Fallout archive   作:Rockjaw

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狩りに夢中になっている者は、往々にして、自分が狩られるのに気づかないものなんだ.
―――『悪の教典』より『蓮実聖司』


Nate the Madness

【02:27】

 

それに真っ先に気付いたのは…

 

「…ん?」

 

シフトでヴァルキューレの警察署の監視カメラのモニタリングを行っている一人の生徒だった。

 

この時間、この管轄は殆ど事件なども起こらないので平和そのものだ。

 

そんなこの署の監視カメラが…反応を示した。

 

反応したのは『顔認証システム』、キヴォトスの都会では割とありふれたシステムで広く普及している。

 

当然、治安の維持を与るヴァルキューレの拠点であるこの署の監視カメラにも導入されている。

 

犯罪者などを連行する関係で反応することはあれど…タイミングがおかしい。

 

今しがた映ったのは同僚のフブキと彼女に引き連れらてた事情聴取に応じた一般人のはず。

 

なのに…システムが彼女が連れてきた大人に反応を示した。

 

そして…

 

「え…?」

 

その結果を見て唖然とする。

 

表示されていた情報は…

 

『ナサニエル・マーティン 適合率5%』

 

急遽登録された要保護対象の人物の物だった。

 

正直、これくらいでは『他人の空似』ともいえないレベルだ。

 

カメラに捉えられた人物を見てもとてもネイト本人とは思えない。

 

それでも…

 

「…あ、もしもし?」

 

見逃すには大きすぎる要素にその生徒の手は自然と電話に伸びていた。

 

その通話先は…

 

「…本当ですか?」

 

「はい、防衛室長。先ほどヴァルキューレの一般生徒から直通回線を用いて報告がありました。」

 

サンクトゥムタワーに設けられた捜査本部にすぐに伝わった。

 

ヴァルキューレ生からの通報、さらに顔認証システムにヒットしたという事実も加味しすぐに総括を任されているカヤたちの元に届けられた。

 

「情報ではコンビニ強盗に関する事情聴取に同行した一般人にわずかに顔認証システムが反応した…と。」

 

「顔の適合率5%ですか…。」

 

「確かに別人の可能性も多いにありますが…。」

 

リンもカヤも若干懐疑的だ。

 

未だに事故現場では懸命な捜索が続いているが…ネイトの痕跡の発見にも至っていない。

 

そんなタイミングでこのわずかな顔の適合情報。

 

それを無視し捜索に総力を注ぐか、それとも一部人員を確認に向かわせるか…難しい選択を迫られる。

 

すると、

 

「…ですが、それでも確かめる価値はある…と思います…!」

 

「ナギサさん…。」

 

あの通話から何とか立ち直りこの場に戻ってこれたナギサがそう進言する。

 

「時間もあと3時間ほどしかありません…!このまま事故現場の捜索に全力を注ぐより…わずかな可能性に賭けるのは間違いではない…と思います…!」

 

ナギサの言うように…夜明けまでの猶予もない。

 

この状況ではわずかな可能性でもネイト発見の望みがあるならば…

 

「…防衛室長、ヴァルキューレ警備局は動かせますか?」

 

「人員の選抜と部隊編成込みで…20分あれば出動できる、かと。」

 

「では、そのように。直ちに通報のあった署へ急行させてください。」

 

リンもカヤも…その望みにベットした。

 

そして、連邦生徒会は何とか力を振り絞りネイト確保のために動く。

 

そんな中…

 

「………あっもしもし、私だよ。今どのあたりにいるの?…じゃあ近いね。お仕事の続き…できるよ。」

 

この夜都で暗躍する者たちも…蠢き始めた。

 

【02:38】

 

ヴォオオオオオンッ!!!

 

ガッシャアアアアアアアンッ!!!

 

「うわあああああ!?」

 

「GoGoGo!!!」

 

キヴォトスでもおそらく前代未聞の警察署への襲撃。

 

「ッ!なに、今の音…?」

 

「どこかで事故でもあったんですかね…?」

 

「………まさかな。」

 

その音は最上階の取調室にいるネイト達の耳にも届いていたが…何が起こったかまでは察知できなかった。

 

一方、

 

「なに、何があったの!?」

 

「正面玄関だよ!」

 

下の階にいたヴァルキューレ生たちは慌てて音の発生源へ向かうが、

 

ズダダダダッ!

 

ズドォンッ!

 

「ぐあッ!?」

 

「きゃあッ!?」

 

白尽くめの服にガスマスクを装着した者たちが躊躇なく手に持ったアサルトライフルやショットガンを発砲し叩き伏せる。

 

「α、最上階へ!β、γ、δは割り振られた階層の制圧!歯向かうやつには容赦するな!」

 

その者たちは素早く5人規模の小規模分隊に別れ行動を開始する。

 

「じゅ、銃声ですか!?」

 

「い、一体何が起こってんの!?」

 

只ならぬ事態を察しキリノとフブキは確認のため各々の得物を手に部屋を飛び出そうとする。

 

だが、

 

「待て、キリノ、フブキ…。」

 

ネイトは冷静に二人を呼び止め…

 

「今行っても…転がる生徒が二人増えるだけだ。」

 

「ネ、ネイト…さん…?!」

 

遠回しに『手遅れ』と伝える。

 

「聞こえるのはAR-15系統のライフルに…セミオートショットガンの銃声。この組み合わせは…。」

 

その時、

 

ドォドォォォンッ!

