―――ローマ皇帝『マルクス・アウレリウス』
事の始まりは…警察署での襲撃後までさかのぼる。
「皆…皆が…!」
「アイツ…よくも…!」
仲間が装備していた電子の目を通じてその様子を見つめる『3つ』の視線があった。
後続の部隊も自分たちと同じ『人殺し』としての訓練を受けてきた。
その強さは生温い環境で過ごしている生徒達には負けない、そのような自負があった。
現に任務遂行に向った20人は瞬く間にヴァルキューレを制圧して見せた。
あとは…『標的』を仕留めるだけだった。
だが、あの『大人』はまたしても同胞を自分たちが積み上げてきたもの諸共に破壊した。
あのモーテルの時の様に。
「ッ!うぅ…ッ!」
一人の者が痛みが走る包帯で覆われた左目を抑える。
「大丈夫…?!」
心配するもう一人の者もベアトラップで足を潰されまだまともに歩けない。
この怪我のせいで自分たちは仲間を見送り待つことしかできなかった。
それでも二人の分まで仲間たちが任務を果たしてくれると信じていたが…あの大人は意に介さず自分たちのこれまでを否定するかのように彼女たちを蹂躙した。
もう…残っているのは自分達だけとなってしまった。
まともに戦えない自分達では『あの女』からの任務も完遂できない。
すると、
「…てたまるか…!」
痛みにうずく左目を抑えその襲撃者は激情にかられた表情を浮かべる。
「このまま…おめおめと逃がしてたまるものか…!」
「…そうだね…!皆の…私達の『恨み』をあの大人に味合わせてやる…!」
足に重傷を負った襲撃者も同じような怨嗟に満ちた声を挙げた
そうだ、自分たちはこのような『不利』を覆せるような訓練をずっと続けてきた。
まともに戦えないなら…『まともに戦わなければいい』。
そのための装備もまだ十分に残っている。
何より、自分たちはあの『大人』が必ず来る方向に位置している。
「あの大人…強いけど『甘い』所ばかりだ…!」
「やってやる…!今度はお前を私達が攻める番だ…!」
そして…彼女たちは備える。
あの場所から持ち出した表の世界では『禁じられた』あの兵器までも仕掛けあの大人を呼び寄せるのに十二分な『餌』を用意するため…
「あ…あの…ニュースで見た大人の人が…。」
虚偽の通報まで行った。
その成果は…想定以上だった。
「あの服装は…!」
「まさかここで…!」
やってきたのは黒い制服に身を包んだ自分たちにとって『仇』そのものの者たち。
「ちょうどいい…!お前らも邪魔だったんだ…!」
『今後』、彼女たちとぶつかるのは確実。
あの大人と一緒に葬り去れればまさに一石二鳥だ。
そして、自分たちの『大仕掛け』に仕込んだ無線機が…
《チャージ!一気に制圧を!》
まんまと餌に釣られてやってきた『正義実現委員会』の隊員の声とドアがけ破られる音が聞こえた瞬間、
カチカチッ
起爆装置が押し込まれ…
シュドォオオオオオオンッ!!!
視界の先の廃ビルから猛火が吹き上がった。
「さぁ来い…!お前なら…必ず来る…!」
それを傍らにスナイパーライフルを据え置いた襲撃者二人のギラついた三つの眼が見つめていた。
そして、ものの数分と経たずにライオットシールドを持った生徒がビルに乗り込み、
「来た…!」
リヤカーを引っ張って資料で穴が開くほど見てきた赤い大鎧が現れビルの中に駆け込んでいったのを確認し、
「スポッター頼んだ…!」
左目を負傷した襲撃者が傍らに置いてあったスナイパーライフルを、
「そっちも外さないでよ…!」
足を負傷した襲撃者が双眼鏡を構えた。
そして、事態が動いたのは彼女達だけではなかった。
《…確かなんですね、マシロ?》
「はい、ハスミ先輩…!」
派遣された正義実現委員会で唯一狙撃要員として遠方で待機しており無事だったマシロ。
「あの巨大な赤い甲冑…!間違いありません、ネイトさんが所有するパワーアーマーです…!」
そんな彼女のスコープの先には今D.U.中が探し回っている重要人物であるネイトを象徴するパワーアーマー『X-02』を捉えていた。
「先ほどミネ団長もビル内に入られネイトさんと一緒に他の救護騎士団の方々もいらっしゃいます…!」
《ミネ団長が…!?なぜそんなところに団員の方々と…!?》
しかも、ミネを筆頭に同じトリニティの救護騎士団も一緒だというではないか。
「指示を求めます、ハスミ先輩…!」
この状況にマシロはハスミに指示を求める。
