Fallout archive   作:Rockjaw

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Tea Party of Dreams and Madness

復興事業に他学区からの労働力受け入れ、さらには新たな航空隊創設といった以前には考えられなかった出来事満載のアビドス。

 

そんな嬉しい悲鳴ともいえる多忙さに見舞われる中、

 

「それじゃあアビドス高等学校定例会議、はっじめるよ~。」

 

今日はアビドス高校の定例会議と報告会が開催される日だ。

 

以前、『廃校対策委員会』の時は5人で行われていた小規模なものだったが…

 

「え~じゃあ『解体作業班』、報告よろしく~。」

 

「うっす、ホシノ委員長。廃墟解体班の進捗状況は…。」

 

アビドス高等学校の校舎の中でも一番広い一室、視聴覚室に多数の生徒達が一堂に会していた。

 

ホシノを筆頭とした生徒会や各部門の総代にロボット、アビドス高等学校用務員にしてアビドス復興施策委員会顧問のネイトとアビドスの錚々たるメンバーが揃っていた。

 

「…ってことで『住宅地再開発地域』の廃墟は6割が解体完了。その2割で再開発が可能となりました。」

 

「おぉ~それはいい報告だねぇ。住宅地が増えればもっと人口が増えるもんね。」

 

「ではそれ以外に何かありますかぁ?」

 

「うっす、『深砂没地帯』の廃墟は徐々に進んでますがやはり住宅地化は困難というほかないっすね…。」

 

「分かりました。では、より詳細なマッピングをお願いしますね。」

 

「了解っす!」

 

「じゃあ次は『植林班』お願いねぇ。」

 

「はい、防砂林の植林状況は現在…。」

 

その後も復興事業には欠かせない『植林班』、

 

「整備班からは廃品修理事業の収益と戦車などの稼働状況を…。」

 

復興事業と防衛力を支える縁の下の力持ちである『整備班』、

 

「こちらは警備班っす。今月の出動状況と賞金首から得られた配当金を…。」

 

日々ストライカー装輪装甲車を駆って街の治安を守る『警備班』、

 

「財務班は今月の学区全体の収益を報告させていただきます。」

 

アビドスの金庫番ともいうべき『財務班』、

 

「『外交班』からはミレニアムとゲヘナ、両校との提携・協定の状況を…。」

 

他校との折衝を担当している『外交班』、

 

「『リクルート班』からは学区外からの出稼ぎ生徒の推移を…。」

 

日雇いの生徒や他校からやって来る転入生などを統括する『リクルート班』などなど…。

 

多種多様の部署からの報告が次々に上がっていく。

 

内容の量もさることながらその質も以前とは比べ物にならない報告が続々と挙がっていく。

 

そして今回の会議からは…

 

「んじゃ、『航空部隊』のジョーズさん。訓練状況はどんな感じぃ~?」

 

「Yes,mam。航空部隊の慣熟訓練は進行中であります。」

 

先日創設されたばかりのアビドス航空隊の教官であるジョーズ01も参加している。

 

「みんな頑張ってるぅ?」

 

「ビシバシやっておりますよ!…『攻撃隊』と『特殊輸送隊』は上手く行ってますが『戦闘機隊』は…。」

 

「あぁ~…アヤネちゃんもへばってたもんねぇ…。」

 

「ちょ、ホシノ先輩!?」

 

どうやらアビドス1のマルチパイロットであるアヤネもF-20Eの洗礼を受けているようだが…

 

「ですが、アヤネ委員も含め見どころのある訓練生もいます!立派な『トップガン』に育て上げて見せますのでお任せを!」

 

それでもへこたれずあの大鮫を乗りこなそうと訓練に励んでいる。

 

「うへぇ、事故だけは起こさないように注意してね。」

 

「了解、無茶をさせず無理をさせて鍛え上げます!!!」

 

なんにせよ、アビドスの空を護る新たな戦士たちだ。

 

とことんしごきあげて一人前に鍛え上げるという方針はホシノも共通のようである。

 

そして満を持して…

 

「こちらネイト、『防衛班』からは航空基地の防空設備の設置完了と…。」

 

ネイトが用務員と兼任している『防衛班』からの報告が上がる。

 