 

「ひっ!」

 

「ば、爆発…?!」

 

「…連発式のグレネードランチャーも追加、間違いなく俺をモーテルで襲ってきた連中だ。」

 

建物を震わせる爆発音も起こりネイトは確信を深めた。

 

「そ、そんなどうしてっ!?」

 

「キリノ、アンタ喋ってないよね!?」

 

「だ、誰にも喋ってませんよ!?」

 

「落ち着け、今誰が俺のことを漏らしたか追及するのは…ナンセンスだ。」

 

言い合いになりそうになった二人を落ち着かせ…

 

「…二人とも、この建物の構造は把握しているか?」

 

視線を鋭く冷たい雰囲気を纏いネイトはそう尋ねるのであった。

 

「だ、誰なの!?警察署を襲撃する奴なんて!?」

 

「知らないよ!そんなの良いから早く撃って…!」

 

バンッバンバンッ!

 

下の階では当直として署内にいたヴァルキューレ生達が襲撃者に応戦していた。

 

予算不足に苦しんでいるとはいえ日々武装した不良たちと戦闘を繰り広げているため動き自体は悪くない。

 

だが、

 

「カバー!」

 

「キャっ!?」

 

ズダダダダッ!

 

襲撃者たちのフルオートのアサルトライフルの制圧射撃によって身動きを封じられ、

 

「グレネード!」

 

ドォンッ!

 

『うわああああ!?』

 

そこへグレネード弾を叩きこまれ一網打尽にされる。

 

当直のヴァルキューレの装備は38口径のリボルバーかショットガン、あっても小口径のセミオートライフル。

 

装備に歴然とした差があり練度も自分たちの比ではない。

 

抵抗虚しく次々とヴァルキューレ生たちは打倒されていく。

 

警察の一般職員とネイトをして『本格的』と評する訓練を積んだ者たちとでは無理もない戦力差だ。

 

そして…

 

「…敵影無し、前進。」

 

α班が最上階にたどり着いた。

 

今までのような練度と装備さに裏打ちされた素早い動きではなく警戒度を上げ慎重に歩を進めていく。

 

なにせこの先にいるのは自分たちの同胞10人を一方的に叩き潰した標的がいる。

 

少しでも気を抜けば…返り討ちに合うのは確実だ。

 

その者たちが息を殺しながら歩を進めていると…

 

ガチャ

 

『ッ!?』

 

進行方向にあるドアが突如として開き…

 

「待った。俺だ、少し話をしたい。」

 

白いハンカチを持った手を揺らしながら伸ばし標的であるネイトが声をかけてきた。

 

襲撃者たちは互いに目線を交わし…

 

「…いいだろう!武器を持たずに手を頭の後ろに組んで出て来い!」

 

横隊に広がりネイトの言葉に応じる。

 

「分かった。言うとおりにするからいきなり撃つなよ。」

 

それを聞きネイトは手を引っ込め、

 

「いやはや…こうも熱烈な追っかけは現役時代以来だ。」

 

言われたとおりに丸腰でヘイローの浮かんだ帽子をかぶった頭の後ろで手を組んで廊下に現れた。

 

帽子のツバで顔は見えないが確実に本人だ。

 

「しかも、警察署に躊躇なく突っ込んでくるとはよほどの自信家か…それともネジが飛んだイカれた馬鹿どもか…。」

カチャカチャ…

「黙れ、貴様に勝手な発言を許した覚えはない…!」

 

「こちらα、Novemberを発見。」

 

自分たちを皮肉る彼を黙らせ階下の仲間たちに発見の報を知らせる襲撃者たち。

 

「それで何が狙いだ…?!」

 

「狙いなんて程じゃない。ただ一つ…頼みを聞いてほしいだけだ。」

キリリリ…

「まさか…見逃せとでも?」

 

「それこそまさかだ。」

カチチチ…

警戒心むき出しの襲撃者たちと対照的にネイトは非常に冷静に…

 

「俺の命が狙いなんだろ?だったら…これ以上ここにいるヴァルキューレ生達に手を出すのは止めてくれ。彼女たちは無関係だ。」

カチン…

ヴァルキューレ生達への戦闘の停止を要求し、

 

「それを聞いてくれるのなら…俺をお前たちの好きにしてもらって構わない。」

キュッ…

その対価として自らの身柄を差し出した。

 

「………いいだろう。」

 

「全班、戦闘中止。自衛以外の射撃は中止せよ。」

 

襲撃者たちは少々考えそれに了承。

 

が、

 

(馬鹿め…。もう制圧は終わっているというのに無意味な要求を…!)