おそらく突入した正義実現委員会の隊員は自分以外は壊滅。
そこに確保対象のネイトが救護騎士団と共に現れたとなれば…すでにマシロの現場判断で動ける段階を超えている。
《…少々協議の時間をください、マシロ。それまでは待機を。》
しかし、正義実現委員会No2のハスミをもってしてもこの状況は手に余るので判断を仰ぐために一旦離れる。
「了解、警戒し待機します…!」
ハスミの指示を受けマシロは再び『正義の顕現』を構える。
彼女の視線の先ではネイトやミネが仲間たちを運び出し他の救護騎士団の団員たちが必死に救護活動を行っている。
「………!」
そんな光景を見てマシロは唇を噛む。
トリニティ…いや、ティーパーティーのアビドスやネイトへの行いはマシロも朧気ながら聞いている。
正直言ってまだ曖昧ながらも哲学的に『正義』というものを追いかける彼女をして『そんなの正義ではない』と判断せざるを得ないことばかりだった。
まるで弁明の余地もない『悪』と断じているようにしか見えなかった。
だとしても、彼女に意見することはできなかった。
正義実現委員会はティーパーティーの配下、そのうえ所属したての1年生の自分が意見するなど烏滸がましい。
自分達にネイトもいい印象を抱くわけがないと思っていた。
そんな彼が…今自分の仲間を必死に救おうと行動している。
ミネ以上に現場を取り仕切りその指揮も一切の淀みを感じられない。
(なぜ…なぜ彼にあのような…)
『お上』と今自分が目の当たりにしているネイトの姿に揺れるマシロ。
すると…
《こちら、ナギサです!正義実現委員会のマシロさんですね!?》
「はッはい…!」
無線からナギサの声が響きマシロの意識が一気に引き戻される。
《彼を発見したというのは本当ですか!?》
「…はい、ナギサ様。現在、彼はパワーアーマーから降り救護騎士団の方々と共に隊員の応急処置を…。」
自分にとっては雲の上の存在であるナギサにマシロは冷静に現在の状況を報告する。
だが…
《直ちに彼の身柄を確保してください!》
「え…?!」
有無を言わせずにナギサはマシロにネイトの確保を命じる。
《ここで彼を取り逃がすわけにはいきません!!!抵抗するようであれば威嚇射撃も許可します!!!》
「おっお待ちください、ナギサ様…!彼は今団員たちの救護を…!」
あまりにも強引すぎるやり方にさすがにマシロも異を唱えるが…
《救護騎士団の方々がいらっしゃるのならば問題ありません!!!今は彼を確保することが最優先事項です!!!》
ナギサはなおも現在のネイトの行いを一切考慮せずに確保を命じる。
《…落ち着いてください、ナギサ様。確かに彼の保護は最重要事項ですが…。》
これにはハスミも彼女を落ち着かせようと声をかけるが…
《ハスミさんっ!!!貴方もそれを理解していながらなぜ彼女にそれを命じないのですかッ!?》
《それは…。》
《今は議論をしている猶予はありません!なんとしても彼を確保しなければ…!》
今度はハスミにも食って掛かるナギサ。
迫るタイムリミットに完全に冷静さを失っていることはありありと伝わってくる。
《とにかく一刻も早く彼の確保を!!!貴方ならば命中させないように狙撃することも可能でしょう!?》
「それは…!」
確かにマシロの腕ならばあの場の誰にも命中させることなく狙撃は可能だ。
だが…
「わ、私の銃はそんなことに使われるためには…!」
彼女の中の『正義』の心がそれを拒否する。
自分の銃が仲間に…さらには仲間たちを救っているネイトや救護騎士団に向けられる。
そんな事実を彼女は認めたくなかった。
《何を言っているのですか!?これはもう正義実現委員会だけの問題ではありません!貴方の判断でD.U.が戦場になるか否かの瀬戸際なんですよ!?》
「………ッ!」
だが、ナギサはそんなマシロの葛藤など意に介さず…
《…ツルギさん、ティーパーティーとして命じます!!!彼女にネイト氏の確保、それに伴う威嚇の武力行使を命じてください!!!》
とうとう委員長のツルギを怒鳴りつけ彼女に発砲させようとした。
…その時だ。
「ほら、起こすぞ。ゆっくり飲むんだ。」
「うぅ…ありがとう…ございます…。」
新米隊員に水を飲ませようと彼女を起こしあげた際に…動きが完全に止まったネイト目掛け…
「死ね、熱砂の猛将…!」
ズダァァァンッッッ!!!
襲撃者は『好機到来』と言わんばかりに即座に発砲、
ドシュゥッ!!!