カイザー、そしてビナーという脅威に曝され続けてきたアビドス。

 

そんな状況なので殊『防衛』に関しては様々なノウハウを有するネイトが矢面に立ち様々な業務を行っている。*1

 

「最近の『墓荒らし』の状況はどうですか?」

 

「頻度自体はかなり低下。理由としては識別名『羽』に関しては対外的要因、識別名『雪』は情勢不安定と思われるが依然として学境の警戒は継続中。」

 

「諦めの悪い連中ね、全く…。」

 

「識別名『箱舟』はどうなのぉ?」

 

「『船長』不在が余程聞いてるんだろう。この前の無人機以来目立った動きはない。それにあそこの関連機関の構成員はどうあがいても目立つ。」

 

さらに直接的な脅威だけでなく現在進行形で様々な組織からの諜報戦も人知れず繰り広げられている。

 

「そのほか警戒すべき組織は?」

 

「ゲヘナとミレニアムに関しては表立ってやり取りしている分そのような動きは認められない。」

 

「まぁ~仲良くやっているから関係性を悪化させたくはないんだろうねぇ。」

 

良好な関係を構築できているゲヘナとミレニアムに関しても見せ札こそ開示しているが重要な機密に関しては未だに踏み込ませていない。

 

と、ちょうどミレニアムの話題が出てきたので…

 

「ん…そう言えば耐衝撃ファイバーの見返りに何を渡したの?」

 

シロコがネイトとミレニアムの契約について尋ねる。

 

ミレニアムが再現してくれた『耐衝撃ファイバー』によって大半の生徒の制服や一部私服の『バリスティックウィーブ化』が完了しつつある。

 

さらにはノノミとムツキが使っている『防弾装束』を規格化した代物も設計中だ。

 

その見返りとしてネイトの技術を譲渡するという契約なのだが…

 

「それがまだ何がいいか言ってこないんだよなぁ。」

 

意外なことにいまだにミレニアム側からの返事がない。

 

「マサチューセッツを見ちゃって迷っているのかもしれませんねぇ。」

 

「まぁいずれ言ってくるだろうから気長に待つさ。」

 

こればっかりは急かしても仕方ないのであちらからのコンタクトを待つしかない。

 

「んじゃ、また何かあったらすぐに知らせてねぇ。」

 

「了解。」

 

一先ずこの議題は保留ということで…

 

「それで…ネイトさん、頼んでいた計画の方はどう?」

 

ホシノの目に真剣な光が宿りネイトに問いかけた。

 

「…あぁ、ホワイトボード借りてもいいか?」

 

「いいよ。」

 

ネイトはそうホシノに断り席を立ってホワイトボードの前に立ち…

 

「以前より、ホシノを筆頭にアビドス砂漠で活動中の各組織よりこんな進言があった。…ビナーは本当にアレ一体だけだったのか、とな。」

 

全員の方向を向き直りそう告げた。

 

アビドス・ゲヘナ・ハイランダー・ミレニアムという一大同盟『アゲハ同盟』によって成し遂げられたビナー討伐。

 

山ほどの砲弾薬だけでなくスフィンクスの犠牲とガウスキャノン全損という犠牲を払って成し遂げられたことは記憶に新しい。

 

しかし、懸念が消えたわけではない。

 

「討伐後もアイボットやカーゴボットを用いた観測ではビナーらしき存在は察知されていない。」

 

確かに歴史を辿っても確認されたビナーは『一体』だけだ。

 

あの後もビナーのものと思しき予兆は観測されていない。

 

それでも…

 

「だが、『ケテル』の例がある。警戒をするに越したことはない。」

 

ビナーもケテルと同じ『デカグラマトンの預言者』の一角だ。

 

あの個体だけ…と考えるのはいささか早計と考えていいだろう。

 

「なにせアビドス砂漠は今やアビドスだけの活動領域じゃない。」

 

ハイランダーはアビドス砂漠横断鉄道の施工、ゲヘナは灌漑事業にミレニアムは多くの調査隊が訪れている。

 

諜報戦を繰り広げているトリニティからも日雇い生徒や図書委員会もやって来ている。

 

そんな場所に再びビナーが出現しようものなら…

 

