならその技術が常識はずれなのも当然ともいえる。
「ほ…本当なんですか…!?」
全てのピースがはまっていくのを感じた。
驚愕に眼をかっ開きながらユウカが尋ねると…
「信じられないのも分かる。俺だってここに来た時目を疑ったものさ。」
誇示するでも否定するでもなく肩をすくめながらネイトが返す。
「で、では貴様は…一体…!?」
「改めて自己紹介しよう。ナサニエル・マーティン、異世界『連邦』からやってきた今年で300…いや、もうすぐ301歳になる人間さ。」
「さッ301歳!!?」
「あぁ、210年間は冷凍保存されてたから実質的には91歳になるな。」
「れ、冷凍保存…!?210年間…!?」
サラッと明かされた冗談かと言いたくなるようなネイトの本当の年齢にユウカにマコトやアコにチヒロは驚愕するしかなかった。
ノアとサツキすら言葉を失い唖然としている。
一方、
「なるほど…やっと貴方に感じていた違和感の正体が腑に落ちたわ。」
「ダンナがあん時言ってた『80』ってのは本当だったってことか。随分若い爺さんだな。」
ネイトとかつてぶつかり合ったヒナとネルはすっきりしたような表情を浮かべていた。
銃の扱いだけではなくパワーアーマーでの身のこなし、徒手空拳ですらネルと互角以上にわたりあう戦闘能力。
それが90年生きてきた中で培われてきたモノだとすれば…その経験値は計り知れないものになるだろう。
「なぁダンナ…アンタどんなとこからやってきたんだ?」
そんなネイトの来歴をもっと知りたいと思いネルが尋ねると…
「そうだなぁ…。キヴォトスが総出を上げても足りないような大国同士の戦争を開戦劈頭から10年間最前線で戦い続けてきて…。」
「キヴォトスの総人口よりも多い大国同士の戦争ですか…!?」
「ネイト社長の技術がある世界の大戦争なんて想像が付きませんね…!」
「戦争が終わったと思ったら…世界を丸ごと火の玉にするような最終戦争が起こって…。」
「世界が丸ごと火の玉…!?一体何をどうすればそんなことが…?!」
「キヴォトスにある兵器どころか…アイツだってできっこないわよ…!?」
「何とか逃げ延びたと思ったらカチコチに凍らされて210年後に目覚めたらまぁ酷いもんさ。外はゲヘナが裸足で逃げ出すような世紀末の世界になってた。」
「ゲヘナが裸足で逃げ出すってどんな場所なんですか…!?」
「小さい子がいる所じゃとても言えないような場所さ。それでその場所を普通に人が生活できるくらいまでに復興させて…90歳迎えたくらいで息を引き取ったのさ。」
なんとも信じられない話だが…まるで思い出話でもするかのように語るネイトの口調には嘘の気配は混じっていない。
「えー?!ネイトさんってお爺ちゃんだったの~!?」
その話を聞き、イブキもびっくり仰天のようだ。
「まぁな。頭と心はお爺ちゃんで身体だけ若返ったって感じだ。」
「ホント―!?ねぇねぇ触っていい!?」
「どうぞ。」
「…わぁ、全然お爺ちゃんじゃないみたい…!」
ペタペタとネイトの顔を触り肌の張りなどを確かめその若々しさに驚いていると…
「それで…なぜ異世界で息を引き取ったネイトさんが若返ってキヴォトスに?」
ネイトがキヴォトスにやってきた理由を尋ねるヒナ。
人は死んだらそこまで、キヴォトスでも侵しようのない不変の事実だ。
しかしネイトはそんな不変の事実を踏み倒し今ここにいる。
明らかに人ならざる存在の意思が働いたとしか思えない。
「あぁ~…他校の君たちにこの名前を言って通じるかは分からないが…。」
ネイトはそう前置きをし…
「『梔子ユメ』、かつてのアビドス生徒会長が俺をアビドスに遣わせたんだ。」
彼をキヴォトスに連れてきた少女の名前、ユメのことを明かすと…
「ッ!?ど、どうしてその名前を…!?」
今度はヒナが驚愕し目を見開いた。
「どうしたんですか、ヒナ委員長?」
「…梔子ユメは…三年前にアビドス砂漠で命を落とした生徒の名前よ…!」
『…え?』
ヒナの言葉に周囲の者たちが言葉を失う中…
「ほぉ…ホシノ以外はほんのわずかな当時のアビドス生徒やノノミしか知らないと聞いていたが…。」
意外そうな表情を浮かべるネイト。
かつてのアビドスは最早風前の灯火で生徒数もごくわずか…どころかホシノが入学したころは二人しかいなかった。
そんな学校の生徒会長の名前など他校の生徒がいちいち覚えているとは思えなかったが…
「彼女を収容したのが…私だったから…。」
「っ!…そう言うことか。」
彼女の言葉を聞き納得するしかなかった。
「なるほど…ね。キヴォトスに来て一年も経たないネイトさんから彼女の名前が出てくるとなると…より信憑性が出てくるわね。」
騙すつもりでそんな知名度皆無の生徒の名前をわざわざこの場面で使うとは思えない。
「じゃあよ、その今はいないアビドスの生徒会長はなんでダンナをアビドスに送り込んだんだよ?」
次にネルがなんとも彼女らしいあけすけとした質問を投げかける。
「ちょ、ちょっとネル先輩…!」
あまりにもドストレート過ぎる物言いにノアが苦言を呈しようとするが…
「おいネル、それはあまりにも愚問じゃないか?」
「…なんだと?」
「俺がやっていることを考えればわざわざ聞かなくても理解できると思うんだが?」
呆れ顔を浮かべたネイトが彼女に質問を返した。
「ネイト社長がやっていること?それは皆知ってると思いますが…。」
「アビドスの復興事業だろう?だが、それが一体何の関係が…。」
それにユウカとマコトが首を傾げながら答える。
ネイトのキヴォトスでの活動は最終的にそこに繋がっている。
最早語るまでもない事だが…