『ッ!!?』
その弾丸は…ネイトに着弾した。
ミネもハナエもセリナもマシロも、果てには映像で事態を確認していたナギサたちでさえその光景に言葉を失う。
あのネイトが…撃たれた。
「ネ、ネイトさんッ…!」
ミネは必死の形相でネイトの名を叫ぼうとする。
だが…
「………。」
「な…何ですか…?」
「………いいや、何でもない。」
「え…?!」
撃たれた張本人であるネイトは…一切動じていない。
「でも…お顔に血が…?」
「なに、処置の時に着いたやつさ。さぁ、これを飲むといい。」
「…はい。んく…んく…。」
そのまま、新米隊員に水を飲ませ…
「そのまま…眠ってたらいい。起きたら…また元気な時の姿に戻っているからな。傷物で悪いが…この水筒も君に上げよう。」
「ありがとう…ございます…。」
ゆっくりと彼女に水筒を持たせ横たえ直し…
「スゥ…スゥ…。」
「またな。」
寝息をたてる彼女の腕にスティムパックを注射する。
効果は覿面、見る見るうちに彼女の火傷が癒えていった。
「…ハナエ、彼女を連れて行ってくれるか?」
「はっはいっ!」
彼女を起こさない様に静かな言葉にハナエは一も二もなく従い彼女を抱えて離脱していった。
「ばっ…バカな…!?」
「なんで…これを喰らって動ける…!?」
襲撃者たちは絶句するしかない。
狙いこそずれたがこの弾丸の威力はそんじょそこらの物とは比較にならない。
例え…あの『戦略兵器』でもまともに食らえばダメージを刻める弾丸だ。
なのに…キヴォトス人でもないネイトは動けるどころか悲鳴一つすら上げない。
そんな異様な光景に…ミネたちですら言葉を失っていた。
だが…そんな見かけとは裏腹に…
ネイトの内面は感情の濁流が巻き起こっていた。
普段の彼からは考えられない弱音の数々だが…こんな状況では是非もない。
肩を撃たれてこうならない方がおかしいのだ。
むしろ…『本能』という面で考えればこれらの行動は自然とすらいえる。
…そう、
(黙ってろ、この子や皆が心配する。)
その『本能』をネイトは『理性』で抑え込んでいたのだ。
(覚悟の上だっただろう。今更ガタガタ騒ぐな。)
(あそこで去っていたら…俺は俺でなくなってしまうからだ。)
己との問答の中でネイトは回想する。
あの爆発があった際…自分以外はおそらく気付けなかっただろう事実がある。
爆発の際に起こったどこか間延びしたような爆発音とオレンジの炎、ビルに踏み込んだ際に確認した全体が均等に損傷している現場の破壊の痕跡。
これらに合致する爆発物は…一つしかない。
(お前も気付いていただろう。白リン弾以外に…『サーモバリック爆薬』も使われていたことを。)
『サーモバリック爆薬』、爆発の際に爆薬自体が気化し高温と高圧によって殺傷効果をもたらす。
これもまた…米中戦争では主に中国軍がロケット砲などで使用。
パワーアーマーであっても着用者に重傷を負わせるなどの被害を多数出していた。
そして、『燃料気化爆弾』の流れをくむ兵器だが…その威力のため連邦生徒会は保有自体を違法としている禁止兵器でもある。
そんな代物を何の躊躇もなく使う組織など…心当たりは一つしかない
(これは…俺を吊り上げるための『釣り針』だ。)
ネイトもそれを理解し…
(だが…それでも彼女たちを救うことを決めたんだろ、俺?)
それでも巻き込まれた正義実現委員会の隊員たちを救うために死地に飛び込んだのだ。
(分かっている。我ながらバカなことをしたってこともな。…それでも、この子達はなんの『関係ない』。)
この戦いは自分と…あの白尽くめの襲撃者の問題だ。
誰のものでもない。
自分と奴らの問題だった…はずだ。
それを奴らは無視した。
モーテルの主人を叩きのめしヴァルキューレを襲い、手段は分からないが彼女たちまで卑劣な手段を用いて手をかけた。
(誰かが俺を消したがっているだろうが…そんなのは彼女たちには関係ない。)
(それなのに…奴らは彼女たちを巻き込んだ。白リンを浴びせ…彼女たちの将来を奪おうともした。)
一度ならず二度三度と行われたこの蛮行に…
(それが俺には勘弁ならない…!)
ネイトの怒りが頂点へと達した。
本能の問いかけに…
(…アーマードシルバー・シュラウドの衣装を貫いた。30口径以上…着弾と発砲音の差から計算すると….338ラプアマグナム徹甲弾クラス。)
理性がこれまでの経験則から導き出した答えを返す。
(弾は肩甲骨で止まって出血はみられるが重要な血管はかろうじて無傷。それ以外の骨と神経も今のところ問題なし。)
(衣装の『アサシン』とPerkの効果と…治療に使ったハンカチのおかげだ…。)
ネイトは思い出した。
ちょうど撃たれた場所は…警察署で自分が刺された場所に合致する。
手当の際にハンカチを用いていたが…
(不幸中の幸い…てやつか。デモンストレーションでクラフトしてたのを今日持ってきてたとは…。)
それはただのハンカチではない。
以前、ミレニアムで耐衝撃ファイバーの量産体制が整った際にユウカたちにデモンストレーションの一環でクラフトした防弾ハンカチ。
何の因果か…ネイトはそれを元には戻さずに今日持ってきてそれを応急処置に用いていたのだ。
元より頑丈かつ人からの攻撃を減衰させるレジェンダリー効果を持つ『シルバーシュラウドの衣装』と『防弾ハンカチ』。
そして、骨格を補強するPerk『Adamantium Skeleton』。
これらのおかげで…
(HP残量は37%…。だったら…問題ない。)
HPこそ大きく減少したもののネイトはかろうじて致命傷を防いだのだ。
結論はまとまった。
(…じゃあ、仇討ちをしてやろう…!)
