皆さんにここまで読んでいただけて本当に光栄です
少々トラブルこそあったものの第三関門を突破した一行。
「次の関門は…結構近くだね!」
「そろそろ追いついてもよさそうだが…。」
最終関門である第四関門の場所に急いでいるさ中、
「…ネイト社長、少々お願いが…。」
「どうかしたか、イロハ?」
イロハが立ち止まりネイトにある頼みごとをしていた。
数分後、
「あんなこともできるのですね、棟梁殿!」
「イロハさん、昔漫画で見た、忍者みたいでした…!」
「グヌヌ~!今度私達にも貸してよ、ネイト殿!」
「ちょっと私もイロハが羨ましかったかも…!」
「本来の使い方じゃないんだぞ、あれ!」
イロハの姿がどこかにいなくなった五人はそんな会話をしながら園内を走っていると…
「はいはーい!忍術研究部の皆に先生と先生のお師匠様!第四関門へようこそ!」
「っとようやくか…!」
「ツバキとミモリがいたから予想はしてたけどやっぱり君もいたんだね。」
一行の前にツバキやミモリと近しい恰好の元気のいい生徒が現れた。
「ここ、罠や仕掛けがいっぱいの『トリックハウス』!この渦巻映画村でもかなり有名なアトラクションの一つだよ!」
「つまり…忍者屋敷ってこと?」
彼女の説明でミチルは近しいアトラクションを想起したが…
「『トリックハウス』…。」
そう聞いてネイトは連邦での日々を思い出す。
連邦でもそんな場所はたくさんあった。
至る所に『バスルーム用体重計』や『トリップワイヤー』に連動した『ブーケ型グレネード』や『テスラアーク』が仕掛けられたファロンデパート傍の立体駐車場。
ヌカ・レイダーズが考えた悪趣味で殺意しか感じられないトラップ満載の迷路、『ガントレット』
ヌカワールドのアトラクションを魔改造し来訪者を仕留めにかかる『グランチェスター・ミステリー・マンション』。
このほかこまごましたものを挙げるときりがない。
「…うぅ~ゾッとしないな…!」
「どッどうかしました、ネイトさん…!?」
「ネイトさんが想像してるほど物騒なものじゃないですよ、………たぶん。」
中々スリリングだったあの日を腕を擦りながらブルルッと震えるネイトであった。
「う~んそれはよく分かんない!」
「っておいおいそれでいいのか、お嬢ちゃん…。」
と細かい事はあまり気にしていない元気いっぱいなこの生徒、
「とにかく『第四関門』はこのトリックハウス!担当は私、『勇美カエデ』15歳!趣味はカブトムシ集めだよ!」
『勇美カエデ』は腰に手を当て胸を張り自己紹介した。
「おぉ…君ぐらいの女の子には中々珍しい趣味だな。」
「いいよぉ、カブトムシは!なんたってカッコイイ!早々百鬼夜行じゃヘラクレスオオカブトが…!」
「…え、ヘラクレス?」
この気候ではありえない虫の名前が飛び出て思わず反応するネイトだったが、
「っとごめん、カエデ。説明してもらっていいかな?」
話題がそれそうなので先生が軌道修正する。
「っとごめんね、先生!あっそうそう!お姫様たちを誘拐した悪党はこの屋敷の中に逃げた…らしいよ!多分!」
それを聞き、
「本当ですか、カエデ殿!?」
イズナが食いつくが…
「…いいや、イズナ。あくまでそう言うシナリオのようだ。」
地面を見ながらネイトはそう分析する。
「ど、どうして分かるんですか、ネイトさん?」
「見ろ、砂利道だっていうのに足跡はカエデの物だけだ。それに奴らがアリス達を連れてここに逃げ込んだにしては静かすぎる。」
「そっそう言うところまで見て分かるの、ネイト殿…!?」
「これでも軍隊にいた頃は『斥候』もやってたからな。わずかな形跡を探るのは得意なんだ。」
「お~斥候!まさに忍者ではないですか!」
「人が動けば跡は残る、その理屈を覚えておけば色々分かるものだ。」
そんな簡単な指導をしていると…
「ありゃりゃ見破られちゃった!」
とカエデがそうリアクションを取り、
「じゃあこの関門のルールを説明するね!とっても簡単だよ!」
最終関門のルール説明が始まった。
が…
「このトリックハウスの中に入って~ゴールに辿り着けばOK! でも中には沢山の試練があるから一筋縄じゃ行かないよ!」
内容は何ともシンプルな物だ。
「よっし分かりやすい!トリックハウスでも忍者屋敷でも何でもかかってこいだよ!」
それを聞きミチルは一気に駆けだそうとする。
「あ、部長…!?」
「事前に攻略方法の相談などは…!」
ツクヨとイズナが制止するも…
「大丈夫大丈夫!進めば何とかなるって!基本的に観光客向けなんだしお手軽なはずだよ!それじゃ行ってきまーす!」
軽い準備運動をしトリックハウスに向け走り出してしまった。
「あ、まだ説明の途中なのに!」
「全くそそっかしい忍者だな。行くぞ、先生。」
「了解です。」
そんな彼女を連れ戻そうとネイトと先生が走り出す。
まだトリックハウスの屋内にも入っていない。
危険はないと思っていた。
が…
カチッ
ミチルの足元から…嫌な音が聞こえ、
ゴゴゴゴ…ッ!