「…え?まさか…?!」
「そ、そのためにか…!?」
眼を見開きながらネイトを見つめると…
「そうだが?俺はユメに『アビドスの復興』を頼まれた。だから、俺は今キヴォトスにいてアビドスで働いている。」
『なにを今更』とでも言いたげな表情を浮かべて返答する。
「あ…あのですよ?まさかそのために…カイザーと戦争を…?!」
「そりゃ向こうが襲ってくるんだから反撃はするし償いをしてもらうのは当然だろう?」
アビドス解放戦争も…
「あれほどの術策を講じビナーに戦いを挑んだのもか…?!」
「奴には悪いが…アビドスを復興させるためにな。」
先日のビナー討伐作戦も…
「ミレニアムに大金を払ってでもカイザーの事業を委託されているのも…!?」
「何事も先立つものは必要だろう?。W.G.T.C.を起業したのもそう言う理由だ。」
今やキヴォトスで知らぬ者はいないであろうW.G.T.C.の創設も…
「全部…頼まれたから…なの…!?」
「第二の人生っていう報酬を前払いでもらっている。放り捨てるつもりは毛頭ない。」
全ては『アビドス復興』のため。
そのためだけに…ネイトはキヴォトス最大級のマンモス企業であるカイザーと戦い勝利した。
そのためだけに…人智を超えた怪物としか言えない『ビナー』とも激戦を繰り広げ打ち破った。
そのためだけに…会社を立ち上げ今やミレニアムだけでなくゲヘナでも躍進を続けてきた。
ただただ…今は亡きアビドスのかつての生徒会長に頼まれた、ただそれだけでだ。
そして…ネイトはそれを成し遂げつつある。
今やアビドスは三大校だけでなく連邦生徒会ですら注視する大きな影響力を持つまでに復活した。
軍事力に関してもかつての『最強校』の姿を彷彿とさせるまでに強大なものとなった。
経済に関しても秘められた爆発力はミレニアムとゲヘナが決して無視できるものではないほどまでに立て直された。
と…
「…さて、ここまではヒマリとコタマは知っていることだな。」
「…はいぃッ!?」
まさかのネイトの言葉に驚愕しながら声を上げてヒマリとコタマを見るユウカ。
そう言えば先程からこの二人はこのような話は大好きな手合いのはずなのにネイトの話に対してノーリアクションだった。
「何度聞いても数奇を軽々超えた人生を送ってますね。」
「現実とは思えませんが…ネイトさんという存在は事実ですもんね。」
そして、ネイトに指摘されて初めて相槌を打つヒマリとコタマ。
「部長にコタマ、知ってたの!?」
「というか、ここにいるミレニアムの生徒でいうと…知らないのはユウカとノアとチヒロだけだな。あとは居残りのウタハとハレもここまでは把握してる。」
「あら、お教えしてませんでしたっけ?」
「一切聞いてませんよ、ヒマリ先輩…!」
「だからおさらいって言ってたんですね…!」
しかも、まさか知らなかったのはセミナーとヴェリタス副部長の情報通であるべきメンツだったことに愕然とするしかない。
「あと、アビドスに所縁のあるアル達もこの辺りは把握してる。」
「まぁ、貴方とこの子達の関係ならそのあたりは不思議じゃないわね…。」
「それで…ネイト社長の来歴は概ね納得はした。」
なんとも落ちにくい腑を何とか落としマコトは…
「だが貴様がその『連邦』という世界からやってきたというのなら一層納得がいかん。」
「というと?」
「あの…巨大なヘイローは一体何なんだ?」
次に把握すべき情報…あの日ネイトに顕現した超大型のヘイローについてだ。
ネイトは異世界生まれとはいえ人間、それは覆しようのない事実だ。
そんな人間のネイトにヘイローが顕現したというのはネイトの来歴以上に不可解すぎる。
「私もその情報は未だ把握しておりません。…お聞かせ願えますか?」
そして、ヒマリもこれには目線を鋭くしネイトに問いかける。
ユウカやヒナたちも真剣な目でネイトを見つめている。
全知である彼女をもってしてもいくら考えてもあの事態の理由がさっぱりわからなかった。
さらに元から『クラフト』というキヴォトスでも規格外の能力が強化され…リバティ・プライムという圧倒的な戦力まで生み出した。
そして…
「リバティ・プライムだけじゃないわ。この…マサチューセッツもおそらくそうね?」
今乗っているこの戦艦、これもおそらくネイトの力によって生み出されたものだろう。
出なければ…外界から隔絶されたこの地にキヴォトスの常識を超えた『超戦艦』ともいえるマサチューセッツが存在している説明がつかない。
「私もあの力に関しては見るのは二度目だけど…一体どういう能力なの、兄さん?」
「説明するのはいいが…幾らか断っておく。」
ここまで来て隠し立てするつもりはないが…
「俺も正直あの力に関しては把握しきれていない部分が多い。そして、俺が今から説明することは『神秘』に関するとある研究者からの受け売りで真偽のほどは定かじゃないということ…この事は理解してくれ。」
そう前置きをして全員が頷くのを確認し…ネイトは語り始めた。
「その研究者が言うには…俺にはある人物の神秘が眠っているらしい。」
「ある人物の神秘?」
「名前を『一水サヤカ』という大昔の生徒の神秘らしい。」
「『一水サヤカ』?」
ネイトが明かしたこの生徒の名を聞き…
「ッ!その名前は…!」
「ノア、知ってるの?」
唯一ノアが反応を示した。
「『一水サヤカ』…以前見たことがある歴代連邦生徒会長の名鑑の中にありました…!」
「連邦生徒会長だと…?!」
「現在のアビドス出身で…このキヴォトスにおける『初代連邦生徒会長』を務めていた伝説と言える人物です…!」
「し、初代連邦生徒会長ですか…!?」