「問題はアビドス復興事業の停滞どころか他校との関係悪化にまで発展する。」

 

「せっかく復興事業などが順調なのにそうなったら困りますね…。」

 

「しかも、ビナーの出現は基本規則性が無い。いつどこに現れるか分からない相手にまたあの大勢力をそろえて対処するというのは現実的じゃない。」

 

「いきなり出てくるんじゃゲヘナどころかウチの戦力を集結させるのも簡単じゃないものね…。」

 

あれだけの準備をして討ち取れた相手の奇襲に対抗するのはアビドス単体の力では非常に困難だ。

 

ならば…

 

「そこで突貫でだが…こういう防衛策を考えてきた。」

 

それに匹敵する防衛策を講じるのは当然ともいえる。

 

ネイトはホワイトボードにアビドス全域が記された地図を張り出し…

 

「名付けて…『O,B,E,R,I,S,C,U』だ。」

 

その地図の砂漠地帯を囲うようにいくつかのマグネットをくっつけていく。

 

「オベリスク?」

 

「この計画の略称だ。原型は連邦時代に俺が将軍を務めたミニッツメンの『支援砲撃システム』でそれをスケールアップさせた防衛システムになる。」

 

『O,B,E,R,I,S,C,U』、Outrange超長距離 Binahビナー Exclusion排除用 Ring環状 Installaction設置型 Sniper狙撃 Cannon Unit装置

 

戦後のマサチューセッツ州、『連邦』において戦後屈指の軍事力を誇る『B.O.S.』をして『不戦協定』を結ばせるまでの勢力を誇ったミニッツメン。

 

それを支えたのがミニッツメンの居住地によって構築された『支援砲撃システム』である。

 

蘇ったこのシステムによりミニッツメンは連邦のいかなる場所であっても砲弾の雨を降らすことが出来、連邦に潜む悪しき者たちから恐れられていた。

 

その威力はB.O.S.制式パワーアーマーであるT-60であっても至近弾で破壊し精度は人間大の標的ならばほぼ直撃させることが可能なほど高い。

 

それを世界を跨いだこの地、アビドスに再構築したのだ。

 

「この図のようにアビドス砂漠をぐるっと囲うように『ガウスキャノン』を配置。このそれぞれを鳴砂空港に設置したマサチューセッツのFCSに接続する。」

 

「ん…まさかそのためにマサチューセッツのレーダー群を?」

 

「こっちはあくまでも副次的運用だ。しかし、図らずも…。」

 

「マサチューセッツを疑似的にアビドスに持ってきたようなものですかぁ…!」

 

ガウスキャノンの威力はビナーに対しても立証済みだ。

 

ビナーを仕留めるのにこれ以上の兵器はないだろう。

 

「まずはアビドス砂漠各地に震度センサーを設置。グリッドロック上に区切り座標を設定。」

 

「それでビナーが現れたことを察知するのね。」

 

「その後、レーザー照準ポッドとビーコン用ロケットを装着した航空隊がスクランブル発進。F-20Eの速度なら一番遠い場所でも20分あれば当該地域の上空に到達できる。」

 

「その後は…。」

 

「レーザーで照準後、周囲に設置されたガウスキャノンから『ミョルニル砲弾』を発射し奴に叩きこむ。」

 

「命中精度は確保できるのぉ?」

 

「以前の作戦とは違い今は『ヤールングレイプル』もある。精度は遥かに向上しているだろう。」

 

急造品とはいえガウスキャノンの列車砲はビナーに全弾命中という成果をたたき出している。

 

それが従来のFCSでの運用が可能になるとスペック通りの命中精度を発揮できる計算だ。

 

「これらをもってビナーを撃破、若しくは撃退するという防衛策だ。」

 

『おぉ~…。』

 

「ん…またすごいのを考えたね、ネイトさん…。」

 

陸空の連携をもってビナーからこのアビドスを護る新防衛策に視聴覚室にいる生徒達から思わず声が漏れた。

 

「…設置にかかわる費用はどれくらい?」

 

「費用は俺のクラフトでほとんどロハにできる。資材に関してもこれまでため込んだ分を使えば十分賄える計算だ。希少資材もあそこで製造すれば問題ない。」

 

