―――爆発するぞー!!!
ガッコンッ!
「………は?」
何の気なしに蹴り飛ばした壊れた自販機から出現した起爆装置が付いた集束ダイナマイト。
キヴォトスの自販機ではジュースはもちろん弾薬から手榴弾まで売られているのはネイトもみたことがある。
何ならアパラチアにも弾薬を専門で販売する自販機というのもあった。
が、さすがにこのような代物が壊れた自販機から出てくることは想定外で一瞬固まってしまう。
が、
「~ッ!!?」
すぐにネイトは再起動、
ガシャンッ!!!
自販機との合間に即座に軍用バリケードをクラフト。
カシャン
さらにヘビーコンバットアーマーの胴体部分を装備しその陰に身を丸めて押し込む。
この部位には爆発ダメージを軽減する『高密度化』のモジュールが装着されている。
苦し紛れだがないよりだいぶましだ。
「………ッ!!!」
そのまま目と耳を指で押さえ口を開けて爆発に備えるネイト。
…が、
「………平気…か…?」
そのまましばらく身構えていたがダイナマイトは爆破しなかった。
ゆっくりと防御姿勢を解きバリケードから自販機の方を覗くと…
「遠隔式の起爆装置…。」
依然として起爆装置が付いたダイナマイトはそのままそこにあるがその起爆方式は遠隔式だ。
時限式ならばすぐに離れなければならばならないが遠隔式というのがこの場合はミソだ。
「俺を狙った…物ではない、と言うことか…?」
遠隔式ならばネイトが自販機に近づいたタイミングで起爆させればそれだけでネイトは終わる。
だが、そうしないと言うことは目的はネイトではないという可能性が高い。
ならば…だ。
「なんであんなものが壊れた自販機に…?」
物騒のキヴォトスでもなかなか見れないシチュエーションを警戒しながらネイトはバリケードから這い出て…
「放置しとくわけにもいかないしな…。」
Pip-Boyから数種の工具を取り出し解体作業に入る。
カチャカチャ…
慎重にカバーを固定しているネジを回し…
スッ
「…よし、トラップはないか…。」
微かに持ち上げ安全を確認しカバーを開ける。
「…おい、これは…?!」」
中の回路を確認しネイトはそう呟く。
既製品でもなければ爆弾の起爆回路と言う物は作った人物の個性が出るものだ。
配線の複雑さやネジの締め具合、使用される材質や果てには半田付けのやり方など千差万別である。
エンジニアでもあるネイトはそのあたりの造詣も深く見たことがあるならば大体の爆弾の設計者は分かる。
そして、この起爆装置の中を見た途端、
「アイツら…!」
この爆弾を設置した者たちに見当がつきすぐさま行動に移った。
それから数時間後、日付けも変わり午前3時を回った頃…
ザッザッザッ…!
『ゲヘナ自治区第15エリア77番街』に近づく一団の姿があった。
「で…ここが例の場所なの、イオ~?」
「住所的には合ってそうだよ、ユノ。ここから…向うまで全部かな?」
その者たちは地図を見ながら目的地を確認し、
「へへっどこからの情報だかよく分からないけど親切に『温泉』がありそうな場所を教えてくれるだなんて有難いことだね。」
「準備は『部長』が済ませてくれてるって!陽動も買ってくれるだなんてホントイイ人だよね~!」
何やら聞き覚えのあるフレーズがいくつか飛び出す会話をかわす。
そして、
「よぉしっ発破準備!」
そのうちの一人がなんとも簡易的なボタンがついた装置を取り出し…
「開発だぁーーー!!!」
ポチッ
意気揚々と大きな声でそのボタンを押し込んだ。
…が、
シーン…
「…あれ?」
「爆発…しないね?」
そんなやる気とは裏腹に夜の廃墟街は何とも静かな時が流れている。
「イオ、起爆装置の故障?」
「そんなはずないよ…。だってあたしが何度も使ってる奴なんだし…。」
カチカチカチ…ッ