「…にぇ?」
何やら大きな仕掛けが作動する揺れが発生する。
「ッ!ミチル、危なッ…!」
慌てて駆け寄ろうとする先生だったが…
「戻すなよ、先生!」
「えッ!?」
ガシッ!
そんな彼を小脇に抱え…
ジィッ
Pi
V.A.T.S.を起動した…次の瞬間、
ボガアンッ!
ミチルの足元が抜けた。
ちょうどその同時刻、
「にゃはは~!次々に襲ってくる試練、それに立ち向かっていく少女達…。そして、その横には…!想定外もあったけど…なるほど…!」
その様子をドローン越しに会場の様子を愉快そうに見つめるニヤ。
(このまま彼が離脱してくれれば…!)
と、少々黒い考えも浮かんでいるとそこへ…
「ニヤ様、これは一体どういう状況ですか…!?」
顔を引き攣らせたブロンドの長髪とそれに見合った黄金色の狐の耳と尻尾を持った生徒が声をかける。
「ん~?どうかしたの、『カホ』?」
「…まずは一つ、お姫様を誘拐する役の方から『自分たちの出番はいつなのか?』とご連絡がありました。」
胃が痛むのを我慢しながらニヤにそう報告し…
「…これが本当だとしたら…今『イブキさん』ともうお一人を誘拐しているのは一体…!?」
汗をかきながら事の真相を尋ねる。
「あらまぁ…それはおかしいねぇ?」
とまるで彼女を煙に巻くような態度をとるニヤだが…
「ふざけている場合ですか…!?」
「…ごめんなさい…。」
青筋を立てるその生徒に睨まれシュンとする。
「そして二つ目です…!ツバキさんやミモリさん達からの情報から先生と忍術研究部と行動を共にしている人物はアビドスの『ネイト氏』だと断定されました…!」
「…あぁ、そうなの…。」
「つまり…もう一人の存在しないはずのお姫様役は彼の娘さんである『アリス』さんと言うこと…!これが一体どういうことになるか…お分かりですか…!?」
分かってはいたが…完全に裏が取れてしまいもう見てみぬふりが出来なくなった。
「うぅ~…こうなるはずでは…!」
いつになく顔を蒼くし頭を抱えるニヤを見て…
「…とにかく、あとは私の方で動きますので。」
そう言い残し、彼女は急いで退室していった。
「どうしよう…!そろそろ問題が顕在化してもおかしない…!あの人が彼女たちをどんな答えに導くか見たかったはずやのに…!なしてぇ~…!」
一人残されたニヤはなおも頭を抱え解決策を模索するのであった。
…そんな中、
「…『心燃ゆ 猛き闘士と 玉薬』…。」
それを物陰で見つめていた青い髪の少女がこっそりとその場を立ち去るのであった。
――――――――――――――
――――――――
―――
Michiru Side
「と言うことで忍術研究部の皆さん。今度の公演はよろしくお願いしますね~♪」
ようやくチャンスが巡ってきたんだ…って思った。
ここで活躍すれば『忍術研究部』を正式な部活にできる…そう思ってた。
それに…
「動画作成やってるんだろう?タイミングが合えば俺個人単位だが協力はするぞ。」
私たちが一緒になるきっかけになったあの人…ネイト殿とも知り合えた。
これでようやく…そう思ってたのに…
「では、行動を開始する!!!迅速に進めッ!邪魔者は処理せよ!!!行くぞ、『魑魅一座・気まぐれ流』!!!」
公演を魑魅一座に邪魔され主役になるはずだったイブキどころか…
「…すまない、人が多すぎて撃てなかった…!」
ネイト殿が大切にしているアリスまで…攫われてしまった。
それでも…私は『チャンス』だと思ってしまった…。
この騒ぎを解決し名前が売れれば…!