本能が再び牙をむきだす。
(分かってる…!)
理性も同意し、
(やっちまおう…!)
(やっちまおう…!)
(あいつらを…やってしまおう…!!!)
本能と理性の意見が揃った瞬間、
ネイトと…
「ひっ!?」
「なっなんで…!?」
数百mは離れているはずの襲撃者たちと目が合った。
あり得ない、あり得るわけがない。
なぜ倒れない?
なぜ悲鳴の一つも上げない?
なぜこちらが分かる?
なぜ『あの方』よりもあの大人に…恐怖を覚える?
「こ、このオオオオオオ!!!」
ズダァァァンッッッ!!!
襲撃者は止めを刺すべく次弾を装填し発砲するも、
ズガァン!!!
冷静さを失って『狙撃』が成功する訳もなく弾丸はネイトから大きく外れビルの壁面に着弾。
「ふーッ!ふーッ!」
「落ち着け!さっきの測的通りにやれば必ず当たる!」
平静さを失った相棒にスポッターの襲撃者が言葉をかけて気を鎮めさせようとする。
このままではあたるものも当たらない。
相手は見るからに重傷、もう一発当てられれば決着がつく。
その時だった。
「見つけた…!」
二発目の発砲でマシロが狙撃手の位置を特定し、
「目標を確認、排除します!」
バッゴォオオオンッッッ!!!
『正義の顕現』から桁違いの銃声を届かせ20mm機関砲弾が放たれた。
元は航空機搭載機関砲用の砲弾、並の弾丸の比ではない速度と低伸性を誇る。
そして、その性能はそのまま…
ズダゴォッ!!!
「ゴ…ッ!!?」
「~ッ!?」
スポッターの襲撃者に叩きこまれあまりの衝撃に吹き飛ばされた。
なにせ小口径と言えど『砲弾』、掠っただけで肉体が引き裂かれ四肢はちぎれ飛ぶ威力だ。
まともに食らえばキヴォトス人を吹き飛ばすのはおかしくない。
「命中です…!」
マシロは冷静にボルトを操作し次弾を装填、
「弾丸装填、照準よし…!」
残る狙撃手の襲撃者を仕留めようとする。
《なっ何をやっているのですか、マシロさん!?》
それにナギサは今日何度目かの血相を欠きマシロを制する。
《私は確保を命じたのですよ!?貴方の存在がばれては彼に警戒を…!》
ネイトを確保できるまたとないチャンス、それを不意にするかのようなマシロの攻撃。
今の発砲でネイトもマシロの存在を確実に察知したに違いない。
これでは再びネイトに逃走されてしまうと思ったのだ。
しかし、
「私は…正義実現委員会委員の『静山マシロ』です…!」
《え…?!》
「私の役目は…正義を実現させることです、ナギサ様…!」
マシロは動じることなくナギサに返信する。
「私にはまだ…『正義』というものがよく分かっていません…!」
はっきり言って…自分はまだ未熟だ。
善悪の二元論に染まっている自覚もあるし『正義』と『悪』と言った白黒つけられない事態に悩むこともある。
だが…
「ですが…!私にはできません…!」
そんな自分でも、
「私たちの仲間を救い…例え撃たれても慈しむ『正義』の心を持つ彼を…ネイトさんをこれ以上痛めつけられるのを見過ごすことなんてできません!!!」
ネイトが『正義』の心をもってあの場に臨んでいることは一目で分かった。
「申し訳ありません、ナギサ様!処分は後でいかようにでも受けます!ですが、今は彼を護る事こそ私の正義なのです!!!」
普段はむしろ物静かで人づきあいが苦手な部類であるマシロの必死の訴えに…
《…マシロ、ツルギだ。》
「ツルギ先輩…!」
これまで沈黙を貫いていた正義実現委員会のトップであるツルギが割り込んできた。
あぁ、きっと怒られる…そうマシロは思った。
だが、
《…責任はすべて私がとる。奴にこれ以上手を出させるな。》
《なっ!?何を言ってるんですか、ツルギさ…!》
ブツンッ
短くそう告げナギサが異を唱え終えるよりも早く無線が打ち切られた。
「…了解しました、ツルギ先輩!!!」
聞こえているかは分からないがマシロは意気揚々と答え、
バッゴォオオオンッッッ!!!
襲撃者目掛け『正義の顕現』を発砲、
「くそぉッ!!!」
バゴォッ!!!
襲撃者は身を翻し何とかその一撃を回避できた。
狙撃箇所は分かったが…自分が持つ銃ではマシロには敵わない。
ならば…
「お前が私を仕留めるより早く奴を仕留めてやるよ!!!」
素早く襲撃者は狙撃銃を構えネイトに狙いを定める。
「させませんっ!!!」
マシロもさせまいと『正義の顕現』を構え…
ズダァァァンッッッ!!!
バッゴォオオオンッッッ!!!