うんともすんとも言わない状況に首を傾げながらボタンを連打するも全く変化が見られない。
「…ユノ、ちょっと見てきてくれない?」
「いいよ~。」
不思議に思い状況を確認しに向おうとする面々。
だが、
「おい、そこで何してる?」
『ッ!?』
聞きなじみのある大人の声が聞こえそちらを見ると…
「ってあ、主任!?どうしてここに!?」
「やっぱりお前等だったか、『温泉開発部』。」
暗闇から現れたのは以前自分たちを叩きのめしアビドスで世話になった大人であるネイトだった。
「お久しぶり、主に~ん。」
「はぁ~…『イオ』に『ユノ』、久しぶりの対面がこんな物騒な展開にはしたくなかったがな…。」
なんとも辟易した態度で目の前の面々…美食研究会と並び称されるテロリストグループ、『温泉開発部』の面々と挨拶を交わすネイト。
アビドスで灌漑事業に従事しているのではないかと思われるがそこは温泉開発部の活動がミソである。
「こっちでインフラ整備があるって戻ってるとは聞いてたが相変わらずなようだな…。」
そう、テロリストとはいえ技術は本物の温泉開発部はゲヘナの主に水道関連のインフラ整備を担っている。
ただでさえ爆発が他の地域よりも絶えないゲヘナでは彼女たちの仕事はひっきりなしで聞くところによると大規模な水道管のトラブルが起こりかなりの人数が帰郷しているとのことだった。
なので、彼女たちが今のゲヘナにいることは一切おかしくない。
すると、
「ってあ~!それってうちの爆薬じゃん!!!」
ネイトの両手には彼女たちには見覚えのある起爆装置と集束ダイナマイトがそれぞれ握られていることに気付く温泉開発部の生徒。
「そう言えば~…さっきやっぱりって言ってたけど私達の物だって分かったの~?」
「こんな過剰なコーキングにセーフティ皆無の直結回路組むようなのお前ら位だろうが。おまけに回路も市販品の流用だし見たことある奴ならすぐに分かる。」
先ほど解体した起爆装置の癖を見抜いたネイト。
それは以前、アビドスの灌漑工事の際にカスミに見せてもらったことのあるシンプル過ぎて物騒な物だったのだ。
そんな彼の総評を聞き、
「それがいいんじゃん、主任!どんなことがあろうと確実に解体する!それが温泉開発部の誇りだよ!」
腰に手を当てて誇るように答える温泉開発部には珍しい黄色いジャケットを纏った生徒。
彼女は『草津イオ』、ゲヘナ学園の2年生にして温泉開発部の『発破解体班』を取りまとめる爆弾屋にして突撃隊長である。
その手法はとにかくダイナマイトを仕掛けまくりど派手に吹っ飛ばして瓦礫に変えるという温泉開発部のあり方を体現したような生徒である。
アビドスでもそのやり方は健在で彼女のおかげで灌漑事業は想定外に進んでいったと言ってもいいだろう。
「イオ…こういうのもなんだが少しは技術を磨け。」
「ん?どゆこと?」
「あんまり回路がシンプル過ぎて信管の配線切ったら解体完了ってのはエンジニアの俺からすれば0点だぞ。」
が、今回はそんな脳筋な温泉開発部のおかげで助かったともいえる。
量産性と確実性を重視したその起爆装置は解体方法までシンプルにしてしまっていたのだ。
「あぁ~だからかぁ!今度から気を付けなきゃ…!」
「いや、そもそもダイナマイトで街を吹っ飛ばすなよ…。」
そんな指摘に斜め上のやる気を見せるイオに首を振るネイト。
「まさか主任、全部解体しちゃったの~?」
今度はその隣にいる白衣とホットパンツの下に競泳水着というなんとも風変わりな反った一対の角がヘルメットから飛び出た生徒が尋ねる。
「あらかたはな、ユノ。またとんでもない数しかけやがって…。」
「ここの区画全部解体する予定だったからね~。一体どんな効能の温泉があるのかな~…!」
と、物騒なこととまだ見ぬ温泉に目を輝かせるこの生徒。