長いキヴォトスにおいて連邦生徒会長という存在は常に一般の生徒とは隔絶とした存在だった。
失踪した今代の連邦生徒会長も『超人』と呼ばれていたことからそれが伝わってくるだろう。
そんな連邦生徒会長…しかも『初代』となるとその力は想像もつかない。
「曰く知恵も強さも秀でていて『創造』を司る神秘を操り当時のキヴォトスを平定したらしい。」
「『創造』の神秘…確かにその名に違わぬすさまじい神秘の力のようですね…。」
「でも…なんでそんな力がネイトさんに宿っているの?」
チヒロの疑問はもっともだ。
ネイトのあの姿の力の源泉の正体は分かったが…問題はなぜネイトがその力を宿し行使できるかだ。
「まずなぜ使えるかだが…俺の『名前』が関係しているらしい。」
「ネイトさんの名前?」
「『一水サヤカ』に付けられた異名…それが『源流のネイト』とのことだ。」
「『源流のネイト』…ネイトさんと同じ名前の異名…。」
「でも、だからってなんで同じ名前ってだけでダンナがその力使えんだ?」
「その研究者曰く…『見立て』らしい。」
「『見立て』…この場合は『なぞらえる』という意味が適切でしょうか?」
「流石ヒマリ、理解が早くて助かるよ。俺がキヴォトスに来た特殊な経緯と世界を飛び越えさせるほどの神秘の強度を誇るユメの『死者』に対する神秘が組み合わさって…。」
「『源流のネイト』の異名を持つ初代連邦生徒会長の力が同じ名前を持つ貴方の体に宿るようになった…ということね?」
「大まかにはそんな感じ…らしい。」
普段らしからぬあまりはっきりしないネイトの反応に、
「自分の力だというのに随分あやふやな認識ですね。」
ジトっとした目線を向けてくるアコ。
「そう言うな、天雨アコ。この説明だって殆ど受け売りな上俺もこの力を把握しきれていないんだから。」
しかし、ネイトもそう答えるしかない。
キヴォトス人でもないので神秘に関しては門外漢な上試行回数も三回とデータが少なすぎるのだ。
それでも…
「とりあえず…ネイトさんのあのヘイローの正体は理解しましたがその効果が…。」
「リバティ・プライムやこの戦艦のクラフト…ということか?」
そのわずかな試行回数であっても『源流』の力は脅威と言わざるを得ない。
「貴様の神秘の力は分かったが…なぜこのマサチューセッツとリバティ・プライムがクラフトできたのだ?」
「端的に言えばどちらも俺の世界に存在していた兵器さ。マサチューセッツに至っては…俺が生まれる100年前に建造されて俺の地元で博物館として係留されていた戦艦だ。」
「え…えぇっとということは…。」
「俺の年齢込で考えるなら…400歳になるお婆ちゃんだ。」
「…なんとも元気なおばあさんなのね、この戦艦って。」
「その100年前の状態でも40㎝を超える巨砲を持つなんてキヴォトスでも規格外の火力だね…。」
「俺の現役時はすごかったぞ。敵空軍の超音速巡行可能なステルス機の大編隊を…。」
ネイトの口から語られる新たに生まれ変わったマサチューセッツの武勇伝の数々。
敵空軍最新鋭ステルス機の大編隊を蹴散らし、弾道ミサイルも含む数百発にも上るミサイルの波状攻撃を単艦で凌ぎ切った。
たとえその身に極超音速対艦ミサイルを受けてなお浮かび続け太平洋で暴れ続けた。
海軍との戦闘もガウスキャノンと対艦ミサイルによるアウトレンジ攻撃で数々の敵艦隊を圧倒。
上陸支援でも遺憾なく火力を発揮し敵の防御線を粉砕し上陸部隊の突破口を作り上げた。
「超音速巡行が可能なステルス機…!?」
「ミレニアムの技術を圧倒していると判断するしかありませんね…!」
「弾道ミサイルすら撃ち抜き対艦ミサイルすら耐えるとは…!防御面も鉄壁ではないか…!」
「これをクラフトした時はケテル…ビナーとの戦いで連れてきていた四つ足のロボットが10体と無数のロボット兵やドローンがホシノ達に襲い掛かるところだったから助かったよ。」
「確かにこの武装ならケテルであろうとひとたまりもありませんでしょうね…。」
在りし日のマサチューセッツの戦いと敵の技術力の高さに驚愕する一行。
すると…
「…あっそう言えば!」
ヒマリが何かを思い出したような声を上げ、
「ネイトさん、なぜアビドスはケテル…そちらが仰るところの『スフィンクス』を戦力化できていたのですか!?」
そう、マサチューセッツもそうだがネイトは特異現象捜査部が調査していたケテルを戦力化しビナーとの戦いに投入していた。
ヒマリですらそのようなことを構想すらしなかったことをネイトは実現していたのだ。
なんとしても解き明かさなくてはと意気込むヒマリだが…
「あぁ、スフィンクスか?未起動状態の奴をハッキングして制御下に置いたんだ。」
「…はい?」
「マサチューセッツのクラフトの時に残骸を解体してな。その時に色々構造を把握できたんだ。」
なんともあっさりと、それでいて…
「え…えぇっと…それだけ?」
「それだけ。」
「もっとこう…手の込んだ真似とかは…。」
「いいや、ふだん俺がやるハッキングよりもむしろ簡単だったくらいだ。」
まるでできて当然とでも言わんばかりのネイトに…
「………ヌゥウウウウウウウウンッ!!!」
「ひっヒマリ先輩っ!?」
色々な感情がごっちゃ混ぜになり普段の清楚な雰囲気などどっかへ行ってしまったヒマリは悔し泣きをするのであった。
「分かるよ、ヒマリ…。あそこまで事も無げに言われちゃったら…ね。」
「よしよし、大丈夫ですよ。ヒマリ先輩は私達でも及びもつかない全知だって分かってますから。」
「ちーちゃぁん!!!コタマぁ!!!」
