―――作家『ジョージ・オーウェル』
キヴォトスのどことも知れぬ…古めかしい建物の廃墟で埋め尽くされた場所。
その一角、崩れかけの大聖堂で…
「マダム、彼女たちを連れてきた。」
マスクをした一人の生徒と…
「分かりました。そこに整列させなさい。」
講壇に立っている赤い肌にまるで花開く寸前の蕾のような頭部にいくつもの目を持った異形の存在が向き合っていた。
異形のそれはその生徒に指示を飛ばし…
「うぅ…。」
「大丈夫…?」
「ヒュー…ヒュー…。」
「み、皆…どこぉ…?」
それの前に人数にして20人少々の生徒達が連れて来られた。
全員がキヴォトス人のようだが…その姿ははっきり言って痛々しい。
ある者は足が変形し満足に歩けずにいる。
またある者は喉を裂かれ呼吸もか細くしかできず、ある者は顔を縦断するように深い傷跡を残したり顔の部位が歪んでいる。
そして…中には両目を包帯で覆った生徒もいる。
「総員、気を付け。」
ザッ!
それでもマスクを付けた生徒の号令で彼女たちは一斉に姿勢を正す。
まるで…そうするようプログラミングされたかのような動きだ。
その異形は講壇から降りその者たちに近づき、
「まずは皆さん、よく戻ってきましたね。」
労をねぎらうように声をかける。
だが…
『………。』
そこの場にいる全員が俯き『恐怖』から身体を震わせていた。
「報告は受けています。まさか…これだけの人数がいて『人1人』仕留めることも出来ずに返り討ちに会うなんて…。」
物憂げな様子で語る異形。
最初はなんてことはない、簡単な任務のはずだった。
初撃で片が付き後は悠々と帰るはずだったが…
「『実戦テスト』として最近ようやく完成した『アレ』をまさか無人の部屋に撃ち込むだなんて…。」
その初撃は空振りに終わった。
それでも情報を仕入れ自分たちで強襲を掛けたが…
「しかも、たった一人相手に奇襲を察知され返り討ちに会い…追いすがって全員が重傷を負うだ体たらく…。」
結果は惨憺たるもの。
作戦に参加したものすべて…無事な生徒は一人としていない。
しかも、むざむざと敵の手に落ち…
「よかったですね。貴方達よりも精鋭がいて助けてもらえたのですから。」
「………。」
異形の傍らに控える自分達等及びもつかない『最精鋭』部隊まで動き救出される無様さ。
作戦の失敗も重なり、一体どのような『罰』が下されるか想像もしたくない。
「………。」
スッ
異形はそっと目の前にいた目元を覆った生徒の頬に触れる。
「ひっ…!」
その生徒は恐怖に震えるが…
「あぁ…なんて哀れで愛おしい顔なのでしょう…。」
「え…?」
「貴方は…あの方に触れられたのですね…。」
その声は普段聞くそれとは比べ物にならないほど温かさと愛おしさに溢れていた。
「マ…マダ…ム…?」
「光栄にお思いなさい…。貴方達は…『原初』の神秘に包まれたのですよ。」
困惑するその生徒をしり目に異形の語りは続く。
「貴方は…神秘の栄光に目がくらんでしまったのです…。」
「え、栄光…?」
異形はそう囁き両目を覆った生徒から手を放し…
「そして、貴方はその神秘の偉大さに無意識に膝を折ってしまった…。」
「偉大さ…。」
「貴方は神秘の息吹を付い込み声を喪ってしまったのです…。」
「ヒュー…ヒュー…?」
足を潰された生徒や喉を裂かれた生徒に触れそれぞれ声をかけていく。
普段ではありえないこの対応に顔を見合わせたり不安げな表情を浮かべる生徒たち。