元よりビナー戦で使用したガウスキャノンも保守用パーツを組み上げて設計されたものだ。

 

Pip-Boyにはその時の設計図が記録されているので今度は資材さえあればクラフトができる。

 

基礎部分はまた別途設計する必要があるがそれもさして問題ではない。

 

「あとは用地の確保と懸念している学校への説明だけだが…。」

 

「それが解決したらすぐに取り掛かれるんだね?」

 

「その通りだ。」

 

いつものようなしっかりとしたネイトの答えを聞き…

 

「………分かったよ、ネイトさん。各校と用地の確保はこっちが何とかするから準備をお願いできる?」

 

しばし考えこみホシノはGoサインを出した。

 

「了解、直ぐに作業に取り掛かれるようこちらも準備しておく。…では、『防衛班』からの報告は以上とする。」

 

「うん、よろしくねぇ。それじゃ次はぁ…。」

 

こうしてネイトの防衛班からの報告も終え定例会議は次の議題に移っていった。

―――――――――――――

 

―――――――――

 

―――

そんな定例会議を終え日が暮れたアビドス高校。

 

「………。」

 

ネイトは根城にしている技術室で製図台に向い何かを記していた。

 

装着されているのはブループリントでそこには夥しい数の数式と線が書き込まれていた。

 

デジタル化が進んだキヴォトスではCADが普及し今では廃れた製図法だろう。

 

ネイトも一応その技術は習得してはいるが…やはり慣れ親しんだこのブループリントに書き込む古いやり方が性に合っていた。

 

それにこのブループリントさえきちんと保管しておけば防諜性もCADと比較にならないほど高い。

 

そして、そのブループリントのタイトルにはこう記されてあった。

 

『A.T.R.A.S.U.』と。

 

カリカリッ

 

「…ンクッ…プハッ。」

 

カランッ

 

暗い室内にネイトが動かす鉛筆の音とコーラに入れた氷がグラスに当たる音だけが響く。

 

ネイトはその後も製図台と向き合い設計図に記し続ける。

 

それは時計の短針が真上を差そうとするまで続け…

 

「………んっ…ん~…きりがいいしこの辺にしておくか…。」

 

目頭を抑えつつ席から立ち上がるネイト。

 

徹夜しても能率はそう変わらないどころかケアレスミスが発生する可能性もある。

 

なので、ネイトは基本的には完徹はしない。

 

「明日に備えてさっさと寝よう…。」

 

ブループリントを片付け歯を磨き、

 

「ふぁあ~あ…おやすみ…。」

 

枕もとに飾ってあるアリスの写真にそう挨拶をし…

 

「Zzz…Zzz…。」

 

相も変わらずものの数十秒で眠りに落ちるのであった。

 

さて…普段、ネイトは夢を見ない。

 

それこそ、瞬きを一回したら起きる時間というほど毎日ぐっすりだ。

 

夢を見るのは大概ユメが出てきて何かを伝えたりする時くらいである。

 

それ以外は本当に寝ている間の記憶はない。

 

だからこそだろう。

 

「………なんだと?」

 

目の前に広がっている光景にネイトは困惑していた。

 

自分は先ほどいつものベッドで床に就いたはずだ。

 

ならばここは夢の中だということは察しが付く。

 

だからこそ、だ。

 

こういう状況になる時は前述したようにユメと顔を合わせる時だ。

 

その場合はいつも何もない白い空間に自分はいるはずだ。

 

だが、そこはいつもの空間ではない。

 

例えるなら…どこかの屋敷のテラスのような場所だった。

 

周囲には明かりが灯った歴史を感じる街並みが広がっている。

 

「…一体…どうなって…。」

 

白昼夢…にしてはあまりにも突拍子もない光景だ。

 

一気に警戒心を跳ね上げ周囲の気配に気を配ると…

 

「どうかしたのかい?」

 

「ッ!」

 

いきなり背後から声を掛けられ飛びのくネイト。

 

生憎、いつも身に着けている武装は今はない。

 

それでも何もしないよりはましと詠春拳の構えといつでもV.A.T.S.を起動させる準備をとるが…

 

「なっ…?!」

 

「おぉ…驚かしてしまったようだね。」

 