奇しくも発砲のタイミングはほぼ同時だった。
バギィンッ!!!
「ぐッ!?」
マシロの放った砲弾は襲撃者のスナイパーライフルのバレルに着弾し圧し折った。
(だが…間に合った…!)
既に襲撃者の放った弾丸はネイト目掛け宙を翔けている。
(くたばれ、熱砂の猛将っ!!!)
彼の末路を見届けようと彼女はスコープを覗き続けた。
『命中する、命中してしまう』、その場の全員がそう察した。
「させませんッ!!!」
ミネがライオットシールドを構え大地を蹴る。
(守る、護って見せる!!!なんとしても彼をッ!!!)
決意を漲らせネイトを護るために立ちふさがろうとするが…
(間に合って、お願い…!)
相手は超音速の弾丸、いかに俊敏なミネでも間に合うかは…。
その時だった。
ヒュバァンッ!!!
Pip-Boyが突如起動し、効果音と共に画面にはVaultBoy目掛けて飛んできた弾丸がUターンしていくアニメーションが再生された。
すると…
ギュンッ!!!
弾丸の軌道が突如逸れ、
バシィンギィンゾバァンッ!!!
「クゥッ!?」
ミネのライオットシールドを始まりに地面や壁面を跳弾し…
ギュウンッ!!!
「え…?」
弾丸はそっくりそのままの元の軌跡をなぞる様に進行方向を真逆にして飛翔、
バギャァン!!!
襲撃者が構えるスコープを粉砕し…その奥の右目に着弾。
その場所から血を噴出させ…
ドサッ
あおむけに倒れ…起き上がることはなかった。
「え…?」
その光景の一部始終を目の当たりにしていたマシロは絶句した。
『跳弾』、弾丸が地面などで跳ねて軌道を変える現象は彼女も今までさんざん目の当たりにしてきた。
だが…それは精々水切り石程度の現象であったとしても1回がせいぜいかつタマの行き先の予測もほぼ不可能だ。
それが複数回連続して…しかも射手にそっくりそのまま返ってくるなどという現象は聞いたこともない。
正に『神がかり』、『奇跡』のようなことが目の前で起こったのだ。
この場の誰も…ただの天文学的可能性で起こった『偶然』だと思う中、
「…フフッ…今晩で初めて…『ラッキー』な出来事だったな…。」
ネイトだけが確信めいた言葉を発していた。
ネイトの幸運に関与するSPECIALステータス『Luck』、その中にあってまさに『運に愛された者』しか取得できないPerkがある。
『Ricochet』、『跳弾』という単語の意味そのままに…弾丸を発射した相手目掛け跳ね返す超常現象を引き起こすPerkだ。
敵のHPが大きく減少していればしているほど発生は容易くなる。*1
あの襲撃者はネイトにディサイプルズ・カトラスを用いた必殺の近接ステルスアタックを受けていた。
意識こそ取り戻したもののそのHPは大きく減少しておりその発動条件を満たしていたのだ。
ネイトは知る由もないが…ボルトアクションなどの単発武器における『Ricochet』の発動確率は最大7%。
かなり低い確率だが襲撃者はネイトに3回攻撃を行った。
この場合、3回の内1回発動する確率の期待値は…およそ20%にもなる。
確率5分の1…ネイト程の『Luck』があれば発動しない方がおかしい可能性だ。
「痛ぅ…まともに弾丸を喰らったのはいつぶりだ…?!」
V.A.T.S.を用い索敵し周囲には不審な姿が無いことを確認しようやくネイトに『痛み』を実感した。
「ッ!ネッネイトさん!けっ怪我を見せてください!!!」
肩を抑え蹲る彼にミネは駆けより容態を確かめる。
「落ち着け、ミネ…。見かけほど酷い怪我じゃ…。」
「何を言ってるのですか!?血がこんなに出ているのですよ?!」
強がるネイトだが…決して予断を許すことはできない重傷だ。
(盲管銃創で肩甲骨に弾頭が貫入…!貫きはしていないもののあと少しでも進入していたら…!)
ミネが頭の中に叩きこんだ人体の血管の配置。
この場所の先にあるのは…。
「セリナ、ハナエ!!!今すぐに彼を搬送します!」
今はネイトを治療することが先決だ。
「わっ分かりました!」
「すぐに担架をお持ち…!」
団長の声に答えセリナとハナエがすぐに行動に移ろうとした。
しかし…
キィンッ!!!