でも…『和楽姫』のイベント中もそれは思い知らされた。
「眠り姫って…あの修行部の部長でしょ?確かに凄いけど…そもそも『忍術研究部』ってあんまり聞いたことないような…。」
「それにしても変わった名前だね。」
誰も…私たちのことなんか少しも知らなかった。
(千載一遇のチャンス…。)
それでも…ここを乗り切れば…!
(一気にイメージアップして…堂々と正式な部活になって…!)
こんな私を慕って一緒までここまでやって来てくれた…!
(イズナやツクヨの前でしっかりと胸を張れるようになる…大事なチャンス…!)
ちゃんと二人が尊敬してくれる『部長』になるために…!
(だから私は…絶対に…!)ブスッ
Side out
「あにゃあああああああッ!!?」
「ミチル、無事かい!?」
「しぇんしぇい殿~!?一体何がってなんか刺さってるぅ~!!!」
突如襲った鋭い痛みで意識を取り戻したミチルがまず見たのは心配そうに自分を見つめる先生と自分の腹部に刺さったメーターがついた注射器だった。
そんなものが突き刺さっていたら誰でも度肝を抜くが…
ズボッ
「やっぱりキヴォトス人には効果覿面だな…。」
その注射器…スティムパックを遠慮なしに引っこ抜くネイトであった。
「ニェッニェイト殿~!?なに、そのでっかい注射器~!?」
「安心しろ、回復用の薬だ。もうどこも痛くないだろう?」
「…あれ、そう言えば…。」
ネイトの言葉を聞き改めて自分の体の様子を確かめてみるとどこも痛くないどころか注射の刺された後も塞がっていた。
「って、ここは…!?」
「大丈夫、ミチル?どうも罠が発動してここに落ちちゃったみたいなんだ。」
「ざっと高さは…10m少々ってところか。」
「…罠?」
ネイトに釣られ見上げてみると…確かに結構上の場所に自分たちがいたトリックハウスのエントランスの屋根が見える。
「ってことはやっぱりこれ忍者屋敷じゃん!!!」
「いや~…忍者屋敷でもこんな危ないのはないと思うなぁ…。」
確かに観光向けのアトラクションにしてはいささか…いやかなり物騒なトラップだが、
「俺は覚えがあるけどな、こういうの。」
ネイトはどこか懐かしさを感じていた。
「というか、なんで先生殿たちはぴんぴんしてるの!?」
ミチルが疑問に思うのも当然だ。
キヴォトス人の自分ですら気絶していたというのにキヴォトス人ではない先生とネイトが平気なのはおかしい。
「…う~…今思い出すだけでちょっとお腹の中が浮き上がるみたいだ…。」
「レジェンダリー初体験おめでとう、先生。そっちの保護のためにはそうするしかなかったんだ。」
と、何やらげんなりしている先生の足元を見てみると…
「先生殿?いつの間にそんなサポーターを?」
「あぁ、ネイトさんが付けてくれたんだよ。」
「俺の秘蔵のアーマーだ。今度使わせてやろう。」
一見すれば革製のサポーターである…『軽業師』のレジェンダリー効果付きのライトレザーアーマーだ。
先生を脇に抱えた一瞬で彼の足にこれを装着、そのままミチルを掴んで一緒に穴に飛び込んだのだ。
一応、落下そのものでミチルにもけがはなかったがやはり衝撃は伝わったのか少し意識が飛んでいた。
「それが理由ならネイト殿は?」
「これでもパラシュート部隊出身だ。これくらいの高さを生身で飛び降りるのは訳ないさ。」
「なんとぉ!?」
一方、先生に『軽業師のレザーアーマー』を貸したネイトは己のスキルを利用。
『5点着地』、空挺兵なら誰しもが身に着ける落下の衝撃から身を護るための着地法だ。
そこにPerk『Rooted』と『Adamantium Skeleton』の効果も組み合わせさらにダメージの軽減も出来た。
無傷とはいかないが『Life Giver』の効果ですでにほぼ全快している。
「…さて、さすがに上るのは無理だな。」
壁面はなだらかな打ちっぱなしのコンクリートな上スペースもあまりないためクラフトの構造物で昇る案は使えない。
「ここに落ちる生徒もいると言うことはどこかに続いているはずです。順路も続いているようですし」
先生の言う通り、目の前にはトリックハウス内部に続く道がある。
「そうだな。歩いて行けばどこかに出るだろう。」
「行こう、ミチル。二人ももうトリックハウスに入ってるからね。」
ピカッ!