そこに居た…いや、あった物にネイトは少々驚いた。

 

目の前にあったのは…ティーセットと様々な洋菓子が載せられた『スリーティアーズ』が並んだ見るからに高級そうなテーブルとイス。

 

そして…その上座には…

 

「やぁ、初めましてだね。」

 

白を基調とした…なんとも独特な服とアームカバーを纏った綺麗なブロンドの髪と狐の耳と尻尾を持った少女がいた。

 

「………。」

 

警戒心がさらに跳ね上がるネイト。

 

「そう怖い顔はよしてくれないか?」

 

そのせいで表情が険しくなってしまったからか少女はネイトの警戒を解こうと話しかける。

 

「私に君をどうこうするつもりも…ましてや出来るとも思ってもいない。これでも私は昔からの虚弱体質でね。君相手だったら銃を突き付けようと容易く制圧されてしまうだろう。」

 

「………。」

 

「それに…君を害そうというのにわざわざ声を掛けたりはしないと思うが?」

 

少女はもっともな意見を述べるが…

 

「………どうだか?そうやって油断させてズドンッとやってくる連中をごまんと知っている。」

 

生憎ネイトはすんなり『はい、そうですか』と警戒を解くほど生半可な人生を送ってきていない。

 

相手の同情を誘って襲い掛かるのは連邦のレイダーの常とう手段だ。

 

治安の悪さがどっこいのキヴォトスでそれが起らないはずがない。

 

「…やれやれ、獅子のような強さだというのに心は仔猫のようだね…。」

 

警戒心を解かないネイトを見て少女は嘆息を突き…

 

「ほら、これで安心できるかい?」

 

彼女はどこからか古めかしい拳銃『ウェブリーピストル』を取り出して自らの手が届かない場所まで滑らせた。

 

「さて…これ以上の身の潔白を証明しようとなると…私は産まれたままの姿にならなければならないがどうする?」

 

今度はまるでこちらの反応を面白がるかのような表情を浮かべネイトに尋ねてくる少女。

 

「………いいだろう。」

 

それを見て、ネイトもようやく構えを解いた。

 

「安心してくれて何よりだ。これでようやく言葉を交わせるというものさ。」

 

ネイトの姿を見て気を良くしたのかアームカバーに覆われたままの手で器用にティーカップを持ち、

 

「立ち話もなんだ。掛けてくれ、お茶もお菓子もあるから。」

 

対面の席をもう片方の手で示し着席を促してきた。

 

一方、ネイトは少々周囲を見回し…

 

「…一つ聞きたいんだが。」

 

「おや、何かな?」

 

少女を今一度見据え、

 

「…誰だ?」

 

そう彼女に問いかけた。

 

「おっと、これは失敬し…。」

 

そう言えば自己紹介もまだだったと思い出し少女は名を名乗ろうとすると…

 

「いや、君じゃなくて…そっち。」

 

ネイトは彼女ではなく彼女の若干右側を指さした。

 

「そっちとは一体…。」

 

その意味が分からず彼女もネイトが指さしたほうに視線を向けると…

 

「かぁー!なんだ、この紅茶は!?チーズとは合わんな!」

 

そこには何やら物々しい玉座に座り勝手に紅茶を飲んでいる左右で紫と橙の奇怪な昔の貴族が着るような服にスカーフを巻いた白髪の老人がいた。

 

「………誰だい!?」

 

これには今まで澄ました表情を浮かべていた少女も度肝を抜かれ椅子から跳び上がって距離をとった。

 

見るとその老人の周囲の物品まで変化している。

 

先ほどまできれいな茶菓子などが置かれていたというのにそれらが塊のチーズやまんまの野菜。果てには象の鼻に変わっていた。

 

「騒ぐな、小さき者よ!遠出してきて喉が渇いたのだ、茶を飲む一時くらい静かにしろぉ!」

 

「いっいや、そもそもどうやってここに!?」

 

「どうやってぇ?狂ったか、小さきものよ!ここは貴様の夢ではないか!?」

 

老人は少女の疑問にさも当然のように答えた。

 

少女を捉えたその目は闇夜のような黒の中に満月のような黄金の瞳が浮かんでいた。

 

