ヒナタを通じて齎されたシスターフッドからのからの警備コンサルタントの依頼。
ホシノ達からの承認を受け翌日には依頼を受託をシスターフッドに通告。
そこからさらに一日経ち…場所はトリニティ、シスターフッドが保有するヘリポート。
ドドドドドドドッ!!!
「いらっしゃいましたね。」
そこでサクラコ筆頭にシスターフッドのシスターたちが待機し着陸態勢に入ったベルチバードに視線を向けていた。
ゆっくりとベルチバードは高度を落とし地面に重厚な音を立てて着陸。
ガラッ
再度のハッチが開き、
「サクラコ、出迎え感謝する。」
「ネイトさん、この度は私共にお力をお貸しいただき感謝します。」
ダッフルバックを担いだネイトが降り立ちサクラコと握手を交わす。
そして、今回やってきたのはネイトだけではない。
「そして、アビドスの皆さんもようこそトリニティへ。」
「紹介しよう。蓮本カレンと鋸峰シホ、今回俺のコンサルタントの補助をしてくれる生徒だ。」
「……初めまして、アビドス高校1年生の蓮本カレンです。」
「同じく、アビドス高校1年生の鋸峰シホです。しばらくの間ご厄介になります。」
アビドス随一のスナイパーであるカレンと最高の衛生兵であるシホも今回同行してくれた。
「今日から予備日を含め12日間、よろしく頼む。」
「こちらこそ、重ね重ねよろしくお願いいたします。では宿舎にご案内いたしますね。」
挨拶も済みサクラコたちはトリニティ滞在中のネイト達の宿舎に案内する。
カレンとシホはシスターフッドが所有する寄宿舎の一室を借り受けることに。
一方、ネイトは…
「…ネイトさん、本当にこちらでよろしいのですか?」
シスターフッドが保有する庭園の端…そこにある古びた石造りの納屋の前に立っていた。
サクラコはとても困惑している表情を浮かべているが、
「あぁ、屋根と壁…これだけ揃ってれば十分じゃないか。」
ネイトは満足げにその納屋を眺めている。
「あの…市街地にホテルをご用意…。」
確かにホテルならば環境もよく過ごしやすいだろうが…
「いや、ここでいい。何分重要な調印式に関する依頼だ。情報漏洩のリスクは極力下げたいからな。」
ここはトリニティ、どこの誰が聞き耳を立てているか分からない。
今回は依頼の特性上、余りこちらが保有する情報が外部に漏れるのは好ましくない上…『お客』が来ないとも限らない。
そこでこの納屋だ。
ここはシスターフッドが保有する敷地内かつこの納屋は長年あまり使われてこなかったとのこと。
おいそれと忍び込むことはできない上諜報用の設備を設置するメリットはこれまでない
環境こそ悪いが…防諜という観点から見ればネイトからすればかなりの良物件だ。
「というわけだから少し掃除させて使わせてもらう。」
「承知しました。でしたらせめてお手伝いをさせてください。」
「分かった。サクラコの厚意に甘えさせてもらおう。」
というわけで早速納屋を開け中を見てみると…
「…そりゃ使われてないらしいから埃だらけか。」
錆びてはいるがおそらく庭の手入れ用の道具などがあるが使われなくなって久しいようで少々黴っぽい匂いと埃がネイトを出迎えた。
「ま、連邦の廃墟を掃除するよりもマシだな。」
先ほど言ったように屋根と壁がしっかりしてるだけ連邦の廃墟と比べてもかなり上位に入る快適さだ。
上着を脱ぎ袖をめくって早速掃除に取り掛かるネイト。
(Pip-Boyの収納機能はこういうところでも役に立つな…。)
雑多なものはPip-Boyに一時収納し纏めて運び出し、
「よいしょっと…!」
空になった棚を外に運んでスペースを確保していく。
「ネイトさ~ん、お手伝いに来ました~。」
「……それに援軍も来てくれたよ。」
「おぉありがとう、二人とも。」
しばらくすると荷物を置いてきたシホとカレンも手伝いに来てくれた。
さらに、
「よぉアニキっ!シスターサクラコの命で片付けの助太刀に来やしたよ!」
「物好きなですね。アニキらしいっちゃらしいですけど。」
二人のシスターフッドの生徒も手伝いに来てくれた。
二人ともサングラスをかけやけにネイトにフランクな態度だが…
「『レイナ』に『カノン』、七転八倒団の特攻服からシスター服が中々様になってるじゃないか。」
何を隠そうこの二人はシスターフッドに厄介になっている不良グループ『七転八倒団』のメンバーなのだ。
「へへへっ、少しはアタシもシスターっぽくなったっすか?」
『火向レイナ』、七転八倒団のまとめ役を張っている生徒でビナー討伐作戦時にはシロコと共にバイクで戦場を駆け抜けた経歴を持っている。
「お陰様で日々主に尽くす有意義な日々を送らせてもらってますよ。」
『轟カノン』、同じく七転八倒団所属で彼女もレンと共にビナー討伐作戦に参加している。
元から歌が好きで現在はシスターフッドの聖歌隊に所属しているとのことだ。
ネイトと顔見知りと言うことで手伝いに遣わされたのだろう。
「5人もいればすぐに終わりますね。」
「……早く終わらせてネイトさんのお部屋を作ってあげよう。」
「よし、じゃあ早く終わらせて仕事に入ろう。」
と言うことで5人となり納屋の清掃の速度は加速していく。
「ふぃ~…こんなのここに来る前じゃやろうとも思わなかったなぁ…。」
「そもそもアニキに会う前はバラック暮らしだったから気に掛ける暇もなかったしな、うちら。」
「……私もアビドスに来る前は野宿生活だったから似たような物だよ。」
「アハハ…なんだか私も似たような経歴なので共通点多いですね。」
「おい…サラッと女子高生が話していい経験じゃないぞ。」
そんなお喋りもしつつ作業は進んでいく。
すると、
「あ、そうそう。アニキ、知ってるっすか?」
「知ってるって何がだ?」
「トリニティってこの前試験があったんすけどね。」
レイナがトリニティでの話題を出してきた。
「そりゃ学校だからテストの一つや二つあるだろう。アビドスでもやってるし。」