 

既に警察署全体を彼女たちは掌握していた。

 

その証拠に…もう一つの銃声も聞こえてきていない。

 

なのに、目の前の獲物はそんな無意味な要求のために自分の命を差し出してきたのだ。

 

はっきり言ってもっとその異名に相応しい抵抗をされるかと思ったが拍子抜けもいいところだ。

 

内心ほくそ笑みながら結束バンドを取り出し近づく。

 

その時、

 

「…あぁ~いくつか訂正しよう。」

 

「ッ!」

 

「確かに俺のことを好きにしてもいいとは言った。だがな…。」

 

帽子のつばで隠れていたネイトが顔を上げ…

 

「逆に俺もお前らを本気で『壊させて』貰う。」

 

『~ッ!?』

 

今まで見たこともないような凶悪な表情を露にした。

 

次の瞬間、

 

ヒュパッ

 

ネイトは後ろで組んでいた手を翻し被っていたヘイローが浮かんでいる帽子を襲撃者たち目掛け投げつけ、

 

バッ!

 

自らは先ほど出てきた取調室に飛び込んだ。

 

「~ッ!!!バカにするなよッ!!!」

 

面食らった襲撃者たちはこのネイトのふざけた行動に激昂。

 

問答無用でネイトを仕留めにかかり部屋になだれ込もうとした。

 

その時、

 

キィィィィィンッ!

 

「え?」

 

投げつけられた帽子から何やら何らかの起動音のような音が鳴り響き…

 

ズドォォォォンッ!

 

彼女たちが用いていたグレネード弾を優に上回る爆炎と共に炸裂。

 

あまりの衝撃に警察署中の電灯が落ちてしまい非常電源に切り替わった。

 

横隊に広がっていた襲撃者たちを一人残らず飲み込む。

 

爆炎が晴れると…

 

「う…うぅ…!」

 

「あぁ…あぁ…!」

 

今までヴァルキューレ生たちを圧倒していた襲撃者たちは残らずヘイローが消失しボロボロになり床に呻きながら倒れ伏していた。

 

(ありがとう、エンジニア部…!)

 

ネイトは取調室の中で耳を抑えながらこの帽子の製造元であるエンジニア部に感謝していた。

 

覚えているだろうか?

 

この変装用のヘイローの形状をしたホログラムを投影可能な帽子にはある機能が隠されている。

 

それが…

 

『それからサイズ調整のベルトを完全に外してから投げると爆発するらしい。』

 

エンジニア部の十八番ともいえる『自爆機能』だ。

 

明らかに帽子には不必要かつ危険極まりない機能だが…

 

(まさか役に立つタイミングが来るなんてな…!)

 

そんな彼女たちのこだわりがネイトの助けとなったのだ。

 

襲撃者たちも一見すればただの帽子が爆発、しかもこれほどの大爆発を起こすとは夢にも思わなかっただろう。

 

そこにさらにPerk『Demolition Expert』と『Lone Wanderer』なども組み合わさりキヴォトス人でも無事では済まない威力にまで成長した。

 

「さて…これで5人仕留めた…。開戦のゴングには十分だったか?」

 

そう言い、ネイトも改めて…

 

「『戦争』の続きと行こう…!」

 

愛用の『シルバー・シュラウドの衣装』と得物を装備し行動を開始した。

 

それから僅かな間を開け…

 

「さっきの爆発は一体…!?」

 

「ッ!?なんだ、これは…!?」

 

一階下にいた襲撃者βチームが駆けつけその惨状に言葉を失っていた。

 

これほどの威力を誇る装備をヴァルキューレが持っているわけがない

 

「…探せ、奴はまだこの階にいるはずだ…!」

 

怒りと緊張で昂る感情を抑えβチームはこの階の捜索に入る。

 

一つ一つの部屋を丹念にクリアリングしていき…

 

「…クリア…!」

 

「くそ、奴はどこに…!?」

 

破壊された兆候の無い唯一開錠されていた部屋に踏み込むも窓が爆発の影響で割れている以外に変化はなく人影も見当たらない。

 

「こちらβ、Novemberをロスト…!数名を残し別フロアの捜索に戻る…!」

 

敷地外に逃れているのならどこかのチームが見つけているはずと判断、

 

「三人残って他の部屋をこじ開けて捜索しろ…!」

 

「了解…!」

 

探索班を残し階下の部隊へ合流に向った。

 

「よし、私達も奴を捜索するぞ…!」

 

残された三人も他の部屋の捜索のため廊下へ出ようとすると…

 

カラン

 

「ん?」

 

最後尾の者が金属音らしき音を捉えた。

 

振り向くとそれらしきものが動いた形跡はない。

 

しかし、

 

カラン

 

もう一度同じ音が聞こえてきた。

 

「…窓?」

 

その音源を辿り割れた窓に近づくと…

 

「キリノ、急いで…!見つかっちゃうよ…!」

 

「フブキだってあまり揺らさないでくださいよ…!」

 

外れた落下防止用の柵の基礎に引っ掛けられた鉤爪から垂れ下がったロープを伝って降りているキリノとフブキの姿があった。

 

「…フン、無駄なことを。」

 

襲撃者は鼻で笑いナイフを取り出しそのロープを切ろうとする。

 

その時、

 

ドガッ!

 

「ギィッ!?」

 

膝裏に鋭い衝撃が走り姿勢が崩れ…

 

ガスッ!

 

窓枠に首筋を押さえつけられ…

 

ズジャジャジャッ!!!