「…まぁ『全知』は置いておいて…リバティ・プライムについてはどうなのかしら?」
こうなっては長くなりそうなのでヒマリは一旦放置しヒナがリバティ・プライムについて尋ねる。
「リバティ・プライムに関しては開発目的が俺が戦った戦争終結のために建造されたっていうくらいしか知らないし戦っているところを見たのはあの時が初めてだ。」
「…そんな未知数な物を生み出したんですか?」
「投入される戦争は完成前に俺が終わらせてしまったしな。」
「…えっ戦争を終わらせたのか、ダンナ?」
サラッと語られる前世でのネイトの戦歴にネルもギョッとしてネイトを見つめる。
「…まぁ、それはいいだろう。」
ネイトも受勲こそされたがただただ国を守るため、死にたくないために戦い続けてきただけだ。
『アンカレッジ解放の英雄』という評価もプロパガンダ込で呼ばれていたにすぎないので実感がないのだ。
「俺が目覚める10年前に戦って大暴れしたらしいがその時に『衛星兵器』で破壊されて修理され続けてきたとしか。」
「ちょ、ちょっと待って…!?あのロボット壊すのに衛星兵器が必要なの…!?」
「やはり耐久性もとんでもないんですね…!」
「あれ一体でもゲヘナの大部隊を差し向けて仕留めきれるかどうか…?!」
そして。やはりリバティ・プライムに関してもマサチューセッツ同様規格外の戦力だと判明し愕然とする面々。
衛星兵器などこのキヴォトスであっても実用化されていない。
つまりそれは現在存在するキヴォトスの兵器では破壊が非常に困難だということだ。
手が無いわけではない。
しかし…
(ビナーとの戦いを見るに…!)
(航空兵器や巡航ミサイルからの攻撃も防ぎきりそうね…!)
それが通用するほどあのロボットは甘くはない。
一体でも十二分に戦略兵器たりうる存在を四体もアビドスは保有している。
「それで今はリバティ・プライムはどうしてるの?」
「あぁ、アビドス復興の手伝いをしてくれてる。凄いぞ、毎日数十エーカーは耕してくれてる。」
「そ、そんな超強力なロボットを農作業に…!?」
「へ、平和的活用できていらっしゃるなら幸いです…。」
そんなリバティ・プライムをトラクター代わりに使うネイトの豪気さにアコとノアがひきつった表情を浮かべる。
「さて…一応、俺が話せる辺りの情報はこれくらいだが他に何かあるか?」
ここで尋ねられていた質問は終わったようなので質問を求めると…
「あ…じゃあ…私から。」
「なんだ、ユウカ?」
「ネイトさんの世界の技術は分かりました…。ですが…なぜかなり差異のあるキヴォトスの技術も吸収し活用できているんですか?」
ユウカが手を上げてそう尋ねてきた。
ネイトのロボットなどの技術は確かに驚異の一言に尽きるが…その技術はキヴォトスではとんでもなく旧式な物ばかりだ。
特に電子部品に関しては…真空管だ。
キヴォトスでは廃れて久しい代物でミレニアムが腰を抜かすようなロボットを作っている。
しかも、ネイト自身はキヴォトスの技術を吸収し独自に組み合わせて全く新しい発明を実現しており『トールシステム』が特筆すべき例だ。
一方、ミレニアムでは一部真空管を用いてネイトのロボットの再現を行っているが…全くと言っていいほどうまくいっていない。
それがユウカやミレニアムの面々には不思議でならなかった。
「ふ~む…一つ例を挙げよう。クジラは知っているか?」
「それはまぁ…ハイ。」
「じゃあ、クジラの遠い親戚の陸上動物は何か知ってるか?」
「え?えぇ~ッと…。」
ネイトのクイズのような問いかけにユウカが答えに詰まると…
「………カバ…。」
「え?」
「クジラの祖先は…現在のカバの祖先が水中に戻ったグループになります…。」
泣きじゃくっていたヒマリが涙声で答える。
「正解。で、これで例えるならクジラは言うなればミレニアム、カバは俺の持つ技術としよう。」
「…例えは分かったけどそれがどういうことなの?」
「まぁまぁここからだ、チヒロ。で、だ…カバがクジラ並みに水中に順応させるにはどうすればいい?」
続くネイトの質問に…
「ふ~む…酸素ボンベや足ヒレに水中用の小型スクリューを持たせるなどだろうか?」
「深く潜らせるなら耐圧殻の潜水服を纏わせる…というのもあるかしら?」
マコトとヒナがなんとも脳筋な方策を提案。
「ちょ、ちょっとマコトちゃん…。」
「委員長、それはもうカバとは言えないんじゃ…。」
側近であるサツキとアコは強引なそのアイデアに苦笑を浮かべるが…
「だが、できる出来ないは置いてそれでカバはクジラ並みに水中で活動はできるようになるだろう?」
「ま…まぁそれは確かに…。」
ネイトもそのアイデアを採用しユウカもそれに同調する。
そして…
「じゃあ次だ。…クジラをカバ並みに陸上で活動できるようにするにはどうしたらいい?」
ネイトの次の質問は…
「それはさっきのカバの例を参考にするなら…超大型の履帯の車両に乗せる…とか?」
ユウカはそう答えるが…
「乗っけるだけだとクジラは自重で衰弱するし体温を調整できずにオーバーヒートを起こすぞ。」
「あ…!」
ネイトはクジラの生態を挙げてそのアイデアの弱点を突く。
「で、では巨大な水槽を…!」
「じゃあ坂道とかはどうする?」
「り、履帯を一つではなく複数連ねて…!」
「揺れでクジラが水槽にぶつかったらそれだけでもダメージは大きいぞ?」
「そ、それならもっと大きな水槽を…!」
「じゃあその巨大な履帯や水槽を乗っけてでもへこたれないエンジンはどうする?」
「え、えぇっと…!」
「エサは?とんでもない量を毎日運ぶのか?」
「そ、それはカバだって…!」
「カバは草食、水草だったら海にだってある。」