名前は『別府ユノ』、イオと同じくゲヘナ学園2年生で温泉開発部の『泉質調査班』を取り仕切り『最高の泉質』を追い求める温泉マイスターである。
その技能は確かなもので一度入っただけでその温泉のPh値の解析はもちろん泉質や効能までピタリと言い当てる優れた知識と技能を持つ。
アビドスでのオアシスの水質調査も彼女が行ってくれた。
それが高じてか…『誰よりも先に温泉に入る』という意思の表れとして温泉開発時にはこうして水着を着てから臨んでいるらしい。
がやはりと言っていいかそこは温泉開発部。
理想を追い求めるにあたりそこら中を掘り返しては地盤沈下などを引き起こす問題児でもある。
「まぁ、それだけでカバーできるとは思えないから細工もしてるがな。」
「細工って何やったのさ?」
「ベルチバードにあった無線機をちょいと弄ってここら一帯にジャミングを掛けてる。それくらいのデバイスの信号なら完全にシャットアウトできるぞ。」
「むむむ~…主任だって随分と強引だね~。」
そう、ネイトが見つけたダイナマイトはあれだけではない。
この区画…『ゲヘナ自治区第15エリア77番街』の廃墟の至る所、それこそイオの言うように一帯が瓦礫の山になるほどの量が仕掛けられていた。
流石のネイトも一区画丸々の捜索は手が回らずジャミングによる通信妨害による無力化を試み何とか成功したようだ。
「…で、まだ温泉を掘り返そうと?」
と、ここでネイトも表情を真剣なものに切り替え温泉開発部の面々に問う。
なんとか起爆こそ防げたが…それだけで温泉開発部が諦めるとは思えない。
もしこのまま温泉の発掘作業に移るのであればそれ相応の対処をとるつもりだ。
が、
「まっまっさかぁ!諦めたくはないけど主任の前でそんな強引には…!」
「お、温泉は逃げないしね~…!また日を改めてやるよ~…!」
イオとユノは首と手を横に振り否定の意を伝える。
他の温泉開発部の部員たちも同様だ。
諦めたくはないが…相手はネイト。
ここにいる数倍以上の温泉開発部相手に重機関銃を引っ提げて蹴散らした人物だ。
例えパワーアーマー抜きであっても…20人弱の人数では勝てる見込みはかなり低いだろう。
「やめるとは言わないんだな…。」
やり合う気はないが諦める気もない彼女たちに苦笑を浮かべつつ…
「…分かった。開発を待ってくれるのなら俺も手出しはしない。」
ネイトもこの場での荒事はしない旨を伝えるのだった。
「フゥ~…それにしても主任は何でここにいるの?」
「こんなゲヘナのスラムに何か用~?」
「それはこっちのセリフだぞ、二人とも。」
と、ここで互いになぜここにいるのかを尋ね合う。
百歩譲って温泉のためなら所かまわず開発する温泉開発部は分かる。
だが、こんな夜更けにネイトが何もないこの廃墟街にいるのは不思議だ。
「俺はまぁすこしここに用がある奴等の付き添いでここに来たって感じかな。」
「付き添い?こんなとこにこんな時間に用があるの?」
「変わった人~。明日の昼間だったり街中にすればいいのに~。」
「それは言えてるな。」
ネイトは詳細は伏せつつあっさりとこの廃墟街に来た理由を述べる。
もしここで先生の存在が知られれば厄介なことになりかねない。
「で、そっちは?」
「私達はいつもの通りだよ。」
「ここに温泉があるって教えてもらってきたの~。」
対する、イオとユノの答えも温泉開発部としてはありふれたもののように聞こえる。
彼女たちという存在はたとえ高速道路の上だろうと温泉があると聞けば掘り返さずにはいられない者たちなのだ。
…しかし、だ。
「…それ、いつどこで教えてもらった?」
この状況をに過ごせるほどネイトはお気楽ではない。
ゲヘナの学区は広大だ。
そんな中でこんなタイミングでこの場所に温泉があるという情報がもたらされた?