 

まるで『擦り下ろす』ようにスライドさせた。

 

いかに割れているとはいえ…窓枠には夥しい数の細かいガラスが残っている。

 

「か…かぁ…!?」

 

熱いモノがあふれ出す首筋を抑える襲撃者。

 

動こうにも力が抜けていき立ち上がることも出来なくなってきた。

 

「おい何し…ッ大丈夫か!?」

 

遅れている仲間の確認のため戻ってきた襲撃者は床に座り込んだ彼女の姿に声を荒げて駆け寄る。

 

「ッ誰にやられ…!?」

 

続けて最後の一人が部屋に入ろうとした、瞬間だった。

 

ガッ!

 

「ッ!?」

 

影から手が伸び自らの得物、M32MSGLのシリンダー部分を押さえつけられ、

 

ザシュザシュッ!

 

「がっ…!?」

 

首と胸に大型の刃を突き立てられた。

 

「なッ!?」

 

音を聞き駆け寄っていた襲撃者は振り向くが、

 

ダッ!

 

その影は意識を失った同胞からM32MSGLを奪取し一気に駆けだし…

 

ゴスッ!!!

 

「ごッ!?」

 

ガスマスクにその銃口を突き当て、

 

ボシュボシュボシュボシュボシュボシュッ!!!

 

そのまま顔面目掛け装填されていたグレネード弾を連射。

 

構造上、グレネード弾には『安全距離』が設定されておりそれ以下では決して爆発しない仕組みだ。

 

それでも…弾頭は200g近い金属製の物体、しかもそんなものを時速300㎞弱で叩きこまれれば…

 

「ゴ…ゴポッ…。」

 

ガスマスクは砕け顔の形が歪むのは当然の結果だった。

 

「クリアリングが『甘い』。隅じゃなく…上も確認しなければな。」

 

瞬く間に三人を仕留めた影の正体、ネイトは振り向きながらそう呟く。

 

部屋を出ていく際、扉の上にクラフトしておいた足場を解体して。

 

ネイトが隠れていたのはドアと天井の隙間だ。

 

元から死角のない取調室で隠れられる机も薄い方を向けていたため入り口から少し入れば確認はすぐに終わる。

 

『訓練』をしているからこそ…その隙が生まれたのだ。

 

「これで8人、さて…あと何人だ…?」

 

ズルズル…

 

一先ずの戦果としてはまずまずとネイトは呟きながら…廊下で気絶している襲撃者の一人の足を持ち引き摺っていた。

 

その頃、階下では…

 

「こちら、β2。Novemberの姿は確認できず…。」

 

《γ、2階を捜索中。こちらも発見できず…。》

 

《δ、一階にも標的の姿なし…。》

 

それぞれの階の捜索を続けている襲撃者たちはネイトの姿を見つけられず焦りを覚えていた。

 

もたもたしていればヴァルキューレの応援部隊がやって来てしまう前になんとしてもネイトを発見し排除しなければならない。

 

その時、

 

ガシャン!

 

『ッ!?』

 

襲撃者全員に届くほどの異音が発生。

 

一斉にそちらを向くと…最上階から何かが垂れ下がっているのが見えた。

 

「なんだ、あれ?!」

 

「知ってるぞ、火事の時の脱出装置だ!」

 

襲撃者の誰かが言った様にその垂れ下がった物体、『緩降機』と呼ばれる火事の際に用いられる脱出装置だ。

 

そして、最上階から何かが下りてきていることがその揺れで分かる。

 

「奴め、逃げ切れると思ったか!?」

 

「撃ち方はじめっ!!!奴を蜂の巣にしてやれ!!!」

 

ズダダダダッ!

 

各階に散った襲撃者たちは緩降機目掛け一斉射を仕掛ける。

 

耐火性こそ優れているが防弾性能など皆無の素材、弾丸は何の遮りも受けずに穴だらけになり赤く染まっていく。

 

それでも降りている者は重力に従い落ちていき…

 

ズルゥ…

 

地面に辿り着き力なく血塗れのその姿を現したが…

 

『~ッ!!?』

 

襲撃者たちはそれを見て目を見開いた。

 

そこに居たのは…同じ服装をしている成長途中の女性の体つきをしている者…同胞だった。

 

こんな事をするのは…

 

「あ、アイツまだ上に!?」

 

「全部隊、4階に登れッ!!!」

 

標的のネイトはまだ最上階にいるということに他ならない。

 

襲撃者たちは一斉に最上階を目指し階段を駆け上る。

 

動く者がいなくなった一階、そこで…

 

「…行きましたね…!」

 

「んじゃ、早くやっちゃおう…!」

 

窓枠から中を覗く二人…キリノとフブキが慎重に建物内に侵入した。

 

先程、襲撃者がネイト達の元に到着するまでのこと。

 

「…と、言った感じです…!」

 

「…分かった。」

 

二人からこの警察署の構造を聞き終えたネイトは自分が座っていた椅子を掴みながら席から立ち、

 

「…この際俺が窓ひとつ壊しても文句は言われないよな?」

 

いうが早いか背後にあった窓を一つ叩き割り窓柵を壊した。

 

「え、ちょッえぇ!?き、器物損壊…!?」

 

「…キリノ、もう気にしてるような状況じゃないからさ。見逃しとこ。」

 

ヴァルキューレの性か、キリノはツッコみそうになるがフブキがそれを宥める。

 