ユウカは次々解決策を挙げるがネイトがどんどん課題点を挙げていき…
「…あぁぁぁぁもう!!!次から次へとォォォォ!!!」
とうとう頭を抱えてしまうと…
「そう、つまりそう言うことだ。」
「…え?」
「クジラがカバの真似をするってのはそれだけ課題と困難が多いってことだ。」
ネイトがそうユウカに告げる。
意味が分からず呆けていると…
「…一度捨てた領域に舞い戻るのは非常に困難であり、新たな領域に進出するのはどうにかできる…ということですね。」
「…流石ヒマリ。」
ヒマリがネイトの言わんとしていることを答えて見せた。
「えっと…どういう…。」
「つまりだ。俺の技術は性能では引けを取らないがこちらでは旧式だ。それは俺もキヴォトスに来て重々承知している。」
ネイト自身、ソフト面ではキヴォトスの技術は連邦の遥か先に言っているという認識は常に持っている。
特に性能を維持し小型化するという面においては連邦世界では誰もなしえなかった事である。
「だが、発展させていけば形は違えど追いつくことはできる。」
それでも要は既存の技術の発展形、基礎知識も広く知れ渡っているので追いつくことはできる。
事実、パワーアーマーモジュールなどに用いる機能の小型化のめども立っていることからもそのことは伺えるだろう。
それこそ、カバの素体に様々な装備を身に付けされるような物だ。
古いゆえに後付けで様々な対応ができる。
対して…
「そして…その旧式が廃れて久しいキヴォトスではどうだ?一度廃れた技術の復活…その難しさは語るまでもないだろう?」
『ッ!?』
キヴォトスは技術の発展と共にそれらの技術は使われなくなってしまい今では製造ラインもないだろう。
それは水中での生活に適合するために足を退化させたクジラのようなものだ。
しかも、その技術はそれに見合った巨体にまで成長。
結果、カバと同じ土俵に立つにはあまりにも試練が多すぎる。
「これが俺なりに考えた俺がキヴォトスの技術を吸収出来て…そちらが俺の技術を吸収できない理由だ。納得してもらえたかな?」
「飲み込み切れませんが…。」
少々強引な説明だったが…ユウカもネイトの説明に納得するしかなかった。
「ふ~む…空崎ヒナ、今度貴様の所のロボットを…。」
「お断りするわ。分解したらリース契約解除だもの。そもそも分解しても私達には絶対にちんぷんかんぷんよ。」
「どうしてもと仰るのならマコト議長が直々にどうぞ♪Mr,ハンディにアサルトロンにセントリーボットとより取り見取りですよ♬」
「…頑張ってね、マコトちゃん。骨は拾ってあげるわ。」
「えぇいッ薄情な連中だ!!!」
一方、ゲヘナの面々はそんな会話を行っていた。
「イロハにチアキ、貴様たちもどうにか…!」
と助け船を求めマコトは後輩二人の方を見るが…
「…あっあれ?イロハ?チアキ?ってあぁ、イブキもいないぃッ!?」
同行していた残りのゲヘナのメンバーの姿がどこにもなかった。
いや、それだけではない。
「あッモモイ達にコトリ達もいない!?」
「マキまで…!あの子ったら…!」
ミレニアムの一年生組も忽然と姿を消していた。
「あぁ~まぁ小難しい話だったから退屈してどっか行っちゃったか?」
「だっ大丈夫なんですか、ネイト社長…!?」
冷静に理由を分析するネイトにノアは少々焦りながら声をかける。
なにせここは全長210m、様々なブロックと階層に別れた比喩抜きで黒鋼の要塞なのだ。
そんなところを来たばかりの面々が勝手に出歩いて迷子にならない方が確率は低いだろう。
「はッ早く探さなければ…!」
「あぁもうあの子達ったら…!」
「落書きとかしたらとんでもない事なのに…!」
これにはそれぞれの代表であるマコトとユウカ、ヴェリタスの世話役ともいえるチヒロが席を立ち食堂から出て行こうとするが…
「まぁ、落ち着けって二人とも。」
「ネイト社長、なにを悠長な…!」
「子供っていうのはこういうとこに来ると…。」
ネイトはコーヒーを飲み干してゆっくりと立ち上がった。
――――――――――――――――
――――――――――
―――
「うんしょうんしょ…!」
「ヒィ…ヒィ~きついですねぇ…!」
「せっ戦車を動かすのとは全然違いますね…。」
「まっまだなんですか、モモイさん達…!?」
そんなモモイ達はマサチューセッツ艦内を移動中。
かつての先生同様、圧縮されたかのような狭い艦内と段差も多くアップダウンが重なる慣れない道のりにコトリやイロハたちの息も上がっている。
「もうちょっともうちょっと!」
「も、モモ…ホントにどこ連れて行こうっていうの…?!」
そんな一行を率いるモモイは元気いっぱいに目的の場所を目指していた。
「よかったのかな…。勝手に出てきちゃって…。」
「大丈夫だよ、ヒビキちゃん。一応見学は自由って言われてるし。」
「そ、それに道は、間違ってないから、迷子にはなってないよ。」
「モモイが連れて行ってくれる場所…一体どんな場所でしょう…!?」
普段ならこのようなモモイの後をついていくのは心配だがミドリもユズも目的地に覚えがありその後に続いていく。
そして、
「着いたよ、皆!」
モモイ達はそこに到着した。
「ここがモモイのおすすめの秘密のエリアですか…!」
「わぁぁぁ~すごぉい!高ぁい!!!」
そこで広がる光景にアリスやイブキだけでなく
「これは…すごい光景ですね…!」
「おぉぉぉ…船にこんな場所が…!」
フラットな性格のイロハに元気なチアキも圧倒され、
「ヒビキ、見てください!」
「あんなに大きかった主砲があんなに小さく…!」
「これは確かに絶景だね…!」