忘れられがちだが…キヴォトスは学園都市だ。
各学校ごとにテストを行うことが義務付けられておりキヴォトス全域の共通テストというのも存在している。
「……私は数学が赤点ギリギリだったなぁ…。」
「ちょ、カレン?スナイパーがそれでいいのかい…?」
「感覚派ですから、カレンちゃんは。」
「そういうシホはどうだったんだ?」
「私は人並な成績でしたよ。」
(全教科100点取ったどころか問題作ったガッツィーに出題ミス指摘するのが人並とは言えんだろ、シホ…。)
そんなアビドスの事情を思い出しつつ、
「そう言う二人はどうだったんだ?」
「はっはっはっ!赤点は全教科ギリギリ回避してやりましたぜ!」
「少しサクラコ様にお説教されちゃいましたけどね…。」
レイナとカノンも試験自体は何とか突破できたようで…
「ってそうじゃなくて…ヒフミちゃんの事っすよ。」
本題であるネイトのトリニティにおける数少ない顔見知りであるP.P.…『阿慈谷ヒフミ』の話になる。
「P.P.がどうかしたのか?」
「いやね、あの子ってモモフレンズの熱狂的ファンでしょ?」
「それはもうここにいるメンツだと共通認識だと思うが?」
「でね、モモフレンズって結構ゲリライベントを開催してることでも有名で…。」
「あぁ~モモッターでいきなり予告してるのを見たことありますね。」
「…問題はそのゲリライベント…それも結構な規模の奴がテスト当日に開催されちゃったんすよ。」
「………おい、ちょっと待て。まさかと思うが…。」
話の流れから嫌な予感しかしないが…
「そのまさかっす…。ヒフミちゃん、テストほっぽってそのイベントに行っちゃって…。」
「…oh。」
当然のことと言わんばかりにヒフミはテストをすっぽかしたのだった。
「しかもイベントは二日間あってその両方に出ちゃって…。」
「……トリニティのテストって…欠席してても点数貰えるの?」
「んなテストあったらアタシも受けてみたいよ、カレン…。」
「とまぁそう言うわけで…あの子補修を受けることになったみたいっす。」
「それはその…なんと言ったらいいか…。」
「P.P.…。」
言葉を失うアビドス勢の三人。
海千山千のネイトをして『偏愛主義者』と呼ばれるだけはある生徒だ。
モモフレンズ…いや、ペロロに関する行動力は想像の斜め上を行っている。
…だが、
「…んじゃあアタシからもひとつニュースがありますよ。」
「…あぁ~カノン?ひょっとしてそれも俺の顔見知りか?」
「お察しがいいようで…。」
ネイトを驚かすニュースはこれだけではない。
「ほら…あたしって聖歌隊だから朝のミサってほぼ毎回出るじゃないですか?」
「そりゃミサには聖歌はつきものだからな。」
「でね…朝の準備してたら見ちゃったんですよ…。」
「見ちゃった…って何を?」
もう何となくネイトは察しがついているが…
「その…スク水姿でほっつき歩くハナコちゃんを…。」
「…Ha,Pかぁ…。」
やはりという人物名にガックシ肩を落とすネイト。
「……ちなみにトリニティって…。」
「いやっダメだからな!?いくら学校指定でもスク水姿で表歩いちゃ!!!」
「ここんとこは落ち着いてたようっすけど…。」
「…あぁ~俺のせいでもあるかもな…。」
ちなみにこのかつてのようなハナコの奇行にはネイトにも心当たりがある。
確かにヒフミたちといった素の状態でも接することが出来る友達ができハナコはかなり安定していた。
が、やはりそこはトリニティ。
どうしてもストレスがたまることはある。
そんな時はよくハナコはネイトに連絡を取り猥談混じりに『ガス抜き』をしている。
お喋りの延長で彼女もこちらの都合は尊重してくれるのでネイトも付き合っている。
が、ネイトは先日長期間にわたり外部と連絡が取れない状況になっていた。
ガス抜きができない+ネイトを心配する心労が…彼女にかつての奇行を呼び起こしてしまったのだろう。
「そ、それでハナコさんは…?」
「まぁ…正義実現委員会に連行されてたわな…。」
「…今度面会に行ってやるか。」
まさか顔見知りが二人も問題行動を起こすとはネイトも…
「………いや、ハナコもだがヒフミもエキセントリックなところあったな…。」
初対面からぶっ飛んだことを思い出しその考えは吹き飛ぶのだった。
そして、大概こういう悪い事は…
「あ、面会行くんならもう一人会ってやった方がいいっすよ。」
「…なんだって?」
畳かかって襲い掛かってくるものだ。
「まぁ事情があったんでしょうがね…アズサもちょっとやらかしましてね…。」
「B.B.E…お前もか…。」
B.B.E.…白洲アズサも問題を起こしたようだ。
「校内でちょっとした暴力沙汰がありやしてね。まぁトリニティでもそんな珍しい事じゃないんすが…その後がね…。」
「……アズサ先輩、何やったの?」
元よりあの四人の中ではかなりの武闘派…というよりかなりの戦闘能力を持つ彼女だが…
「まぁ騒動があったら正義実現委員会が出動するんだけど…。」
「アイツの立て籠もった弾薬庫にあった1tもある教材用に保管してあった催涙ガス使ってそれはもう大暴れしたんだよ…。」
「…1tのガスって俺でもそうそう聞いたことないぞ…?!」
その戦闘能力に違わぬ大立ち回りをやらかしたようだ。
しかも相手は正義実現委員会、これを見ても彼女の戦闘能力がうかがえるだろう。
「いやぁ…うち等も清掃に駆り出されたけど大変だったぁ…。」
「ガスだけじゃなくてブービートラップやらIEDの残骸があちこち散らばってましたね…。」
「そ、その後は…?」
「まぁ正実の主力がいなかったのもあって粘ってたけど…。」
「Ha,Pと一緒に牢屋にぶち込まれた…と。」
何とも顔見知りが悉く問題行動を起こしたと来たものだ。
元気があるのはいい事だが…学生の本文は忘れないでもらいたい。