「いいか、この状況で生き残るには役割分担が必須だ。」

 

今度はホテルニューオトワ脱出時に用いた鉤爪付きのロープを取り出し…

 

「俺がオフェンス、キリノとフブキはディフェンスだ。これで一階に降りてその部屋に立て籠もれ。負傷者も出来る限り運び込んでな。」

 

「はっはい!!!みんなのことは私達に任せてください!!!」

 

「二人がヴァルキューレ生を護り、俺が奴らを仕留める。サポートは頼むぞ。」

 

「オッケェイ、ヤられるのは面倒だから本気でやったげるよ。」

 

キリノとフブキからの返事を聞き、

 

「よし、いい返事だ。…それじゃ二人とも、ここから降りてってくれ。」

 

「「…え?」」

 

そのロープの鉤爪を窓柵の基礎に引っ掛け言い放つのであった。

 

そして、一階に降り立ったキリノとフブキは…

 

「大丈夫ですか…?!」

 

「き、キリノ…ちゃん…?」

 

「今安全なところに運びますね…!」

 

「もうちょっとの辛抱だよ~…。」

 

襲撃者に打倒された同僚たちを担ぎ上げある部屋へと担ぎ込んでいく。

 

幸い、通常の業務が縮小していた当直の時間帯。

 

生徒の数も少なくその大半が一階に集中しており二人でもなんとか搬送できた。

 

「フブキ…辛抱…って…?」

 

「今、あの人が点数ひっくり返すからさ…。」

 

意識がもうろうとしている生徒の声にフブキが答えるのを見計らったように…

 

ジャリッ

 

破壊されたエントランスを踏み越えて…

 

「キリノ、フブキ。後は任せろ。」

 

愛用のコンバットアーマーを纏い完全武装のネイトが姿を現し、

 

「ッ…ネイトさんもお気をつけて…!」

 

「ほい、これ持ってって~…!」

 

「ありがとう。…援護を頼む。」

 

フブキから個別通信用のインカムを受け取り階段に向う。

 

その際、

 

「…これ、使わせてもらうぞ。」

 

壁のケース内にあった防災用の斧『消防斧』を手に取りPip-Boy内に収納。

 

「フブキ、こっちは全員運び終えました…!」

 

「さぁ私達も監視室へ行くよ~…。」

 

それを見届けた二人は手筈通りに退避場所である監視室へと向かった。

 

この警察署内で一階にあって唯一窓が無い防衛に適した場所で…

 

「アーアー、これより変調波を発信する。本日は晴天なり、本日は晴天なり…。」

 

《感度良好、こちらも変調波を発信する。Today is fine、Today is fine…。》

 

「オッケェー感度問題なし…。連中は最上階から降りてきてて…今各階に4人ずつの配置に戻ろうとしてるよ。」

 

各所に設置された監視カメラによって相手の動きを察知することが出来る情報の拠点でもある。

 

「バリケードの構築はどうだ?」

 

《こ、こちらキリノ…!何とか簡単に入れない程度には構築できました…!》

 

「了解。…じゃあ、始めるぞ。」

 

《んじゃ…ミュージックスタート。》

 

そんな緊張感をにじませつつも努めて普段取りの気だるげな声でフブキが言い放つと…署内各所に設置されたスピーカーから非常に古い音質の手回しオルガンの音色が流れ始め…

 

Und der Haifisch,der hat Zähne.ほら、鮫ってやつにゃあその面に

 

どこかお道化さと不気味さを感じる歌詞が流れ始めた。

 

それと同時に…ネイトから幽鬼の如き冷たい殺気が溢れ出す。

 

「さぁ…ここから先は…俺とお前らの『Moritat罪状記』だ…。」

――――――――――――――――

 

―――――――――――

 

―――

Und die trägt er im Gesicht,キバがずらりと並んでるだろ

 

「なんだ、これは…?!」

 

「お、音楽…!?」

 

突然流れ始めた音楽に襲撃者は困惑するが…

 

「生き残りか…!?」

 

「おい、一階に行って確認を…!」

 

「了解…!」

 

仲間の一人を状況確認のために一階に送ることに。

 

Und Macheath,der hat ein Messer,そういやマクヒィスの得物はドスなんだが

 

その一人が階段を降りた直後…

 

「ぐぇ…。」

 

まるでカエルでも〆たかのような声を挙げた。

 

「どッどうし…?!」

 

不審に思いそちらに視線を向けると…

 

Doch das Messer sieht man nicht.そのドスを 見た奴ぁ誰もいねえんだ

 

「か…かへぇ…?!」

 

「…9。」

 

その喉から赤い液体を溢れさせる襲撃者と彼女の首を掴みながら階段を上がってきたネイトの姿があった。

 

Ach,es sind des Haifischs Flossen.ああ 鮫のヒレだったらな

 

「~ッきさっ…!」

 

声を上げると同時に銃を向けようとする三人の襲撃者だが…

 

Rot,wenn dieser Blut vergießt.血が流れりゃ真っ赤になるが

 

ジィッ

 

ズドォッ!!!