Pip-Boyのライトを点灯し先に進もうとするネイトと先生。
だが…
「………。」
「…ミチル?」
「どうかしたか?」
「私が…一人で勝手に走り出したせいで…!」
ミチルがスカートの裾を掴みながら俯きそう呟いた。
「気にするな、飛び込んだのは俺達の意思だ。」
「そうだよ。ミチルのせいじゃないから大丈夫だよ。」
気にしているのだろうとそう返すネイトと先生。
そう、ここにいるのは二人がミチルを護ろうとした意志によるもの。
二人に彼女への不平不満は微塵もないが…
「わっ私のせいで…!」
その声が聞こえないミチルは震えながら涙を零し…
「私のせいで全部台無しに…!どッどうしよう…!ごめん…!ごめんなさい…っ、先生殿にネイト殿…!」
明らかにパニックになりかけ自分を責め二人に謝罪の言葉を繰り返し始める。
「私が…私がもっとちゃんと考えてたら…ッ!自分のことばかり考えないで…もっとみんなのことも考えられてたら…!」
「ミチル…。」
「イブキだけじゃない…!ネイト殿の大切なアリスまで…!早く…早く連れ戻さないと…いけないのに…!こんな…こんなドジ踏んで…!」
「………。」
「どうしよう…!どうしよう、もう…あの二人の部長なんか…!」
自分を責める言葉が止まらなくなり始めたミチル。
その時、
ポスポスッ
「ふぇ…先生殿にネイト殿…?」
「ミチル、ゆっくりでいいよ。話したいことがあったら…ちゃんと聞くからね。」
「ここには俺達三人しかいない。この際思い切りぶちまけてみろ。」
先生とネイトは彼女の肩に手を置き微笑みながら彼女の言葉を待つと伝えてくれた。
そんな二人の大人の想いを受け…
「ぐすっ…うん。」
ほんの少しだけミチルに冷静さが戻った。
「それで…さっきの『台無し』っていうのはどういうことなんだ?」
「どういうことか話せるなら…聞いてもいいかな?」
「…最初から…最初全部…私のわがままだった…。」
ネイトと先生から促されポツリポツリと話し始める。
「あの子達…イブキとアリスが誘拐された時…本当だったらすぐに通報すべきだった。」
「ミチル、それは俺やイロハも了承したことだ。これ以上大事になるのを避けるために…。」
その件はもし責任があるとすればミチルだけのものではない。
ネイトもそれを真っ先に了承したしイロハも渋々同意していた。
しかし、
「ううん…ネイト殿…。きっと…すぐに陰陽部とか百花繚乱に連絡してればたぶん…もう解決してた…。」
首を横に振り自分の選択は間違いだったと譲らないミチル。
「でもそうなったらマコトにもきっとこの事件の内容が伝わったはずだよ?」
「それでも…私が…自分のわがままを押し通さなきゃ…。」
と、かたくなに譲らないミチルを見て…
「…正式な部活になるために?」
「…ッ!…うん。」
先生は核心をついた。
「忍者のことを広めたいのは本当だよ。でも…他の子達に話したところで…笑わずに受け入れてくれるか…すごく怖い…。」
「………。」
「だから…だからこの機に…とにかく先に正式な部活になりたかった。」
「なるほど、それなら確かに箔がつくな。」
「それに推薦状なしに正式な認可がもらえるかもしれないなんて…こんなチャンスは二度とないかもしれない…。」
「だから…『和楽姫』を何としても成功させたかったんだね。」
彼女が必死になっていたのは何も『忍術研究部』が部活になる為だけではない。
「あんな忍者に純粋な憧れを持ったイズナと…何も知らなかったのに巻き込んじゃったツクヨ…。私には…あの二人に対する責任があるんだ…。」
自分を『部長』としたってついて来てくれる二人の後輩、
「そんな二人に胸を張れる…そんな先輩になりたかった…。」
そんな憧れてくれている後輩たちのためにも部活を正式に認められ立派な部長になりたかった
「最悪の場合、このまま公演が失敗して…部活になれるチャンスが無くなるならまだいい…。」
だからこそ…
「でも、私が通報を躊躇ってネイト殿も付き合わせて…今アリスとイブキは泣いてるかもしれない。辛い目に合ってるかもしれない…。」
「………。」
「全部私のせいなのに…世間に知られたらイズナもツクヨも…何もしてないのに後ろ指をさされるかもしれない。『忍術研究部』に関わってたってだけで…。」
そんな二人やアリスとイブキがつらい目に合うのが耐え切れないのだ。
「私の我儘のせいで…たくさんの人に迷惑が掛かってる…。イズナも…ツクヨも…全部知ったらきっとがっかりすると思う…。私が…怖がっていたせいで…こんなことに…。」
とその時、
「ミチル。」
「なに、ネイトど…。」
ここまで黙って聞いていたネイトに声を掛けられ顔を挙げた…次の瞬間、
ベチィンッ!!!