「ついでに言うとタイミング悪くテストも受けれなかったみたいで…。」
「…でも、いきなり退学って訳でもないんだろ?」
キヴォトスにおいて『退学』と言う物は非常に重たい処分だ。
学籍=国籍と言ってもいい場所で学籍をはく奪されると言うことは『一切の権利を失う』と言っても過言ではない。
いかに問題児でも容易く退学という処分は下されない。
あの『災厄の狐』狐坂ワカモも百鬼夜行では『停学』というのだからそのハードルの高さは伺えるだろう。
「そらまぁアタシ等みたいなのでも学生やれてたからね。」
「そう言う問題児専用の部活ってのがあるんです。『補習授業部』っていうんですけど。」
「……まんまだね。」
「ともあれ…お三方ともまだチャンスがあるようでよかったです。」
と、ここまで話を聞いてネイトは思い至る。
「…待て、HExecutioner…コハルはどうなんだ?」
これだけ顔見知りに色々あっているのだ。
残る一人、コハルもひょっとして…と思うのは人情だろう。
「コハルちゃんっすか?いやぁこれと言って…。」
「新米とはいえ正義実現委員会ですから問題行動云々は聞きませんね…。」
「ほぉ…それはよかった。」
少し俗っぽい所はあるがやはりそこは治安を任せられた正義実現委員会といったところだろう。
レイナとカノンからそれを聞けてネイトは胸をなでおろすのだった。
「分かった。予備日にでも顔を見せに行ってみるさ。さぁ、片付けをさっさと終わらせてしまおう。」
確かに三人は心配だが自分たちは役目をもってここにきている。
気を取り直しネイトの宿舎である納屋の掃除を続ける5人。
「さぁて…あらかた片付いてきたな。」
「あとは奥にある物を出したらおしまいですね。」
「……ネイトさん、夜に遊びに来てもいい?」
「遊びにってなにもそう言うの無いぞ、カレン?」
「あ、じゃあ私も…いいですか?」
「シホ、君もか?まぁ寄宿舎の門限
そんな会話をカレンとシホと交わしていると…
「なんじゃこりゃあああ!?」
「ッ!?レイナ、どうした!?」
納屋の中からレイナの叫び声が聞こえ慌てて中に飛び込む。
そこにあったものを見ると…
「なぁ!?」
「なっなんですか、これ…!?」
「……おっきい…!」
ネイト達も驚きのあまり言葉を失った。
が、無理もない。
「アニキ、これ…!?」
「大砲…ですよね…!?」
「こんなのを保管してたのか…!?」
そこにあったのは砲車に載せられ表面こそ薄く赤錆に覆われているが重厚な方針を持つ大砲だった。
それもネイト達が普段目にするようなものでもない。
「こ、これ砲弾…ですよね…?!」
「わぁ…映画や本の中でしか見たことないですよ…!?」
「大きさからして…12ポンド砲といったところか…?」
シホたちが生まれる遥か以前にその役目を終え姿を消したはずの前装式のカノン砲である。
「こんなのここにしまってたのか…!?」
「たぶん納屋にしまっていつでも使えるようにしてたんだろうが…。」
「……忘れられて今まで…ここにあったってこと?」
流石は長い歴史のあるトリニティといえるまさかの掘り出し物に固まる5人。
「…で、どうするんすか…?」
「見たところ砲車もボロボロで動かした途端大砲が落ちそうだ。」
「それじゃあみんなで抱えて出しますか…?」
ともあれこれはあまりにも邪魔すぎる。
「いや、いくらキヴォトス人4人いてもこれはちょっときついぞ…?」
だが、相手は旧式の大砲。
この型式の物は実に1t近い重量を誇る。
「ちょっと待て。俺もパワーアーマー着て手伝…。」
これは全員にでやらねばならないとネイトがPip-Boyを操作しようとすると…
「ご、ごめんください。」
「ん?あぁヒナタ。」
「「お疲れ様です、シスターヒナタ!」」
入口の方からおずおずとヒナタが声をかけてきた。
「どうかしたか?」
「さ、サクラコ様から皆さんに差し入れと寝具やランプをお貸しするように言われまして…。こ、こちらをおつかいください。」
「あぁ、ありがとう。助かるよ、ヒナタ。」
「そ、それでどうなさったんですか?」
ネイトに道具を差し出し何があったか尋ねる。
「それが中に大砲があってな…。」
と、ネイトが状況を説明すると…
「な、なるほど…。ち、ちょっと見せてもらえますか?」
ヒナタは納屋の中に入る。
「わぁ…本当に大砲がこんなところに…。」
「シスターヒナタ、どうするんすか?」
「わ、私にお任せください。そちらの麻袋をとってもらえますか?」
「これですか?どうぞ。」
大砲の大きさを確かめシホから麻袋を受け取りそれを大砲にかけ…
「それじゃあ…。」
それを抱え込んだ。
「……え?」
「お、お一人で…!?」
「ヒナタ、それはさすがに…。」
ネイト達三人が手を貸そうと動き出すよりも早く…
「よいしょっと…。」
ググッ
「え…持ち上がった…!?」
「お、おいおい…小型車両くらいはある代物だぞ…!?」
「……凄い力持ち…!」
少し力を込めたらその大重量を感じさせないほど軽やかに12ポンド砲が持ち上がったではないか。
決してあの大砲が張りぼてなどではなく、その証拠に持ち上げた途端にヒナタの足が少し地面に沈んだことから半端ではない重量と言うことは確実だ。
初対面時軽々と彼女にのしかかるものを押しのけたことからヒナタは並の力持ちではないとは察していたがこれはさすがのネイトも想定以上の怪力である。
驚く三人をしり目に…
「おぉ~流石はシスターヒナタ…。」
「アニキのパワーアーマーも顔負けですね。」
パチパチパチッ
最早見慣れたものなのかレイナとカノンは小さな拍手を送るのだった。
「そ、それでこれはどちらに?」
「あ、あぁ…入口の脇にでも置いてくれたら助かる…。」
「わ、分かりました。うんしょうんしょ…。」
その後もヒナタは軽々という表現しか浮かばないほど軽やかに12ポンド砲を運び…
「よいしょっと。」
ズゥン!