コトリとヒビキにマキも興奮を隠せずにいた。
そう、ここは…
「どう?!マサチューセッツの防空指揮所からの光景は!?」
マサチューセッツ艦橋の頂上付近にある部署、防空指揮所だった。
眼下に広がるのは雄々しいマサチューセッツの艦体と広大な水没地帯を一望でき吹き抜ける風が彼女たちの髪を揺らしていた。
近代化改修されて使われなくなって久しい場所だがここはモモイ達にとっても忘れられない思い出深い場所でもある。
「久しぶりだね…。ここでネイトさん達の上陸作戦を見てたよね…。」
「うん、あの時はすごかったなぁ…。」
「あんなに激しいの、たぶん更新は無理だねぇ…。」
かつての光景を思い出ししみじみと語るモモイ達。
「ふむ、上陸作戦というと?」
「おぉっとこれは関係者から貴重な証言が!?」
それを聞きつけたイロハとチアキは情報を得ようとモモイとの間合いを詰める。
二年生とはいえ万魔殿の議員、抜かりはないようである。
「うん、ネイトさん達はね…!」
気を良くしたモモイが語り始めようとしたその時…
「おいおい、モモイ。守秘義務は守ってもらわなくちゃな。」
「ってえぇ!?」
「ネッネイトさん!?」
今しがた自分たちが通った入り口からネイトが現れた。
「やっぱりここにいたか。」
「どっどうしてここが分かったんですか!?」
自分たちは先ほど到着したばかりだ。
移動にもそこそこ時間をかけていたがそれを差し引いても追いつくには早すぎる。
しかも自分たちは目的地を告げずに出てきた。
どの程度で話し合いが終わったかは分からないが余程確信してこの場所へ、それも最短距離でやってこなければ不可能だろう。
そんなコトリの疑問に…
「子供っていうのは『高い所』へ行くのが好きだからな。この艦で一番高い所でモモイ達が一緒にいるならここだと思っただけだ。」
なんとも子供の本能を知り尽くしたかのようなネイトの答え。
「…まんまモモの思考読まれてるじゃん。」
「グヌヌ…なんか単純って言われてるみたいで悔しいぃ~…!」
「それは置いておいて…イブキ、急にいなくなるからマコトが大慌てになってたぞ。」
「あっ…ごめんなさい…。」
「アリスもここはとても広くて複雑だ。下手に迷うと甲板に出るのだって難しんだからな?」
「はい…ごめんなさい、パパ…。」
「他の子も一応ここはうちの機密施設だ。出歩くなとは言わないが勝手に歩き回られるのは困る。」
『ごめんなさい(申し訳ありません)…。』
と、一応マサチューセッツ探検隊に軽く注意をし…
「さて、お小言はこれくらいにしておこうか。…うん、いつ見てもここからの景色は良いものだな。」
ネイトも防空指揮所からの景色を楽しみ始める。
「そう言えばネイトさんって昔博物館にあった頃のマサチューセッツによく来てたんでしたっけ。」
「軍人だったと父親と一緒にな。もっとも、うちは代々陸軍の家系だったから俺が海軍に行かないか心底不安だったらしい。」
「船に乗って、戦うネイトさん…。なんだか想像、できませんね…。」
「はっはっはっ、俺も波に揺られてるよりパワーアーマーに乗って走り回る方が好きだな。」
そんなネイトの幼いころの思い出話を語っていると…
「…っと確か…。ちょっとアリス。」
「?はい、どうかし…。」
何かを思い出したようにアリスを招き…
「よいしょっと。」
「キャッ!?」
「フフッ俺もこうして父さんにこうやってもらったもんだ。」
彼女を抱え上げ肩車をした。
「どうだ、アリス。こうやって見るとまた違った景色に見えるだろう?」
ネイトの身長は加わりさらに開けた景色に…
「これが…パパが見ていた景色…!」
目を輝かせながらそれに見入っていた。
そして…
「…まさか、俺がここでこうできる日が来るとはな…。」
ネイトも感慨深いものを感じていた。
出来るとすら思ったこともなかったことだが…こうして父と同じことが出来る日が来ようとは…。
世界は違うがそれでも…
(父さんも…こんな気持ちだったんだろうなぁ…。)
肩にアリスの重さを感じかつて自分をこうしてくれた父の面影を感じかつての光景を思い出していた。
「…いいなぁ、アリスちゃん…。」
それをイブキは少し羨望が混じった優し気な眼差しで見つめていた。
「おや?いいんですか、イブキ?」
「ネイトさんに頼めばしてくれるはずですよ?」
イロハとチアキはそう尋ねる。
今朝もイブキはお熱のネイトに抱っこをせがんでいたのだが…
「うぅん、今はいいの…。」
イブキは小さく首を横に振り…
「今はネイトさんとアリスちゃんの大切な時間だから…。」
自分にはない二人の特別な絆を感じ今は引き下がることにしたようだ。
「…でも、今度やってもらおっと♬」
それでもやはり『ゲヘナ』の生徒、ちゃっかりしているようである。
「…成長しましたね、イブキ。」
「はい、将来は立派な議長になれますよ。」
先輩であるイロハとチアキは着実に成長しつつあるイブキを撫でながら微笑ましく見つめるのであった。
「う~ん…いい光景だなぁ…。」
「ネイトさんはもう平気みたいだね、お姉ちゃん…。」
「アリスちゃんも、本当に『ネイトさんの子供』に、なったんだね…。」
「おぉ~…これは本当に私達でもクラッキングできないね。」
「なんだか…アリスちゃんが羨ましく思っちゃいますね。」
「うん、本当に血が繋がっていないなんて信じらんない…。」
モモイ達ミレニアム組も見慣れているはずなのに二人の仲睦まじさに笑みがこぼれて仕方なかった。
そんな穏やかな雰囲気が流れる防空指揮所。
だが…
ヴゥゥゥゥゥンッ!!!ヴゥゥゥゥゥンッ!!!ヴゥゥゥゥゥンッ!!!