「イッタ~イっ!!?」
「なぁに一人で背負い込もうとしてるんだ、お前は。」
強烈なデコピンと共に呆れたような声が投げかけられた。
「ネイト殿!?今凄くまじめな話してたんだけど!?」
いきなりの暴挙に額を抑え涙目で抗議するミチルだが…
「いいから黙って聞け。俺がいたところでも忍者は存在していた。」
「…え?」
ネイトの言葉を聞きすぐに聞き入る。
「あぁそうさ、それはコミックの中だけで生で見たことは一度もないフィクションの存在だ。」
「そっそうでしょ!?アニメや漫画の話って思われて当然…!」
「…だが、俺はお前達三人を笑ったか?」
「…え?」
思い返せば初対面時に困惑こそされたものの…ネイトは自分達を一切笑わず話を聞いてくれた。
それどころか自分たちに技術を教え本当の『忍者』に一歩近づける手助けもしてくれた。
「見てみろ、そう思っていた俺だって忍者の格好をしてる。ミチルの理論なら俺だっていい道化も同然さ。」
「そんなことはないよ!だって…だってネイト殿は私達の『憧れ』でその通りの力を持ってるんだもん!私たちの『夢』に近い人だもん!」
さらにネイトの自嘲的な言葉をすぐに否定し『憧れ』で『夢』とも言い放つ。
「…そうだ、だからだ。」
「だからって何が!?」
「お前たちが真摯に『夢』を追いかけるから…俺も力を貸してるんだ。」
「ゆっ夢を…!?」
「俺はキヴォトスに来て…色んな生徒から夢を聞いてきた。」
ある生徒は『青春を送りたい』。
またある生徒は『最高のアウトローになりたい』。
更にある生徒は『キヴォトス1のゲームクリエーターになりたい』。
『宇宙戦艦を造りたい』、『最高の美食を味わいたい』、『最高の温泉を掘りたい』、『迷える人を救いたい』…ネイトの合う生徒それぞれ様々な夢を持っていた。
「俺はな…そんな夢を目指せる、そういう手助けをしたいと思っている。」
「夢を…目指せる…。」
「いいか、青春なんてな…やりたいことをやったやつが勝ちなんだよ。そして、どうせ見るんなら…夢はでっかくなければつまらないだろ?」
「そうだよ、ミチル。」
そうニヤッとしながら言い放つネイトに続き先生も声をかける。
「もし、辛いときはいつだってシャーレに来ればいい。私は君たちのそばに寄り添うのが役目なんだからね。」
「先生殿…。」
「だからさ、もっと胸を叩いて冒険しようよ。勇気を持ってね。」
ネイトとは対照的に優し気に微笑みミチルを勇気づける先生。
「でッでも…それで壁にぶつかったり傷付いたりしたら…!」
「あぁどんどんしろ。」
「えぇッ!!?」
「お前のその忍者を愛するハートが燃えてるなら後悔はしないはずさ。」
「ッ!!!」
「それに…そのときめきがあるのにじっとしてちゃ何も始まらないよ?」
ネイトの鼓舞と先生の励ましの言葉、
「俺がいれば…昨日よりも高く跳び上がれるんだろ?…だったら俺を利用しろ、ミチル。」
「ネイト殿…!」
「そう、今ここにあるチャンスを掴んでみようよ。」
「先生殿…!」
そんな二人の温かい言葉にミチルの目が潤む。
「あとは…ミチル次第だよ。さあ…勇気を出して飛び込んでみようよ。まだ涙だけ流して終われないでしょ?」
「俺は…ミチルやイズナにツクヨが自分達らしくどこまでも駆けていくのを見てみたい。」
「私も…三人が夢を元気いっぱい抱きしめてその輝きを忘れないのを見ていたいよ。」
どこまでも自分の夢を肯定し…応援してくれる二人の大人。
そんな暖かさを一身に受け
「うっ…うわああああああん!!!」
ダキィッ!
