Fallout archive   作:Rockjaw

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人類は取引を行う動物だ。ほかのどの動物も取引を行わない。犬同士が骨を交換することはない。
―――経済学者『アダム・スミス』



A Fierce Battle in the Shadows
Demons and Yokai, Sometimes Parent and Child


別飛須高原での療養明け早々、マコトに呼び止められたネイトとアリス。

 

あれからまた少し時間が経ち…

 

ガタンゴトン…

 

「…なるほど、そう言うことでマコトは『アビドスからの報酬』って言ったのか。」

 

《伝えるのが遅れてごめんねぇ、ネイトさん。》

 

ネイトの姿は高速列車のデッキにあり電話で事の次第をホシノから聞き出していた。

 

「いいさ。俺の身柄一つであそこまで便宜を図ってくれたのなら安いものだろう。」

 

事情を聴きネイトも特に彼女に物申すことなく受け入れた。

 

自分を助けるためにはるかに強大なゲヘナに単身交渉を挑んだホシノへの敬意。

 

そして、そんな頼みを『自分の身柄を一日借りる』ことで受け入れてくれたマコトへの感謝。

 

ここでとやかく言うのはそれこそ『無粋』と言う物である。

 

「じゃあ、アビドスに戻るのは明日になるがその間も頼んだぞ。」

 

《おっけぇ~い。百鬼夜行のお土産も楽しみにしてるね~。》

 

「ちゃっかりしてるな、ホント…。了解だ。」

 

そう言うわけで事情も分かりホシノからのおねだりも了承し電話を切ったネイトは…

 

「納得してもらえたか。ネイト社長?」

 

「まぁな。というか、俺を一日借りるだけでよかったのか?」

 

ラウンジに戻りマコトと向かい合い語らっていた。

 

「社長はもう少し自分の価値を理解した方がいいぞ?」

 

「度々言われるが…やっぱり偉ぶるのは慣れなくてなぁ…。」

 

「偉ぶる必要はない。理解しろと言っているのだ。」

 

ネイトと接してきてマコト。

 

相変わらず小市民気質なのは変わらないが…もはやその存在価値はネイトの自認のそれを遥かに超えている。

 

彼の動向一つであの連邦生徒会すら注視せざるを得ない特異点そのものだ。

 

「ネイト社長、貴様を『自由に扱える』ということを見せつけるのは我が万魔殿戦車隊を見せつけるよりも効果があるのだぞ?」

 

「それはまぁなんとも高く買ってくれているようで何よりだ。」

 

「キキキッあぁ貴様のおかげでゲヘナにとっても喜ばしい事があったからな。」

 

そんなネイトとの関係を活かしマコトは非常に大きな恩恵に与れていた。

 

「『エデン条約』など私には食指が動かん旨味の無い取り決めだったが…おかげで絶品の料理にできそうだぞ…!」

 

エデン条約、トリニティとゲヘナの間で結ばれる予定の不可侵条約。

 

彼女自身はこの条約締結には消極的だった。

 

キヴォトス全土の支配を目論むマコトからすれば重荷以外の何物でもないだろう。

 

だが…それが今やマコトの意のままにできる『食材』となった。

 

先の事件におけるトリニティの諜報員の露見、さらにW.G.T.C.との契約に対する賠償によってゲヘナは大金やトリニティのスパイの一掃だけでなく…

 

「あぁ…今からあの羽付き共が屈辱で歪む顔が目に浮かぶようだ…!」

 

その条文を一部自由に書き換えられる権利を得ることが出来た。

 

これにより本来イーブンで結ばれるはずだったエデン条約がゲヘナ主導によって結ばれるものとなる。

 

悪魔顔負けの凶暴な笑みを浮かべるマコトだが…

 

「…一応断っておくがな、マコト。」

 

「む、なんだ?」

 

「『アゲハ同盟』が有効な間は俺もアビドスも有事の際はゲヘナ側につくが…お前達から仕掛けた侵略戦争に関しては戦力は出さないからな?」

 

真剣な眼差しで譲れない部分を強調するネイト。

 

未だ明文化されていないとはいえもはや『アゲハ同盟』はミレニアムすら巻き込んだ強固なものになりつつある。

 

だからこそ…線引きを今のうちにしっかりとしておかなければならない。

 

そうしなければネイトもアビドスも望まない戦いに巻き込まれかねないからだ。

 

「…安心しろ、ネイト社長。これでも三大校の一角、アビドスの助けなど借りずとも…野望は果たして見せるさ。」

 

マコトも表情から角をとりそう返す。

 

ネイトやアビドスの方針はすでに知れたところ。

 

しかも、本気でやり合えば確実にマコトたちゲヘナもただでは済まない戦力を持っている。

 