そんな負傷している生徒たち一人一人に声をかけていき…
「…今回の失敗、私はあなた達を責めはしません。」
『ッ!!?』
再び講壇に立ち普段ならば考えられない『放免』の処分を下したのだった。
訳が分からず言葉を失う生徒たち。
「驚いたでしょう。確かに貴方達は失敗しました。ですが…それ以上に我が校に『恵み』を齎してくれたのです。」
「め…恵み…?」
「えぇ…『原初』の神秘との接触。それはとても有意義なことなのです。」
異形はまるで神に祈る修道女のように手を合わせ、
「キヴォトスに遍く神秘の源流…それに触れた貴方方は本当に幸運なのです…。あぁ…できるのであれば私もあの方と相見えたかった…!」
その声音はまるで恋する乙女のような響きがこもる。
「…傷付いたとは思わないことです。貴方達のそれはまさに『祝福』なのです。」
「しゅ…祝福…?」
「そう…原初の神秘からの贈り物…。それを受け取った貴方達はさらなる高みへとたどり着けるでしょう…。」
「つッ強くなれるのですか、マダム…!?」
俄かには信じられない彼女の言葉に顔を見合わせた。
「その通り、その力を用いれば我々の悲願も成就できるはずです…!」
「じ、じゃあ私達の行いは…!」
「喜びなさい、私の可愛い生徒達。虚しさの果てに…貴方達はとうとう『崇高』に指を掛けたのです…ッ!」
異形の口調はまるで感極まったように言葉を紡ぎ、
「そんな貴方達に『名』を授けましょう…!」
「名前…!?部隊名をいただけるのですか、マダム…ッ!!?」
「えぇ…!今作戦に参加した子たちは今後こう名乗りなさい…!『スティグマフォース』…その身に浴した神秘に相応しい名前でしょう…?!」
任務に失敗したというのにこの場においては非常に名誉ある『部隊名』を与えるのであった。
「あぁそんな…!こんな何もない私達に…!」
「マダム、本当にありがとうございます…!」
「『スティグマフォース』、その名に恥じぬ働きを必ず…!」
それを聞いた生徒達は目に涙を浮かべ跪き忠誠を誓うように口々に感謝の言葉を述べる。
「さぁ、私の可愛い生徒達…!『悲願』を果たすために今後の働きを期待しますよ…!」
異形はその言葉を浴びるように手を広げる動作をする。
だが…その目は決して目の前の生徒達を見ていない。
例えるなら…まるで熱に浮かされているような蕩けたものだった。
「………。」
傍らに控えたマスクの生徒はどこか達観した目でその光景を見つめ…
「vanitas vanitatum et omnia vanitas…。」
まるで刷り込まれたかのように呟くのであった。
――――――――――――――
――――――――
―――
『連邦安全保障理事会』でのD.U.全土を巻き込んだ大騒動で瀕死の重傷を負い奇跡の生存。
そこから二週間の療養と二日間のゲヘナと百鬼夜行の交流会の動向を経てアビドスに帰還したネイト。
アビドス生徒達はもちろん住民たちも彼の帰りを温かく出迎えてくれた。
そして、この日…
「皆、おはよう。」
『おはようございます!!!』
装備を整えた彼が同じく装備を整えたアビドス生や少数メンバーのゲヘナ風紀委員会の前に立ち挨拶をし、
「しばらく留守にしてしまってすまなかったが恒例の合同訓練を始める。」
しばらくぶりのネイト主催の訓練開催を宣言した。
「アニキ~、腕は鈍ってねぇだろうなぁ!」
「今日は一本取らせてもらうぜ~!」
『ハハハハハ…ッ!』
と、血の気の多い生徒達からは久々の復帰を茶化すような声と笑い声が上がる。