しかも、作業開始がこの時間と来た。
全てが偶然と片付けるには…あまりにもできすぎている。
「う~ん…私達もカスミ部長から指示受けただけだし…。」
「誰が教えてくれたかは部長が知ってると思うよ~?」
イオとユノはそう言い顔を見合わ他の温泉開発部の面々も同じような反応を示す。
「ふ~む…じゃあ、カスミはどこだ?」
「あぁそれなら風紀委員会を引き付けるために陽動に行ってるよ~。」
「電話かけてみたら教えてくれるんじゃないの?」
「…それじゃあ聞いてみるか。」
なんともあっさりと提案を受けネイトもスマホを取り出しカスミに電話を掛ける。
アビドスで共に働いていたので番号は把握している。
Prrr…Prrr…
しばしの間、呼び出し音が鳴り…
《…もしもし、誰?》
快活なカスミの物ではない、気だるげな声が聞こえてきた。
「その声は…。」
ネイトはこの声に聞き覚えがあった。
そして、カスミが暴れているとすれば…この電話に出ることも不思議ではない人物…
「空崎ヒナか?」
《…ネイトさん?》
ゲヘナ最強の風紀委員会委員長、『空崎ヒナ』だ。
「俺は鬼怒川カスミの電話に掛けたつもりだったんだが…。」
《えぇ、間違ってないわ。ちょうど今暴れていた温泉開発部の制圧を終えてね。》
「あぁ~なるほど…。」
やはりというべきか、さすがの温泉開発部もヒナには形無しだったようだ。
「…ちなみにアサルトロンも出撃してるか?」
《えぇ、よく分かったわね。》
「こっちに来る途中にアサルトロンレーザーが見えたんだ。」
どうやらその戦闘はベルチバードで見たあの光景のようだ。
と、
《待って。ネイトさん、今ゲヘナにいるの?》
今度はヒナが少し驚いたような声を上げる。
「少々先生がらみの野暮用でな。」
《…はぁ、貴方もあの人も本当に大変ね。》
「お互い様さ。こんな夜更けまでご苦労様。」
互いに組織を率いる者同士、通じる部分はあるので互いの労を労い合い、
「で、鬼怒川カスミはそこにいるか?」
《あぁごめんなさいね。少し待ってちょうだい。》
ようやく電話の本題に入ることができヒナもカスミをすんなり出してくれた。
が、
《鬼怒川カスミ、貴方に電話よ。》
《ひええええええっ!?『爪』はっ『爪』はもう嫌だああああ!!!》
《落ち着きなさい。捕まっているのなら手出ししないわ。》
《嘘だぁ!!!その『爪』で我々の重機みたいに私を引き裂くつもりだろう!!?》
余程先ほどの戦闘が激しかったのだろう。
電話口からでも分かるほどカスミはヒナに恐怖しパニックになっている。
しかし、これでは碌にネイトと会話も出来そうにないので…
《…ネイトさん、少し待ってて頂戴。少し黙らせるわ。》
「あぁ~…口が利けるくらいにな?」
ヒナはゲヘナ流の対応をすることに決めたようだ。
数分後、
《ハーッハッハッハッ!奇遇だね、主任!》
「そっちも相変わらずなようだな、鬼怒川カスミ。」
やっと元の調子を取り戻したカスミが高笑いしながら電話に出てくれた。
《それでその地区の温泉の情報源だったかな?》
「あぁそうだ。一体どんなソースでここに人員を派遣したんだ?」
長引かせるのもヒナに悪いので単刀直入に尋ねると…
《ソースも何もいきなり私の所に連絡が入ったんだ!『ゲヘナ自治区第15エリア77番街』にゲヘナ史上類を見ない最高の温泉が眠っているとな!》
なんともあっさり電話で情報提供があったと明かすカスミ。
「その電話はいつあった?」
《ヒナ委員長!少し見てくれないか?!今日の昼間位にあった非通知の着信だ!》
《…あったわ。今日の12:04に非通知の着信が一件入ってるわね。》