もし、その方針に反するような行いを強要した場合のリスクを考えればネイトの言うような線引きが非常に妥当なラインだ。

 

むしろ、

 

「我々が侵略を受けた場合は力になるという確約だけ得られるのであればそのくらいの妥協は許容しよう。」

 

余程のことが無い限りネイトが『敵にならない』という方針を聞けただけでも十分な収穫である。

 

「…そうか、ならいい。で、俺は今日一体何をすれば?これでもなるべく政治にはかかわらないようにはしてるんだが?」

 

話題を変え、今日の自分の役割をマコトに問うネイト。

 

そこまで重要視している自分を一体どう扱うつもりなのか少し緊張しながら答えを待っていると…

 

「いや、貴様に何かしてもらうつもりはない。ただ、イブキやほかの議員達と共に『百鬼夜行渦巻映画村』というテーマパークで楽しんでいればいい。」

 

「…それだけか?」

 

マコトらしからぬなんとも気軽な役割を伝えられた。

 

「元からこれはゲヘナと百鬼夜行との会談だ。アビドスの人間のネイト社長をその場に連れ出すのはこじれる要因だからな。」

 

と、もっともらしい事を言いつつも…

 

「…ちぃ、陰陽部との会談が無ければ…!」

 

内心変われるものならネイトと変わってほしい羨望の思いを吐露するマコトなのであった。

 

「おい…心の中の声が駄々洩れだぞ、議長殿。」

 

「ちぃ遊び駒殿は気楽でいいな…!」

 

互いに勝手知ったる軽口を交わしていると…

 

「っと、それはそうと…おい、アレを持ってきてくれ。」

 

パチンッ

 

マコトが表情を戻し指を鳴らして控えていた生徒を呼ぶ。

 

その生徒は何やらマホガニー材で作られた細長いケースを抱えており…

 

ゴトッ

 

何やら重量感を感じる音を立ててネイトとマコトの間に置かれた卓の上に置かれた。

 

「これは?」

 

「受け取れ。大いに利益を得させてくれた礼と快気祝いを兼ねた万魔殿からネイト社長への贈り物だ。」

 

そう言いつつ、マコトがロックを解除し中身を見せると…

 

「ッ!?おいおいこれは…!?」

 

中を見たネイトが珍しく驚愕する。

 

そこに収まっていたのは万魔殿らしい豪華な装飾が施された一挺のソリッドフレームのクラシカルなリボルバーだ。

 

形状こそそれだが…明らかにおかしい。

 

そう、『巨大すぎる』のだ。

 

銃器に精通しているネイトですら…ソレはAWM同様名前しか耳にしたことが無い『規格外』の銃なのだ。

 

その名も…

 

「『プファイファー・ツェリスカ』…!?生で拝んだのは初めてだ…!」

 

「我が万魔殿御用達の銃職人に拵えさせた…!」

【挿絵表示】

『プファイファー・ツェリスカ』、メーカーが『商品』として製造した『拳銃』としては文句なしの『世界最大・最強』のリボルバー拳銃だ。

 

「全長55cm、重量6500g、装弾数5発…最早、並みのキヴォトス人では手に余る代物だ…!」

 

「…弾丸は…?!」

 

「.600 N.E.セーフティスラッグ弾…!」

 

「弾殻は…!?」

 

「純銅製、テフロン加工弾殻…!」

 

「弾頭は…?!」

 

「ビスマス製12号バードショット…!」

 

.600 N.E.弾、本来ならば象すらも一撃で仕留めることが可能な60口径の『ライフル弾』だ。

 

それをいかに巨大とはいえリボルバーで発射する…これがいかに狂気の沙汰か理解できるだろう。

 

「キキキッその銃ならば…あの正義実現委員会委員長すら倒しきれるだろう…!」

 

「手にとっても…!?」

 

珍しく気持ちが高ぶっているネイトを見て…

 

「あぁ、好きにしろ…!それは貴様の物だからな、ネイト社長…!」

 

愉快そうにしながらケースを彼の方に差し出すマコト。

 

それを慎重な様子で取り出すネイトに伝わるのは…今まで感じたことが無い異質な重量感。

【挿絵表示】

ハンドガンは元よりアサルトライフル・ショットガン、スナイパーライフル・対物ライフル・マシンガン・重機関銃・グレネードランチャー、果てにはエナジーウェポンにガウスウェポンまで様々な銃を手に持ち、撃ってきた。

 

重量こそこれ以上の物はいくらでもあった。

 

だが、プファイアー・ツェリスカはそのどれとも違う。

 

まるで…今にも暴れ出しそうな猛獣の手綱を握らされているような重さだ。

 

「…全く、こんなど派手な銃は90の爺さんには合わないと思っていたが…。」

 