口ではそう言っているが全員の顔は晴れやかでネイトの復帰を祝福してくれていることは一目で分かる。
「安心しろ。十二分にリフレッシュしてきたから今日もバリバリだ。」
そんな声に不敵に笑いながら返すネイト。
「よぉし、それじゃあ今日の訓練で俺の指揮する部隊から一勝でももぎ取れたチームには好きな物を奢ってやる。」
さらに自信を漲らせ太っ腹な宣言をすると、
「オッ言ったな!?よっしゃー、俄然やる気が出てきたぜ!」
「アタシらだって遊んでたわけじゃねぇかんな!一泡吹かせてやるぜ、オジキ!」
「あとでやっぱなしとか言うのは無しだぞ、親分!」
さらに生徒達は湧き上がり、
「うへ~ネイトさんったら復帰早々言ってくれるじゃ~ん。おじさん気合入れちゃうよ~?」
「ん…私も絶対に勝つ。訓練終わったらネイトさんになに奢ってもらおうかな。」
「あらあら~♪病み上がりだからって私達は手加減しませんよ、ネイトさ~ん♠」
「よぉ~し、それじゃとびっきり美味しいのご馳走してもらうんだから…!」
「皆さん、あんまり前のめりになりすぎて怪我をしないようにしてくださいね~!」
ホシノ達アビドス生徒会の面々も気合を入れる。
「総員、静粛に。それから今日は他校からの参加者も来ている。」
そんな大興奮の生徒達を落ち着かせ…
「それじゃ壇上に来てくれ。」
ネイトは今日の訓練に参加する生徒を紹介する。
「百鬼夜行連合学院、『修行部』の『春日ツバキ』に『水羽ミモリ』に『勇美カエデ』。」
「ふぁ~…よろしく~…。」
「皆さん、よろしくお願いします。」
「初めましてぇ~!」
「『忍術研究部』、『千鳥ミチル』、『大野ツクヨ』、『久田イズナ』だ。」
「ドーモ、アビドスノ=ミナサン。ミチルです…!」
「き、今日はよろしく、お願いします…!」
「棟梁殿の強者の方々の胸をお借りしに来ました!」
「先日の百鬼夜行訪問の際に知り合ったそこを代表する実力者だ。全員気を引き締めるように。」
今日の訓練参加のために遠征してきてくれた6人を紹介する。
『よろしくお願いしまぁす!!!』
ネイト直々に『実力者』と評され、アビドス生達も気合を入れて挨拶をする。
「へぇ~百鬼夜行とはまた遠くから来てくれたねぇ。」
「それもネイトさんが『実力者』って言ってた。ちょっと楽しみ。」
「よぉし、じゃあ基礎トレーニング開始後はスケジュールに沿って模擬戦を行う!気を引き締めていくぞ!」
こうして始まったネイト復帰最初の合同訓練。
模擬訓練ではネイトはツバキと忍術研究部の三人と組み、
「ツバキ、前線に出て陽動を掛けろ!」
「りょ―かーい、ネイトさん。」
ライオットシールドを持ったツバキを前衛に立て敵の動きを吸引。
「ほらほら~こっちだよ~。」
シュンシュンッ!
チュゥンチュィンッ!
「んだよアイツ!?分かってるみてぇに避けやがる!?」
「あの盾硬すぎんだろ!?」
「…くぅ~…すぅ~…。」
『しかも寝てるぅー!!?』
同じ盾を使うホシノとは全く違う戦闘スタイルに翻弄されるアビドス生チーム。
「ミチル、イズナっ!」
「「承知、棟梁殿!!!」
さらにネイトは指示を飛ばし、
「行くよ、イズナ!」
「承知です、部長!」
「んなッ!?屋根の上!?」
「マジもんの忍者かよ!?」
ツバキが部隊の視線を釘付けにしている隙にミチルとイズナが屋根を飛び渡り部隊の頭上に進出、
「ミチル流忍法『火遁・龍息の術』!…のフリ!!!」
ボファンッ!!!