『ッ!!?』
突如としてマサチューセッツに警報音が鳴り響く。
「なっ何!?何があったんですか!?」
「この警報…まさか…っ!?」
うろたえるモモイ達の中で唯一実戦慣れしているイロハがこの警報の意味に気付く。
「こちら防空指揮所!CIC、状況をッ!!!」
そして、ネイトもアリスを下ろしすぐさま近くにあった艦内電話で状況を尋ねると…
《こちらCIC、レーダーが多数の飛翔体を検知!おそらく廃墟街からいつもやって来るドローン編隊と思われます!》
「てっ敵機ですかぁッ!?」
まさかの敵機来襲にチアキも驚愕するが…無理もない。
ここは周囲をぐるっとロボット兵が屯する廃墟区画に囲われた水没地帯だ。
ケテルというこの地の支配者がいなくなりこうして占領しようとやって来るロボットがいてもおかしくはない。
「対処できるか!?」
そんなネイトの問いかけに、
「なぁに、これくらいいつものこと!実戦さながらの訓練ができるとむしろ大歓迎ですよ、艦長!!!》
自信満々で答える戦術長のガッツィー少佐。
それを聞き、
「よろしいッ!!!だったらミレニアムとゲヘナの代表団がいる!!!一つど派手な対空防御を見せてやってくれ!」
ネイトも胸を張って彼に注文を付けた。
《Aye, aye, sir!!!主砲も用い我がマサチューセッツの実力をご覧入れましょう!!!》
「その意気だ!太平洋の伝説の実力、とくと見せてくれ!!!」
その通達を聞き終えると…
「ぱっパパ…!」
「ネイトさん…!」
只ならぬ事態を感じアリスとイブキが縋りついてきた。
「安心しろ、二人とも。この船に奴らが傷一つ付けることはない。」
安心させるように浅く笑いながらネイトはドローンが来襲する方向へ視線を向ける。
ちょうどその頃…
「ちょッマコトちゃん!外に出ると危ないわよ!!!」
「何を言っている!!?この戦艦の戦う姿を見れるまたとないチャンスだぞ!!?」
「何を言っているはこっちのセリフです!!!いいから中に戻りますよ!!!」
「ロボット達だって危ないって引き留めてたし外に出なくても見せてくれるって言ってたじゃない!!!」
「戦いの空気を生で感じず万魔殿の議長が務まるものか!!!」
マコトは引き留めるサツキとアコを後目に艦内から外に出てきていた。
その目線の先では…
ピーピッ!ピーピッ!ピーピッ!
先程とは違う警報音を鳴らし…ガウスキャノンがドローンが来襲してくる方向へと砲塔を旋回させていた。
「おぉなんという重厚感!!!これぞまさに力の象徴ではないか!!!」
無邪気に騒ぐマコトだが…
「やっば…!もうっあとでネイト社長に責任転嫁することだけはしないでよ!!!」
「もう知りませんからね!!!全部あなたが悪いんですからね!!!」
サツキとアコは血の気が引きマコトを放って即座に艦内に退避。
しかし、マコトはなおも手すりにかじりつき、その光景を見つめている。
そして…
「測的完了!!!主砲弾種『フレシェット砲弾』、信管調てい完了!!!」
「了解した!!!発射サイレンを鳴らせ!!!」
ヴッヴゥゥゥン!!!ヴッヴゥゥゥン!!!ヴッヴゥゥゥン!!!
砲弾が装填され…サイレンの音声が変わった。
「ここに残るのなら耳をしっかり塞いで口を開けるんだ!腹にもしっかり力を込めろ!」
『アー…!』
防空指揮所のネイト達はしっかりと対処をしその時を待つが…
「む?サイレンが変わっ…。」
マコトはサイレンの意味が分からず…次の瞬間、
――――――――――――ッ!!!