プファイアー・ツェリスカを持ちそう自嘲気味に語るネイトに対し、

 

「爺さん?馬鹿を言うな、ネイト社長。」

 

マコトはニンマリとした表情を浮かべ…

 

「今の貴様は…まるで新品のおもちゃを贈られた子供のような若々しい表情を浮かべているぞ?」

 

今の彼がそれはもう輝いている表情を浮かべていることを告げた。

 

「…フフッそうか。」

 

「中々様になっているではないか。飾るのは止めて…貴様の『夢』を邪魔する者を粉砕するのに存分に使うがよい。」

 

「その時がくれば…な。有難く頂戴する。」

 

そう言い、ネイトはケースに銃を戻しPip-Boyの中に格納した。

 

ちょうどその時、

 

ウィーン

 

ラウンジのドアが開き、

 

「パパ~、マコト先輩とのお話終わりましたか~♬」

 

「ネイトさ~ん、イブキともお喋りしよ~♪」

 

アリスとイブキが元気に駆け込んできて…

 

ポスポスゥッ!

 

「おっとっとぉ!?」

 

「んな!?」

 

二人して勢いよく座っているネイトに飛び込んできた。

 

「ははっアリス、それにイブキ。待たせてしまったようだな。」

 

そんな元気いっぱいな二人をしっかりと受け止め頭を撫でマコトと長話していたことを詫びるネイト。

 

「うぅん!イブキ、ネイトさんが元気になってくれてとぉっても嬉しいの!」

 

「はい、イブキのおかげでパパのHPもMPも完全回復できました!」

 

「あぁ、イブキが連れて行ってくれた別飛須高原のおかげでこんなに早く戻ってこれた。本当にありがとう。」

 

「えへへ~どういたしまして!」

 

ネイトがこんなに短期間で復帰できたのはほかでもない、イブキが別飛須高原での滞在を進めて手配してくれたからだ。

 

そんな感謝の思いを込めてイブキを撫でていると…

 

「パパっ今日はお願いがあります!」

 

「お願い?どうしたんだ?」

 

アリスが満面の笑みでネイトを見つめ、

 

「はい、今日はイブキもパパの『娘』として一緒に映画村を回りましょう!」

 

今日一日イブキを家族として迎え過ごすことをねだってきた。

 

「アリスちゃんが『パパを治してくれたお礼』だってぇ~!ねぇいいでしょ~?!今日はイブキもネイトさんの子供になっても~?!」

 

イブキも同じように今日限定で『娘』として過ごすことをおねだりする。

 

「んなぁッ!!?なっ何を言っているのだ、イブキぃ!?」

 

まさかのおねだり、しかも自分には絶対不可能なお願いをする彼女にマコトも目を見開き驚愕する中…

 

「そうだなぁ…。よし、イブキも来たかったのを我慢してただろうし今日一日は思い切り俺に甘えるといい。」

 

ネイトもアリスとイブキのお願いを受け入れることに。

 

あれほど最高の環境を用意してくれただけでなくネイトの所在を隠すため彼女は決して別飛須高原に訪れなかった。

 

おそらく、あの病室にいた誰よりも自分に会いたがっていたはずなのに今まで我慢していたはずだ。

 

それに報いなければ…あれだけの『夢』をぶち上げた男として一人の父として失格である。

 

「やったぁ!イブキ、ネイトさんに思いっきり甘えるねぇ~!」

 

「よかったですね、イブキ!今日はイブキはアリスの妹ですよぉ!」

 

「わぁい!今日はよろしくね、アリスお姉ちゃん♬」

 

「はっはっはっ、これは俺の人生でも初の経験だ。」

 

そんな和やかな雰囲気が包むネイト達に対し…

 

「ヌゥオアアアアア!!!駄目だぁ、イブキぃ!!!その境を超えてはダメだぁぁぁぁ!!!」

 

対面に座るマコトは先ほどまでの余裕はどこへやら。

 

怒りやら悔しさやら羨ましさやらの感情がすべてごちゃ混ぜになった表情になり、

 

「ならば私も会談を止めてイブキと一緒に…!」

 

まさかのイブキの宣言とそれを受け入れたネイトに飛び掛かろうとするが…

 

ガシィ!