ミチルは感極まって二人に抱き着いた。
「ありがとうっ、ありがとうっ!先生殿、ネイト殿本当に…ありがとう!!!」
大粒の涙を流し二人に感謝の言葉を何度も掛けるミチル。
「わっ私、頑張る!何があってもっ絶対に立派な先輩になってッ忍者のことをみんなにっ!」
「うん、私も応援するよ。」
「俺もだ。だから…泣き止んだらちゃんと前を向くんだぞ。」
「うん!!!」
しばしそのままミチルをあやしながら泣き止むのを待つ二人。
数分後…
「…ぐすっ…もう大丈夫…。」
「そうか。」
「どういたしまして。
心にたまっていたものを吐き出し終えミチルは泣き止んだ。
その顔は…先ほどと違ってとても晴れやかになっていた。
「フフッいい顔つきになったじゃないか、部長殿。」
「そっそうかなぁ?!」
「…あ、でもちょっとメイクがよれてるよ?」
「ぬあぁッ!?今の流れから普通レディーにそんなこと言う!?」
「ホレ、ドーランならあるぞ。」
「あっありがとう…。」
とネイトから渡されたドーランで目元のメイクを軽く直し…
「さて…そろそろ進むか。」
「ですね。二人を待たせるわけにはいきませんし。」
いよいよこのトリックハウスに挑む三人。
「でもこれ、適当に進んだところで…。」
確かにこの落とし穴を見るとさらに過激なトラップがある可能性もある。
慎重に進むべきだが…
「…あれ?」
「ミチル?」
「どうかしたか?」
「この廊下…この間取り…。…私、見たことある。」
「「え?」」
何やら違和感を覚えたミチル。
その正体は…
「…もしかしてこれ…『かまぼこ突風伝』…?」
「か、かまぼこ…?」
「フィッシュケーキの突風…?」
彼女の単語の意味が分からず首を傾げる二人だが…
「分かる、全部覚えてる…!先生殿にネイト殿、こっち!」
自信満々でトリックハウス内に走っていくミチル。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「フィッシュケーキが何なんだ!?」
急いで追いかける先生とネイト。
その道中、
ドオオオオオオンッ!!!
「ゲホッゲホッ!?」
「ま、また引っ掛かっちゃいましたぁ…!」
「え、フウカにジュリ!?」
「って、ネイトさん!?」
爆発に巻き込まれすすけた給食部の二人や、
「フム…トリックハウス内ですが結構いけますわね。」
「わぁ、このイモリの黒焼きって結構おいしいね!」
「すみませぇん、この釜飯のお替りいただけますかぁ?」
「ちょっと食べ過ぎよ、アカリ。まだ他に回りたいところが…。」
「えぇ、なんで美食研究会の皆が!?」
「お前ら、ここレストランじゃないんだぞ!?」
なぜかトリックハウス内の和室で料理に舌鼓を打っている美食研究会とすれ違い…
「え、もうゴール!?」
「ほとんどしかけなかったぞ…!?」
なんと入り口でカエデに説明されたゴールにあっという間にたどり着いた。
「やっぱりこれ…『かまぼこ突風伝』の忍者屋敷そのままだ…!?」
「あぁ~…ミチル、ひょっとしてその『かまぼこ突風伝』って…。」
「忍者を題材にしたコミックか…?」
「そうだよ!っていうかこれ著作権的に大丈夫なの!?」
ミチルが言うにはこれとうり二つの忍者屋敷が登場する漫画があるらしい。
彼女はそれを愛読しているためここまでスムーズに突破できたとのこと。
「ま、まぁ観光地ってこういうタイアップってよくあるし?」
「そう言うもんだろう。細かいとこは上が何とかやってるさ。」
「うぅ~後で担当者を問い詰めないと!でもそれより…!」
と、そこへ…
「あっお疲れ様~!」
「あれ?カエデ?」
ここの担当者であるカエデがやってきた。
「も~三人とも、ルール説明が終わる前に行っちゃうから困っちゃったよ。」
「あぁ~そう言えば途中だったな、すまなかった。」
「うぅん、気にしてないよ!さて、じゃあ今更だけど改めてルール説明!このトリックハウスを抜けた人には挑戦権が与えられるの!」
と、ネイト達が途中で聞きそびれたルールの説明を再開してくれた。
「挑戦権?」
「そう挑戦権!つまり…。」
その時、周囲に先ほども見た作業服姿の生徒達が出現。
「私に勝てたら晴れてクリア!それじゃあ行っくよー!」
そう言いながら愛銃である水平二連式信号銃『ファニー・ファイアワークス』を構えるカエデだが…
「…先生?」
「えぇ。」
「ほぇ?」
ネイトと先生は短く言葉を交わし…
シュパッ!