ネイトに指示された場所に重い音を立てて置かれるのであった。
「ほ、ほかにお手伝いできることはございますか?」
「…そうだな。手伝ってもらえるなら助かる。」
こうしてヒナタも加わり納屋の掃除はよりスピーディに進んでいくのであった。
―――――――――――――
――――――――
―――
ネイトの宿舎である納屋の掃除はそのごすぐに終わり最低限の家具をクラフトし終え…
ドドドドドドドッ!!!
「あれが…『通功の古聖堂』か…。」
再びベルチバードを駆り以来の地である『通功の古聖堂』のある地域にやってきた。
中心には調印式に向け工事中なのかシートと足場に囲われた古聖堂があり周囲はおそらく同時代の遺跡思しき廃墟群がぐるっと囲んでいる。
「……大昔のアビドスも…こんな感じだったのかな?」
「ここでエデン条約の調印式が…。ルートの選定が大変そうですね…。」
「…よし、もう少し上空を回ってから少しはずれに着陸するぞ。」
『了解。』
一通り上空から見下ろしたのち、ベルチバードは着陸地点に向かう。
こうして、ネイト達の依頼は始まったのだが…
「………。」
『通功の古聖堂』の正面で無言で佇み廃墟の街並みを眺め続けるカレン。
「なっなんだろう、あの子…。」
「ずっとあそこに立って向こう見てるね…。」
それを会場の警備演習に来ていた正義実現委員会の生徒達が不思議そうに見ていた。
シスターフッドの依頼で来ていると説明されているので不審人物ではないとは分かるが機器などを持たずに佇んでいるのはやはり何をしているか気になるものだ。
すると、
「どうかしましたか、皆さん?」
「あ、ハスミ先輩。」
演習を取り仕切っている正義実現委員会の副委員長『羽川ハスミ』が隊員たちに声をかける。
「その…あのアビドスの生徒さんが…。」
「ずっとあそこに立っていて何をしているのかなと…。」
「アビドスの?…あぁシスターフッドからの依頼の…。」
ハスミもW.G.T.C.がやって来ているという話は聞いていたので不審人物ではないことは分かっている。
一体どんな人物が来たのかと思いそちらに視線を向けると…
「…!」
「…ハスミ先輩?」
途端に彼女の目が見開かれた。
砂漠迷彩の外套と同じ柄で白い羽根が挿されたブーニーハット、背中にはM40A5を背負ったその姿。
彼女がどんな人物かはハスミも知らない。
それでも…ハスミは理解した。
「…皆さんは訓練に戻っていてください。」
「は、はい!」
後輩の隊員たちを訓練に戻らせ…
「こんにちは。」
「……あ、こんにちは。…お邪魔してます。」
カレンに近づき声をかける。
体つきこそ対極だが互いに女子高生としては非常に長身の両者。
並ぶと非常に圧巻な光景だ。
「初めまして。私、トリニティ総合指揮3年生で正義実現委員会の副委員長を務めています『羽川ハスミ』と申します。」
「……初めまして、ハスミさん。…アビドス高校1年生の…『蓮本カレン』です。」
「失礼ですがいま何をなさっていらっしゃるのですか、カレンさん?」
単刀直入にハスミが尋ねると…
「……風の道を探してるんです。」
「風の道…ですか…?」
朴訥とした雰囲気を崩すことなくカレンは答えた。
「……ここに通るいろんな風の道。…その中でも特に危ないのを見つけるのが私の役目なんです。」
「な、なるほど…。」
要領を得られずなんと返したらいいか分からないハスミ。
「…ところで、立派な狙撃銃をお持ちなんですね。」
話題を変えようとカレンの愛銃について話を振ってみることに。
「……ありがとうございます。…この子は私の『大切な友達』の心臓を受け継いでくれた…とても逞しい子。」
そう言い、微笑みながら背負っている相棒『フェザーストロークⅡ』を撫でるカレン。
「大切なご友人の…?」
これまた要領を得ない回答に首を傾げるハスミだったが…
「……持ってみますか?」
「え?よ…よろしいんですか?」
「……ハスミさんも…私と同じようですから…。」
そう言い、カレンは『フェザーストロークⅡ』からマガジンを抜きチャンバーを空にしてハスミに差し出した。
「……どうぞ。」
「…ありがとうございます。」
「……気をつけてくださいね。…この子は少し…寂しがり屋なので。」
カレンからの注意を受け『フェザーストロークⅡ』を大切に受け取るハスミ。
(…重い、私の『インペイルメント』よりもかなり…。)
ストックの材質は砂漠という過酷な環境に耐えるために強化ポリマー、銃身も長く太いヘビーバレル。
(薬室も大型化されてありますね…。)
銃口は30口径ながらも各所の強化具合からこれまた自身の銃の弾丸である30-06弾よりも大型弾であることはすぐに分かる。
そして、安全も考慮し銃口が空に向くように構え…
ジャコン
ボルトを前進させた。
その時、ハスミはまだトリガーに指すらかけていない。
なのに…
カチンッ