 

「んなぁ、イロハにチアキぃ!?」

 

「大事な公務ほっぽリ出して何やろうっていうんですか…!」

 

「イブキちゃんの正当な権利ですから落ち着いてくださいよぉ!」

 

寸前でイロハとチアキが抑え込み、

 

「はぁいマコトちゃん、これを見てて。」

 

すぐさまサツキが彼女の前に立ち紐を通した5円玉をマコトの前で揺らし…

 

「マコトちゃん、貴方はだんだんお仕事をしたくな~る~…。今イブキちゃんから聞いたことを忘れてお仕事をしたくな~る~…。」

 

なんともベタな「催眠術」を仕掛け始めた。

 

「あっアリス見たことがあります!」

 

「いや、そんな単純な方法で…。」

 

そんな子供だましが到底通用するとは思えずネイトも苦笑を浮かべるが…

 

「………。」

 

「…え?」

 

マコトの表情がどんどん引き締まっていき…

 

「ハッ!私は何を…?」

 

まるでつきものが落ちたような表情になり…

 

「…そうだッ!この後、百鬼夜行の責任者との会談があるんだった!おい資料を用意しろ、サツキ!細部まで詰めるぞ!」

 

普段と打って変わってこの後の会談に本腰を入れ資料の確認に向かうため席を立ち別の車両へと向かっていった。

 

さらに…

 

「………。」

 

「…サツキ?」

 

「ごめんなさい、ネイト社長!私も会談に向け準備しなきゃだから皆をよろしくね!」

 

サツキも同じような表情を浮かべマコトの後をついていった。

 

「えぇ~…。」

 

まさかの催眠術成功に唖然とするネイト。

 

「凄いです!イロハ先輩、サツキ先輩は魔術師なのですか!?」

 

一方、アリスは未知の技術に驚きイロハたちに尋ねるが…

 

「いえ、アリスさん。サツキ先輩のあれは単純な本人とマコト先輩にしか効かないものでして…。」

 

イロハが仕事をやり切った感を出しながらそう返した。

 

「…それはそれで大丈夫なのか?」

 

「サツキ先輩もそんなに悪用する人じゃないですから平気ですよ、ネイト社長!それより一枚いいですか!?」

 

どうやらこの光景は万魔殿では日常茶飯事のようなのでチアキも気にせずいつも通りカメラを構えていた。

 

「まぁこれでイブキのお願いが叶えられますのでネイト社長は安心して二人を連れて映画村をめぐってください。」

 

「私もお供したいですが書記としてのお仕事がありますのでイブキちゃんをお願いしますね!」

 

「…分かった。イブキの願いを果たせるようにベストを尽くすよ。」

 

「わぁい!ねぇねぇネイトさん、最初はどこ行こうかなぁ!?」

 

「ミレニアムにはないテーマパークですね!楽しみですね、パパ!」

 

こうしてネイトとアリスも伴った万魔殿一行を乗せた列車は百鬼夜行連合学院の学区を目指し進んでいくのであった。

――――――――――――――

 

――――――――

 

―――

それから少しして…

 

「おぉ~ここが…!」

 

「初めて見る建物ばかりです…!」

 

ネイトとアリスの眼前に広がるのはトリニティやゲヘナとは全く違った、それでいて歴史を感じさせる街並み。

 

「ここが百鬼夜行連合学院か…!」

 

三大校には及ばずともキヴォトスの中でもかなりの規模を持つ学校、百鬼夜行連合学院に到着していた。

 

そして現在は交流会の会場でもあるテーマパーク『百鬼夜行渦巻映画村』にやって来ている。

 

既にほかの万魔殿の生徒達は思い思いの場所をめぐりマコトとサツキにチアキはこの百鬼夜行のまとめ役である『陰陽部』との会談に向っている。

 

この場にはネイトとアリスにイブキとイロハしかいない。

 

「ネイトさんも初めて見るのぉ~?」

 

「…いや、昔読んだコミックでタイムスリップした主人公が飛ばされた街がこんな感じだったと思う。」

 

ネイトの脳裏に想起されるのはかつての同盟国である『日本』のさらに昔の街並みだ。

 

おそらく時代考証などはめちゃくちゃであったであろうがそれでもコミックの中でしか見たことが無い景色が現実として広がっているのだ。

 

年甲斐もなく少しはしゃいでいる自覚はある。

 

「フム…今度お持ちならばネイトさんのマンガ読ませてもらっても?」

 

「キヴォトスのそれとはだいぶタッチが違うからウケるかどうかは分からないがそれでもいいなら…。」

 

そんな会話をしていると…

 

「パパっパパっ!早く行きましょう!」

 

「行こー、ネイトさん!公演までまだ時間あるから~!」

 

ネイトの手を取りアリスとイブキがせがんできた。

 

「フフッモテモテなのは辛いですね、パパさん。」

 

「…まぁな、よしじゃあ行こうか。イロハも来るか?奢るぞ?」

 

「おっこれはラッキーですね。是非とも同道しましょう。」

 

こうして四人でともに渦巻映画村の観光を始めるのであった。

 

するとさっそく…

 

「あっ見てください、パパ!いろんなジョブの格好の人が出てきてますよ!」

 

入って早々にあった店にアリスが注目する。

 