目の前で6門の10インチガウスキャノンが放たれた。
いかに火薬を用いていないと言えどその衝撃波は凄まじく…
『――――ッ!!?』
防空指揮所のネイト達ですらかなりの衝撃が伝わり…
「ノオワアアアアアアアアッ!!?」
マコトはかつての240㎜野砲とは比べ物にならない衝撃波をもろに食らいその時の数倍はあろうかという距離を吹き飛ばされた。
放たれたフレシェット砲弾は蒼い軌跡を引き飛翔し信管が設定したタイミングで拡散。
前方を埋め尽くす数百万本にも上る2㎜EC弾が飛来するドローン編隊に襲い掛かった。
瞬間、無数のドローンが煙の尾を引き撃墜。
「す、すごい迫力…!」
「これが…ガウスキャノンの威力…!」
圧巻の光景に言葉を失うチアキとコトリ。
「対空用の砲弾まであるの…!?」
「一斉射で何機を撃墜したんですか…?!」
「あれ一発一発がガウスライフル級の威力って事…?!」
「考えたくもねぇ…!回避不可能で蜂の巣確定かよ…!」
食堂に設けられたモニターで視聴していたユウカやヒマリ達もマサチューセッツの実力に絶句し、
「わぁ…あんな砲弾まであるんだ…!?」
「ほ、本当に凄い戦艦なんですね…!」
「カイザー…本当に無謀な戦いを挑んでたんだ…。」
「ビナーだってこれには敵わないでしょうね…!」
先日、同じものを扱っていたアル筆頭の便利屋68もガウスキャノンの威力を改めて思い知らされていた。
「CIC、敵機の状況は!?」
《敵編隊のおよそ70%を撃墜!これより対空戦闘を始めます!!》
主砲の斉射のみで敵編隊を壊滅にまで追い込んだがこれだけでは終わらない。
一機たりとも残さないという決意を示すかのように今度はマサチューセッツの対空火器たちが火を噴く。
空を引き裂く赤いレーザーに蒼い流星の如き1インチガウスキャノンの砲弾、そして花火のように炸裂するプラズマ砲弾。
キヴォトスでも類を見ない大火力の破壊の嵐だというのに…
「わぁ…綺麗…!」
「空が…まるでキャンバスみたい…!」
その光景に防空指揮所の一行は見入っていた。
赤と蒼と緑の三種類の光と煙の黒が組み合わさり得も言われぬ光景を生み出している。
しかも依然としてドローンは攻撃可能範囲にすら踏み込めず全て叩き落され続けている。
「これが…マサチューセッツの対空防御…!」
「ネイト社長の話…全然大げさじゃありませんでしたね…!」
「これだけでも…キヴォトスで対抗できる兵器は限られるね…!」
圧倒的な防空火力、ネイトの話を聞き把握していたがやはり実際に見て見ると圧巻の一言である。
こうして対空射撃は続き…
「敵ドローン編隊の全滅を確認。対空戦闘を終了します。」
「了解した。太平洋の伝説に恥じない見事な戦闘だった。」
ほんの2~3分でドローン編隊は壊滅。
「すっ凄かったぁ…!」
「はい、これがマサチューセッツ…!」
イブキとアリスもこの巨艦の実力に目をまん丸にし感動しているようだ。
「…こちら対空指揮所。食堂のユウカ、聞こえるか?」
《はっはいなんでしょうか?!》
「悪いが見学はここまでにさせてくれ。」
ドローン編隊は防ぎ切ったがつまりこれは廃墟区画のロボット達が活発化しているということに他ならない。
安全のため、早急に立ち去る必要がある。
《…こればっかりは仕方ありませんね。》
さすがにこれにはユウカも納得するしかなかった。
「…ちなみにマコトは?」
《あぁ~…マコト議長は…。》
なお…
「ハ…はへぇ…?わ、わたしゅが…りぇんぽうしぇいときゃいちょ~…?」
もう一人の主賓であるマコトは完全に伸び切っているのであった。
しばらく後…
「機体チェック。」
「エンジン不調なし、油圧も正常だし燃料もOK! 」
主砲の衝撃でかなり傷んでいたAW101をクラフトで修復し問題が無いかをチェック。
「よし、乗っていいぞ。」
問題が無い事を確かめ搭乗を促すネイト。
「もっと調べていたいぃぃ…!」
「またお願いして連れてきてもらおう。今度はウタハ先輩と一緒に。」
「あぁん写真が相当没収されちゃいましたぁ…。」
「皆で撮った写真は持って帰れてよかったね、チアキ先輩。」
後ろ髪を思い切り引かれるが艦長のネイトの指示は絶対なので乗り込んでいく代表団たち。
「い、イロハにサツキ…。もっとゆっくりぃ~…。」
「人の言うこと聞かないのが悪いんだからしっかり歩きなさい、マコトちゃん!」
「全くしまらないときはとことんしまらない先輩ですね…!」
完全に伸びていたマコトもネイトからスティムパックを打ち込まれ何とか回復しサツキとイロハに運び込まれ…
「『カノープス・ワン』、これより離艦する。」
《了解、道中の警戒はお任せください。安全な帰路を祈ります。》
ヘリはマサチューセッツから飛び立ち高度を一気に上げて飛び去って行く。
機内では…
「本当に衝撃的なことばかりだったわね…。」
マサチューセッツを振り返りながらアルは今日のことをしみじみ呟く。
今日は衝撃的なことばかりだったが…
「ホントそうだね…。それに…。」
「どうかしたの、カヨコ課長?」
「修理費請求されなくてよかったね、社長。」
「…あぁまた気が遠く…。」
「あっアル様ぁぁぁぁ!!!」
アルにはガウスキャノンのユニットコストがトラウマになってしまったようだ。
「…一体どんな価格を見せられたのかしら…?」
「…世の中知らない方がいい事ってあると思いますよ、ユウカちゃん。」
『好奇心は猫を殺す』、数字オタクな気があるユウカをノアは静かに宥めるのであった。
「初代連邦生徒会長…見立て…。収穫はありましたが…。」
「なんだかまた大きな宿題出されちゃったね、ヒマリ。」
「でも…難しい問題ほど燃えますね、部長。」
「…そうですね。帰ったら古い文献を調べてみましょう。」
ヒマリも新たな謎が生まれたがここに来る前よりもすっきりした表情を浮かべていた。
特異現象捜査部として俄然やる気が出たようである。
「いやぁすげぇもん見ちまったな。」
「そうね。想像以上に…心躍ったわ。」
ネルとヒナ、両校の最強達はマサチューセッツが見せた圧倒的な武力に血の滾りを感じていたようである。
やはりどちらも強さを信奉する者たちだ。
マサチューセッツの圧倒的な『武力』に感じるものがあったのだろう。
そして、
「また来たいね、アリスちゃん!」
「はい!また一緒に探検しましょうね、イブキ!」
イブキとアリスは再びマサチューセッツに訪れることを互いに約束するのであった。
こうして、W.G.T.C.の武力の象徴とネイトの謎が解き明かされたマサチューセッツ訪問は慌ただしく幕を閉じるのであった。