「秘儀『爆裂手裏剣』…のフリですッ!!!」
シュボボボボォン
それぞれ模擬弾と模擬爆弾であるがそれぞれの得意技を浴びせかける。
「のわっぷぅッ!!?あ、アニキの奴いったい何連れてきやがった!!?」
「掘り出しモンにしてももっと大人しいの連れて来いよ!!?」
今までネイトの戦闘スタイルは苛烈さを抜きにすれば非常に『正統派』なそれだ。
無論、自分たちもそう言うベクトルの訓練を続けてきている。
が、ネイトが連れてきた百鬼夜行の生徒達の戦い方は『曲芸』と言ってもいい。
どちらかと言えば…『便利屋68』の戦闘スタイルをよりトリッキーにしたような感じである。
まともに受け止めるにはかなり癖があり生半可ではない。
しかも厄介なのは…
「ツクヨ、現在地は?」
「そ、そろそろ、指示された場所に…!」
「よし、イズナ。煙幕だ。」
「承知しました、棟梁殿!」
「ミチルは一時後退。ツバキと合流し一気に仕掛けるぞ。」
「ほい来た、ネイト殿!」
「はいは~い。」
そんな正統派とは言えないトリックスターたちをネイトは完全に活かしきる指揮だ。
押しては引かれ退いては押し込んでくる。
いつものような『型』が無いために対応も難しい。
「秘儀『煙幕手裏剣』ッ!!!」
ボシュウウウッ!!!
再び頭上からイズナが煙幕を発生させる手裏剣を投擲。
「くそ、ちょこまかと!!!」
「だったらセオリー無視して俺らも暴れたやらぁ!」
生徒達も厄介なイズナを排除しようと頭上に銃口を向ける。
だが、
「さ、させません…!」
バララララ…!
「のぉわッ!?ど、ドラム缶!!?」
「裏取り!?いつの間に!!?」
ドラム缶に化け気配を殺し単独で突出しアビドス生部隊の後背をとったツクヨが得物を連射しそれをけん制。
「ツクヨ、やるぅ!」
「今だ、ツバキ!」
「うん…!」
それを合図にツバキの背後にネイトとミチルが突撃、
「やぁ。」
パララララ…ッ!!!
「のわぁっ!?」
「隙ありぃ!」
ズドォン!!!
「あぁくそっ!?」
「ブランクは感じるか、諸君!?」
パラララッ!
「畜生、前より鋭くなってやがるぅ!!?」
そのまま押し切る形で三人で残存のアビドス生部隊を打倒していき…
《訓練終了、勝者『百鬼夜行』。》
ネイト率いる百鬼夜行の部隊の勝利となった。
「ぃやったー!!!私達の勝ちだー!!!」
「あ、あのアビドスに、勝っちゃ…った…!?」
「忍術研究部の面目躍如です、ニンニン!」
『強者』と名高いアビドス生徒に勝利しはしゃぐ忍術研究部の一方、
「…でも、魑魅一座とは比べ物にならない位強い…!」
1人も撃破判定を出さずに勝利こそしたがツバキは腕と膝が震えていることに気付く。
銃の命中精度に連携、その全てが普段相手にしている不良や魑魅一座の一派とは比べ物にならないほどの高練度。
ともすれば百花繚乱の部隊であっても勝利は危ういと感じるほどだ。
ネイトの指揮でなければ勝敗は逆になっていたことは容易に分かる。
しかも、彼女たちはごくごく一般的な生徒らしい。
「………。」
「ま、ざっとこんなものか。」
ツバキはそんな生徒たち相手に自身の調子を確かめるように腕を回しながら感想を独り言ちているネイトを見る。
噂は聞いていた。
ヘイローもないのに前線に打って出て度重なる勝利を刻んできたアビドスの『英雄』。
しかも、元不良やヘルメット団を自分ですら脅威に感じるほどに鍛え上げた手腕と初めて組んだ自分たちと組み十全に運用できる指揮能力。
「…うん、これはとてもいい修行になるね。」
先生とはまた違う、手本を示し引っ張り上げる『先達』としてのその姿に彼女は確かな手ごたえを感じるのであった。