見ると確かに時代劇に出てくるような格好の生徒やキヴォトス人がぞろぞろ出てきている。

 

「扮装屋…コスプレ衣装の貸し出し店か?」

 

「そのようですね。随分と賑わってますね。」

 

なるほど、さすがはテーマパーク。

 

コンセプトに沿った衣装をまとい楽しむのは確かに楽しそうだ。

 

すると…

 

「ネイトさん、何か着てきて~!」

 

「え?」

 

「イブキ、いつものネイトさんの格好も好きだけど今日は違う格好のネイトさんも見たいな~♪」

 

イブキがネイトにコスプレのおねだりをしてきた。

 

「わぁ~ナイスアイデアです、イブキ!私もパパがジョブチェンジしたところを見たいです!」

 

どうやらアリスもノリノリでネイトのコスプレを所望しているようだ。

 

「フフッこれはかなりレアなところが見れそうですね。」

 

珍しくイロハも期待に目を少し輝かせている。

 

ここまで少女たちに期待の目線を向けられて…

 

「…分かった、それくらいならお安い御用さ。」

 

断るのはあまりにも無粋と言う物だ。

 

「イロハ、二人を見ててもらえるか?」

 

「分かりました。」

 

「頼む。それじゃアリス、イブキ。ちょっと行ってくる。」

 

「いってらっしゃーい、ネイトさん!」

 

「カッコ良くなってきてくださいね~、パパ~!」

 

と言うことでアリスとイブキをイロハに託しネイトは扮装屋に向っていった。

 

「どんな格好になって来てくれるかなぁ?」

 

「どんなジョブでもパパはきっとレベルカンストのとっても強い人ですよ、イブキ!」

 

「確かに。あの人なら余程変な格好…それこそ女装でもしない限りは浮いたりはしないでしょう。」

 

そんな会話をしつつネイトの帰りを待っていると…

 

ワアアア…!

 

「む?何かあったんですかね?」

 

俄かに扮装屋が騒がしくなってきた。

 

銃声などは聞こえないのでトラブルというわけではなくむしろその騒ぎはポジティブさを感じるものだ。

 

そして…その正体はすぐに表れた。

 

「あの、宣材写真にどうか一枚…!」

 

「すまない、娘たちを待たせてるんだ。」

 

そう言い、黄色い歓声をかき分け現れたのはネイトで…

 

「いやはやお待たせしたな、三人とも。」

 

一目散にアリス達の元に戻りその姿を目の当たりにして…

 

「わあああああッすっごい!とぉってもカッコイイよ、ネイトさん!」

 

「凄いです!本当にゲームの中から飛び出してきたようですよ、パパ!」

 

「…これは何とも…想像以上のクオリティですね…!」

 

イブキにアリスはおろかイロハですら今のネイトの姿に感嘆している。

 

そう、今のネイトの姿は…

 

「衣装の中でこの『忍び装束』が一番見慣れててな。似合っているようでよかったよ。」

【挿絵表示】

正に創作の中に登場する忍者そのものの姿だ。

 

しかもインナーには帷子のようなものまで用意されてある本格派である。

 

「アリスにイブキ、お気に召してもらえたかな?」

 

正直、アメリカ人の自分にこの格好が似合うかどうか少し心配だったが…

 

「パンパカパ~ン!パパが忍者にジョブチェンジしましたぁ~!」

 

「うん、イブキとっても満足!」

 

どうやらアリスとイブキにはとても好評のようである。

 

「それはよかった。衣装は帰るときに着替えればいいからこのまま回ろうか。」

 

「「は~い!」」

 

そうして、再び両手をアリスとイブキとつなぎネイトは映画村内をめぐり始めた。

 

その光景を見て…

 

「フフッ…本当にいいパパさんですね、ネイト社長。アリスさんが少し羨ましいです。」

 

イロハも珍しく微笑みながら三人の後を追うのであった。

 

その後も…

 

シュコォン!シュコォン!シュコォン!

 

「う~ん手裏剣って投げるの難しい~…。」

 

「ゲームとはやっぱり違いますね…。」

 

「ハハッ残念だったな、お嬢ちゃんたち!さて、そっちのダンナは…シュカカカァン!!!…え?」

 

「全部ど真ん中…まさか本当に忍者の経験がおありなんですか、ネイト社長?」

 

「投げナイフと同じ要領さ(Perkのガイドに合わせて投げたってのもあるけど)。」

 

「お…お見事…!けっ景品はどれにしますか…!?」

 

「イブキ、どれが欲しい?」

 

「いいの!?じゃあ、イブキあの忍者のペロロ人形がいい!」

 

手裏剣を用いた的当てでパーフェクトを取りイブキに人形をプレゼントしたり、

 

「これならアリスも得意です!穿て、蒼穹の果てまでも!」

 

ピュン!