「…え? 今…落ちた…?」
『フェザーストロークⅡ』内部から聞きなれた撃針が作動する音が聞こえてきた。
「わ、私まだ…?!」
確かにスナイパーライフルは通常のライフルよりも射撃精度向上のために滑らかで軽いトリガープルに設定されてある。
ハスミの『インペイルメント』もご多分に漏れずそのような調整が施されてあるが…
「……フフフッその子、ハスミさんに…少し驚いちゃったみたいですね。」
珍しく愉快そうに微笑んでいるカレンだが…
「こ、これはどういう…?!」
「……水平から5°ほど傾ければ…引き金が自重で落ちるように調整しています。」
「ご、5°!?」
「……はい。…この子が撫でてくれただけで…応えてくれるように。」
あまりにも過激すぎるこの銃のセッティングを聞きハスミも驚愕するしかない。
確かに競技用ライフルなどでは垂直にむけると引き金の重さで撃鉄が落ちてしまうセッティングにされてあるものは存在している。
しかし、それはあくまで『競技用』。
完全な戦闘用のライフルでしかも5°というほぼ水平と言っても差し支えない角度で撃鉄が落ちるのは半端ではない暴発の危険性をはらんでいる。
「あ、あの…高所などを狙う場合は…?!」
ハスミの質問は至極全うだ。
普通、銃と言う物は指の力で引き金を『落とす』ことで射撃を制御するものだ。
これで制御することなど不可能に思える
だが…カレンの答えはまさに常軌を逸していた。
「……そういう時はトリガーを『支える』んです。」
「さ、支え…?!」
「……はい、引くんではなく…落ちてくるのを優しく受け止めるんです。」
それはハスミが今まで築いてきた常識とは真逆の発想。
銃が今にも弾丸を吐き出そうとするのを指先で『宥め、抑え込み』…風との対話が終えた時にその指を『離す』。
引き金を重力という絶対の力で落とす、今まで考えたこともない発砲方法だ。
「……私はこの子が『今だよ』って囁いてくれる瞬間が好きなんです。」
「囁く…?!」
「……私が引くんじゃなく…風とこの子が私を置いていってくれる…その感覚が。」
穏やかな表情で『フェザーストロークⅡ』を撫でながら語るカレン。
常人には理解しがたい、自分達とは違う世界が見えているかのような感覚だ。
だが、同じ『スナイパー』故…
(彼女だ…!間違いない…!)
ハスミは確信した。
銃とは到底思えない『猛獣』を手なずけてなお『この子』とまるで愛おしい友のように接するカレン。
…彼女以外ありえない。
あの日…ミカにヘッドショットを命中させその弾丸が生み出した銃声と同時に2発目を傷口に叩きこんだアビドスのスナイパー。
長く実戦を経験しその腕を磨いてきたハスミから見ても『離れ業』としか言いようのない狙撃を実行して見せた人物こそ…今自分の目の前にいる生徒なのだ。
ハスミが身を固めている中、
「……それじゃ私は風が教えてくれた場所を…見てきますので失礼します。」
「は、はい…!大切な銃をありがとうございました…!」
「……時間があったらお茶をご馳走しますね、ハスミさん。」
カレンは朴訥とした雰囲気を崩すことなくハスミから銃を返してもらい自身が観測した狙撃地点の確認に向かった。
そんな彼女を見送りつつ…
「…えぇ、いずれまた必ず…!」
未だ収まらない戦慄とさらなる高みを垣間見た高揚感にハスミは静かに再会を待ち遠しそうに呟くのであった。
一方、
「地形データの採集はベルチバードから終えたが…。」
「やっぱり道はかなりの悪路…というかボロボロですね…。」
コンバットライフルを脇に提げたネイトとシホは別行動で廃墟街の情報を集めていた。
やはり長期間放置されていただけあって石畳の道には周囲から崩れた大小さまざまなサイズの遺跡の残骸が散っている。
「この遺跡群の総面積がおよそ2平方キロメートル。古聖堂を中心に周囲5㎞をぐるっと囲んでいるような地形だな…。」
「トリニティの中心地から数十㎞ありますから…。」
タブレットに入力した『F・ハカール君』で採集したデータと実際の様子を見比べながら遺跡内を歩く二人。
「最寄りのERが十分に対応できる病院の選定も必要ですね。」
「それから古聖堂だけじゃなく複数ルートの整備も進言しなくちゃな。これじゃ護るにも攻めるにも不都合だらけだ。」
「…本当にここで調印式をやるつもりなんですかね?」
シホが古聖堂を振り向きながらそう呟く。
この場所は確かにトリニティにとっては歴史ある場所だ。
エデン条約のような一大イベントには正に最高の部隊だろう。
だが…『最高』と『最良』は違う。
衛生兵であるシホからすればここはあまりにも辺鄙な場所過ぎる。
ここでもし戦闘でもあって怪我人でも出たらと思うと気が気ではない。
「もっと街中でやった方が警備や怪我人の搬送もやりやすいのに…。」
意味はあるだろうがシホにはこの場所で行う『意義』を感じることが出来なかった。