「よし反省会に向かうぞ。全員起立。」
『うぃ~っす…。』
調子を確かめ終えネイトは相手のアビドス生達に声をかけ立ち上がらせ総評に向おうとすると、
「棟梁殿、イズナ達はまだまだやれますよ!」
「そうだよ、ネイト殿!忍術研究部の力はこんなもんじゃないんだからね!」
「私も自分の、隠れ蓑の術の技術を、試してみたいです…!」
忍術研究部の三人が元気にネイトの腕を取り二回目の模擬戦を求め…
「ネイトさん、私ももう一回アビドスの力を見てみたい。」
ツバキも『修行部』としてさらなる高みを求め再戦を希望する。
「…ほぉ、いい兆候だ。」
そんな積極的な四人を見てネイトも浅く笑い…
「それならとびっきりの相手を用意しよう。」
『とびっきり?』
「アヤネ・セリカ・カレン・メリィ・ジョウジ。百鬼夜行の強者たちからのご指名だ。次の訓練場に立て。」
彼女たちが満足できるであろうメンバーを呼び寄せ…
「了解しました。胸をお借りするつもりで行きますね。」
「分かったわ。『コーディナリー』はなしでやったげる。」
「……お客さんでも手加減しないよ。」
「うっしゃ、久々に勝たせてもらうぜ!」
「快気祝いはいただくぞ、親分!」
先程よりも明らかに立ち振る舞いが整然とし重装備の面々が立ち上がる。
「え…えぇっと…ネイト殿?あの人たちは…?」
「紹介しよう。奥空アヤネ・黒見セリカ・蓮本カレン・駒留メリィ・間宮ジョウジ、アビドスの最精鋭部隊『セタス部隊』のメンバーだ。」
「………えぇ~ッ!!?」
「前置きしとくが…魑魅一座が全員束になって襲い掛かっても倒しきれる戦力だ。腹をくくれよ。」
「ネ、ネイト殿~!?これはいくらなんでも重たすぎるよ~!?」」
まさかのアビドス最強の部隊の登場に愕然するしかなかった。
「あ~ぁ、ありゃ大変なことになるぜ…。」
「どっちに賭ける?俺ゃ親分にジュース一本だ。」
「乗ったぜ。アタシは姐さんにポテチを…。」
そんなミチルたちを反省会会場に向かいながら横目に見て半分同情し賭け事に興じるアビドス生達。
すると、
「お疲れ様です、皆さん。」
「飲み物を持ってきたよ~!」
彼ら彼女らの元にクーラーボックスを抱えたミモリやカエデがやってきた。
「あっどうも。えぇっと…。」
アビドス生の一人がミモリが持ってきたクーラーボックスから飲み物を選ぼうとすると…
「あっスポーツドリンクですね。」
「え…!?あ、あぁどうも…。」
「貴方は…ビタミンドリンクをどうぞ。」
「さ、サンキューっす。」
「どうぞ、濡れタオルですよ。」
「ありがとう…。」
ミモリが生徒と達の顔を見ただけでそのものが求めているものを次々に手渡していく。
困惑しながらもぴったりな物を渡されて受け取っていっていると…
「ほらミチル、しっかりしろ。」
「そうですよ、部長!強敵だからこそ忍者は燃えるのです!」
「そ、それにネイトさんも、一緒ですから、何とかなりますよ…!」
「アビドス最精鋭部隊…いい修行になりそう。」
「なんでアンタ達はそんなにやる気満々なのさ~!?」」
ミチル以外何故かやる気満々のネイト一行もやってきたのを見て、
「あッ!ネイトさんにツバキちゃんに忍術研究部の皆さん、お疲れ様です!何か飲みますか?!」
ミモリが華やいだ笑顔を浮かべネイト達の元に掛けていく。
「…あの子、心でも読めんの?」
「凄いでしょ~?ミモリ先輩って顔見ただけでその人が何してほしいか分かっちゃうの!」
「…それはすごいな…!」
「女神だ、女神がいるぜ…。」
そんな献身的な彼女を見て感激するアビドス生達なのであった。
ちなみに次の模擬戦は…
「……見つけた。」
ズドォンッ!!!