周囲に耳を劈くハウリング音が響き渡り、
《熱砂の猛将、そこに居るのは分かっているッ!!!》
『ッ!?』
路地に入ったここにまで届く大声量が轟く。
《こちらはレッドウィンター事務局保安部!!!私は保安部委員長を務める『池倉マリナ』だッ!!!》
「れ、レッドウィンター…!?」
「な、なぜあの学校が…!?」
声の正体であるレッドウィンター所属の『マリナ』の登場に動揺が走る救護騎士団の団員たち。
「『レッド』…?『ウィンター』…?」
《あたり一帯は我々が包囲している!!!今すぐに姿を現せ!!!》
「な、何を言っているのですか!?」
重傷者であるネイトの身柄を要求するマリナにミネは怒りの表情を浮かべる。
彼女からしてみればこれほどの重傷を負ったネイトを病院ではなくレッドウィンターに引き渡す考えなど毛頭ない。
だが…
《我々はそちらに向かう救護騎士団および救急救命士を乗せた救急車5台を抑えている!!!》
「なっ…!?」
《貴様がこちらの要求を飲めばそれらを引き渡そう!!!しかし、要求を拒否すればその結末を覚悟することだ!!!》
「なんてことを…!団員や医療従事者を人質に…!」
「そんな…!皆さんを運ぶための救急車が…!」
マリナたちはすでに手を打っていた。
ネイトが支援要請を受けて駆け付けた救急車と医療従事者達。
それらが届かなければ…正義実現委員会の負傷者たちを搬送できない。
「…すまない、借りるぞ。」
ネイトは新米隊員が持っていた無線機を拝借し、
「分かった。要求を飲もう。」
一瞬の逡巡もなくマリナの要求を受け入れ…
「ただし、そちらが抑えている救急車をこちらに向かわせ負傷者の搬送を完了してからだ。」
《…いいだろう!!!だが、もし貴様が逃亡したら我々は容赦はしないぞ!!!》
こちらからの要求をマリナに飲ませることもできた。
「…聞いての通りだ、ミネ。君達は負傷者と一緒に離脱するんだ…。」
「そんなッ!そんなのダメです、ネイトさん!」
ネイトの言葉をミネは必死に拒絶する。
「ここを離れるのならばネイトさんも一緒にです!貴方を置いては私達はどこにも…!!!」
そんな彼女に…
「聞けッ、救護騎士団団長『蒼森ミネ』!!!」
「ッ!?」
彼女に負けないネイトの裂ぱくの声が周囲に響き彼女の言葉を詰まらせた。
「これは俺のッ!俺だけの戦いだッ!!!関係ないお前たちはさっさとここを立ち去れッ!!!」
「か…関係…ない…?」
「はっきり言ってこれ以上お前たちにここにいられると『邪魔』なんだ!!!さっさと怪我人と一緒にここから出ていけ!!!」
ミネを…いや、救護騎士団を突き放す言葉を投げかけるネイトに周囲の救護騎士団の団員たちは言葉を失った。
ちょうどその時、マリナに抑えられていた救急車の車列が到着。
「お待たせしました!怪我人はどちらに!?」
「こっちだ!早く運び出してくれ!!!」
中から残りの救護騎士団団員と救急救命士達が降車し次々と正義実現委員会の負傷者を収容していく。
「…ボォッとするな、ミネ。救護騎士団なら…彼女たちを最後まで見届けるんだ。」
肩を抑えながらネイトは立ち上がり…その時に備える。
「………。」
そんな彼の背中をミネは見つめることしかできなかった。
数分後、
「行ってくれ。」
「…すみません…!」
救護騎士団と負傷した正義実現委員会全員が救急車に乗り込みあとはここを脱するだけになった。
派遣された救急車の運転手はこれ以上ないほどつらい表情を浮かべていた。
今、目の前にいる人間はだれがどう見ても重傷だ。
そんな彼を残していかなければならない、命を救うことが使命の彼らからしたら受け入れがたい現実だった。
「こんな…こんな事しか言えませんが…御武運を…!」
そう言い残し、救急車の車列は動き始めた。
そのまま最後の車両が去るまでネイトは見送り…
「………。」
あの『冷たい闘気』を纏った。
―――――――――――――――
――――――――――
―――
「さぁ来い、ラフィアン…!」
その時を今か今かと待つマリナ。
そして、重い足音共に…
「待たせたな。」
X-02を纏ったネイトがレッドウィンターの軍勢の前に現れた。
「ほぉ、我々の軍勢を前に毛先も恐れを抱かないとは…。」
ネイトの目の前にいるのはマリナ率いるレッドウィンター保安委員会総勢100人にT-54B『粛清君1号』というキヴォトスではかなりの規模の軍勢だ。
「で?北の冷凍庫から遠路はるばる何しに来たんだ?」
だが、ネイトは一切動じずに皮肉交じりに彼女たちの目的を尋ねる。
自分の確保が目的ならばあんな強引な要求を突き付ける必要はない。
ならば…それ以上が目的ということだろう。
「察しがいいじゃないか、ラフィアン。」
感心したようにマリナは鼻息を荒くし…