 

ピタァンッ!

 

「すごぉい、アリスちゃん!」

 

「あんなに大きな弓矢を操ってるだけあって流石ですね。」

 

「ど真ん中に当てるとはまた腕を上げたな。」

 

「ムフフ~アリス、皆に褒められましたぁ~♪」

 

矢場では嵐の弓を操るアリスが弓矢の的当てでいい点数を出したり、

 

「わぁ…パパが付けてるアーマーみたいです…!」

 

「ゲヘナに残されている甲冑とはまた意匠が違いますね。」

 

「ねぇ~ネイトさん。ネイトさんもあれ着て戦えるの?」

 

「いやぁ…ヘビーコンバットアーマーより重そうだし戦いにくそうだなぁ…。」

 

刀や鎧兜などが展示されている博物館を巡ったりとアトラクションを満喫。

 

「いやぁ、かなり楽しいものだな。」

 

「えぇ、これは本番の公演も期待できますね。」

 

「イブキ、次はどこに行きましょうか?!」

 

「う~ん…どこに行こうかなぁ~?」

 

園内を歩きつつイブキがどこへ行こうかと考えていると…

 

「イブキ、甘いものが食べたいなぁ~。」

 

ここで小腹が空いたか甘味を求めてきた。

 

「甘いものですか?そう言うお店は…。」

 

イロハもイブキのお願いを聞きパンフレットで甘味処を探していると…

 

「お、あそことかいいんじゃないか?」

 

「どこどこ?」

 

ネイトが少し先を指した場所にお目当ての店があった。

 

見たところ結構な繁盛店のようで看板には…

 

「『百夜堂 映画村支店』ですか?」

 

「ふむふむ…百鬼夜行での伝統的な喫茶店で結構人気なお店みたいですね。」

 

「喫茶店!?イブキ、あそこがいい!行こ、ネイトさん!」

 

「オッケー。二人もいいか?」

 

「はい!」

 

「私も構いませんよ。」

 

どうやら百鬼夜行の中でもチェーン展開している人気店のようで四人はその店へと向かっていった。

 

「いらっしゃいませ~!おぉこれはまたカッコイイ子連れの忍者さんが!」

 

「四人だが座れるかな?」

 

「大丈夫ですよ~!こちらへどうぞ~!」

 

中に入るとメイド服と振袖を組み合わせたような制服の生徒が出迎えてくれてネイト達を案内してくれた。

 

「人気店のようですが座れてよかったですね。」

 

「やっぱり俺が知る建物の造りとは結構違うなぁ…。」

 

「チビメイド先輩とはまた違うメイド服ですね、パパ!」

 

「ねぇ~可愛いね、アリスちゃん!」

 

そんな風におしゃべりしながら待っていると…

 

「お待ちどう様デス!メニューをお持ちしました、お客人ガタ!」

 

「お、おぉありがとう…。」

 

少し片言だがなんとも元気で威勢のいい…かなりきわどい制服の生徒がメニューを持ってきてくれた。

 

「初めましテ、私『朝比奈フィーナ』って言いマス!お客さんたち、ゲヘナの『万魔殿組』の構成員の方々デスか?!」

 

「万魔殿組ってなぁに~?」

 

「えぇ、確かにゲヘナから交流会でやってきました。」

 

「オォ―!それは『指詰め大サービス』しなくてはいけませんネ!」

 

「指詰め?約束するのですか?」

 

「…ひょっとして『出血大サービス』って言いたいのか?」

 

「そうとも言いマース!」

 

彼女、フィーナはなんとも物騒な言い方だがどうやら歓迎してくれているようだ。

 

「そして、そちらの忍者さんはどなた…!」

 

続けてネイトの正体を尋ねようとすると…

 

「フィーナ~!お喋りはそこそこに早くご注文を承って~!」

 

「あッハ~イ、シズコ委員長!ではお客人ガタ、なんにしまショウ!?」

 

先程応対してくれた生徒からの声でおしゃべりを打ち切り接客に戻り、

 

「そうだな…。俺はこの抹茶と団子のセットで。」

 

「イブキ、お抹茶のプリンアラモードがいいなぁ!」

 

「ではアリスは桜のソフトクリームをください!」

 

「私はほうじ茶と…餡蜜をお願いします。」

 

「ゴ注文承りマシタ~!少々お待ちくだサ~イ!」

 

ネイト達の注文を聞きフィーナは厨房へと戻っていった。

 

「なんだか百鬼夜行のイメージとは毛色の違う子だったな。」

 

「留学生では?キヴォトスでは珍しいものではありませんし。」

 

「サツキ先輩みたいな制服だったね、イロハ先輩。」

 