 

「がはッ!!?」

 

意識を失った襲撃者ごとV.A.T.S.による瞬間移動を用いタックルを仕掛け先頭にいた者を吹き飛ばす。

 

Mackie Messer trägt 'nen Handschuh,ドスのマックは手袋してるんだが

 

「「ッ!!?」」

 

想定外の動きをしたネイトに固まる残り二人の襲撃者だが、

 

シュパッ

 

ドパパパンッ!!!ドパパパンッ!!!

 

「ギャガッ!?」

 

「ぐえッ!?」

 

「10,11。」

 

ネイトは抱えている襲撃者の腰からP226を抜き取り二人の頭部目掛け速射する。

 

drauf man keine Untat sieht.その上にゃ汚れひとつ付いてねえ

 

ピピィンッ!

 

抱えていた襲撃者が吊り下げていたグレネードからピンを抜きレバーを飛ばし…

 

「フン!」

 

ドゴッ!

 

「がはッ!?」

 

そのまま最初に吹き飛ばし床に倒れた襲撃者目掛け向きをひっくり返して押し付け自らは近くにあった部屋のドアを突き破る勢いで飛び込んだ。

 

次の瞬間、

 

ドガガアアアアアンッ!!!

 

二人の間でグレネードが炸裂する。

 

流石のキヴォトス人でも…これには耐えきれない。

 

「12。」

 

An 'nem schönen blauen Sonntagある晴れた日曜日のことさ

 

「どうしたッ、何があ…!?」

 

「こっこれは…!?」

 

爆音を聞きつけ三階から二人の襲撃者が階段を駆け下り二階の惨状に絶句する。

 

「まさか…奴が…!」

 

「モーテルの奴らも…!」

 

Liegt ein toter Mann am Strand.浜辺に死体がひとつ転がってたのさ

 

その時、

 

ガシャン

 

手折れている仲間の近くの部屋で物音が発生、

 

「~ッ!?」

 

ボシュボシュッ!!!

 

ズドドォォォォンッ!

 

即座にM32MSGLを持つ襲撃者がその室内に向けグレネード弾を発射し室内を爆風と破片が襲う。

 

「突入!」

 

M32MSGLをP226に持ち替えM1014持ちの者と室内になだれ込む。

 

Und ein Mensch geht um die Ecke,角を曲がって消えてった男がいたんだが

 

その時だ。

 

ドスッズバッ!

 

「あがっ!?」

 

「ヅゥッ!!?」

 

踏み込んだ襲撃者の足に激痛が襲った。

 

足下を見ると…履いているブーツから血の付いた棘が飛び出している。

 

「なっなん…!?」

 

見たこともない物体に驚愕と痛みによって足が止まり…

 

ザァッ

 

少し先にあった倒されているデスクから影が飛び出し…

 

ギラッ

 

暗闇の室内で鋭い光が瞬いたかと思うと…

 

Den man Mackie Messer nennt.そいつがドスのマックだったらしいんだ

 

バギャッドギャッ!

 

「がっ…!?」

 

「ぐえッ…!?」

 

それぞれの頭部と胸部に先ほど回収した消防斧の刃とピックが叩き込まれる。

 

ディサイプルズカトラスとはケタ違いの衝撃に断ち切られはしないものの…二人の意識は暗闇に包まれた。

 

その間際、

 

「…13,14。」

 

刃まで赤く染まった消防斧を担ぎ冷酷な目線でこちらを見下ろすネイトが一瞬見えたような気がした。

 

Und Schmul Meier bleibt verschwunden,まだシュルム・マイヤー氏は行方不明だ

 

「おい、δ2…!状況を…!」

 

爆発音の直後から下に確認に言った二人からの音信が途絶え3階に残った襲撃者は呼びかけを続ける。

 

「まさか…やられたのか…!?」

 

「ば、馬鹿を言うな…!私達はずっとこういう任務のために…!」

 

不安になる仲間を鼓舞するように声をかける。

 

そうだ、自分たちはこのような任務のために日々あの厳しい訓練に耐えてきたではないか。

 

あんな大人に、それも弾丸を一発でもまともに食らえば命を落とす様な標的にやられるわけがな。

 

Und so mancher reiche Mann,金持ちの連続失踪事件だよ

 

「警戒しろ…!もし、奴の仕業でも先手さえ取れれば…!」

 

その時、

 

カァンカラァン…

 

階段の下から何かが投げ込まれ壁をバウンドし床に転がり落ち…

 

シュバァンッ!!!

 

「ぐあッ!!?」

 

「ぬああッ!!?」

 

暗闇に慣れた視界が真っ白に塗りつぶされた。

 

閃光手榴弾、今まで何度も訓練で使ってきたが喰らってしまってから起こる反応はどうしようもない。

 

強すぎる光を浴びると一瞬だけ人は身を屈めてしまう。

 

これは生物の本能的行動だ。

 

時間にしてほんの1~2秒、完全な無防備な時間が生まれる。

 

Und sein Geld hat Mackie Messer,ドスのマックが奴らの金を持ってるんだ

 

ネイトにとっては…十分すぎる隙だ。

 

バスバスバスッ!バスバスバスッ!

 

「ギャッ!?」

 

「が…!?」

 

素早く階段を上り得物のM4でその二人を撃ち抜いた。

 

体勢を崩し床に倒れ込んだところへ間合いを詰め、

 

バスバスバスッ!バスバスバスッ!