ズドォンッ!!!
バギィンッ!!!
「あにゃあ!!?」
「すまんな、カエデ。勝負は一瞬でいいんだ。」
クイックドローでウェスタンリボルバーを引き抜き『ファニー・ファイアワークス』を弾き飛ばした。
「なっなんですとぉ!?」
「まぁこれは忍者っていうよりウェスタンなスキルだがな。」
「大丈夫かい、カエデ?」
「わ、わああッ凄い、かっこいい!今のどうやったの!?それ憶えたら私も立派なレディになれるかな!?」
驚愕するミチルに対し愛銃を弾き飛ばされたことよりもネイトの早撃ちの方に夢中なカエデ。
「どうだろうな。それより好き嫌いせずにちゃんと食べてちゃんと寝るのがレディになる一番の近道だぞ。」
「好き嫌いせずに食べて眠る…うん、分かったよ!」
「それで…私たちの勝ちってことでいいかな?」
「うん!クリアおめでとー!じゃあ私はちょっと結果報告に行ってくるね、またねー!」
そう言い、終始元気なままカエデは報告のために走り去っていってしまった。
と、そこへ…
「あっ…!ご無事、でしたか…!」
「主殿に棟梁殿、それに部長!」
「ツクヨ…!イズナ…!」
イズナ達もトリックハウスのゴールに到着、
「イズナちゃんと、どうにかここまで来たのですが…。」
「すっかり迷って永遠に出られないかと思いましたがなんとっ!ツクヨ殿が解決法を見つけてくださったんです!」
「その…部長から昔借りた漫画で、見たことあるな、と…。あの時、部長がおすすめしてくれて、よかったです…!えへへッ…!」
と、まさかの攻略法でクリアしてきたツクヨとイズナ。
「そ、それはよかった…。」
二人の言葉を聞きまずは安堵し…
「…ツクヨ、イズナ。私、二人に言っておきたいことがあって…。」
「えっと、ハイ…?」
意を決し自分の思いを打ち明けようとした。
その時だ。
ザッザッザッ…!
規律正しい足音が聞こえ始めこちらに向かって来る青い羽織を着た一団がやってきた。
「あれは…?」
公演のスタッフにしてはやけの物々しい。
「え…どうして…!?」
「ひ、百花…繚乱…!?」
「えぇ!?」
驚くミチルたちをしり目にその集団、百鬼夜行連合学院の治安維持組織『百花繚乱紛争調停委員会』の一団がネイト達を取り囲み…
「ふぅ…ことがこれ以上こじれる前に追いつくことが出来て…なによりです。」
「カホ…?」
その一団を割ってカホと呼ばれた生徒が五人の前に立つ。
「この事態については色々と皆さんにも事情をお伺いしたくはありますが…。」
一旦、その生徒は気を落ち着けるように目を閉じ…
「…とにかく公演は中止です。」
「「「「ッ!!?」」」」
「………あぁ…ッ!?」
冷徹に五人へそう告げるのであった。
我体は鉄なり、心は空なり、敵を倒すのみ
―――『服部半蔵 影の軍団』より服部半蔵