そんなシホに…
「パンとサーカスってやつさ。」
なんともあっけらかんにその疑問に答えるネイト。
「パンとサーカス?」
「俺の世界の大昔の社会の世相を表した表現でな。どれだけ権力を持った皇帝でも『民衆』の支持を得られなければその権力に正当性が無くなる。」
「…つまり、この調印式でここが選ばれたのは…。」
「『見世物』の側面が強いと俺は睨んでいる。」
いかに生徒会が強権を振るおうが…学校の主役と言う物は生徒だ。
生徒の支持が無ければ…どれほど独裁的にふるまおうがその生徒会はいつの日か打倒されるだろう。
天気予報の如くでもやクーデターが相次いでいるレッドウィンターがいい例だ。
むしろゲヘナのようなケースは非常にまれである。
特に派閥という政敵が多く日々暗闘を繰り広げるトリニティのような学校ならばなおさらだ。
「おまけにあの日のことだ。これ以上ゲヘナに妥協の姿勢を見せれば…ティーパーティーは足元から瓦解する。」
そんな中でトリニティの中心地にある真新しい建物で粛々と調印式に臨んでは反発する生徒も多い。
だからこそ…あえて不便でも歴史あるこの『通功の古聖堂』を調印式の舞台に選んだのだろう。
「ここでいくら悩んでも俺達に政治事情を変えることもティーパーティーの決定を覆す術はない。だったら…俺達は今シスターフッドからの依頼に全力で答えるまでさ。」
「ネイトさん…。」
その意図を理解しつつもネイトは淡々と依頼をこなしている。
そして、
「だからシホ、君の『メディカル』な視点からの意見などもどんどん出してくれ。」
シホをまっすぐ見つめそう伝えた。
ネイトがこの依頼の同行メンバーにカレンとシホを選出したのにはもちろん理由がある。
「そう言う視点は『人を救う』ことを信条としているシホが適任だ。俺やカレンで『タクティカル』な部分はカバーする。」
「でも、人を救うことならネイトさんだって…。」
「生憎、俺は『敵を倒して』護る術しか知らない。『人を傷つけずに救う』、それができるのはシホだけだ。」
ネイトは事前の対策である『防衛』に関しては得意分野だ。
カレンも彼女の『共感覚』によって彼女独自の脅威の判別はできる。
だが、有事の際の『救助』に関して言えばアビドス全体を見てもシホほどの専門家はいない。
「だから…頼んだぞ。」
そういい、自分をまっすぐに見つめて託すネイトを見て…
「…はい、精一杯遠慮なく意見を出させてもらいますね。」
シホも微笑みながらそう答えるのであった。
英雄と呼ばれる自分の恩人にここまでの信頼を一身に受けて緊張もあるが…それ以上に自分を信じてくれることがうれしかった。
「さぁお喋りもこの辺にして先に進むぞ。」
「そうですね。」
と、調査を再開しようとしたその時…
「あれ?」
「ん?」
目の前の交差路から数人のグループが現れた。
「あ、ネイトさんじゃないっすか!」
「君は…仲正イチカだったな。」
「お知合いですか?」
「あぁ、前にちょっとな。」
現れたのは正義実現委員会の一員で以前の極秘訪問の折に出くわしたイチカだった。
彼女の背後には後背であろう隊員たちが数人いる。
「奇遇っすね。お話は聞いてるっすよ。」
「そっちは予行演習か?」
「えぇ、そんなもんっす。なんたってトリニティの一大式典っすから。」
以前わずかとはいえ話し合った仲なので軽くあいさつを交わす二人。
「それでそちらの子は?」
そして、イチカの興味はネイトと同行しているシホに向き…
「初めまして、アビドス高校1年生の『鋸峰シホ』と言います。」
「…ほほぉ、貴方が噂の…。」
名前を聞いた途端、細い彼女の目がわずかに開きシホを頭のてっぺんからつま先までを見回す。
「う、噂…ですか?」
「えぇ、銃弾が掠めようが走り抜けるド根性を持った銃を持たないアビドスの衛生兵…。」
神妙な様子で語るイチカに対し、
「あぁ~…ハスミからか?」
ネイトは噂の出所を言い当て、
「そんな…私はただ銃が撃てない変なキヴォトス人なだけですよ?」
シホはへりくだっている様子は一切なく大したことないと言い切って見せた。
そんな彼女の様子を見て…
「…ハハッ、こりゃ参ったっすねぇ…。」
イチカは目を細め困ったような表情を浮かべた。
(銃が撃てないだけ…それがこのキヴォトスでどれほどの重荷になるか…。)
ネイトの言った通り、イチカはハスミを通じてシホのことを知った。
最初は冗談かと思った。
キヴォトスではアクセサリーどころか最早『衣服』と言ってもいいほど普及した『銃』。
それを持たず生活をするだけでなく戦場に…それもいの一番に飛び出したというではないか。
どれだけ撃たれようと決して反撃せず目の前で命の灯火が消えかけていたネイトを救うために救護騎士団顔負けの医術を戦場で発揮したというではないか。
そんなことが出来るのがトリニティに…いや、キヴォトス全体で見てもどれほどいるだろうか?