「我らが書記長『連河チェリノ』会長の命だ!!!ラフィアン、貴様を『始末』させてもらおう!!!」
目的はネイトに命であることを宣言した。
「そして、貴様を仕留めた暁にそのパワーアーマーを頂き我がレッドウィンターは更なる躍進を遂げるであろう!!!」
「…なるほど、な。」
レッドウィンターもしょっちゅうアビドスに諜報員を差し向けている学校。
その目的がX-02というのは納得できる理由だ。
この混乱の隙に…ということなのだろう。
だが、
「…それにしては随分俺を安く見たな。」
「…なんだと?」
マリナたちを小馬鹿にしたようにネイトは呟く。
「俺を仕留めるのに…たったそれだけで挑むつもりか?カイザーをぶっ潰した俺を相手にか?」
ネイトのパワーアーマーを欲しているならばその戦闘能力も把握しているはず。
なのに、主力戦車があるとはいえこの戦力はあまりにも少ない。
「どうやらお前らの書記長は随分間抜けなようだな。」
そんな自分たちを小馬鹿にしたネイトの態度を…
「無駄な足掻きを…。諦めろ、このD.U,に…この都市に…逃げる場所も隠れる場所も存在しない。…諦めろ、ラフィアン…!」
チェリノを馬鹿にされカチンときたようだがマリナは所詮は強がりと判断しネイトに降伏を勧告する。
だが、
「…逃げる?隠れる?無駄?…諦めろだと?」
その言葉がネイトの逆鱗に触れた。
「…なるほど、お前達らしい言い草だ。」
「…なに?」
「思考することを捨ててただの『葦』になり下がった…お前たちのな。」
先程から…ネイトはマリナたちが気に喰わなかった。
『レッドウィンター』と言う校名も…。
私利私欲で行動する書記長も…。
そんな書記長の命令に唯々諾々と何も考えずに従うマリナたちも…。
…一緒だ。
自分が嫌悪しアラスカで激戦を繰り広げた…あの『赤い』軍勢と。
「自由主義の尖兵を嘗めるなよ、共産主義者ども…!」
その手にM4と消防斧を握りしめ、
「来い 叩きのめしてやるッ!!!」
あの日、あの場所…アラスカの戦場で纏っていた気迫を解き放ちネイトは身構える。
「それはこちらのセリフだ、ラフィアン!!!」
マリナもそれに答え、
「総員、突撃ィィィィッ!!!」
「Ураааааааа!!!!!」
突撃の号令と共にレッドウィンター生たちが突撃を開始。
「『紅い雪崩』には程遠いな!!!」
ネイトも一歩も引かずに迎え撃とうとした。
…その瞬間、
ズバガァンッ!!!
『ッ!!?』
両者の間の路面に何かが猛烈な勢いで落下し周囲に土煙が舞い上がった。
突然の出来事にレッドウィンター生の突撃の足も止まる。
土煙が薄まりその正体があらわになった。
『ラ、ライオットシールド!?』
透明な素材で構成され…トリニティのエンブレムが刻まれたライオットシールドが路面に突き立てられているのであった。
そして、その背後に佇む一人の生徒
「な、なぜ…!?」
彼女の姿を見たネイトは言葉を失いレッドウィンター生たちも…
「『鋼の白衣』…っ!」
「『制圧者』…!」
「『戦乙女』…。」
「『壊し屋』…!?」
「『鯖折師長』…!?」
「『天使の鉄拳』…!」
「『ライオット・メディック』…?!」
情報で把握していた彼女に付けられた異名の数々を語る。
そう、こんな芸当をできるのはキヴォトス広しと言えども…たった一人。
「なぜ戻ってきたんだ、ミネッ!!?」
「………。」
トリニティ総合学園救護騎士団団長『蒼森ミネ』以外にはいない。
ネイトの問いかけに、
「…貴方を残して逃げてしまっては私達は私達でなくなってしまいますっ!!!救護騎士団の『騎士』ではなくなってしまいますっ!!!」
「ッ!!!」
「ただの志を失い無為に過ごすだけの空虚な存在になってしまいますッ!!!」
先程のネイトの言葉に反論するように己が己であるためにと宣言する。
さらにネイトの背後からは…
「レッドウィンターの皆さん、それ以上は止めてくださいッ!!!」
「これ以上その人を傷つけようというのなら私たち救護騎士団が許しません!!!」
「もし、それ以上ネイトさんを攻撃するなら私達もお相手しますっ!!!」
「セリナ、ハナエに皆…!?」
救急車と共に脱したはずの救護騎士団の全員が勢ぞろいし銃を持ちレッドウィンターの生徒達を睨みつけていた。
「なんで…なんで戻ってきたんだ…!?」
そんなネイトの言葉に…
「…貴方は一人ではありません、ネイトさん。」
ミネは盾を引き抜きネイトに向き直り答える。
その表情は先ほどの険しいモノではなく…慈愛に満ちた微笑を浮かべていた。
「貴方は私達のために…傷付いても立ち上がってくれました。」
「ミネ…。」
「ネイトさん、貴方は勇気ある『騎士』です。そんな同胞を…突き放されようと私達は見捨てることはできません。」
「………。」