「非通知…よくそんな情報を信じたな。」
いたずら電話の可能性大なのにここまで盛大にやらかそうという温泉開発部の気概にはあきれるやら感心しるやらなネイト。
《何を言う、主任!温泉があると言われれば例え地の果てでも行くのが我々さ!》
「…で、相手の声はどんなだった?」
《それが変声機を噛ませてあったようで声では性別は分からない!だが、どことなく上品さを感じる話し方だったと記憶している!》
「…ありがとう、鬼怒川カスミ。空崎ヒナに変わってくれ。」
《おいちょっと待て!それは元々私の…!》
《変わったわよ。》
これ以上は有力な情報は引き出せないと思いヒナに通話の相手を戻してもらう。
「…今の話を聞いてどう思う、空崎ヒナ?」
《…そう…ね。話を聞くだけならいつもの温泉開発部の暴走のようね。》
ネイトの問いかけにカスミ達の所業を良く知るヒナはそう語るが…
「まさか…それで終わりなわけがないだろう?元『情報部』の空崎ヒナなら…その先に辿り着くはずだ。」
《…本当に人を焚き付けるのが上手ね、ネイトさん。》
彼の挑発混じりの信頼の言葉を受け、
《えぇ…状況があの時と酷似しているわ。》
「あぁ、俺もここにいる子達を見た時からうすうすそう思っていた。」
共にその結論を口にする。
今の温泉開発部と自分たちが置かれた状況だが…初めてではない。
そう、ネイトがマコトやヒナたちとの会談の際に初めてゲヘナを訪れた時だ。
あの時も…どこかからもたらされた情報によって温泉開発部が動いた。
今回はターゲットを先生に置き換えれば…状況はほぼ同じだ。
《どうやら…しばらくぶりに尻尾を出してきたようね。》
「いらんタイミングでな。…俺に少し伝手がある。そっちに詳しく調べてもらうことにする。」
《こっちも洗い出してみる。貴重な情報提供に感謝するわ、ネイトさん。》
かつての因縁に決着をつけるため、ネイトとヒナはその尻尾を掴むために決意を固める。
「それで…ここにいる温泉開発部たちはどうする?」
《爆弾は無力化して今のところは暴れる気はないのでしょう?だったら今日の所は帰してもいいわ。》
「了解、そう伝えておく。忙しいのにすまなかったな。」
《気にしないで。久々にネイトさんと話せて楽しかったわ。それじゃ。》
こうして、真夜中の情報共有は終わり…
「…イオ、ユノ。今日の所はもう帰れ。空崎ヒナも今は見逃すとさ。」
「そう?それじゃ…お疲れ様、主任。」
「またアビドスでね~。」
イオとユノも風紀委員長からせっかくのお目こぼしがもらえたと言うことで素直に退散していくのだった。
温泉開発部が視界から見えなくなると…
「…はぁ~次から次へと…。」
ネイトは眉間を抑えてそう苦々しく呟く。
先ほどあんな風に言ったが…ネイトはこの事態の黒幕の見当がすでについていた。
(空崎ヒナに一から全部言えば確実に厄介なことになる…。)
しかもその黒幕の正体の扱いが非常に厄介ときている。
自分がここにいる詳細を伏せたのもこのためだ。
ヒナは賢い。
もし、下手に情報を開示すればそれだけで犯人の目星をつけてしまう可能性もある。
(しかし、俺も確固たる証拠がある訳じゃない。)
が、現状は状況証拠のみ。
疑念だけではネイトも目星をつけた人物を追及することはできない。
「捜査ルートを分けて正解だったな…。」
と、夜空を見上げ独り言ち…
「少し癪だが…お前の思惑通りに動いてやるよ。」
そう言い、手に持ったダイナマイトをそのままに来た道を戻っていった。
それから数時間後、
ドドドドドドドッ!!!
ズゥン!