「あれはきっと魅了のステータスを上げる効果があると思います。」

 

「Charisma値上昇か。確かにそう言う効果がありそうだな。」

 

「だったらネイトさんの今の姿は素早さAgilityでも上がるんでしょうね。」

 

注文を待つ間、そんな会話をしていると…

 

「…ん?」

 

「どうかしましたか、パパ?」

 

ネイトの視線がある一点に注がれた。

 

「あれは…。」

 

その先には…

 

「お札ですかね?」

 

「なんて書いてあるんですかね?」

 

レジの上の壁に貼られた達筆な字の一枚の札だった、

 

「あれがどうかしたの、ネイトさん?」

 

「…いや、ちょっとな。」

 

この学校の文化としてはさして珍しくないものであろうが何故かネイトは気になった。

 

そうしていると…

 

「オ待たせしまシタ~!」

 

「あっと来たな。」

 

ネイト達が注文した甘味たちが運ばれてきた。

 

「ゴゆっくりお楽しみくだサ~イ!」

 

「じゃあ、いただきます。…おぉ~初めて飲んだがコーヒーとはまた違った苦みだな…。でも、団子に合う。」

 

「アムッ…フム、ゲヘナのお菓子とはまた違う甘味ですね。私結構好きかもです。」

 

「わぁ、こんなプリン初めて~…!オトナの味ってこういうのかなぁ~?!」

 

「このソフトクリームも美味しいですよ!イブキ、わけっこしましょう!」

 

アリスやイブキ達だけでなくネイトも初めて食べる和風なスイーツに満足気なようだ。

 

「っとほらアリスにイブキ、クリームで口が汚れてるぞ。」

 

「んむッ…ありがとうございます、パパ!」

 

「えへへっお礼に一口あげる、ネイトさん♪」

 

「おっと、じゃあ俺も団子を一つ上げよう。」

 

「…フフッアリスさん、本当にいいお父さんですね。」

 

「ハイッ!アリスの自慢のパパです!」

 

そんな風に和やかな雰囲気で食事は進み…

 

「「ご馳走様でした!」」

 

「流石は人気店、大満足ですね。」

 

「今度、アビドスでも似たような店を開拓してみるか。」

 

四人とも満足し食事は終了。

 

「ッと、そろそろいい時間ですね。」

 

「三人とも、先に出ててくれ。会計してくる。」

 

と、公演の時間も近づいてきているので会場に向かうことにする一行。

 

「会計を頼む。」

 

「はいは~い♪お会計は…。」」

 

レジに向かうとシズコが応対してくれ…

 

「はいちょうどお預かりしますねぇ~♪」

 

「ご馳走様、美味しかったよ。」

 

「ありがとうございます~♪また機会がありましたら百夜堂をどうかごひいきに♬」

 

「そうさせてもらおう。」

 

と、会計も済ませあとは立ち去るだけだが…

 

「あっとそれと…あれなんだが…。」

 

「あぁ…あれですか…。」

 

ネイトはシズコにレジの上に張ってあるお札のことについて尋ねる。

 

「…うちの子に昔書いてもらったんです。商売繁盛と火の用心の念を込めて…。」

 

それを見たシズコは今までの元気な姿から一変ししんみりした表情となる。

 

「…あッ!すみません、変な風に言っちゃって!」

 

「いや、訳アリのようなのに俺も変なことを言ってすまない。」

 

「いえいえ!でも、どうしてあのお札が?」

 

今度はシズコがなぜネイトにあの札が気になったか尋ね返すと…

 

「いや、ウチの『チカ』っていうパイロットがコックピットに似たようなのを貼ってるなぁ…と思ってな。」

 

ネイトは既視感を覚えていた人物を挙げて答える。

 

幽谷チカ、写経とお焚き上げが趣味のアビドスきってのガンシップドライバーだ。

 

そんな彼女だが愛機の『乗霊号』のコックピットや砲周りにはあんな感じの札を貼り任務の安全を祈願している。

 

と、何の気なしにそう返したネイトだが…

 

「………え…ッ!?」

 

今度はシズコの顔が固まった。

 

「…どうかしたか?」

 

「いっ今の話…!?」

 

シズコが何か言おうとしたが…

 

「パパ~早く行きましょ~!」

 

「すみませ~ん!注文いいですか~!」

 

アリスと客にそれぞれ声を掛けられ…

 

「っとすまない、もう行かなきゃ。」

 

「あちょっと…う~!はいただいま~!」

 

二人はそれぞれの役目のために動きその先を告げることはできなかった。

――――――――――――――

 

――――――――

 

―――

 

「えぇっと会場は…。」

 

「時間は余裕がありそうですね。」

 

「どんなお遊戯になるか楽しみだね、アリスちゃん!」

 