 

「…15,16。」

 

さらに頭部目掛け数発ずつお見舞いした。

 

Dem man nichts beweisen kann.誰も知らない話なんだけどさ

 

「残り4人か。」

 

ここまでは順調だ。

 

「フブキ、最上階の連中はどんな様子だ?」

 

《カメラがちょっと壊れてるけど…階段を警戒してる人員と周囲を警戒している人員と別れてるねぇ。それから…かなぁり動揺してるみたいだよ~。》

 

無線で上階の状況を確認すると…どうやら平静ではいられていないようだ。

 

Jenny Towler ward gefundenジェニー・タウラーが見つかったってさ

 

「い…一体何なのよ…!?」

 

「こんな…こんなの…!」

 

最上階に追い込まれた襲撃者たちはそこに広がる惨状に言葉を失うしかなかった。

 

爆発に巻き込まれた同胞は…まだ分かる。

 

実戦さながらの訓練でへまをこいた者を何度か見たことがある。

 

だが…

 

「こんな…こんなのって…?!」

 

首を裂かれ、喉を切り裂かれ…顔の輪郭が歪んでいる。

 

こんなありさまは…みたことが無い。

 

ここは銃が当たり前に普及しているキヴォトスだ。

 

そんな場所で…こんな原始的な戦い方をする者など想定外である。

 

Mit 'nem Messer in der Brust.アバラにドスがぶっ刺さってたそうだよ

 

「下の連中ももう…!」

 

「関係ない…!モーテルの復讐をここでしてやる…!」

 

それでも襲撃者たちに逃走の考えはない。

 

この場にいるのはモーテルでネイトに挑み一蹴された者たちが大半だ。

 

あの場にいた同胞も奴に重傷を負わされた。

 

大半は何とか戦線復帰できたが…ある二人はあまりの大けがのため参戦が叶わなかった。

 

彼女たちの分まで…奴に借りを返さなければ。

 

Und am Kai geht Mackie Messer,ドスのマックが波止場をうろついていたが

 

「いつでも来い…!姿を見せた時が…お前の最後だ…!」

 

この階にやって来れる唯一の入り口は階段のみ。

 

そこさえカバーできれば…負けはあり得ない。

 

ネイトを討ち取る事こそ…無残にやられた仲間たちに報いる唯一の方法だ。

 

残された四人は回収したM32MSGLやアサルトライフルを構えネイトを待ち構える。

 

Der von allem nichts gewußt.奴は何にも知らないって言い張ってたそうだよ

 

…だが、四人はネイトという巨大な脅威のせいである事実が失念していた。

 

自分たちは一階を完全に制圧していた。

 

なのにネイトは一階からやってきた。

 

いや、それはいい。

 

問題は…一階でこの音楽を流している人物がどうやってそこに現れたか、だ。

 

Und das große Feuer in Soho.ソーホーの町の大火事の時に

 

真の脅威というものは…音もなく忍び寄るものだ。

 

モーテルでその恐怖を味わったのはわずか二人。

 

そのうちの一人はすでに戦線を離脱しもう一人はもう階下で撃破された。

 

少しでもネイトの情報を聞いていれば…対応も違っていただろう。

 

Sieben Kinder und ein Greis.ガキが七人とジサマが一人犠牲になった

 

ギシギシッ…

 

その音は流れている音楽によって掻き消され彼女たちの耳には届かなかった。

 

場所はこの事件の始まりの場所ともいえる…取調室。

 

その窓から…

 

ズチャ

 

音もなくネイトが室内に入り込んだ。

 

そう、四階に侵入できる経路はもう一か所ある。

 

キリノとフブキが下っていったロープがまだそのまま残っていたのだ。

 

それを伝い、予想外のルートから侵入に成功。

 

In der Menge Mackie Messer,野次馬の中にゃ ドスのマックもいたが

 

「どうした…?!早く姿を…!」

 

そして、目の前にいた襲撃者の背後に音もなく近づき…

 

ズバォッ!

 

「がっ!?」

 

背後から関節をきめられ、

 

ズパッ

 

「ひっ!?」

 

彼女の顎下にディサイプルズカトラスを突き付けた。

 

怪しく輝く大振りのナイフに襲撃者の闘気は一瞬で消失する。

 

「なっなんだ…!?どうかし…なッ!?」

 

そのままネイトは廊下に歩みを進め襲撃者たちの前に姿を現した。

 

den man nicht fragt und der nichts weiß.訊かれなかったから 知らんぷりだったそうだ

 

「動くな。死にはしないだろうが…こいつが死にたいと思うほど苦しませることはできる。」

 

三つの銃口が向けられる中、ネイトは一切動じることなくそう口にする。

 

「もう残っているのはこのフロアのお前達だけだ。無駄な抵抗はよせ。」

 

「この…ッ!」

 

「それはこっちのセリフだ…!」

 

「馬鹿め、のこのこと姿を現しやがって…!」

 

強がる三人だが…引き金にかかった指にブレーキがかかる。

 

なにせネイトは身体をうまく彼女の背後に隠している。

 

今下手に発砲すれば…同士討ちだ。

 