(鋸峰シホ…またとんでもない秘蔵っ子を抱えていたもんっすね…。)
普通ならシホはどんな学校もその才を見出されることなく『変わり者』の一人として埋もれていただろう。
そんな彼女をネイトは拾い上げ否定することなく育て上げ精鋭にまで至らせた。
(『アビドス解放の英雄』、審美眼も私達なんか及びもつかない…。)
その異名の所以は決して強さだけではない。
人を率いる力も見出す力も含めて…ネイトは『英雄』なのだとイチカは思い知った。
「どうかしたか?急に黙って…。」
「…いえ、何でもないっすよ。それはそうと…もうお怪我がいいんすか?」
と、話題はネイトの肩の怪我に移る。
「あぁもうばっちりだ。今は大口径ライフルを撃ってもちっとも痛くない。」
「もう…本当だったらもう少しゆっくりと復帰してほしいんですけどね…。」
と、健在をアピールするために肩を回すネイトに少し苦笑するシホ。
その時…
「あっあの!」
イチカが率いていた正義実現委員会の隊員の一人が声を挙げた。
「ん?」
「どうかしたっすか?」
ネイトやイチカだけでなく全員の視線が一気に彼女に注がれ、
「ひぅ…!」
注目されることに慣れていないのか縮み上がってしまった。
「あぁ、大丈夫っすよ。怒ったりしてないっすからね?」
「あっあのその…!」
不思議そうにイチカが視線を合わせて声をかけるとなおも言葉に詰まってしまったが…
「…!そうか、君だったか。」
ネイトは彼女が誰か気付いたようだ。
イチカなどの幹部クラスを除き正義実現委員会の一般隊員にはあまり知り合いはいないが彼女はネイトにとって例外ともいえる存在だ。
表情を崩し彼女に歩み寄り…
「…その水筒、まだ持っててくれたんだな」
「ッ!はっはい!」
彼女が提げた水筒を優しい眼差しで見つめる。
そこには女の子らしいピンク色の…側面の一部がへこんだ水筒があった。
この水筒を持っていると言うことは…
「あのっありがとうございました…!ネイトさんのおかげであの時の皆は復帰することが出来たんです…!」
そう、彼女はあの夜にネイトを誘い出そうとした襲撃者の罠に嵌り白リン弾の直撃を受けネイトに救助された隊員だ。
「そ、それから…ごめんなさい…!」
「なぜ謝るんだ?」
「わ、私がいたせいでネイトさんが…!」
ネイトが狙撃を受けた際、彼女の手当てをしていて身動きが取れなかった。
そこからのの過程はかなり複雑だが…あの狙撃でネイトは命を落としかけた。
「も、もし私がもっとしっかりしていたら…!ネイトさんは…!」
新米の自分を手当てしていたせいで命を落としそうになった恩人がいた。
彼女にはそれがずっと罪悪感として残り続けていた。
そんな彼女を見て…
「…君の怪我は…もういいんだな?」
ネイトは短くそう尋ねる。
「ふぇ…?は、はい…もうどこも跡も残ってません…。」
彼女の答えを聞き、
「そうか。…それが聞けて俺はもう十分だよ。」
ネイトはニカっと笑ってみせる。
「よく聞いてくれ。俺が撃たれたのは君のせいでも何でもない。」
「で、でも…。」
「それに…俺はあの時、撃たれることも織り込み済みであの場に赴いたんだ。」
『ッ!!?』
明かされたまさかの言葉に彼女だけでなくその場の全員の目が見開かれる。
シホも初耳だったようでその表情が驚愕に染まった。
「ど、どうし…て…?!」
「そうだな…。自分ば自分でなくなる気がしたから…かな?」
隊員の問いかけにネイトは少し考えてからこう返した。
「自分でなくなる…ですか…?」
「確かにあの時あのまま逃げていたら…俺は撃たれなかったはずだ。でもな…どうしても無関係な君たちが傷付いているのを無視できなかった。」
ネイトの言うように構わず逃亡していれば撃たれることもましてや死にかけることもなかったはずだ。
それでも…ネイトは見ず知らずの自分たちを助けに駆け付けてくれた。
「あのまま逃げていれば…俺はきっと今でも自分を許せなかった。それが俺には…撃たれるよりも辛かったんだ。」
敵ではない子供を見捨てる、ネイトにとって…もう二度と経験したくない出来事だ。
だから…ネイトは罠と知りながらもあの場に飛び込んだのだ。
「どうしようもない『お節介好き』の性分さ。だから、撃たれたのも俺の責任で君が気に病むことはない。」
「ネイトさん…。」
「それに現に俺は生き延びたから君がこれからあの事を重荷に感じることはない。それよりも…」
ネイトはそう言い彼女の手を取り…
「君には前を向いてあの時見せた勇気を忘れないでいて欲しい。」
微笑みながらそう願った。
「ゆっ勇気だなんてそんな…!私、まだ弱くて…新米でみんなに迷惑ばかり…!」
彼女はそんな実力はないと呟くが…
「あの時の部隊長の生徒から聞いている。君が彼女を投げ飛ばしたおかげで彼女は動けて迅速に救助を始められたとな。」
ネイトは彼女の勇気をすでに知っている。
「あ、あの時は無我夢中で…。」
「だが、その状況で行動できる人間はそうはいない。だから…その勇気をこれからも忘れないでいてくれ。もちろん、自分のことも考えてだがな。」
あの時は自分の身を顧みなかったので少し自嘲気味に笑い、
「そうすれば君も立派な正義実現委員会の隊員になれる。」
彼女に手を差し伸べながら言い切って見せた。
「………私も…なれますかね…?」
「『アビドス解放の英雄』のお墨付きだ、きっとなれるよ。」
恩人であり『英雄』と呼ばれる一人の大人に認められ…
「が、頑張ります…!貴方の想いに答えられるような…立派な正義実現委員会の隊員に…!」
ギュッ
彼女もその手をしっかりとつかみ握手するのだった。
「あぁ、楽しみにしている。…それで…。」