「はい!アリスも劇を見るのは初めてで今からワクワクしてます!」

 

その後、ネイト達は交流会のメインイベントが行われる映画村内の劇場に向っていた。

 

「…今更ながらその劇場で一体何が公演されるんだ?」

 

「なんでも観客も参加して行われる人気の演目らしいですよ。」

 

「乱入型のクエストですか!?期間限定イベントでよくやってました!」

 

「イブキも頑張るぅ~!ネイトさん、競争しよぉ~!」

 

「おっ?言ったな?よぉし、俺も負けないように頑張らなきゃな。」

 

百鬼夜行の人気の演目であるので期待に胸を膨らませながら向っていると…

 

「あの…退いていただけ…ないでしょうか…?」

 

「んー?まあまあもうちょっとそこにいてよ。」

 

「そうだよ、アンタがそこにいてくれないと目印が無いじゃん。」

 

少し先で何やらもめごとがあっているようだ。

 

見ると…猫背だがかなりの身長であることがうかがえる生徒に二人のチンピラが絡んでいるようだ。

 

「おっと?」

 

「…どこにでもあんな生徒はいるものですね。」

 

この手のもめごとはキヴォトスで過ごしていれば日常茶飯事だ。

 

イロハにいたっては天気の挨拶よりも身近である。

 

「でっかい奴がいるからって伝えて約束してるんだからさ。」

 

「私…目印じゃないですよぉ…。それに私、公演の準備が…。」

 

どうやら何か用事があるようで背の高い生徒は向かいたいようだがそれをチンピラが引き留めているようだ。

 

「パパ…。」

 

「ネイトさん…。」

 

その様子を見たアリスとイブキが乞うような目線をネイトに向ける。

 

娘たちにそんな目を向けられては…

 

「…イロハ、二人を頼む。」

 

「了解しました。」

 

二人をイロハに預け腰に万が一を備えホルスターに収められた『ツーショットのウェスタンリボルバー』を装備しネイトは揉め事の現場に向かう。

 

(やれやれ…復帰早々とは…。)

 

内心呆れつつも指を動かし強張りをとりつつ歩みを止めないネイト。

 

その時だ。

 

「『ツクヨ』?」

 

「…え先生?」

 

背の高い生徒のそばに見覚えのある人物…シャーレの先生が現れた。

 

「!」

 

彼に声を掛けられた生徒は弾かれるように先生の背後に隠れた。

 

…先生よりも背が高いようで隠れられてないのは御愛嬌だ。

 

「あン?誰だ、お前?」

 

「何だ?私たちの邪魔をする気か?」

 

「ほら、この子も困ってるから。待ち合わせならもっと他の目立つ場所の方がいいよ?」

 

邪魔をされてか首を曲げ先生を威嚇するチンピラ二人を宥めようとする先生だが…

 

「こうして楽しく遊べそうな日に邪魔させるわけにはいかねぇなぁ!!!」

 

「痛い目見ないと分からねぇか!?じゃあ行くぞ、おらぁッ!!!」

 

それで収まるくらいならキヴォトスで不良はやっていない。

 

それぞれの得物のセイフティを解除するチンピラ。

 

「うーん…。」

 

さて、こうなっては対処方法が限られるので…

 

「ごめん、ツクヨ。一緒に対応してくれる?」

 

「えっえぇっ…。」

 

背後に隠れる生徒と解決に動き出そうとする。

 

「あぁんそんな木偶の坊が用心棒か!?」

 

「上等だ、やってやん…!」

 

チンピラたちもそれに応戦しようと動き出したその時、

 

ジィッ

 

PiPi

 

ネイトはV.A.T.S.を起動し即座に二人のチンピラの武器に照準し目にも止まらない速度でウェスタンリボルバーを引き抜き、

 

ズドォォンッ!!!

 

バギギィンッ!!!

 

「ぐあぁッ!?」

 

「あびゃあッ!?」

 

一瞬のうちに二人のチンピラの銃に二発ずつの44マグナム弾を叩きこんで粉砕した。

 

「え…えぇッ!?」

 

先生の背後に隠れていた生徒は驚愕に目を見開き、

 

「こ、この早業は…!?」

 

先生も驚きつつも…この技に覚えがあり弾丸が飛んできた方向に目を向けると…

 

「よぉ先生、こんなところで会うなんて妙な縁だな。」

 

「ネッネイトさん!!?」

 

ガンプレイでホルスターにウェスタンリボルバーを戻しているネイトを見つけその名を叫んだ。

 

この邂逅に…

 

(さぁて…なんだか面倒ごとが起こりそうな予感が…)

 

ネイトは漠然とした不安を覚えるのであった。




ちなみにネイトの外見の元ネタの方は映画で忍者の主人公をやったことがあります。
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