これが裏切り物ならば何の躊躇もなく撃てるが…彼女はこれまで苦難を共にしてきた間柄だ。

 

そのことが…彼女たちの闘争本能にブレーキを掛けさせる。

 

「…いくつか尋ねる。お前たちは何者で…誰に差し向けられた?」

 

ならばと、ネイトは彼女たちに尋問を仕掛ける。

 

ヴァルキューレの警察署に何の躊躇もなく突入し瞬く間に制圧して見せた手腕。

 

一層、彼女たちが並の集団ではないということの証左だ。

 

正体を、せめて雇い主を知ることが出来れば…とネイトは考えた。

 

Und die minderjähr'ge Witweそれから年端もいかない若後家さんの話

 

だが、

 

「私達がすんなり話すと思ったか…!」

 

「貴様を仕留めた後…ゆっくり紹介してやる…!」

 

「仲間の仇…!ここで決着を…!」

 

誰一人…答えるつもりはないようだ。

 

「…そうか。」

 

ネイトはそう言うと…

 

「17。」

 

バスッ

 

『~ッ!?』

 

「カッカヒュ…!?」

 

一切の躊躇もなく拘束していた襲撃者の喉を一突き、

 

ドゴッ!

 

「うわッ!?」

 

そのまま手近な襲撃者目掛け蹴り渡した。

 

「貴様っ…!」

 

仲間を無残にやられ怒りを爆発させる襲撃者。

 

しかし、狙いを修正するよりも早く…

 

ズドォン!

 

ネイトがウェスタンリボルバーをクイックドローで発砲。

 

狙ったのは…少し先の壁に掛けてあった消火器だ。

 

その消火器はピンが抜かれ…何か半球形状の物がくっ付けてある。

 

.44Magはその物体に着弾、

 

バゴシュウウウウウッ!!!

 

その物体は炸裂し内部に充填されていたガスと共に消火剤が撒き散らされた。

 

爆発の正体は…先ほど襲撃者の顔面目掛け撃ち込まれた不発の40㎜グレネード弾の弾頭である。

 

Deren Namen jeder weiß,名前はみんなもご存じだ

 

「ゲホゲホッ!!!こっこの!!!」

 

「バカ、撃つな!同士討ちに…!」

 

一気に塗りつぶされた視界に同士討ちを恐れ一瞬発砲に躊躇するが…

 

ズドドドォン!

 

「がはッ!!?」

 

消火剤の煙幕の向こうから発砲炎が煌めき.44Magが襲い掛かり一人を撃破。

 

「18。」

 

「こっこのおおおおおおおお!!!」

 

ズダダダダッ!

 

怒りに身を任せ襲撃者はネイトの声が聞こえた方向に手当たり次第にライフルを乱射。

 

精度も何も考えていない、殺意のみが迸った銃撃だ。

 

「出て来い、クソッタレえええええ!!!」

 

すぐに空になったマガジンを交換し再装填し再び発砲しようとすると…

 

ズォッ!

 

「え…?!」

 

煙幕を突き破って斧の刃が迫り…

 

ドギャッ!!!

 

顔面にフルスイングで叩きこまれた。

 

Wachte auf und war geschändet,目が覚めたら犯されてたってさ

 

「19。」

 

斧を襲撃者の顔面から引き抜きカウントを唱えるネイト。

 

その時、

 

「う、うわあああああああ!!!」

 

最後の襲撃者がネイトの背中に飛び掛かり、

 

「死ねえええええええ!!!」

 

シュバッ!!!

 

逆手で握りしめたナイフを振り下ろした。

 

ズドッ!!!

 

ナイフは確かにネイトの右肩を捉え突き刺さった。

 

だが…

 

バギィンッ!!!

 

「え…?」

 

鍛えられた鋼のはずのナイフが…刀身半ばで圧し折れる。

 

「つぅ…!このッ…!」

 

ネイトは痛みに少し表情を歪ませたが、

 

ガシッ!!!

 

「きゃあッ!?」

 

それ以上意に介さず襲撃者の髪を引っ掴み、

 

ズダンッ!!!

 

「がはッ!?」

 

そのまま床に叩きつけ…

 

「終わりだ…!」

 

彼女の顔面に向け振り上げた足を…

 

ドキャッ!!!

 

「がっ!?」

 

満身の力を込めて叩きつけた。

 

ドキャッ!!!ベキッ!!!ベキョッ!!!

 

さらに何度も何度も踏みつけ続け…

 

グシャッ!!!

 

「ゴポッ…かヒュー…。」

 

それは襲撃者が異常な呼吸音を上げ始めたところでようやく止まり、

 

「…20。」

 

そんな彼女を冷酷な眼差しで見下ろしネイトは静かにカウントする。

 

ちょうどそのタイミングで…

 

Mackie. welches war dein Preis?マックさん、アンタの賞金首はいくらになったの?

 

掛けられていた音楽も終わる。

 

時間にして10分少々。

 

最後に立っていたのは…

 

「イツツ…最後っ屁を喰らうなんてな…。」

 

肩に刺さっていたナイフの刃を抜きながらぼやくネイト、ただ一人だった。




この世は一つの劇場に過ぎぬ。人間の成すところは一場の演劇。
―――作家『アガサ・クリスティー』
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