「着いたぞ、皆。」
朝日を浴びながらベルチバードは合宿所のグラウンドに着陸していた。
「帰りは本当に平和だったわね…。」
「アビドスを経由してきたんだ。T.A.G.も文句は言えないだろう。」
アズサの言うようにネイトはアビドス経由での帰路を選択した。
関係は悪化しているとはいえそれでもゲヘナ程物々しくはないトリニティとアビドスの関係。
そのおかげか、帰りに関してはT.A.G.のライトニングに追いかけられることなく悠々としたフライトを行えたのである。
「本当にここまでいろいろとありがとうございました、ネイトさん。」
「お礼ならHa.pに言ってくれ、P.P。彼女が俺を呼んだんだからな。」
そう言い、ネイトはハナコを見る。
昨晩のMVPは間違いなく彼女なのだ。
「そうだな。ハナコ、教官を呼んでくれてありがとう。」
「そっ…その…助けてくれてありがとう、ハナコ…。」
「ハナコちゃんのおかげでなんとか終えることができました。ありがとうございます。」
「よくやったね、ハナコ。本当に…君はいい生徒だよ。」
それを受け、ヒフミや先生たちは口々に彼女に感謝の言葉を伝え、
「ウフフ…どういたしまして♡」
ハナコも微笑みながらそれを受け入れるのだった。
「ですが、ネイトさんもお疲れ様でした。これではまた貴方にお礼しなければならないほどいろいろと力を貸していただき…。」
「気持ちだけ受け取っとくさ。」
ネイトもハナコからの労いの言葉を浅く笑いながら受け入れるのだった。
が、
「………。」
その表情はすぐに引き締まり…
「ここからのことは全員わかっているな?」
「…はい、お任せください。」
「うん、教官の指示通りにする。」
「なっ何とか頑張ってみます…!」
「任せなさい…!私はエリートなんだから…!」
補習授業部の面々も真剣な表情で答え、
「こっちは私たちで何とかしますのでご心配なく、師匠。」
先生も負けじと決意を込めた表情で頷いてみせた。
そんな彼女たちを見つめ、
「よし…俺も色々とやってみる。少しこっちには顔を出せないが…どうしてもと言うなら連絡をくれ。」
ネイトも頷き、
ドドドドドドドッ!!!
全員を降ろした後、ベルチバードは元の駐機場へと帰っていくのであった。
―――――――――――――
――――――――
―――
こうして、トリニティとゲヘナの空をひっくり返す大騒動の末に行われた補習授業部の第二次特別学力試験。
その結果は…
という、急遽試験内容の大改定があったことを抜きにしても惨憺としか言えないものだった。
ヒフミ達、補習授業部に残されたチャンスは…あと一度のみ。
試験範囲の増加と合格点数の引き上げを受け、一層彼女たちは勉学に邁進していくこととなった。
一方、ネイトたちの方も…
「……ネイトさん、狙撃の警戒地点をマークしたよ。」
「それからこちらは非常事態時の避難経路のコースになります。整備をお願いしてもらえますか?」
「分かった、二人とも。こっちも…『進攻時』の防衛計画を策定できた。」
トリニティにやってきた本来の目的である『通功の古聖堂』周辺の調査を終え警備に関するコンサルティング資料の作成も完了した。
あの夜の騒動から3日後のことである。
今はネイトの根城の納屋にカレンとシホが一堂に介し最終確認を行っていた。
ネイトの経験とカレンの狙撃手としての本能、シホの救命の知識が組み合わさった渾身の出来だという自負がある。
「……あとはサクラコさんに提出するだけだね…。」
「長かったようで…あっという間のことでした。」
「まぁ…色々あったなぁ…。」
初めての他学区での長期の依頼。
内容もそうだか非常に濃密な時間だったと思い返す三人。
「……それでネイトさん。この後は?」
そう、カレンが尋ねる。
資料の精査はあるだろうがこれでシスターフッドからの依頼は完遂できたと言ってもいいだろう。
明日にでもアビドスに帰れるはずだ。
が…
「…すまないな、カレンにシホ。」
ネイトは二人に対しまずは謝罪の言葉をかけ、
「この資料の提出は…少しここで止めさせてほしい。」
このコンサルティング資料の提出の先延ばしを求めてきた。
正直、あれ以上の内容を作ろうにも廃墟街は調べ尽くしている。
データの量を増そうにもそれは内容を薄味にするだけだ。
普段のネイトからすればそのような無駄な作業は省くはずだが…
「……ネイトさんのやることはまだあるもんね。」
「…分かりました。私たちは『フリ』をもうしばらく続けますね。」
カレンとシホもそんな彼の決断を尊重しまだ調査が続いているように装うことを請け負った。