「だから…我々も勝手に救護させていただきます。これは…この場にいる団員の総意でもあります。」
ミネの言葉を聞き振り向くと…
「怪我人に殿を任せることは騎士の名折れ!私達も戦います!」
「ネイトさんを残して逃げることなんて私達にはできません!」
セリナやハナエに他の団員たちもネイトを護るために共に戦う覚悟を固めていた。
「皆…!」
胸の奥から熱いモノがこみ上げ言葉に詰まるネイト。
その時、
「救護騎士団ッ!!!我等書記長の野望を邪魔立てするつもりか!?」
保安委員会部隊の後方に控えるマリナが叫んだ。
この行為は明らかにレッドウィンターに対する敵対行為だ。
仮にも連邦生徒会を挟み協力体制を築いているというのにだ。
だが、
「黙りなさい、レッドウィンター!!!」
『~ッ!!?』
ミネは再び険しい表情を浮かべ彼女たちに相対する。
「この私の眼前で救護を妨げッ!!!」
左手にライオットシールド、
「負傷者を傷付けんと軍団を成し戦列を組み前進するッ!!!」
右手に愛銃『救護の証明』を携え、
「最後の道徳心すら捨てッ!!!外道の倫理をもって私達の同胞を襲わんとする者たちを我々がッ!!!」
その目に闘気を迸らせ、
「我等『救護騎士団』がッ!!!」
その一歩一歩に決して退かない決意を溢れさせ、
「この私が許しておけるものですかッ!!!」
レッドウィンターの軍勢の前に立ちふさがり…
「貴方達には救護騎士団史上最高強度の『救護』をもってお相手いたします!!!」
ライオットシールドと銃で『十字架』を模ったように構え、
「『In loco necessitatis, succurre』ッ!!!」
救護騎士団に古から伝わる教義を高らかに叫んだ。
「我らは己らに問う、汝ら何ぞや!!?」
そんな我らが団長の言葉に…
『我ら『救護騎士団』!!!全ての者を救う癒し手なり!!!』
セリナ達団員の意気も軒高。
「ならば救護騎士団よ、汝らに問う!!!汝らの右手に持つ物は何ぞや!!?」
『敵を恐れぬ勇気と大盾なり!!!』
「ならば救護騎士団よ、汝らに問う!!!汝らの左手に持つ物は何ぞや!!?」
『敵をも癒す慈悲と包帯なり!!!』
一糸乱れぬ教義の宣誓、
「えぇい構わん!!!さっさと制圧しろ!!!」
「「「「Ураааааааа!!!!」」」」
業を煮やしたマリナの指示で先方のレッドウィンター性がみね目掛け突撃する。
だが…
「なぁらばぁッ!!!!」
ズガゴォンッ!!!
「「「「ノオワアアアアアア!!?」」」」
ミネが盾を叩きつけた際に生じた波動でもって吹き飛ばして見せた。
『ッ!!?』
それを見て足を止めた保安委員会部隊を見据え、
「ならば救護騎士団よ、汝らは何ぞや!!?」
ミネは教義の続きを高らかに唱える。
「我ら戦士にして戦士に非ず!!!兵士にして兵士に非ず!!!衛士にして衛士に非ず!!!医師にして医師に非ず!!!」
その言葉を合図にしたかのように団員たちも動き始める。
ある物は銃を、またある者は担架を盾のように構え大昔の陣形『テストゥド』を構築する。
「我ら、ただひたすらに同胞に寄り添う者!!!ただ黙して同胞を護り、ただ黙して同胞の敵を打ち払う!!!」
『ぐあッ!!?』
出鼻をくじかれた保安委員会部隊に対しミネは銃撃を加えつつ突撃、
「戦場で大楯を掲げ、敵の歩みを寄せ付けぬ無崩の鉄騎ッ!!!」
「グハッ!?」
さらにはシールドバッシュを加え先鋒を切り崩していく。
「我等『騎士』なり、騎士の群れなり!!!我等奉仕者なり、赤き十字に此の身を捧し者なりッ!!!」
「このぉッ!!!」
ミネの背後をとり襲い掛かろうとする隊員が飛び掛かるが…
「ゼラァッ!!!」
「ぐぼぉッ!!?」
ネイトが彼女の背中を護る。
「背中は任せろ、ミネッ!!!」
「はいっ!…時至らば我ら戦場に慈悲の心を振り撒き、包帯をもって仇敵の傷をも癒す者なりっ!!!」
互いに背を託し目の前のレッドウィンター生徒へ攻撃を仕掛ける二人。
さらに…
『されば我等徒党を組んでヒンノムの地へと下り、隊伍を組みて方陣を敷き、劫火でその身を焦がす煉獄の悪鬼と合戦所望するなりっ!!!』
救護騎士団団員による援護射撃もそこに加わる。
「なっ何をやっている!!?数ではこちらが勝っている、押しつぶせ!!!突撃あるのみだ!!!」
「Ураааааааа!!!!!」
マリナも負けじと隊員に突撃を指示する。
「かかってこいッ、赤共!!!粉砕してやる!!!」
「これよりさらに救護の強度を上げます!!!覚悟ッ!!!」
ネイトとミネは一歩も引かずにその突撃に二人で突っ込んだ。
後にその光景をセリナやハナエは語る。
『まるで…巨大な一対の翼が聳えているようだった』…と。
"This We'll Defend"
『我ら、これを護る』
―――アメリカ陸軍のモットー