「はっはい、なんですか?」
「変なタイミングですまないが…君の名前は?」
握手しながらネイトに尋ねられ…
「も…。」
少し言葉に詰まりながら、
「もの…『物部リッカ』と言います…!」
彼女、リッカは笑顔で自己紹介するのであった。
「リッカ…か。良い名前だ。」
ネイトはそう呟き、
「それじゃあ、リッカ。俺達も任務があるからここで。」
「はっはい!頑張ってください、ネイトさんにシホさん!」
「君も訓練を頑張れよ。イチカ、また時間があったら色々話そう。」
「…はいっす。お二人も気を付けてくださいね。」
彼女とイチカと再会を約束し互いにやるべき事のために再び別の道を歩み出すのだった。
「よ…よぉ~し…頑張らなくちゃ…!」
ネイトのエールを受け彼から託された水筒のベルトを握りしめ気持ちを新たにするリッカ。
そんな彼女を見て…
(…はぁ~あ、全く敵わないっすねぇ…。)
イチカはそう内心で呟いた。
リッカがあの日からずっと彼のことが気がかりだったことはイチカを始め正義実現委員会の幹部たちの間では議題に上がっていた。
彼女自身にはあの日のことは朧気にしか記憶にはないが…それでもあの夜のことは嫌でも耳に入ってしまう。
何度も彼女の心配を解こうと話し合う場が持たれたが彼女の気持ちを晴らすことはできなかった。
それでいてリッカは以前にもまして訓練に励むというちぐはぐな状態。
例えるなら…『追い詰められている』ような印象だった。
いずれ限界が来てしまう、なんとしてもその前に彼女の精神状態を回復させる必要があったが…
(いやはや…再会して僅かに言葉を交わしただけであの子の心を晴らすなんて…。)
ネイトはリッカの心の雲を晴らして見せた。
今ならイチカにも分かる。
リッカに必要だったのは慰めの言葉ではなく…『勇気』の言葉だったのだ。
同情などではなく激励だったのだ。
(『アビドス解放の英雄』…その背で人を導くこともお手の物…って事っすか。)
ネイトが英雄たる所以、イチカはそれをようやく理解できた。
強さだけではない。
道を切り開き進み後に続く者を導く。
彼女だけではない。
自分達を統率する『トリニティの戦略兵器』である剣先ツルギ。
ネイトは『彼女の全力』に受けて立ち打ち破ることで…ツルギは確実に一皮むけた。
もしかすると…
「…アハハッ貴方なら…。」
「イチカ先輩?どうしました?」
「いや、何でもないっすよぉ。さぁ、私達も訓練に戻るっすよ。」
そう言い、いつもの笑顔に戻り後輩たちを率いイチカは訓練に戻るのであった。
一方、
「…ネイトさん。」
「どうかしたか、シホ?」
「さっき『『敵を倒して』護る術しか知らない』とおっしゃってましたけど…。」
ネイトと並んで歩くシホは…
「全然そんなことないですよ?」
「そうか?」
「だって…誰も倒すことなくあの子…リッカさんを護って見せたじゃないですか。」
彼に微笑みかけながら言い切って見せた。
彼女だけではない。
自分も…シホもその一人なのだ。
「大丈夫です。ネイトさんなら…きっとこの依頼をやり遂げられますよ。」
「…そうか。」
どこか確信めいたシホの言葉にネイトも微笑むのだった。
…が、
「…それはそれとして。」
「ん?どうかし…。」
「…さっきの…撃たれることは織り込み済みだったというのは初耳なんですが…?」
「…あ。」
シホの表情は反論を許さないい~い笑顔に変わりネイトを射抜くように見つめる。
やはり『救助』を信条とする彼女にとって聞き逃せなかったのだろう。
「あぁ~いやその…な…。」
ネイトがどう返したらいいか口ごもっていると…
「……あ、ネイトさんにシホちゃん。」
「ッ!よ、よぉカレン!進捗はどうだ!?」
「あッ!…もう…!」
渡りに船とはこのことか、観測地点に向かう途中のカレンと出くわし声をかける。
「……今から風が教えてくれた場所に…向かうところだよ。」
「そうか。カレンが思うようにやってくれよ。」
「……うん、ありがとう。」
と、少し朗らかな表情になったカレンから…
「……あ、そうそう。…新しい情報手に入れたよ。」
「新しい情報ですか?」
「……うん、古聖堂にいた正義実現委員会の子から…『コハル』って子が補習受けることになったって話してたのを聞いたよ。」
「………はい?」
聞きたくなかった新情報が聞かされネイトの表情が固まるのであった。
オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 レイナ
フルネーム 火向レイナ
役割 STRIKER
ポジション FRONT
武器種 SMG:ミニUZI『ルペンテンス・アクセル』
【挿絵表示】
クラス アタッカー
攻撃タイプ 貫通
防御タイプ 軽装甲
学園 トリニティ総合学園
部活 シスターフッド
年齢 16歳
誕生日 3月17日
身長 158㎝
趣味 ツーリング・バイク弄り
オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 カノン
フルネーム 轟カノン
役割 STRIKER
ポジション MIDDLE
武器種 MG:ネゲヴ『シャウト・アット・ザ・ロード』
【挿絵表示】
クラス アタッカー
攻撃タイプ 爆発
防御タイプ 重装甲
学園 トリニティ総合学園
部活 シスターフッド『聖歌隊』
年齢 16歳
誕生日 11月13日
身長 165㎝
趣味 歌うこと
正実モブ…改め
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 リッカ
フルネーム 物部リッカ