「だ、だからだ!なぜ君は私の夢の中…!」

 

「小さき者よ、私はお前の一部なのだ。潜在意識に居座る影であり、壊れやすい心に付いた染みなのだよ。お前は私の事を知っている。ただ気づいていないだけだ。」

 

「何を言って…!?」

 

まるで的を射ないような答えばかり返す老人に次第に少女の勢いも衰えていく。

 

「まぁ座れ!まともな茶会はペラギウス以来だ、少しは楽しませろ!」

 

「ぺ、ペラギウス…?」

 

「そこに突っ立っている定命の者よ!お前もさっさと席に着け!まさか尻を忘れたわけではなかろう!?」

 

今度はネイトにも声をかけ席に着く様に促す老人。

 

「…分かった。」

 

ネイトもただならぬ雰囲気を老人から感じ取り言われたとおりに席に着いた。

 

「ちょ、ちょっと君まで…!」

 

「今はその爺さんの言うことを聞いていた方が賢明だぞ?」

 

「そうだそうだ、青春を無駄に過ごすなど勿体ない。」

 

「あ、あぁ…。」

 

少女もとうとう折れて席に戻ることに。

 

「さぁ素晴らしいひと時を過ごそうではないか!蝶、血、狐、切り取られた首…!ああ、それとチーズッ!チーズのためなら死んでもいい…!」

 

全員が席に着き再びハイテンションになる老人に…

 

「その前に一ついいか、爺さん?」

 

ネイトがある問いかけをしようと試みると…

 

「ムッなんだッ!?早く言ってくれ。私の時間は無限じゃないんだぞ!」

 

眉間にしわを寄せネイトに質問を急かすようにまくしたてる。

 

「それはすまない、簡単な質問なんだが…。」

 

気を悪くしたかと思って謝罪すると…

 

「本当は…無限だ。ちょっとしたジョークだな。」

 

「そ…そうか。」

 

今度は冷静になってまったく気にしていないようなそぶりを見せる。

 

「冗談はさておき、早く教えてくれ。」

 

ここまで自分が振り回されることは珍しいと思いつつ…

 

「すまないが…俺とそこの嬢ちゃんは飛込みで来たアンタのことは知らない。自己紹介をしてもらえると助かるんだが…。」

 

老人の名前を訪ねると…

 

「そうだなぁ…。私の事を『アン・マリー』と呼んでもいいぞ。」

 

先ほどまでの振り回しようが嘘のようにあっさりと老人は名を明かした。

 

「あ…アン・マ…。」

 

少女がその名前を復唱しようとする。

 

が…

 

「だが生きたまま皮を剥がれたお前のはらわたで怒れる同胞に縄跳びをしてもらうのが大好きならの話だ。」

 

「~ッ!?」

 

続けて飛び出した老人の言葉に慌ててその先を言うのを止める。

 

このキヴォトスでもなかなか聞くことが出来ないバイオレンス極まりない脅し文句。

 

それでも…この老人はそれを『実行』出来るという確信めいた凄みを感じた。

 

「それは俺も勘弁願いたい。では、呼んでほしい名前というのはあるか?」

 

対するネイトはケロッとした様子で改めて名前を訪ねる。

 

正直、先ほどの脅し文句の内容に近い事なら連邦で実際に見たこともある。

 

「ほぉ、では…。」

 

老人はネイトを感心したように一瞥し、

 

「では…私のことは狂乱のデイドラの王子、シェオゴラス様と呼ぶのだ。お会いできて光栄だね。」

 

自らの名前…シェオゴラスを名乗った。

 

「しぇ、シェオゴラス…あっ!様…!」

 

「様など付けるな、小さきものよ!」

 

「え…?じ、じゃあシェオゴラス…。」

 

「気安く呼ぶなぁ!!!燃える犬の死体を降らせるぞ!!!」

 

「えぇ…!?」

 

「これは前途多難だな…。」

 

こうして何が何だか分からないうちに夢の中の茶会が開かれるのであった。

*1
そこ、用務員のやることじゃないとか言わない。今更のことだ。




この神様のエミュ過去一で難しい…
なので彼に近い思考のアニメを見てエミュの練習中です
ボボボーボ・ボーボボって言うんですけど…
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