そう、ネイトがこの依頼を受けてトリニティにやってきた目的はこの依頼のためだけではない。
「ありがとう、2人とも。幸い、この期間であの事件の真相に近づけそうな宛ができた。」
あの事件…ネイトが命を落としかけたD.U.でのあの夜の騒動。
その真相に近づくためにこの依頼を受けてトリニティに赴いたという狙いもある。
依頼の期日まで後3日。
この3日間で…ネイトはその目的を果たそうというのである。
が、
「でも、この前の夜みたいな大騒動は控えてくださいね?」
「…うん、善処する。」
まるで子供に言い聞かせるような表情と声でそう忠告するシホ。
本人が望むか望まざるかは別にして…ネイトはトラブルと言うものに愛されすぎている。
ゲヘナに飛んだ翌朝も帰ってきてから彼女にお小言をもらったばかり。
本気で怒るとシホはかなり怖いので素直にそう答えるネイトだが…
「……やるなら私たちも誘ってね?」
「カレンちゃん?!」
もう一人の今回の相棒であるカレンは割と乗り気なようだ。
「……私たちはネイトさんの仲間なんだから。無理する時も…やるなら一緒だよ?」
「…そうか。分かった、カレン。いざという時は力を貸してもらうよ。」
そんな朴訥としたいつもの調子ながらもしっかりとした決意を聞きネイトも約束を交わす。
「……シホちゃんはどうするの?」
「うぅ〜…分かりましたよ…。」
そんな彼女に引っ張られたかシホも渋々同意し、
「でも、いいですか?そういうのはホントのホントの最終手段にしてくださいね?」
「あぁ分かってる。ここはアビドスじゃないんだ。いつもよような大立ち回りは封印するよ、シホ。」
再度ネイトに自重を促す。
トリニティでの自分の立ち位置を理解しているのでネイトもいきなりドンパチを仕掛けるつもりは毛頭ない。
仕掛けられた際は話は別だが。
「それで明日からどうするんですか?」
「……宛があるって言ってたけど…。」
そんなネイトが何をしようとしているのか気になり尋ねる2人。
「なに、ずっと借りっぱなしなのも悪いと思って…。」
そう言いながら…
カシャン
「そろそろコレを返しにいこうかとな。」
ある物をPip-boyから取り出した。
それは…ジュラルミン製のガンケースだった。
そして、翌日…
「お待ちしておりました、ネイト様。」
「突然の訪問の要請を受け入れてもらい感謝する。」
ネイトは廃墟街ではなく…トリニティの郊外にある古びた基地のような場所を訪れていた。
「どうぞ、我が派閥の領袖が貴方様をお待ちになっております。」
その門の前で彼を丁寧に迎える生徒だが…
ジャラジャラ…
「…ずいぶんと物々しいな。」
「ウフフ…コレが我々の正装のようなものですから。」
歩くたびにまるでアクセサリーのように全身に巻かれたベルトリンクが音を鳴らす。
格好はトリニティの制服の一種だが…
(昔、爺さんの家で見た曾祖父さんの兵役時の…ベトナムの戦争の時の姿のようだな…。)
まるでここが最前線かと思ってしまうほどの物々しさだ。
持っている銃もマシンガンというキヴォトス基準で見ても重装備である。
そう、ここはトリニティの中であって異質としか言えない場所。
「そうそう、申し遅れて申し訳ありません。」
彼の眼の前の生徒は向き直り…
「ようこそ、我が『ブラダビ分派』の本部へ。」
楚々とした所作で歓迎の意を伝えるのだった。
ここはトリニティ新興分派にして過激派組織『ブラダビ分派』の本部。
トリニティきっての危険地帯に…
「歓迎の言葉、感謝するよ。」
「では、こちらへ。」
ネイトは足を踏み入れるのだった。
オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 イオ
フルネーム 草津レイナ
役割 STRIKER
ポジション MIDDLE
武器種 Gl:HK69『一湯両断』
【挿絵表示】
クラス アタッカー
攻撃タイプ 爆発
防御タイプ 軽装甲
学園 ゲヘナ学園
部活 温泉開発部
年齢 16歳
誕生日 2月22日
身長 153㎝
趣味 爆破・掘削
オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 ユノ
フルネーム 別府ユノ
役割 STRIKER
ポジション MIDDLE
武器種 SMG:ダヌビア43M『泉変万華』
【挿絵表示】
クラス アタッカー
攻撃タイプ 貫通
防御タイプ 軽装甲
学園 ゲヘナ学園
部活 温泉開発部
年齢 16歳
誕生日 11月26日
身長 157㎝
趣味 利き湯・温泉料理