「のわぁ~!?どこぉ、どこから撃って来てるのぉ!?」
「あ、アビドスの忍者はここまでとは!?」
「あぁッ!?やられちゃいましたぁ~!?」
まず、ミチルたちはカレンの狙撃で釘づけにされツクヨが撃破判定を喰らい…
「……皆、忍術研究部の人たちの足を止めブーッ!え…!?」
「スナイパー制圧、行くぞ!」
「今の一瞬で!?」
それをカウンタースナイプでネイトが制圧、
「カレンがやられたですって!?」
「親分だな!?この距離じゃ腕はどっこいってことか!」
「セリカちゃん、カレンちゃんの代理で狙撃を!メリィちゃんとジョウジさんは私と一緒に進撃します!」
「ラジャ!」
「イズナにミチル、高所から別動隊で進攻!ツバキは俺と一緒に前線の維持だ!」
「う、うん!」
「承知しました!」
「頑張るよ~。」
互いに一人ずつ撃破され素早く陣形を変更、
「だぁ~くそ!ホシノの姉御よりやりずれぇ!」
「弱音吐くんじゃねぇ、メリって痛ったぁ!?」
「や、やった一人倒しっむぎゃぁ!?」
「やってくれるじゃない!!!」
両陣営互いに損耗を出しつつ正面切っての戦闘となり大混戦となるのであった。
そんな忍術研究部と修行部も参加した合同訓練から数時間後、
「すまないな、マスター。大勢で押しかけて。」
「なんの。新たな常連を確保するチャンスを逃すわけにはいきませんからな。」
訓練を終えたネイトは『Cafe Franklin』を訪れていた。
別の席では…
「おぉ~ここが棟梁殿の行きつけの茶屋…!」
「百夜堂とは、また違う雰囲気ですね…!」
「な、なんだか緊張する~…!」
「ふわぁ~…ここならとってもぐっすり眠れそ~…。」
「コラ、ツバキちゃん。…でも、新鮮な気分ですね。」
「なんだかオトナ~って感じ~…!」
百鬼夜行ではなかなか見られない純喫茶のカフェに興味津々なミチルたちもいる。
さらに、
「イツツ…全く手加減してもいいじゃないのよ…。」
「アハハ…でも、それだと訓練にならないでしょ、セリカちゃん?」
「しっかし終わってみれば…。」
「結局一本取れんかったぜ…。」
「……あ、ハーブティがある。これにしようかな…」
ネイト達と熱戦を繰り広げたアヤネ率いるセタス部隊のメンバーに、
「うへぇ~ホントに病み上がりなのかな、あの人…。」
「ん…むしろ動きの精度が上がってるような気がする。」
「私達ももっともっと頑張らなくちゃですね♠」
ホシノ・シロコ・ノノミのアビドス生徒会メンバーもいる。
復帰初の合同訓練、ネイトのチームは負けることはなかった。
が、それでもやはりセタス部隊相手にはあと一歩のところまで追いつめられ最後はネイトかせいぜい一人くらいしか生き残れずほぼ全滅と言ってもいい結果に。
と言うことで敢闘賞としてネイトが『Cafe Franklin』のティータイムをご馳走することになった。
「いやはや…子供の成長は早いものだ…。」
「フフッ何を言いますか。貴方だってますます精強になられているというのに。
賑やかな生徒達の様子を微笑ましそうに眺めるネイトとマスター。
「改めて…お帰りなさい、ネイトさん。今後とも『Cafe Franklin』をどうかご贔屓に。」
「ゲヘナのコーヒーや百鬼夜行の緑茶も確かに旨かったが…マスターのコーヒーとガトーショコラが恋しくてな。」
「畏まりました。すぐにご用意を。」
「他の皆も遠慮するなよ~。」
『はぁ~い!』
こうして、ネイトが戻ってきて初の合同訓練は穏やかな午後のひとときを経て過ぎていくのであった。
ちなみに…
「ふむふむ…ほぉほぉ…中々面白いやないですか。」
「如何しましょう、ニヤ様?」
「…一考の余地あり、だね。アビドス大オアシスの分譲リゾート化計画、百鬼夜行も一枚かましてもらいましょう♪」
ミチルたちを通じてホシノ考案のアビドス大オアシスのリゾート化計画がニヤたち陰陽部に届けられたのはまた別の話である。
リーダーとボスの違いは何かと問われれば、リーダーの仕事は開かれているが、ボスの仕事は隠されている。リーダーは導くが、ボスは強いる。
―――第26代大統領『セオドア・ルーズベルト』